【『星屑の狭間で』『パラレル2』(アドル・エルク独身編)】

トーマス・ライカー

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ファースト・シーズン

乱戦

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「行動開始15秒前! 」

「副長、全乗員に通達。第2敵艦からも継戦能力を奪って離脱できたら、総員に3時間の休暇だ」

「了解しました。ありがとうございます」(嬉しそう)

「流石ですね、アドル艦長」

 と、ハンナ・ウェアー。

「惚れ直したか? カウンセラー? 」と、左流し目でウインクして見せる。

「調子に乗り過ぎです! 」

 と、プイっと向うを向き加減だったが、頬は桜色に染めている。

「行動開始5秒前、3、2、アンカー離脱、回収します」と、エマ・ラトナー。

「リア放出ミサイル起爆! フロント・ミサイル斉射! 次弾装填! 」と、アリシア・シャニーン。

「エンジン始動。臨界パワー150%、噴射出力130%、バランス正常」

 と、リーア・ミスタンテ機関部長。

「両舷全速発進! アフターバーナー全開! ハイパー・ダッシュ! 」

 と、エマ・ラトナー。

「第1戦闘距離まで20秒! 周辺にストレンジャー無し! 」

 と、カリーナ・ソリンスキー。

「主砲1番から4番、斉射10連セット完了。第2敵艦の右舷に照準セット。狙点固定。砲撃臨界パワー130%。発射出力120%」

 と、エドナ・ラティス砲術長。

「第1戦闘距離に5秒前! フロント放出ミサイル起爆! フロント・ミサイル第2波斉射! 第3波装填! 」

「主砲連続斉射開始!! 」

「フロント・ミサイル第1波、着弾まで5秒。3、2、当たります! 」

 第2敵艦の右舷に主砲の第2斉射が命中するのとほぼ同時に、第1波ミサイル8本も命中したが、第3斉射は展開されたシールドに阻止された。

「そのまま最接近して砲撃続行! 連続斉射終了後は連射砲撃に切り換えてシールドを突破する! フロント・ミサイル第3波斉射!! 」

「フロント・ミサイル第2波、着弾まで10秒、第3波は20秒後! 」

「敵艦をアクティブ・スキャン。損傷率10%。シールドパワー93%…88%…83%…78%…」

 フロント・ミサイルの第2波が着弾する。

「シールドパワー68%…主砲連続斉射終了。ミサイル第3波着弾まで10秒! 」

「主砲集中最大出力連射に切り換え! ミサイル第4波は待機! ハイパー・ヴァリアント、発射用意! 敵艦のシールドが消失したら発射! 」

「了解! 発射準備開始! 」

「ミサイル着弾まで4、3、2、1、着弾! 」

 フロント・ミサイル第3波が命中したが、まだシールドは保持している。

 ビーム砲による攻撃は1番副砲と5番主砲まで含めて、全力連射で撃ち込み続けている。

「敵艦、シールドパワー56%、51%、46%、…敵艦が取舵を切って加速中! 」

「逃がすな! もっと肉迫して撃ち込み続けろ! ダウンロードも頼む」

「了解! 」

「ハイパー・ヴァリアントは敵艦の損傷部分に照準。出来れば貫通させる! 」

「了解! 」

「30%、艦長! 第1敵艦が接近中! 方位261マーク47、第1戦闘距離まで45秒。こちらの攻撃の余波で、発見が遅れました! 」

「な…に?! 砲撃、更に集中せよ! 長距離ミサイル1番、2番、第1敵艦に照準の上、発射! 右舷後方、ダウンピッチ7°くらいか? 第1敵艦の艦名は? 」

「『ドムス・アウレア』です! 」

「以降、『ドムス・アウレア』と呼称する! 状況報告! 」

「18%…13%…8%…第2敵艦、シールド消失! 」

「ハイパー・ヴァリアント、撃て!! 」

「発射!! 」

 再び赤熱固体弾が超高速で撃ち出される。弾体は第2敵艦、左舷後方に命中して突入し、艦体中で破壊的に跳ね回ったようだったが、貫通はしなかった。

「あと20秒だけ砲撃を集中して停止! エマ! その後直ちに第2敵艦を近接で左回りに回り込み、『ドムス』の鼻先に出ろ! エドナ! 出たら『ドムス』の艦首に砲撃集中! 長距離ミサイルは?! 」

「『ドムス・アウレア』からの迎撃ミサイルに撃破されました! 」

「ふん、結構落ち着いているようだな。それにしても損傷率38%でまだやるのか? 戦果を挙げないと留年にでもなるのかな? 」

「20秒、砲撃停止! 」

「よし! リア・ミサイル8本全弾に『ドムス』のパワーサインを入力して放出! エマ! ダッシュだ! 回り込め! 」

「了解! 」

 ディファイアントがダッシュで第2敵艦に接近し、ギリギリの操艦で艦首左舷から面舵を切って回り込む。元居たポイントには、放出された8本の対艦ミサイルがゆっくりと拡散していく。

「転回終了まで7秒! 」

「放出ミサイル起動! 『ドムス』に向かわせろ! 転回終了と同時に、主砲斉射4連! 」

「了解! 」

「第2敵艦の艦名は? 」

「『アパーム・ナパート』です! 」

「以降、第2敵艦を『アパーム・ナパート』と呼称する。主砲集中全力斉射4連開始! 」

『アパーム・ナパート』を艦首左舷から超近接左回りで半周した『ディファイアント』は、同艦の右舷艦尾から姿を顕すと素早く面舵を切って『ドムス・アウレア』に艦首を向け、主砲の4連斉射を開始した。

