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地上界にて…

同盟参画希望者との面談

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 並んで座る4名の、向かって左端に座る男性が立ち上がる。

「……こんにちは。初めまして……軽巡宙艦『ヘルヴェスティア』を指揮しております、マグナス・ハンセンです……宜しくお願いします……先ず、面談の機会を与えて下さった事と、これ程大勢の方々に出迎えて頂きました事に、感謝致します……【『ディファイアント』共闘同盟】への参画を決断した事は、正しい選択であったと改めて確信しております……不明な点は、何なりとお尋ね下さい……」

 そう言い終えると自分のPIDカードを2枚、通常のものとゲームの中だけで通用するPGFIDカードを揃えて目の前に置き、着席した……すると直ぐに左隣に座る女性が立ち上がる。

「……こんにちは、初めまして……ブルーナ・マルケジーニです……『ヘルヴェスティア』の副長を務めます……ハンセン艦長と同様ですが、面談の場を設けて頂きまして、ありがとうございます……そして大勢の方々のお出迎えにも感謝致します……ハンセン艦長を支えながら、共闘同盟の為に頑張りたいと思います……どうぞ、宜しくお願いします……」

 彼女も言い終えるとPIDカードとPGFIDカードの2枚を揃えて目の前に置いてから、着席した。

「……こんにちは、初めまして。『レディ・ブランチャード』の艦長を務めます、ヘラ・ヒルマーです……面談の場を設けて頂いて、ありがとうございます……皆さんのお出迎えにも感謝致します……始まったばかりで、まだ右往左往していますが、同盟への参画を希望します……加盟を認めて頂ければ、いずれお役に立てると思います……どうぞ、宜しくお願いします……」

 彼女も2枚のカードを置いてから座った。

「……こんにちは、初めまして……同じく『レディ・ブランチャード』にて副長を務めております、カミラ・パエスです……面談の場に呼んで頂いて、ありがとうございます……大勢の方々のお出迎えにも感謝致します……同盟に加入出来なければ、あまり長くは存続出来ないだろうと考えています……どうか、宜しくお願いします……」

 彼女も同様にカードを2枚、目の前に置いた……私はまた立ち上がった。

「……ご丁寧な自己紹介をありがとうございます……ここまでお話を伺うだけで、我が同盟に参画・加盟したいと言う皆さんの意志は、確認しました……先ずお訊ねしますが、ゲーム内専用端末はお持ちですか? 」

「……はい、持参して来ております……」

 マグナス・ハンセン艦長がそう応え、他の3名も頷いた。

「……それでは先ず、私と他の艦長方のPGFIDカードを一時お預けしますので、この場で我々の身許をご確認下さい……」

 そう言ってスーツの内ポケットから自分のPGFIDカード取り出すと、手伝いでマグナス・ハンセン艦長に渡して貰った……グレイス・カーライル艦長とハイラム・サングスター艦長と、ヤンセン・パネッティーヤ艦長とザンダー・パスクァール艦長も、自分のカードを取り出して手伝いで渡らせる……4人とも自分のゲーム内専用端末を取り出し、それぞれ5枚のPGFIDカードを端末にセタッチさせて内部情報をダウンロードして閲覧する……程無くして4人とも顔を上げ、笑顔を観せる。

「……無用であったのかも知れませんが、閲覧させて頂きまして感謝します……では、私共のカードもご確認下さい……」

 そう言って、手伝いでカードを返してくれる。

「……ご配慮に感謝します……暫時拝借させて頂きますので、宜しくお願いします……リサさん、シエナ副長、ハル参謀、カウンセラー、リーア機関部長、カーラ・ブオノ・マルティーヌ副長……皆さんから通常の端末とゲーム内専用端末をお借りして、皆さんからお借りする8枚のカードの中の情報をダブル・トリプル・クロスで検索して下さい……それで異常や懸念が無ければ、皆さんの身許確認は終了と致します……ああ、せっかくの歓談に飲み物もお出ししないで申し訳ありません……只今ウェイターを呼びますので、お好きにご注文下さい……」

 そう言って、少し離れて控えているウェイターに手を挙げる……4人が置いた8枚のカードは、また手伝いでこちらに渡された。

「……ときに皆さんは、どちらのSNSサイトにアカウントをお持ちですか? 」

「……私は、5サイト総てにアカウントを持っています……」

 と、マグナス・ハンセン艦長。

「……私は、パーソン・ファイルとプライバシー・ブックにアカウントがあります……」

 と、ブルーナ・マルケジーニ副長。

「……私は、インディビジュアル・コネクションとインディビジュアル・ファイルです……」

 と、ヘラ・ヒルマー艦長。

「……私がアカウントを持っているのは、パーソナル・コネクションだけです……」

 と、カミラ・パエス副長……私はその間に着席した。

「……お応え頂き、ありがとうございます……既にご承知と思いますが総てのSNSサイトには艦長や副長のグループもあり、会議室もあります……所属していますか? 又は、所属されていましたか? 」

「……所属していましたが、抜けました……」

 と、マグナス・ハンセン。

「……私達4人とも、それぞれのSNSサイトで艦長・副長のグループに入っていましたが、抜けました……」

「……私達に敵対しようとしているグループに誘われましたか? 」

「……誘われるも何も、入らなければ攻撃すると脅されましたのでね……怒るより先に呆れてしまいまして……」

「……そうでしたか……そんなやり方では、組織など出来る筈もないでしょうに……」

「……全く、そう思います……」

「……アドル主宰…確認作業は終了しました……ご指示通りダブル・トリプルクロスで検索して、相互比較検証を行いましたが、異常・懸念点共に見受けられませんでした……」

 と、カーラ・ブオノ・マルティーヌ副長が顔を上げて報告した。

「……ありがとう、ご苦労様。カードをお返しして下さい……失礼ながら皆さんの身許を確認させて頂きました……目の前で確認作業を行いましたご無礼をお許し下さい……ここで皆さんに重要な質問があります……【『ディファイアント』共闘同盟】に参画を希望しようと言う意志は、それぞれの艦司令部に於いて統一されましたか? 」

