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地上界にて…

アリソン

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 メリッサ・エメリッヒさんの生菓子店には、それから40分で到着した。

「……ごめん下さい! お願いします! 」

「……いらっしゃいませ! ようこそ、おいで頂きました…アドル主宰! お待ちしておりました! ご来店、ありがとうございます! 」

「……もしかして、エスターさんから連絡がありましたか? メリッサさん? 」

「……はい! 30分程前に彼女から、連絡を貰いました……ケーキをお求めですね? 何をご用意致しましょう? 」

「……そうですね……サイズは6号のホールケーキで……ガトー・ショコラとザッハ・トルテ……ドボシュ・トルタにストロベリー・トルテとガトー・バスク……最後にベイクド・チーズケーキ……をお願いします……」

「……分かりました……沢山お買い上げ頂きまして、ありがとうございます……アドル主宰……明日は私もアラズラキさんと一緒に、志願者面談に参加させて頂きますので、宜しくお願いします……」

「……明日のお店の運営は、大丈夫ですか? 」

「……はい、明日は『シムリット・サール』の若手クルーが3人、手伝いに来てくれますので……お店は主人と彼等に任せて、御社にお伺いします……では、ケースに入れてラッピング致しますので…少しお待ち下さい……」

「……ありがとうございます……ああ、メリッサさん……ケースに入れて下さる前に、用意して貰えるケーキを総てこのテーブルに並べて……私達で両側に立って、撮影しましょう……で、それをお店のサイトに掲載すれば、好い宣伝になるでしょう……」

「……アドル主宰……本当にあの……ご配慮とお気遣いをありがとうございます……主宰が初めて来店された時に撮った画像を掲載しましたら、売り上げが結構伸びました……主宰のお陰です……今回もありがとうございます……」

「……メリッサさん……それは貴女の魅力です……今夜から配信が始まりますけれども……これからこのお店は、間違いなく大繁盛しますよ……『シムリット・サール』の若手クルーに、日頃から手伝って貰えれば…更に繁盛します……間違いありません……」

「……ありがとうございます……重ねましてお気遣いとご配慮には感謝します……じゃあ、ちょっとお手伝いをお願い出来ますか? 」

 そう頼まれて、6個のホールケーキを丸テーブルに並べるのを手伝う……エプロンを外したメリッサさんとテーブルを挟んで立ち、彼女の携帯端末をセットして5回撮影した。

「……本当にどうもありがとうございました……只今、ラッピングしてお持ちしますので、少しお待ち下さい……」

「……どうぞ、ゆっくりお願いします……」

 メリッサさんは6個のケースをそれぞれ違う色合いの包装紙でラッピングしてくれる……出来上がると2人で車のトランクに運び入れて戻り、ここでもビットカードで精算した。

「……それではメリッサさん、明日はお待ちしております……今夜の初配信も、宜しければご覧下さい……」

 そう言って握手を交わし、彼女の生菓子店を後にした。

 車をスタートさせる前、アリソンの端末に通話を繋ぐ……繋がるとハンズフリーにして発車した。

「……あら、あなた…早いわね。どうしたの? まだ仕事中でしょ? 」

「……いや、ウチに帰る途中なんだよ……土産も買ったし、後2時間弱で着くよ……」

「……今日は何をやったの? 」

「……【『ディファイアント』共闘同盟】に参画を希望して来た2艦の代表者達と面談してね……そのまま歓迎昼食会も行って、終わったんで…後の事はスタッフとリサさんに任せて退社したんだ……」

「……そうなの……じゃあ、明日は家から出社するのね? 」

「……ああ……朝早く出るから、朝飯は社のラウンジで摂るよ……」

「……分かったわ……そう言えば今夜、番組の初配信よね? 」

「……ああ、そうだな……」

「……家で…家族揃って観られるわね? 」

「……ああ、ちょっと恥ずかしいけどな……」

「……(笑)…じゃあ、気を付けてね? 」

「……ああ、ありがとう……」

 通話は、アリソンの方から切れた……そのまま100分ちょっとのドライブで、自宅に帰着した……インターコールを鳴らして出迎えたアリソンに先ず花束を渡して、6個のホールケーキは2個ずつ運び入れる。

