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地上界にて…2…
3月10日(火)…2…
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…サイン・バード氏の独白…
「…貴方は観られている……政府が導入した極秘の盗聴・盗撮・分析システム『マシーン』に拠って…いつ何時となく、監視されているのだ……開発したのはこの私だ……目的はテロを未然に防ぐため……だがこのシステムはテロと関係の無い、一般の凶悪犯罪計画をも感知する……政府に執っては無用の犯罪計画だ……しかし私に無用な犯罪計画など無い……私は『マシーン』をクローズドシステムとして構築し、密かにバックドアを設定した状態で政府に引き渡した……だからこの私ですら『マシーン』のメインフレームにはアクセス出来ない……だがバックドアを通じてこの私にだけ、その犯罪計画に関わる可能性の高い個人の社会保証番号が表示される……この時点でその人物が、加害者になるのか被害者になるのかは判らない……だから、私にはチームが必要だった……共にその犯罪を防止する為に動けるプロ集団が……表示されたターゲットは必ず見付け出し……犯罪は起きる前に、それを阻止する……『運営推進委員会』が『マシーン』の大凡を解析し、ふたつ目の超A I 『サマリタン』を構築して本部の中枢に据えた事は、私も感知した……その目的は今の処判らないが、将来的に対抗する必要性が浮上する可能性を考慮して、みっつ目の超A I 『ブレイン』は、私が開発した『サッチェル暗号コード』で、私にだけアクセスできるオープン・システムとして構築した……その『ブレイン』が暫く前に表示したのが、アドル・エルク氏だ……彼がどのような犯罪計画にどのように関わるのかもまだ判らないが、彼とその関係者を注意深く観察していけば…いずれ浮上して来るだろう……」
朝食は豪華に持て成されたものだから少々食べ過ぎた……10時から10分間の休み時間を挿んで、パワー・モードでデスクワークをこなしていたが…遺憾ながら空腹にはまだ遠い……にも拘らず、スペシャル・ランチ・バスケット・クーポン・チケットを使ってしまっている……これは何人か呼び寄せて、食って貰うしかない……んで、リサ・ミルズ女史を通じてドリス・ワーナー主任に声を掛けて貰い、スコット・グラハム君を通じてヨエル・ハンソン君とペイトン・クライン君にも声を掛けて貰った。
10階のホール・ディレクター、アラミス・イェルチェンさんとフロア・マネージャーのサリー・ランド女史には私から連絡を入れて……マーリー嬢にはアンバーさんに連絡して貰った……これでズライと俺を含めれば、11人……まあ、何とかなるだろう……少し前にラウンジに通話で大テーブルを予約してから、皆で降りた。
皆で顔を見合わせながらの昼飯ってのも好いものだ……自然と笑顔になる。
「…やあ、ドリス主任…急にお誘いしてしまってすみませんでした…」
「…とんでもありません…お誘い下さって、ありがとうございます…嬉しかったですし、光栄にも思いました…」
「…そんな、ドリスさん…只の昼食会ですから…大層な事じゃありません…それに私も大層な者じゃありません…優秀なのは『ディファイアント』のスタッフ・クルー達です…私なんぞは、ただ踏ん反り返って座ってるだけですから…」
そう言う間にヨエルとペイトンが、特大のランチ・バスケットをテーブルの中央に置く……スコットがミルクと野菜ジュースのピッチャーを置き、リサとマーリーが取り皿・トング・グラスを置いて並べる……アンバーさんがコーヒーポットとジンジャーエールのピッチャーを置いて……ズライがソーサーにカップとスプーンを置いて並べた……その間にスコットはカウンターまで戻り、様々な小物を貰って来た。
「…アドルさん、営業本部での壮行会以来ですね…今日は声を掛けて下さって、ありがとうございます…アドル・エルク艦長と昼食をご一緒出来るなんて光栄ですよ……」
「…私も呼んで下さって、ありがとうございます…壮行会の時にはお手伝いが出来て嬉しかったですし、記者会見の後で頂いたサインは大切にしています…」
「…アラミスさんもサリーさんも暫くでしたね……そんなに畏まらないで好いですから、気楽に食べて下さい……おふたりにはお世話になりましたから、お礼の意味もあります……コラントーニ料理長渾身の作ですから、沢山食べて下さい……配信などご覧になって、如何でしたか? 」
「…あの…簡単な言葉でしか表現できませんが…面白かったですし、感動しましたし…興奮もしました…これからも楽しみな番組ですね……」
