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14.招待状

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 二人に洗いざらい話してしまってから私の心は穏やかだった。それに良い意味で吹っ切れた気がする。
 時折ハプレーナからお客様がいらっしゃることもあったけれど、どんなお客様でも胸を張って対応できるほどには度胸もついたと思う。

 

「そう言えば、もうすぐサリー王女の生誕祭があるね。パーティーに参加する方々がアクセサリーの新調に来るから、結構忙しくなるよ。頑張ろうね!」

「生誕祭ですか。じゃあ頑張らないとですね」

 お客様が途切れた時、レオからそう言われてこの国の生誕祭のことを知った。
 基本的にはハプレーナと同じで、貴族達とのパーティーがメインイベントのようだ。ただ赤い小物をつける風習があるらしく、ルビーやガーネットをあしらったアクセサリーが良く売れるのだとか。

(赤い小物か……だったら後で赤メインのブレスレットやブローチを確認しておこうっと)

 せっかくならこのお店を選んでくれたお客様に喜んでもらえるような接客がしたい。イベント関連で気に入っていただければ、日常的にもこの店を選んでもらえるかもしれない。

(よーし、頑張るぞ!)

 
 
 レオの言う通り、生誕祭が近づくにつれて忙しさが増していった。少し前から私も一人で接客させてもらえるようになっていたため、何とか三人で対応することが出来た。

「お待ちしておりました、エドワード様」

「サリー様のお祝いだから新調したくてね。ブローチが良いんだが、いくつか見せてもらえるかい?」

「かしこまりました」

 エドワード様は私が初めてメインで担当させていただいたお客様だ。何度か買いに来てくださっているので、少しお話をするようにもなっていた。

「エドワード様のお召し物でしたら、深い色の赤がお似合いかと思います。……こちらでいかがでしょうか」

「あぁ……相変わらず良いセンスをしているね。これにしよう」

 満足そうにブローチを眺めるエドワード様を見ていると、嬉しくて顔が緩みそうだ。

「ありがとうございます」

「ところで君はパーティーに参加するのかい?」

「え? 私は平民ですので参加はしませんけど……」

「ああそうか、君は国外から来たから知らないのか。ガーデンパーティの方は招待状があれば誰でも参加できるんだ。だから城下町の学生とか庭師とか、色んな人が参加するんだよ」

 貴族だったことを知られているのかと思ってドキリとしたが、そうではないらしい。ガーデンパーティーは随分とカジュアルなのだろう。ハプレーナには一般市民が参加するパーティーはなかったから、あまりイメージが湧かなかった。

「この国の生誕祭は随分とにぎやかで楽しそうです」

「そうだろう。というわけで……これを」

 エドワード様が差し出してくれたのは、三枚の招待状だった。

「これって……いただいて宜しいのですか?」

「もちろんだよ。この店には世話になっているからね」

(気持ちはありがたいけれど受け取って良いのかしら? まだ参加出来るか分からないし、レオとジョナスさんの予定も分からないし……)

 王族や貴族のイベントに良い思い出なんかない。正直参加したくはなかった。
 だけど、私の判断で断れるものではない。ジョナスさんをチラリと見て判断を仰ぐことにした。

(ジョナスさん、どうか首を振って。そうしたら断れる……!)

 私の願いに反してジョナスさんがかすかに頷いたのが見えた。私は仕方なく受け取るしかなかった。

「ありがとうございます、エドワード様」

「是非楽しんで。またよろしく頼むよ」

 エドワード様が帰られた後ジョナスさんにすぐに相談しようと思ったが、お客様が途切れることはなく話すことすらできなかった。



 招待状をジョナスさんに渡せたのは、閉店作業が終わって一区切りついた時だった。

「これ、受け取ってしまいましたけど……お二人とも参加でよろしいのですか?」

「たまには良いだろう。生誕祭当日はどこの店もお休みだ。もちろんこの店もな」

「ソフィアは初めてだよね。俺は一度だけ参加したことがあるけれど、結構楽しかったよ! 楽しみだな」

 二人ともなんだか嬉しそうにしている。それを見ているだけで楽しいイベントなのだろうと思えるようになった。

(ここはハプレーナじゃない。二人もいる。きっと楽しめるわ)
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