「……随分、奮発したわね……大丈夫なの? 」

「……大丈夫……心配ないよ……今の俺は、会社から支度金をたっぷり用立てて貰っているからね……」

 そう言いながらケーキを何とか冷蔵室と冷凍庫に収めて、取り出したグラスにグレングラント・12年をスリーフィンガーで注いで右手に持ち、左手で灰皿を持つ。

「……ちょっとベランダで一服して来る……」

 2階のベランダに出てテーブルにグラスと灰皿を置き、デッキチェアーに座る……ハイラム・サングスター艦長から貰ったシガレット・ケースをテーブルに置いて開き、プレミアム・シガレットを1本取り出して鼻でなぞりながら香りを楽しむ……咥えて点けて一服を喫い、蒸して燻らせてグラスの酒を一口呑む。

 エドナとマレットから貰ったSperm production enhancer  (スペルム・プロデュクション・エンハンサー)『精子生産量増強剤』と勃起力持続サプリメントのパッケージもポケットから出して、テーブルに置く。

 2服目を喫って蒸して燻らせてグラスのモルトも一口呑む……エンハンサーとサプリメントの1回分用量を取り出して口に放り込み、グラントの二口で飲み下す……その後はゆっくりと喫い・蒸し・燻らせ・含み・呑むを繰り返す……それから7分で喫い終わり、呑み終わる……総てをポケットに入れ、グラスと灰皿を持って室内に戻る……自室で着替えてからリビングに戻り、アリソンの手を取る。

「……寝室に行こう……アリシアが帰る迄には、まだかなり時間がある……もう…子作りも意識的にやらないと…出来ないよ……」

「……そうね……」

 お互いに手を取り合って寝室に入る……アリソンの肉体は贔屓目でも何でもなく、新婚当初からほぼ変わらない……今でも私にとっては最も官能的で煽情的で、セクシャルでエロチックでラブリーな存在だ……お互いに全裸となり、キスから様々なオーラル・セックスでほぼ40分……正常位…屈脚位…横臥位…対面騎乗位…背面騎乗位…対面座位…後背位…後背立位…対面立位…正常位で射精する迄、ほぼ100分を経た。

 呼吸を整えてから……ベッドにしどけ無く寝ているアリソンに、40分を掛けてマッサージを施す……セルフ・ストレッチに数分を掛けてから……またオーラル・セックスで10数分……そしてまた、先刻と同じ流れの遷移で、アリソンとの愛の交歓・交接を楽しむ……最後の射精絶頂は、対面騎乗位でお互いに深く腰を打ち付け合っている時に訪れた……仰向けで身体を伸ばす私の上に覆い被さり、お互いの口と舌を数分吸い合ってから、アリソンが左頬を私の胸に付けて横たわりながら私自身を弄んでいる。

「……まだ余裕があるわね……アリシアが寝てからもする? 」

「……ああ…しよう……」

「……さっき、ベランダに出ている時…何か飲んだ? あなた……そう言うサプリは嫌いだったでしょう? 」

「……ああ……今でも好きじゃないけど……俺の活力の底上げも……考えなきゃな……」

「……スタッフの内の誰かと……寝た? 」

 さすがに瞬間、硬直した。

「……よく……分かるな……」

「……(含み笑い)その人に気を遣われて……早く帰るように勧められたし……サプリも頂いたんでしょ? 」

「……その通り……だけど…避妊は完璧だよ……」

「……それは信じてるわよ(笑)……でもその人は……リサさんでもシエナさんでもない……」

「…………」

「……シエナさんは私とタイプが近いし……リサさんは違う理由で……キスは出来ても……まだあなたは抱けない……多分…今年中には無理かも……」

「……そうかも知れないな……」

「……進み方が思っていたよりも早いわね……あなた……何人にマッサージしたの? 廻りに気付かれないようにしなさいよ……」

「……ああ……分かってる……気を付けるよ……」

「……マッサージしてくれて、ありがとう……さっ…シャワー浴びてしゃんとしましょう……アリシアも鋭いわよ……」

 ふたりして起き上がり、バスルームに入った……アリシアが帰宅したのはそれからほぼ90分後で、当然ながら私の早い帰宅には驚いていた……聞けばアリシアを中心として結成した親衛隊は、サーバー・リンク・グループにメンバーの全員を登録・組織していて、今夜と明晩の配信を同時に視聴しながら感想や意見を言い合える体制が、既に構築出来ているとの事だった。