「…ありがとうございます、アラミスさん……実際のゲーム進行に配信での紹介が追い付いていないので、多分近々何某かの発表があるでしょう……これからも応援を宜しくお願いしますね……じゃあ、皆さんで頂きましょう……」
そう言って、座ったままミルクのグラスを掲げる。
「頂きます! 」
「…頂きます! 」
「…11人だからな…サンドイッチ5個は行き渡るな…足りないようだったら、何でも頼んでくれ…奢るよ…」
「…噂のアドルさん専用、スペシャル・ランチ・バスケット…初めてご相伴に与かりますが……ひとつ目から本当に美味しいですね……期待以上に、衝撃的です……アドルさん…私は貴方があんなに綺麗な人達とゲームに参加していて…誘惑されないかと心配です……」
「……誘惑ですか、サリーさん? そんな事…したり、受けたりしてるような余裕は無いですよ…特にセカンド・ゲームの乱戦……聞いてるでしょ? 」
「…いやあ…いつもながら先輩の太っ腹と言うか、気前の良さには感心してますし…感謝もしてますよ…今回もご馳走様です……特にこのスペシャル・ランチ・バスケットのサンドイッチは、本当に美味しいですからね…でも…5個じゃちょっと足りないから、サイドメニューでひとつ頼みます……好いですよね? 先輩? 」
「…そりゃ、好いけどさ…お前、今朝もあんなに食べてたのに、よく食えるな……」
「…若いスからね…」
「…太るなよ? エドナはその辺、厳しくないのか? 」
「…僕は基礎代謝率が高いですからね…大丈夫っスよ…平熱も36.8°ですから…」
「…『クライトン』は、損傷率いくつで終わったんだ? 」
「…38%で終わりました…」
「…結構…撃ち込まれたな……」
「…パイロットがまだまだヘボなもんで、申し訳なかったです…」
「…いや、そんな事はないさ……あれ程の多勢に無勢で…あれ程の大乱戦も無いだろうからね……今考えれば、大質量誘導弾の制御を…もっとドラスティックにやれば良かったとも思うよ……」
「…アドルさん、次のライヴ配信では…どこまで紹介されると思いますか? 」
「…う~ん…サリーさん、それは僕も知りたいね……でもまあ…ファースト・ゲームのセカンド・ステージから始まって…上手くすれば、親睦パーティーまで入れるかな? で…これまでのライヴ配信は皆、観てるの? 」
「…録画での視聴も含めて良いのなら、本社の社員は全員が観ています…間違いありません…」
リサ・ミルズが直ぐに応えた…当然だろうと言った感じだ。
「…まあ…やっぱり…そうなんだろうね……何か…感想とかある? でもまだ始まったばかりで…見処もないだろうけど…」
「…シークレット・チャンネルの事は、バレちゃいましたね…先輩…」
「…そりゃまあ、しょうがないさ。撮られてるんだから…カメラの無い『ロイヤル・ロード・クライトン』が羨ましいよ…」
「…アドルさん…『リアン・ビッシュ』と『ミーアス・クロス』の楽曲を、折に付けて流されていたのは好かったですわね…当人達も感動していたようですし…」
「…ありがとうございます、ドリスさん…ドリスさんに褒められると…嬉しいですが、気恥ずかしいですね…」
「…もうスタッフ・クルーの大半がアドルさんに恋愛感情を持っているんじゃありませんか? 」
ズライ・エナオが食べる手を止めて訊いた。
「…ズライ……心配してくれてありがとう…でも大丈夫だよ…確かに好意を寄せてくれているクルーはいるけど、家庭のある身だからそれには応えられないし…道を踏み外すような事はしないから…安心して? 」
「…でも魅力的な人達ばかりですから心配ですよ…」
マーリーも手を止めて後を引き取る。
「…大丈夫だよ、マーリー…彼女達は僕の要請を受けて仕事として参加している…週に2日だけの関係だし、ドライにいくさ…でなけりゃ敗ける可能性が高くなる…」
「…分かりました…すみません…」
「…好いんだよ、マーリー…処でアンバーさん…アイソレーション・タンクベッドの販売事業は、現在どうなっているのかな? 朝のトップ・ミーティング以来、具体的に関われていなかったから気になってね…ライヴ配信でも、まだタンクベッドについては紹介されてないからね…」
「…『ニュー・ヘルシー・ドリーム7』に於ける3社合同での広告・宣伝・販売・各種サービス・ケアの業務提携事業は、まだ始まったばかりで…全体を総合的に評価できる段階にも状態にもないと思います…ですが…販売数は3社合同でも我が社単独でも、着実に累積されています…今後…ライヴ配信でも紹介され、我が社制作のCMが配信されるようになれば…販売数は更に伸びるでしょう…その為に…我が社で制作するCMの重要性が、ますます増しています…」
