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3.説教

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暗闇の中、家に帰るとお父様が待ち構えていた。

「た、ただいま戻りました」

「こちらに来て、一体何をしたのか自分の口から説明しなさい」

挨拶もなしにそう告げられて、お父様が相当お怒りなのが分かった。

聖女の力を暴走させたと思っているのでしょう。あながち間違いではないのですけれど。

「ミシェルが第一王子に、私のことを聖女を騙る罪人だと告げたようです。それで本日の婚約発表の場で国外追放に処されかけましたので……私が聖女であると証明するために、力を少し使いました」

「ほぉ、少し……な。証明するだけなら、他の方法があったのでは?どうせミシェルに乗せられたのだろう。だから言ったのだ、彼女を信用しすぎるなと。そもそも聖女の名を渡すなど、最初から反対だったのだ」

そう言われると思っていましたとも。お父様はミシェルに聖女のフリをさせることに反対していましたものね。反対を押し切って今日までミシェルの片棒を担いでしまったことは、反省しなければなりません。

「お父様のおっしゃる通りでした。私は彼女を信用しすぎたようです。彼女の連絡がつかなくなった時に、手を打つべきでした」

親友だと思っていた彼女に裏切られたという事実が、今頃になって突き刺さってきた。だけど今は感傷に浸っている場合ではない。どう立ち回るか考えないといけないわ。

「まあ、終わったことは良い。お前の勉強にもなっただろう。だが後始末は自分でつけなさい。公爵家の者としても、聖女としてもだ」

「分かっております。今回の件は、私がすべて責任を負います。婚約のことも、ミシェルのことも自分で解決しますわ」

そしてユーゴとミシェルには、相応の罰を受けてもらうつもりよ。

「好きにしろ。上手くいけば家名も上がるだろう。万が一、お前が追放されるようなことになれば……その時は覚悟しなさい」

「はい、肝に銘じます」

公爵家の名に傷をつけることになれば、追放だけでは済みそうにないわね。私は長生きしたいわ……何とかしましょう。

まず、私が偽聖女の片棒を担いでいたことを伏せなければ。そして公爵令嬢として、聖女として、名誉を傷つけられたことを謝罪してもらいましょう。
そうすれば家名も上がり、国での発言権も高まるわ。きっとお父様の機嫌も多少がは良くなるでしょう。



なんにせよ、向こうからの連絡を待たないといけませんね。今日はもう休もうかしら。

自室に向かう途中で、お母様に声をかけられた。

「フローラ、ミシェルちゃんが何故裏切ったか心当たりはあるの?」

「お母様。それが……あまりよく分からないの」

「ミシェルちゃんと連絡が取れなくなったのはいつ頃なの?その前の様子はどうだったの?思い出してみなさい。今後同じ轍を踏まないためにも、理由はきちんと調べておきなさいね」

「そうですね……」

ミシェルのしたことは許せないけれど、理由は調べた方が良さそうね。

昔は裏切るような子じゃなかったもの。
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