聖女を騙った罪で追放されそうなので、聖女の真の力を教えて差し上げます

香木陽灯

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1.偽聖女への断罪

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私の首筋には聖女の証である薔薇の痣がある。

だけどそれを知っているのは、家族と親友のミシェルだけ。

彼女がどうしても聖女になりたいと言うから。

「フローラ、あなたは聖女になれて嬉しくないの?私は聖女になりたくてたまらないのに!ずるいわフローラばっかり……」

「じゃあミシェルが私の代わりに聖女になる?」

「いいの?私、聖女になりたい!」

親友のミシェルのためなら聖女の力を使うことも、それを隠すことも全く苦じゃなかったの。あなたが喜んでくれるだけで、私は嬉しかったのだから。



でも私と第一王子の婚約が決まってからしばらくすると、ミシェルとは連絡が取れなくなってしまった。

ミシェル、大丈夫かしら?私が力を使わないと、彼女は聖女として振る舞えないのに……

人々にバレてしまわないように、何とかしないと!



なんて……最初は本当に心配していたのよ?

だから驚いたわ。私と王子の婚約発表の場に、あなたがいたことに。

あんな形で再会することになるなんて……

――――――――――



「フローラ・クレマン!聖女の名を騙った罪で、貴様を国外追放に処す。いくら貴様が僕の婚約者だったからと言って、許すわけにはいかない。我が国の聖女は、ミシェルただ一人だ」

第一王子のユーゴが宮殿の広間で高らかに宣言する。

今日は私とユーゴの婚約を祝うパーティーだったはず。それなのに、なぜこのような仕打ちを受けているのかしら。

婚約者だった、ということは婚約は破棄されたのでしょう。

ユーゴの隣にはミシェルが立っており、私の方を見て微笑んでいる。まるで聖女のように。



そうか、私はミシェルに裏切られていたのね。それに気づかず、彼女の心配をしていた自分が情けないわ。

「お言葉ですが、私は聖女であると偽りを申したことはございません。誰がそのようなことを」

「ミシェルに自分が聖女だと詰め寄ったそうじゃないか!彼女は十年にも渡ってこの国を護ってくれているのだぞ。誰がそんな嘘を信じるか」

そうね。十年間、私はミシェルの引き立て役をしてきたの。私は陰で聖女の力を使い、彼女が聖女であるかのように演出してきたのよ。

大好きなミシェルが、私の代わりに聖女になりたいと言ったから。

でも、もう大好きだったミシェルはいないみたい。彼女は変わってしまった。



「ユーゴ様、フローラがこのような嘘をついたのは大変残念です。皆が混乱する前に、私が証明しましょう。誰が聖女なのかを!」

ミシェル何を言っているの……?

私が唖然としている間に、彼女は天に向かって祈り出した。その瞬間、広間は温かい光に包まれてた。その光景に、周囲の人々は祈りの光だと喜んでいる。

ただ光を出すだけで崇められるなんて、お手軽な聖女ね。

でもミシェルは聖女の力は勿論のこと、魔法すらも一切使えなかったはず。どうやって光を出したのかしら……。辺りを見渡すと主席神官がひそかに魔法を発動しているのが見えた。

なるほどね、主席神官まで味方につけているとはね。



ここまでするなんて、本気で私を追放したいのね……でしたら私も本気を出しましょう。
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