「…さすがはアンバーさん…好い按配でプレッシャーを掛けてくれる…そう言や、サブキャストの2人は決まったのかな? 」
「…私は聞いていませんが、もう決まっている筈でしょうから…宣伝部の人に訊けば判ると思います…訊いてみましょう…」
「…いや、僕が副長に訊きますからいいですよ…多分…ローナ・ハートナーとアーシア・アルジャント…じゃないかな? 」
「…アドルさんは、自宅にタンクベッドを置かれているんですか? 」
ヨエル・ハンソンが訊いた。興味がありそうだ。
「…うん…自宅にふたつと社宅にひとつと、艦内の個室にもね…支払いが大変だよ(笑)…この中で設置している人は? 」
「…古いタイプの物ですが、あります…」
野菜ジュースを飲んで、ドリス主任が手を挙げる。
「…中で3時間も眠れば、もう充分ですよね? 」
「…全くその通りですわね…」
「…そうだ! タンクベッドを使用する上での『あるある』を教えて頂けませんか? CM制作に役立てたいですので…」
アンバーさんがミルクのグラスを置いて言う。その目が興味でキラキラしている。
ドリス主任と顔を見合わせて、ちょっとおどけた表情を作ると…彼女は笑った口を左手で隠しながら、右手でお先にどうぞと促した。
「…先ず、マニュアルで推奨されてる使用法・調整とかメンテナンス方法については、従った方が好いね(笑)…あとはハッチからタラップで降りる辺りにマットを敷いて、取れる場所にタオルを掛けて置く…どうしても…エプソム・ソルト水溶液がかなりベタベタするんでね…ある程度拭ってから、シャワーで洗い流すと言った流れだね…あとは…何かありますかね? 」
「…髪の長い人は、アップに纏めてキャップを被った方が良いですわね…」
「…ああ、それは解りますね…長い髪がエプソム・ソルト水溶液を吸い込むと、洗い流すのがかなり大変ですからね…」
「…あとは…目覚めた時に慌てて立たない事ですわね…足を滑らせて転んだり打つけたり…ハッチに頭を打つけたりしますから…」
「…それは本当に大事ですね…私は毎回心身に言い聞かせてから寝てます…」
「…お二方とも、貴重なご意見をありがとうございました…CM制作の参考にさせて頂きます…」
「…どう致しまして…こちらこそ、お役に立てたようでしたら…良かったです…」
「…お話は変わりますが、アドルさん…明日からの3日間…それぞれ3人の艦長様が来社されますね? 」
「…そうなんですよ…明日がアシュリー・アードランドさん…木曜日がネヘマイヤ・パーソフさん…金曜日がアリミ・バールマンさんでしてね…それぞれ…業務提携条項締結に向けて…最初の協議、と言う事になっています…できれば皆で歓迎してあげて下さい…」
「…もう先輩の仕事、ひとつひとつのインパクトがますます高くなっていって…すごいよね…売り上げも利益も業績も株価も、全部右肩上がりだから…クライトン・バブルって言う人もいるし…アドル・エルクショックって言う人もいる…」
「…バブルって言うのはマズイだろう…弾けちまったら困る…いずれにせよ…艦長に選ばれた俺が注目されて…会社も注目されるようになって…そこから総てが始まった…今のところ、俺や『ディファイアント』は比較的に好意を以って観られている…それが…様々な側面をプラスのベクトルで推進・推移させている、要因のひとつなんだろう…でもこれは…手の平がひとつ返れば、どうなるか判らない……俺としては…それはいずれ必ず起こる…前提として捉えて貰って、覚悟していて欲しいし…意識して行動して欲しいし…備えてもいて欲しい……そんなところだな…」
「…まあ…なるべくなら、出来るだけ先で…起きて欲しいスけどね…」
スコットは、食べる手を止めない。
「…私は…そんな事は起きないと思います…何故ならアドルさんは勿論…『ディファイアント』の皆さんも、素晴らしい人達ですし…ルールを守ってその範囲内でゲームに参加されるなら、起きないと思います…」
「…私もそう思います…アドルさんはとても誠実で優しく、気配りや面倒見も好い方なので…批判されたり、揚げ足を取られるような事も無いと思います…もしそのような事があっても、私が直ぐに反論します…」
「…マーリーもサリーさんもありがとう…褒められ過ぎでくすぐったくて、このサンドイッチしか出せないけどね(笑)…僕も勿論…そう捉えられるような隙を見せないように、気を付けて頑張るよ……さあ皆、どんどん食べてよ…何を追加しても良いよ…」
「…は~い! もう追加してま~す…」
そう言ってスコットが、パリパリ唐揚げサラダの皿を少し持ち上げる。