 私もアリシアもアリソンを手伝って、夕食の準備を進める……キッチンは母娘に任せて、私はテーブルを拭き上げてクロスを敷き、花瓶を置いて整えていった……ふたつの花束を6本の花瓶に活けて要所に置く……買って来た6個のケーキに於ける母娘からの評価は概ね良好なものだった……特にリクエストしていた訳でも記念日でもないから、まあ記念日にはなるかも知れないが、親子3人家族での夕食メニューとしては、至って普通のものだろう……ポークソテーにジャガイモ、ニンジン、スライスオニオンソテーの付け合わせ……白身魚と香草・キノコの蒸し上げ……大盛り温野菜肉サラダ……これらをライスとオニオンコンソメスープで頂く……飲み物は軽めのスパークリング・ロゼワインだ。

「……同時視聴は、お前の部屋の固定端末で観るのか? 」

「……そう…もう、セットを組んでいるから……」

「……親衛隊のメンバー同士で視聴しながら相互通話も出来るんだろ? 」

「……そう……一緒に観れなくてごめんなさい……」

「……好いんだよ……部屋の遮音レベルは少し上げておいてくれ……パパとママはリビングで呑みながら、イチャイチャしながら観るからさ……」

「……もう!……あんまりあからさまにやらないでよね……」

「……(笑)…了解致しました……」

 和やかに談笑しながら夕食を進める……親衛隊内での交際についてやんわりと訊いたが、回答はやんわりと謝絶された。

「……明日も面談して、終わったら帰って来るの? 」

「……ああ、大体同じ時間に帰って来るよ……でも明後日は早く出る……お前が起きる前に、取って置きのスーツで出動するよ……」

「……明日…友達を呼んでも好い? 」

 アリソンの顔を見遣ると、笑顔で頷いた。

「……好いよ……でもご迷惑やご心配を掛けない範囲でな? 」

「……了解です……喜ぶと思うよ……」

「……何人くらいで考えてる? 」

「……5人くらい……」

「……そうか…分かった……夕食を一緒に摂ろう。帰りはタクシーを呼ぶから、心配しなくても好い……一緒に来る前に、そう伝えなさい……」

「……ありがとう…でも、大丈夫なの? 」

「……何が? このくらいは軽いものさ……何も気にしなくて好い……お前はしっかり友達をエスコートして来なさい……」

「……分かりました……ねえ、お父さん……明日面談して無事に加盟する事になったら、同盟は27隻だね? 」

「……そうだな……」

「……それじゃあ、もう大丈夫だよね? 負けないよね? 」

「……アリシア……パパ達の同盟を攻撃しようとしている敵性集団が、どのくらい居ると思う? 」

「……全然、分からない……」

「……うん……信頼できる筋からの情報によると……ざっと400隻だな……これでも控えめだけどね……」

「…!…ええっ! そんなに居るの?! それじゃあ……」

「……大丈夫だよ、アリシア……心配しなくても好い……やり様は幾らでもあるから……友達と一緒に、パパ達のやり様をしっかり観ておきなさい……」

「……分かった……頑張ってね……」

「……ああ…パパを信じて任せなさい……」

 夕食の最後にガトーショコラとベイクド・チーズケーキを出して来た。

 それぞれからみっつずつショートサイズで切り出し、残りは戻してゆっくりと楽しむ……実に素晴らしい味わいだ。

 夕食を終えて3人で片付ける……総て終えてアリシアは自室に入る。

 私はシングル・モルトのボトルと2個のグラスをリビングに持ち込み、ふたりで並んでソファーに座る……接続視聴のセットは、リモコン操作で配信開始5分前に終えた。
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