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「お茶は楽しんだかい?実は、婚約が決まった二人に仕事を任せたいのだ。ロベルトには少し話したんだがな」

「僕はそのお話は受けたくありません。令嬢との婚約は受け入れますが……仕事はもう少しお互いの信用を高めてから始めるべきかと」

「ロベルトよ、お互いの信頼と信用を高めるために任せたいのだ」

国王とロベルト様でどんどん会話してしまうので、口を挟む隙がありません。

「お二人とも、セリーヌさんに分かるように話しなさいな。なんのために私達のお茶会を切り上げさせたのですか?」

王妃様が助け舟を出してくださいました。一体どんな仕事なのでしょうか。

「おぉ、そうだったな。話を戻そうか。二人にリリンティアン領を任せたいと思ってな。あそこは国が直接保有している領地だ。小さいがある程度発展しているから、運営しやすいだろう。どうだねセリーヌ嬢、やってくれるかね?」

どうだね、と言われても……

「私はまだ正式な王族ではないですし、そのような重大な任務に関わって良いのでしょうか。ロベルト様が運営し、私が雑用等の補佐をする程度なら良いかもしれませんが……」

「私が任命した者が領地の責任者になることはよくあることだから、心配することはない。それに、ロベルトだけでは不安なのだ。ロベルトはどうも……口下手というか……、平民との間に溝が出来かねない。どうか、ロベルトと平民の橋渡しをしてくれないか?」

確かに国王から正式に任命されれば、不自然でないかもしれません。それに、ロベルト様が平民と問題を起こしそうなのも、何となく分かる気がします。

「……分かりました」

そもそも、国王の依頼を私なんかが断れる訳ないのです。

私が承諾すると、ロベルト様のお顔がさらに険しくなりました。

「……令嬢が良ければ、僕も父上に従います」

お顔は納得していなさそうですが、ロベルト様も国王の命には逆らえないようですね。

「では、後日正式に任命する。それまでの間、リリンティアン領についてよく調べ、どのようにしていくか考えておくのだぞ。もちろん、二人でな」

国王と王妃様はにこにこと満足そうな笑みを浮かべていました。




「……」
「……」

ロベルト様と二人きりにさせられてしばらくが経ちましたが、ロベルト様は全く口を開きません。先程改めてご挨拶をしたのですが、完全なる無視という仕打ちをくらいました。

ただリリンティアン領の資料を読んでいるだけの時間が過ぎていきます。これなら一人で読みたいわ。

「ロベルト様、こちらの資料はご覧になりました?」
「……」

このまま無視を続けるつもりかしら。だんだんと苛立ってきました。


「ロベルト様!どうして先程から私のことを無視なさるのですか?婚約や領地運営について、不満があるのは分かりますけれど、それを私にぶつけないでいただけますか?どちらの件についても、私には拒否権がないことはお分かりですよね?こうなった以上、協力していかなければならないのですから、少しは口を開いていたたけますか?」

苛立ちが溢れて、思わずペラペラと文句を言ってしまいました……。相手は仮にも王子です。不敬罪とかに問われないわよね……。

「……すまない、考え事をしていた」

考え事?それで私のことをずっと無視していたというの?

「では、次からはもう少し大きな声で話しかけますね」

「ああ、そうしてくれると助かる」

皮肉だったのだけれど。本当に何を考えているか分からない人だわ。だれとも相性が良くないという占いは、間違っていなかったわね。

「では改めて……ロベルト様、これからよろしくお願いいたしますね」

「あぁ。ところで令嬢、君の名前は何だったかな?」

……このくそ王子!
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