「…全く…よく食うよな…スコット…もう艦の振り廻しには慣れたか? 」
「…いやいや…まだまだですね…この前の乱戦の中で1回だけ…ファースト・スピードでのドリフト・ターンがキレイに決まったぐらいです…もっと場数を踏まないとね…」
「…そりゃまあ、『同盟』27隻全艦に言える事だな…まあ取り敢えず、グレイス艦長の指示には出来るだけ即応するようにしてくれ…先ずはそれからだな…」
「…分かりました…」
「…アドルさん、今日はギターをお持ちではないんですね? 」
「…ああ、そうなんですよ…サリーさん…今日は自宅まで迎えに来てくれた社用車で出社しましたので…でも、ウチにあるギターを持って来れば好かったですね…そこまで思い付きませんでした…すみません…」
「…じゃあ、今日はどうやって帰るんですか? 」
「…タクシーで帰るよ、ズライ…今日中には俺の車が社宅に届けられる事になってるからね…そうだ…じゃあ明日は…仕事が終わってから、ここでちょっと歌おう…」
「…それは楽しみですわ、アドルさん…是非、聴かせて頂きたいです…」
「…ありがとうございます、ドリスさん…ちょっと早目に降りて来て貰った方が好いですかね…座れるかどうか分かりませんので…」
「…ご心配なく…その場合には僕らで対処します…な? ヨエル君…ペイトン君? 」
「…当然です…」
「…お任せ下さい…」
「…分かりました…宜しくお願いします…」
その後は、様々な雑談に花を咲かせながら昼食を進めて…終えた…サンドイッチは総て行き渡って残らなかったから、それは良かった…最後のお茶を飲みながら、ゆったりと座っている。
「…午後はどうします? 先輩…」
「…そうだな…40分くらい、スーパー・モードでやってみるよ…無理はしないから…じゃあ、皆さん…今日は昼食に付き合って下さって、ありがとうございました…午後もまあ…頑張りましょう…明日はギターを持って来ます…ご馳走様でした…」
コーヒーを飲み干してそう言い、口を拭って立ち上がった。
「…貴方は観られている……政府が導入した極秘の盗聴・盗撮・分析システム『マシーン』に拠って…いつ何時となく、監視されているのだ……開発したのはこの私だ……目的はテロを未然に防ぐため……だがこのシステムはテロと関係の無い、一般の凶悪犯罪計画をも感知する……政府に執っては無用の犯罪計画だ……しかし私に無用な犯罪計画など無い……私は『マシーン』をクローズドシステムとして構築し、密かにバックドアを設定した状態で政府に引き渡した……だからこの私ですら『マシーン』のメインフレームにはアクセス出来ない……だがバックドアを通じてこの私にだけ、その犯罪計画に関わる可能性の高い個人の社会保証番号が表示される……この時点でその人物が、加害者になるのか被害者になるのかは判らない……だから、私にはチームが必要だった……共にその犯罪を防止する為に動けるプロ集団が……表示されたターゲットは必ず見付け出し……犯罪は起きる前に、それを阻止する……『運営推進委員会』が『マシーン』の大凡を解析し、ふたつ目の超A I 『サマリタン』を構築して本部の中枢に据えた事は、私も感知した……その目的は今の処判らないが、将来的に対抗する必要性が浮上する可能性を考慮して、みっつ目の超A I 『ブレイン』は、私が開発した『サッチェル暗号コード』で、私にだけアクセスできるオープン・システムとして構築した……その『ブレイン』が暫く前に表示したのが、アドル・エルク氏だ……彼がどのような犯罪計画にどのように関わるのかもまだ判らないが、彼とその関係者を注意深く観察していけば…いずれ浮上して来るだろう……」
朝食は豪華に持て成されたものだから少々食べ過ぎた……10時から10分間の休み時間を挿んで、パワー・モードでデスクワークをこなしていたが…遺憾ながら空腹にはまだ遠い……にも拘らず、スペシャル・ランチ・バスケット・クーポン・チケットを使ってしまっている……これは何人か呼び寄せて、食って貰うしかない……んで、リサ・ミルズ女史を通じてドリス・ワーナー主任に声を掛けて貰い、スコット・グラハム君を通じてヨエル・ハンソン君とペイトン・クライン君にも声を掛けて貰った。
10階のホール・ディレクター、アラミス・イェルチェンさんとフロア・マネージャーのサリー・ランド女史には私から連絡を入れて……マーリー嬢にはアンバーさんに連絡して貰った……これでズライと俺を含めれば、11人……まあ、何とかなるだろう……少し前にラウンジに通話で大テーブルを予約してから、皆で降りた。
皆で顔を見合わせながらの昼飯ってのも好いものだ……自然と笑顔になる。
