14 / 27
ファースト・シーズン
3/1(日)…デイ・タイム
しおりを挟むだぁれだよぉ、お前! とか言いたくなった。
そんなセリフ、俺が言ったのか。
顔から火が出そうだ、朝っぱらから。
「学校行きたくねぇ」
まさかの理由で登校拒否したくなると思わなかった。
学校に行きたくないのは、あいつとした会話のこともそうだけど。
「…………はあぁぁーーーーー」
俺がやった行動が、俺的に大問題。
でも作家的にはナイスだったらしい。
しかも、あやうく車の中で18禁に突入するきっかけを起こされかかってたっていう……。
恋してんだろうなと神田に囁いた時、そのまま耳の後ろにわざとリップ音をたてながらキスをしてた俺。
「うあああああああ」
恥ずかしい!
そんなこと、絶対しない! お・れ・な・ら!
夢を見るように、自分がしたことを、作家曰く脳内再生でエンドリピってやつで知らされた。
その内容の中で、作家が俺がやめてくれ! って思うような展開を途中まで書いたりもして、何度か車内で時間の巻き戻しみたいな感覚があった。
自分が女を口説くところを、後々自分で鑑賞するハメになるって、どういう事態だよ。
俺の行動と発言のどこからどこまで、俺は干渉できるのか…いまだつかめていない。
どうにかして、最悪の事態は免れたい。
「この場合の最悪って、どこまでのことだろうな」
最近ため息ばっかりだ。
昨日のやり直しめいたことがなきゃ、彼女の耳裏にキスをした後、そのまま助手席を倒して。
「最後までとはいかずとも、服の上からあいつの……」
自分が意識していないところで触れて、書き直して、違う展開にして。
ってやったはずなのに、この手のひらに残っている気がして朝から頭の中がふしだらだ。
胸だけだったとはいえ、あいつの体に触れた。
展開が変わったはずなのに、あいつの口からもれた…女のアノ声。
どこか照れが混じった、決して普段聞くことがないはずの声。声っていうか、吐息?
それが耳について、離れない。
「……………………デカかったな」
手のひらに収まらなかった。
手のひらにも、その感触が残ってる。
「あぁ、もう」
もてあます歯がゆさに、頭を抱える。
たとえきっかけがどこぞの作者がよこした恋なんだとしても、俺があいつに対して好意を持っていることを消したいと思えない。
俺自身、もう…。
「好きになってんだろ」
最近増えたため息の理由は、あいつ一択。
それを不快に感じていない。
学校で自分がやらなきゃいけないことを順番に片していったとしても、サブリミナルみたいにあいつの顔や声や言葉が俺の中に必ず存在しつつある。
忘れないでと言われているような、自分に気づいてほしがっているような。
ノイズっぽい感覚もある。
今自分が置かれている状態が小説の中ってわかっていなきゃ、自分の中で何が起きているのかわからなくて、混乱してどう動いていいのかわからなくなっていただろう。
誰かに相談したかもしれない。
同期の保険医に聞いたかもしれないな。
俺の体がなんか変とか口走った可能性がある。
それをきっと笑われて終わっていたかも。
「そういや」
俺以外にも、この世界が二次小説って言われている場所だって知ってるのかな。
知ってて、自分が望む方にどうにかしようとするんだろうか。
とはいえ、異常なことではあるから、聞きまわるわけにもいかない。
「……それは、さておき」
やっぱり学校に行きたくない。
「会ったら、どんな顔してりゃいいんだ」
なんてボヤきつつ、タバコに手を伸ばした時だ。
「う…あっ」
目の前の景色が歪んだ。
見覚えのある景色。
(またかよ)
抗えなかった、今回も。
「先生ぇー、おはよ」
俺は学校の門のそばに立っていて。
「センセ、寝不足? 俺らより歳なんだから、無理すんなよ?」
「それな!」
「あっはははは」
見慣れたバスケ部のやつらに、からかわれていた。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
『星屑の狭間で』(対話・交流・対戦編)
トーマス・ライカー
SF
国際総合商社サラリーマンのアドル・エルクは、ゲーム大会『サバイバル・スペースバトルシップ』の一部として、ネット配信メディア・カンパニー『トゥーウェイ・データ・ネット・ストリーム・ステーション』社が、配信リアル・ライヴ・バラエティー・ショウ『サバイバル・スペースバトルシップ・キャプテン・アンド・クルー』に於ける、軽巡宙艦艦長役としての出演者募集に応募して、凄まじい倍率を突破して当選した。
艦長役としての出演者男女20名のひとりとして選ばれた彼はそれ以降、様々な艦長と出会い、知り合い、対話し交流もしながら、時として戦う事にもなっていく。
本作では、アドル・エルク氏を含む様々な艦長がどのように出会い、知り合い、対話し交流もしながら、時として戦い合いもしながら、その関係と関係性がどのように変遷していくのかを追って描く、スピンオフ・オムニバス・シリーズです。
『特別解説…1…』
この物語は三人称一元視点で綴られます。一元視点は主人公アドル・エルクのものであるが、主人公のいない場面に於いては、それぞれの場面に登場する人物の視点に遷移します。
まず主人公アドル・エルクは一般人のサラリーマンであるが、本人も自覚しない優れた先見性・強い洞察力・強い先読みの力・素晴らしい集中力・暖かい包容力を持ち、それによって確信した事案に於ける行動は早く・速く、的確で適切です。本人にも聴こえているあだ名は『先読みのアドル・エルク』
追記
以下に列挙しますものらの基本原則動作原理に付きましては『ゲーム内一般技術基本原則動作原理設定』と言う事で、ブラックボックスとさせて頂きます。
ご了承下さい。
インパルス・パワードライブ
パッシブセンサー
アクティブセンサー
光学迷彩
アンチ・センサージェル
ミラージュ・コロイド
ディフレクター・シールド
フォース・フィールド
では、これより物語が始まります。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
マスターブルー~完全版~
しんたろう
SF
この作品はエースコンバットシリーズをベースに作った作品です。
お試し小説投稿で人気のあった作品のリメイク版です。
ウスティオ内戦を時代背景に弟はジャーナリストと教育者として、
兄は軍人として、政府軍で父を墜とした黄色の13を追う兄。そしてウスティオ
の内戦を機にウスティオの独立とベルカ侵攻軍とジャーナリストとして、
反政府軍として戦う事を誓う弟。内戦により国境を分けた兄弟の生き方と
空の戦闘機乗り達の人間模様を描く。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

シーフードミックス
黒はんぺん
SF
ある日あたしはロブスターそっくりの宇宙人と出会いました。出会ったその日にハンバーガーショップで話し込んでしまいました。
以前からあたしに憑依する何者かがいたけれど、それは宇宙人さんとは無関係らしい。でも、その何者かさんはあたしに警告するために、とうとうあたしの内宇宙に乗り込んできたの。
ちょっとびっくりだけど、あたしの内宇宙には天の川銀河やアンドロメダ銀河があります。よかったら見物してってね。
内なる宇宙にもあたしの住むご町内にも、未知の生命体があふれてる。遭遇の日々ですね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる