【『星屑の狭間で』『パラレル2』(アドル・エルク独身編)】

トーマス・ライカー

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ファースト・シーズン

ランデブー・コース

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 ブリッジに出て自分のシートに深く座った私は、脚を組んで組んだ両手を腿上に置く。

「補給艦に対してのインターセプト・コースに入ります。補給艦は速度0.9、こちらはファースト・スピードです。距離は第5戦闘距離の48倍、航路トレース開始。最終ランデブー・アプローチに入るまで67分」

 エマ・ラトナーが操舵席のパネルの上で指を走らせながら報告する。

「艦長、長距離パッシブ・スイープレンジに反応ありません」

「うん、まあ堂々とパワーサインを観せる訳もない…基本的に補給艦はみだりにコースを変えないから、6時間くらい毎に航路のトレースが出来れば、後は離れていても好いんだろう。おそらく第5戦闘距離の60倍から70倍の辺りで追尾して来ている筈だ。まだ時間は掛かる。補給ポイントを選べるのは、こちらの地の利だな。コンピューター、ランデブー・ポイントを中心に半径第5戦闘距離の70倍迄の宙域のチャートをブリッジ中央部領域に3D投影!  」

1.5秒でチャートが投影される。

「ミスタンテ機関部長、A3探査機の用意を頼む。5機ね?  」

「既に用意は完了しています」

「ありがとう、さすがだね」

「いいえ…」

「停止した補給艦との距離が第2戦闘距離を割り込んだら、探査機放出だ」

「了解」

「うん…今、シャトルに出て貰っても好かったな。もう遅いが…」

 そう言って立ち上がると、ブリッジ隅のディスペンサーにコーヒーを出させて、また座る。

「コンビューター、ランデブー予定ポイントを中心にして、半径第5戦闘距離の2倍までの宙域を拡大投影!  そしてその範囲内で軽巡宙艦を隠せる大型岩塊をピックアップ!  」

 範囲内にある16個の大型岩塊の表示色が赤く変わる。

「その中で半径第4戦闘距離内の物は除外!  」

6個の岩塊の色が元に戻る。

「10個か…最大で10隻…まあ大丈夫だろう…連携の執りやすい位置関係にあるのは、あの中でも半数ぐらいだ。どうとでもなる。先ずは眼を晦まして無傷で脱出する事だ…カリーナ、今表示している10個の岩塊に対して、赤外線と磁気の観測体制を設定してくれ」

「了解…設定完了」

「補給艦との間にデータリンクを確立」

「確立完了」

「直接の通信は両艦ともに停止した後になるだろうがね…」

 その後は双方ともゆっくりと徐々に減速して距離を詰めていく。

 追尾艦はパワーサインを観せない。まあ、当然だが…。

「追尾艦はどうやって接近するつもりでしょう?  」

と、シエナ・ミュラー。

「アポジモーターでゆっくりと接近するつもりだろう。補給艦の位置は判るからね」

「補給艦の速度0.6、こちらは0.8。距離は第5戦闘距離の22倍。最終ランデブー・アプローチに入るまで、37分」

「A3探査機5機にそれぞれプログラムを施して放出用意」

「了解…」

それから20分後…。

「艦長!  補給艦が制動逆噴射開始!  停止する模様…ランデブー・ポイントが確定します!  」

「同時に絶対戦闘禁止領域も確定する。減速0.5へ。最終ランデブー・アプローチに入る!  」

「了解…」

それから5分後…。

「補給艦との距離、1200m。到達まで7分です」

「よし、減速0.2へ。探査機を1機ずつ放出して即時に起動」

「了解、放出開始します」

「艦長、補給艦より平文テキストで通知です。操舵プログラムのオート・ナビゲーション・アレイをこちらのナビゲーション・アレイと同期し、以降操舵パネルに手を触れないようにと…」

「了解したと返信してくれ。メイン・パイロットは要請通りに…」

「了解…同期完了…」

「探査機放出完了。それぞれ起動して航行開始。光学迷彩はレベル3です」

「了解、ご苦労さん。後はシステムと、向こうに任せる」

それから更に5分後…。

「補給艦との距離、300mです」

「エンジン停止。制動逆噴射。ランデブー・ポイントへ最終アプローチ。アボジモーターで姿勢制御しつつ停止してくれ」

「了解」

 そして3分後、『ディファイアント』は補給艦の左舷20mで停止した。

「『ディファイアント』停止しました。速度0」

「ファイン・タッチだ。エマ! よくやってくれた。ご苦労さん! 」

「ありがとうございます」

「艦長、補給艦から艦長に呼び掛けています。映像通信です」

「名指しでか? 回線を同期してメイン・ビューワへ」

 メイン・ビューワが点灯して、艶やかな黒髪をボブカットにした、30台前半に観える長身の女性が、シートにゆったりと座っている姿が映し出される。

「ハロー『ディファイアント』。こちらは補給艦37N89D16。艦長のアンナ・ストリンスキーです。アドル・エルク艦長はどちらですか? 」

私は立ち上がって、4歩進み出た。

「私が艦長のアドル・エルクです。ストリンスキー艦長。今回は要請に応えて頂きまして、感謝します」

「職務ですので、謝辞は必要ありません。アドル艦長。先ずは伺いたいのですが、先程に貴艦から放出されたのは何でしょうか? 」

「探査機を5機放出し、5つの方位へと送り出しました。周辺の状況を精査して、安全を確認する為です」

「探査行為であって、戦闘に準ずる行為ではないと言う事でしょうか? 」

「仰られる通りです」

「分かりました。ではその探査機の画像、種別、名称、カタログデータとコンセプトデータをこちらに送信して下さい」

「分かりました。直ぐに送信します」

「次に、そちらの補給支援部長の方をご紹介下さい」

「分かりました」

 そう言って、マレットを左手で呼び寄せる。

「紹介しましょう。彼女が本艦のマレット・フェントン補給支援部長です」

「宜しく。フェントン部長。そちらから送信された、補給品目録に変更はありませんか? 」

「ありません」

「了解しました。では、こちらから『ディファイアント』を操艦してドッキングします。そちらはくれぐれもシステムに手を触れないように」

「了解致しました。総てお任せしますので、宜しくお願いします」

「ではまた」

そう応じただけで、回線は閉じられた。

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