「…やあ、ドリス主任…急にお誘いしてしまってすみませんでした…」
「…とんでもありません…お誘い下さって、ありがとうございます…嬉しかったですし、光栄にも思いました…」
「…そんな、ドリスさん…只の昼食会ですから…大層な事じゃありません…それに私も大層な者じゃありません…優秀なのは『ディファイアント』のスタッフ・クルー達です…私なんぞは、ただ踏ん反り返って座ってるだけですから…」
そう言う間にヨエルとペイトンが、特大のランチ・バスケットをテーブルの中央に置く……スコットがミルクと野菜ジュースのピッチャーを置き、リサとマーリーが取り皿・トング・グラスを置いて並べる……アンバーさんがコーヒーポットとジンジャーエールのピッチャーを置いて……ズライがソーサーにカップとスプーンを置いて並べた……その間にスコットはカウンターまで戻り、様々な小物を貰って来た。
「…アドルさん、営業本部での壮行会以来ですね…今日は声を掛けて下さって、ありがとうございます…アドル・エルク艦長と昼食をご一緒出来るなんて光栄ですよ……」
「…私も呼んで下さって、ありがとうございます…壮行会の時にはお手伝いが出来て嬉しかったですし、記者会見の後で頂いたサインは大切にしています…」
「…アラミスさんもサリーさんも暫くでしたね……そんなに畏まらないで好いですから、気楽に食べて下さい……おふたりにはお世話になりましたから、お礼の意味もあります……コラントーニ料理長渾身の作ですから、沢山食べて下さい……配信などご覧になって、如何でしたか? 」
「…あの…簡単な言葉でしか表現できませんが…面白かったですし、感動しましたし…興奮もしました…これからも楽しみな番組ですね……」
「…ありがとうございます、アラミスさん……実際のゲーム進行に配信での紹介が追い付いていないので、多分近々何某かの発表があるでしょう……これからも応援を宜しくお願いしますね……じゃあ、皆さんで頂きましょう……」
そう言って、座ったままミルクのグラスを掲げる。
「頂きます! 」
「…頂きます! 」
「…11人だからな…サンドイッチ5個は行き渡るな…足りないようだったら、何でも頼んでくれ…奢るよ…」
「…噂のアドルさん専用、スペシャル・ランチ・バスケット…初めてご相伴に与かりますが……ひとつ目から本当に美味しいですね……期待以上に、衝撃的です……アドルさん…私は貴方があんなに綺麗な人達とゲームに参加していて…誘惑されないかと心配です……」
「……誘惑ですか、サリーさん? そんな事…したり、受けたりしてるような余裕は無いですよ…特にセカンド・ゲームの乱戦……聞いてるでしょ? 」
「…いやあ…いつもながら先輩の太っ腹と言うか、気前の良さには感心してますし…感謝もしてますよ…今回もご馳走様です……特にこのスペシャル・ランチ・バスケットのサンドイッチは、本当に美味しいですからね…でも…5個じゃちょっと足りないから、サイドメニューでひとつ頼みます……好いですよね? 先輩? 」
「…そりゃ、好いけどさ…お前、今朝もあんなに食べてたのに、よく食えるな……」
「…若いスからね…」
「…太るなよ? エドナはその辺、厳しくないのか? 」
「…僕は基礎代謝率が高いですからね…大丈夫っスよ…平熱も36.8°ですから…」
「…『クライトン』は、損傷率いくつで終わったんだ? 」
「…38%で終わりました…」
「…結構…撃ち込まれたな……」
「…パイロットがまだまだヘボなもんで、申し訳なかったです…」
「…いや、そんな事はないさ……あれ程の多勢に無勢で…あれ程の大乱戦も無いだろうからね……今考えれば、大質量誘導弾の制御を…もっとドラスティックにやれば良かったとも思うよ……」
「…アドルさん、次のライヴ配信では…どこまで紹介されると思いますか? 」
「…う~ん…サリーさん、それは僕も知りたいね……でもまあ…ファースト・ゲームのセカンド・ステージから始まって…上手くすれば、親睦パーティーまで入れるかな? で…これまでのライヴ配信は皆、観てるの? 」
「…録画での視聴も含めて良いのなら、本社の社員は全員が観ています…間違いありません…」
リサ・ミルズが直ぐに応えた…当然だろうと言った感じだ。
「…まあ…やっぱり…そうなんだろうね……何か…感想とかある? でもまだ始まったばかりで…見処もないだろうけど…」
「…シークレット・チャンネルの事は、バレちゃいましたね…先輩…」
「…そりゃまあ、しょうがないさ。撮られてるんだから…カメラの無い『ロイヤル・ロード・クライトン』が羨ましいよ…」