『ドムス・アウレア』は先に接近中の対艦ミサイル8本に対して主砲で迎撃していたので、『ディファイアント』の砲撃は真面に食らった。

 1斉射、2斉射と艦首に突き刺さって小爆発を引き起こし、3斉射は艦首右舷に突き刺さる。取り舵を切っている。

 4斉射は右舷の主砲4番砲塔を破壊した。

「こちらのミサイルは半数が命中。『ドムス・アウレア』は取り舵を切って回避運動中。シールドは張れないようです」

「両艦の損傷率を観てくれ? 」

「『ドムス・アウレア』の損傷率は46%。航行はできるようです。『アパーム・ナパート』の損傷率は、45%。両艦とも、エンジン出力は低下しています」

「俺ならヴァリアントを撃ち込まれたら、すっ飛んで逃げるけどな。両艦に向け通常平文発信で通告してくれ。これ以上やり合うなら撃沈させる。離脱するなら追撃はしない…と」

「アドル艦長! 見逃すんですか?! 」

「これ以上撃つなら弱い者虐めになると思うんだが、やりたいのかね? エドナ砲術長? 」

「それは…」

「エンジンのパワーサインを検知できるのは第5戦闘距離の56倍までだが、砲撃やミサイルによる爆発余波は100倍でも検知できる。今頃は多分、また2隻ぐらいが接近中のはずだ。ちょっともうこれ以上の面倒事は勘弁して欲しいし、対艦ミサイルの残弾本数も気になるんで、ここで止めて離脱する。両艦からの返答は? 」

「ありませんが、攻撃兵装の出力は低下しています」

「よし! エマ・ラトナーメインパイロット! 取舵40°、アップピッチ10°で発進! 第1戦速2分でエンジン停止! 」

「了解! 」

「対艦ミサイルの残弾本数を確認してくれ。結構使ったはずだ」

「今回の戦闘で63本を消費しました。残弾本数、37本です」

 補給支援部長のマレット・フェントンが報告する。

「やはり、かなり使ったな。この残弾数でこれ以上の戦闘は厳しいだろう。司令部メンバーに改めて言う。戦闘を行い、相手艦に38%の損傷を与えた場合には基本的にそれ以上叩くような真似はしない。また、本艦が20%の損傷を被った場合には直ちに離脱する。戦闘に於ける本艦の司令部方針として、頭に入れて置いてくれ? 」

「了解しました」

「『アパーム・ナパート』は、何処から出ている艦だ? 」

「『ゴールドスミス・エアロ・ダイナミクス』社の、今年度の新入社員です。司令部スタッフは課長達で、艦長は人事部長です」

シエナ・ミュラー副長が報告した。

「『ゴールドスミス・エアロ・ダイナミクス』社と言えば、軍需産業の大手だな。最大手と言う訳じゃないが…どうやら癖の強い艦が、多数参加しているようだな…ともあれ補給を受けたい処だが、初出航からの2日間は入港できないのが規定だ…副長、運営推進本部に対して補給艦の派遣を要請してくれ」

「分かりました。直ぐに連絡します」

「パイロット! セカンド・スピードまで加速して、1分でエンジン停止! ダウンピッチ5°だ! 」

「了解! 」

「両艦の様子は? 」

「両艦ともエンジン出力は低下していますが、それぞれの方位に転進して離脱中です。スピードもあまり上がらないようですが」

「うん、まあ好いだろう。取り敢えず、初戦闘を無傷で切り抜けた。外に向けて吹聴も誇るような真似もしないが…コンピューター! 艦内オール・コネクト・コミュニケーション! 」

【コネクト】

「ブリッジより全乗員へ、こちらは艦長だ。初戦闘は本艦の勝利で終結した。全員の協力と健闘に感謝すると共にその労を労いたい。ご苦労様。よってこれより3時間の特別休暇に入る。全員、自由に過ごして欲しい。だが警戒警報が鳴ったら、配置に就いてくれ。以上だ…」

「光学迷彩をワンレベルアップ! その後はエンジン停止して、オートコントロールモードへ。それじゃあ、休暇を楽しんでくれ。以上だ」

「艦長! たった今運営推進本部から全参加艦への通達と、本艦への個別通達を受信しました」

「読んでくれ」

「はい。先ず今回の遭遇戦は、全参加艦強制参加でのファースト・チャレンジミッションであった。チャレンジミッションの原則である事前発表をしなかったのは、警戒体制に入られてしまうと遭遇戦と言うシチュエーションに成り得なくなる為で、事後での発表・報告・了承となってしまった点については、深く謝罪するものである。また、これはチャレンジミッションであるので例えどのような結果となろうとも、撃沈と言う次第にはならない旨を発表し、約束させて頂くものである。今回のチャレンジミッションに於ける各艦への判定・評価・報酬については、各艦への個別通達に於いて確認されたい。以上」

「個別通達も読んでくれ? 」

「はい。『ディファイアント』への判定、『ミッション・クリア』。評価、2隻を相手に対艦戦を行い、1時的ながら2隻とも無力化し自艦は無傷で離脱した。報酬、ミッションクリア賞金・800万。ミッションクリア経験値・80%。戦果相当付与経験値・40%。補給については、追って連絡する。以上」

カリーナ・ソリンスキーの報告が終わる。

「最初からチャレンジミッションだったとはね。如何に先読みのアドル・エルクでも、これは読めなかったな。800万に、120%か。休暇明けにメインスタッフは艦長控室に集合だ。その時に割り振りを決めよう。私の1存では決めかねる。皆、休んでくれ。私も個室で一服するよ。休暇が明けたら昼飯時だな。昼飯を食ってから、単艦での訓練プログラムに入ろう」

そう言って、私も立ち上がった。
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