「…アドルさん…『リアン・ビッシュ』と『ミーアス・クロス』の楽曲を、折に付けて流されていたのは好かったですわね…当人達も感動していたようですし…」
「…ありがとうございます、ドリスさん…ドリスさんに褒められると…嬉しいですが、気恥ずかしいですね…」
「…もうスタッフ・クルーの大半がアドルさんに恋愛感情を持っているんじゃありませんか? 」
ズライ・エナオが食べる手を止めて訊いた。
「…ズライ……心配してくれてありがとう…でも大丈夫だよ…確かに好意を寄せてくれているクルーはいるけど、家庭のある身だからそれには応えられないし…道を踏み外すような事はしないから…安心して? 」
「…でも魅力的な人達ばかりですから心配ですよ…」
マーリーも手を止めて後を引き取る。
「…大丈夫だよ、マーリー…彼女達は僕の要請を受けて仕事として参加している…週に2日だけの関係だし、ドライにいくさ…でなけりゃ敗ける可能性が高くなる…」
「…分かりました…すみません…」
「…好いんだよ、マーリー…処でアンバーさん…アイソレーション・タンクベッドの販売事業は、現在どうなっているのかな? 朝のトップ・ミーティング以来、具体的に関われていなかったから気になってね…ライヴ配信でも、まだタンクベッドについては紹介されてないからね…」
「…『ニュー・ヘルシー・ドリーム7』に於ける3社合同での広告・宣伝・販売・各種サービス・ケアの業務提携事業は、まだ始まったばかりで…全体を総合的に評価できる段階にも状態にもないと思います…ですが…販売数は3社合同でも我が社単独でも、着実に累積されています…今後…ライヴ配信でも紹介され、我が社制作のCMが配信されるようになれば…販売数は更に伸びるでしょう…その為に…我が社で制作するCMの重要性が、ますます増しています…」
「…さすがはアンバーさん…好い按配でプレッシャーを掛けてくれる…そう言や、サブキャストの2人は決まったのかな? 」
「…私は聞いていませんが、もう決まっている筈でしょうから…宣伝部の人に訊けば判ると思います…訊いてみましょう…」
「…いや、僕が副長に訊きますからいいですよ…多分…ローナ・ハートナーとアーシア・アルジャント…じゃないかな? 」
「…アドルさんは、自宅にタンクベッドを置かれているんですか? 」
ヨエル・ハンソンが訊いた。興味がありそうだ。
「…うん…自宅にふたつと社宅にひとつと、艦内の個室にもね…支払いが大変だよ(笑)…この中で設置している人は? 」
「…古いタイプの物ですが、あります…」
野菜ジュースを飲んで、ドリス主任が手を挙げる。
「…中で3時間も眠れば、もう充分ですよね? 」
「…全くその通りですわね…」
「…そうだ! タンクベッドを使用する上での『あるある』を教えて頂けませんか? CM制作に役立てたいですので…」
アンバーさんがミルクのグラスを置いて言う。その目が興味でキラキラしている。
ドリス主任と顔を見合わせて、ちょっとおどけた表情を作ると…彼女は笑った口を左手で隠しながら、右手でお先にどうぞと促した。
「…先ず、マニュアルで推奨されてる使用法・調整とかメンテナンス方法については、従った方が好いね(笑)…あとはハッチからタラップで降りる辺りにマットを敷いて、取れる場所にタオルを掛けて置く…どうしても…エプソム・ソルト水溶液がかなりベタベタするんでね…ある程度拭ってから、シャワーで洗い流すと言った流れだね…あとは…何かありますかね? 」
「…髪の長い人は、アップに纏めてキャップを被った方が良いですわね…」
「…ああ、それは解りますね…長い髪がエプソム・ソルト水溶液を吸い込むと、洗い流すのがかなり大変ですからね…」
「…あとは…目覚めた時に慌てて立たない事ですわね…足を滑らせて転んだり打つけたり…ハッチに頭を打つけたりしますから…」
「…それは本当に大事ですね…私は毎回心身に言い聞かせてから寝てます…」
「…お二方とも、貴重なご意見をありがとうございました…CM制作の参考にさせて頂きます…」
「…どう致しまして…こちらこそ、お役に立てたようでしたら…良かったです…」
「…お話は変わりますが、アドルさん…明日からの3日間…それぞれ3人の艦長様が来社されますね? 」
「…そうなんですよ…明日がアシュリー・アードランドさん…木曜日がネヘマイヤ・パーソフさん…金曜日がアリミ・バールマンさんでしてね…それぞれ…業務提携条項締結に向けて…最初の協議、と言う事になっています…できれば皆で歓迎してあげて下さい…」
「…もう先輩の仕事、ひとつひとつのインパクトがますます高くなっていって…すごいよね…売り上げも利益も業績も株価も、全部右肩上がりだから…クライトン・バブルって言う人もいるし…アドル・エルクショックって言う人もいる…」
「…バブルって言うのはマズイだろう…弾けちまったら困る…いずれにせよ…艦長に選ばれた俺が注目されて…会社も注目されるようになって…そこから総てが始まった…今のところ、俺や『ディファイアント』は比較的に好意を以って観られている…それが…様々な側面をプラスのベクトルで推進・推移させている、要因のひとつなんだろう…でもこれは…手の平がひとつ返れば、どうなるか判らない……俺としては…それはいずれ必ず起こる…前提として捉えて貰って、覚悟していて欲しいし…意識して行動して欲しいし…備えてもいて欲しい……そんなところだな…」
「…まあ…なるべくなら、出来るだけ先で…起きて欲しいスけどね…」
スコットは、食べる手を止めない。
「…私は…そんな事は起きないと思います…何故ならアドルさんは勿論…『ディファイアント』の皆さんも、素晴らしい人達ですし…ルールを守ってその範囲内でゲームに参加されるなら、起きないと思います…」
「…私もそう思います…アドルさんはとても誠実で優しく、気配りや面倒見も好い方なので…批判されたり、揚げ足を取られるような事も無いと思います…もしそのような事があっても、私が直ぐに反論します…」
「…マーリーもサリーさんもありがとう…褒められ過ぎでくすぐったくて、このサンドイッチしか出せないけどね(笑)…僕も勿論…そう捉えられるような隙を見せないように、気を付けて頑張るよ……さあ皆、どんどん食べてよ…何を追加しても良いよ…」
「…は~い! もう追加してま~す…」
そう言ってスコットが、パリパリ唐揚げサラダの皿を少し持ち上げる。
「…全く…よく食うよな…スコット…もう艦の振り廻しには慣れたか? 」
「…いやいや…まだまだですね…この前の乱戦の中で1回だけ…ファースト・スピードでのドリフト・ターンがキレイに決まったぐらいです…もっと場数を踏まないとね…」
「…そりゃまあ、『同盟』27隻全艦に言える事だな…まあ取り敢えず、グレイス艦長の指示には出来るだけ即応するようにしてくれ…先ずはそれからだな…」
「…分かりました…」
「…アドルさん、今日はギターをお持ちではないんですね? 」
「…ああ、そうなんですよ…サリーさん…今日は自宅まで迎えに来てくれた社用車で出社しましたので…でも、ウチにあるギターを持って来れば好かったですね…そこまで思い付きませんでした…すみません…」
「…じゃあ、今日はどうやって帰るんですか? 」
「…タクシーで帰るよ、ズライ…今日中には俺の車が社宅に届けられる事になってるからね…そうだ…じゃあ明日は…仕事が終わってから、ここでちょっと歌おう…」
「…それは楽しみですわ、アドルさん…是非、聴かせて頂きたいです…」
「…ありがとうございます、ドリスさん…ちょっと早目に降りて来て貰った方が好いですかね…座れるかどうか分かりませんので…」
「…ご心配なく…その場合には僕らで対処します…な? ヨエル君…ペイトン君? 」
「…当然です…」
「…お任せ下さい…」
「…分かりました…宜しくお願いします…」
その後は、様々な雑談に花を咲かせながら昼食を進めて…終えた…サンドイッチは総て行き渡って残らなかったから、それは良かった…最後のお茶を飲みながら、ゆったりと座っている。
「…午後はどうします? 先輩…」
「…そうだな…40分くらい、スーパー・モードでやってみるよ…無理はしないから…じゃあ、皆さん…今日は昼食に付き合って下さって、ありがとうございました…午後もまあ…頑張りましょう…明日はギターを持って来ます…ご馳走様でした…」
コーヒーを飲み干してそう言い、口を拭って立ち上がった。
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タイムマシンによる時間航行が実現した近未来、大国の首脳陣は自国に都合の良い歴史を作り出すことに熱中し始めた。歴史学者である私の書いた論文は韓国や中国で叩かれ、反日デモが起る。豊臣秀吉が大陸に侵攻し中華帝国を制圧するという内容だ。学会を追われた私に中国の女性エージェントが接触し、中国政府が私の論文を題材として歴史介入を行うことを告げた。中国共産党は織田信長に中国の侵略を命じた。信長は朝鮮半島を蹂躙し中国本土に攻め入る。それは中華文明を西洋文明に対抗させるための戦略であった。
もうひとつの歴史を作り出すという思考実験を通じて、日本とは、中国とは、アジアとは何かを考えるポリティカルSF歴史コメディー。

びるどあっぷ ふり〜と!
高鉢 健太
SF
オンライン海戦ゲームをやっていて自称神さまを名乗る老人に過去へと飛ばされてしまった。
どうやらふと頭に浮かんだとおりに戦前海軍の艦艇設計に関わることになってしまったらしい。
ライバルはあの譲らない有名人。そんな場所で満足いく艦艇ツリーを構築して現世へと戻ることが今の使命となった訳だが、歴史を弄ると予期せぬアクシデントも起こるもので、史実に存在しなかった事態が起こって歴史自体も大幅改変不可避の情勢。これ、本当に帰れるんだよね?
※すでになろうで完結済みの小説です。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
とあるおっさんのVRMMO活動記
椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。
念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。
戦闘は生々しい表現も含みます。
のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。
また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり
一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が
お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。
また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や
無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が
テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという
事もございません。
また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。
【『星屑の狭間で』『パラレル2』(アドル・エルク独身編)】
トーマス・ライカー
SF
舞台は、数多ある地球圏パラレルワールドのひとつ。
超大規模、超高密度、超高速度、超圧縮高度複合複層処理でのハイパー・ヴァーチャル・エクステンデッド・ミクシッド・リアリティ(超拡張複合仮想現実)の技術が、一般にも普及して定着し、ハイパーレベル・データストリーム・ネットワークが一般化した未来社会。
主人公、アドル・エルクは36才で今だに独身。
インターナショナル・クライトン・エンタープライズ(クライトン国際総合商社)本社第2棟・営業3課・セカンドセクション・フォースフロアで勤務する係長だ。
政・財・官・民・公・軍がある目的の為に、共同で構築した『運営推進委員会』
そこが企画した、超大規模ヴァーチャル体感サバイバル仮想空間艦対戦ゲーム大会。
『サバイバル・スペース・バトルシップ』
この『運営推進委員会』にて一席を占める、データストリーム・ネットワーク・メディア。
『トゥーウェイ・データ・ネット・ストリーム・ステーション』社が企画した
『サバイバル・スペースバトルシップ・キャプテン・アンド・クルー』と言う連続配信リアル・ライヴ・ヴァラエティショウが、民間から男性艦長演者10名と女性艦長演者10名を募集し、アドル・エルクはそれに応募して当選を果たしたのだ。
彼がこのゲーム大会に応募したのは、これがウォー・ゲームではなく、バトル・ゲームと言う触れ込みだったからだ。
ウォー・ゲームであれば、参加者が所属する国・団体・勢力のようなものが設定に組み込まれる。
その所属先の中での振る舞いが面倒臭いと感じていたので、それが設定に組み込まれていない、このゲームが彼は気に入った。
だがこの配信会社は、艦長役演者に当選した20名を開幕前に発表しなかった。
連続配信リアル・ライヴ・ヴァラエティショウが配信されて初めて、誰が選ばれたのかが判る仕掛けにしたのだ。
艦長役演者に選ばれたのが、今から90日前。以来彼は土日・祝日と終業後の時間を使って準備を進めてきた。
配信会社から送られた、女性芸能人クルー候補者名簿から自分の好みに合い、能力の高い人材を副長以下のクルーとして選抜し、面談し、撮影セットを見学し、マニュアルファイルを頭に叩き込み、彼女達と様々な打ち合わせや協議を重ねて段取りや準備を積み上げて構築してきた。
彼の目的はこのゲーム大会を出来る限りの長期間に亘って楽しむ事。
会社からの給与とボーナス・艦長報酬と配信会社からのギャラ・戦果に応じた分配賞金で大金持ちになる事と、自分が艦長として率いる『ディファイアント』に経験値を付与し続けて、最強の艦とする事。
スタッフ・クルー達との関係構築も楽しみたい。
運営推進委員会の真意・本当の目的は気になる処だが、先ずは『ディファイアント』として、戦い抜く姿を観せる事だな。
絶世のディプロマット
一陣茜
SF
惑星連合平和維持局調停課に所属するスペース・ディプロマット(宇宙外交官)レイ・アウダークス。彼女の業務は、惑星同士の衝突を防ぐべく、双方の間に介入し、円満に和解させる。
レイの初仕事は、軍事アンドロイド産業の発展を望む惑星ストリゴイと、墓石が土地を圧迫し、財政難に陥っている惑星レムレスの星間戦争を未然に防ぐーーという任務。
レイは自身の護衛官に任じた凄腕の青年剣士、円城九太郎とともに惑星間の調停に赴く。
※本作はフィクションであり、実際の人物、団体、事件、地名などとは一切関係ありません。
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