「……はい…『ヘルヴェスティア』に於いては司令部内にて協議し、そのように決議しました……」

「……同じく『レディ・ブランチャード』に於いても、参画希望の意志は司令部にて統一しました……」

「……了解しました……それではここから……同盟諸氏の皆さんからの質問やお話を伺います……」

「……それでは先ず私から…グレイス・カーライルです……私達の同盟に参画を希望して下さって、ありがとうございます……共にこのゲームを楽しめる事になって嬉しいです……アドル・エルク主宰の指示の元で、協力・共同出来ますなら長く楽しめる事でしょう……ですが同盟は配信番組も含めて様々に報道されますから、根拠の無い批判や心無い非難・中傷にも晒されるでしょう……同盟全体に関わるケースならば主宰自らが対応されるでしょうけれども、私達に向けられた非難・中傷のとばっ散りがそちらに及ぶ場合もあるでしょう……それに対する心積りだけは、お願いしたい処です……」

「……ご丁寧な教示をありがとうございます。グレイス・カーライル艦長……その心積りはしっかりと心底に携えて、共に参りたいと思います……」

「……では、次に私から……ご存知とは思いますが、ハイラム・サングスターです……先ずグレイス艦長からのご教示には、私からも感謝申し上げます……我々はアドル・エルク主宰の指示に基付き、協力・共同して行動します……ですが同盟は規律に縛られた正規軍艦隊ではありません……対応や作戦の決定迄の過程に於いては、自由闊達な協議・献策・改善提案が認められています……また…これも胸中に置いて頂きたいのですが、アドル主宰は非常に優れた先見性に富み、類稀に強い洞察力を以って事態の推移を予想・予測され、対応・作戦案を構築されます……その内容は私が聴いても突拍子もない場合があり、にわかには腑に落ちず理解に苦しむ場合もありますが、取り敢えずは信頼して指示に基づく行動を採って頂けるように、お願いしたい処です……」

「……非常に好く分かりました……お教え頂いて、ありがとうございました…ハイラム・サングスター艦長…感謝致します……同時に、アドル・エルク主宰の偉大さと言いますか、素晴らしさも好く伝わりました…重ねて感謝致します……」

「……引き続き皆さんに申し上げます……信頼して頂けるのは非常に結構なのですけれども、私も普通の人間で普通の男ですので…崇拝とか盲信とか盲従とか心酔とかは、全く無しでお願いします……間違いも勘違いも考え違いも見込み違いもありますので……それらを認識された場合には、直ちに是正・修正の指摘・発言を宜しくお願いする処です……」

 そこまで伝え終えた処で、4人のウェイターがトレイに全員分の飲み物を乗せて運んで来る……全員の前に供される迄30秒。

「……皆さん、どうぞ。熱い内にお召し上がり下さい……肩の力を抜いて、リラックスしてお話を続けましょう……それでは……他にお話のある方は……いらっしゃいませんか? 」

「……ザンダー・パスクァールです……今後もアドル主宰からは色々なお話があると思いますが……その中の一部と言いますかひとつを……僭越ではありますが、お話します……今日は2艦の代表者と面談しておりますが明日は3艦の代表者と面談します……計5隻が無事に加盟すると言う事になりますと、共闘同盟は27隻の艦船集団となります……おそらくそうなるだろう…と言う事でお話しますが、次に出航するゲームフィールド(GF)では……私達は初めての本格的で組織的な、対艦船集団戦闘を経験する事になるでしょう……多分アドル主宰は3隻をひとつのグループに、9個のグループを編成されるのだろうと思うのですが……ざっくりと端的に申し上げるならば、グループ・リーダーの指示にも従って頂きたい、と言う事です……宜しくお願いします……」

「……他には…ありますか? 」

 3口目のコーヒーを飲んで、カップを置いて訊く。

「……皆さん、初めまして。アリミ・バールマンです……お会い出来て嬉しいですし、仲間が増えるのは本当に有難いと思っております……是非一緒に、このゲームを出来るだけ長く楽しみましょう……それに、長く存続すればする程……賞金を貯蓄出来て儲かります……ファースト・シーズンが終わって…私達が無事であれば、祝勝会が開かれます……それを楽しみにして、一緒に頑張って楽しみましょう……」

「……はい……お話し頂いた皆さんには感謝致します……それではここで……同盟に参画する艦の過半数でもありませんが……ひとつの形式として、票決を執ります……今回参画希望2艦の加盟を承認する方は、挙手をお願いします……」

 そう言い終えて私が右手を挙げると、2秒も置かずにこちら側の全員が右手を挙げた。

「……正式なものではありませんでしたが、承認して頂きましてありがとうございます……それでは、軽巡宙艦『ヘルヴェスティア』並びに『レディ・ブランチャード』の皆さん……【『ディファイアント』共闘同盟】にようこそ加盟して頂きました……主宰としても、艦長としても歓迎させて頂きます……どうか皆さん方からも、同盟のスタッフ・クルーに対しては気兼ねなく気軽に、何でもお声掛け下さい……では、先ずカーネル・ワイズ・フリードマン副長……皆さんから頂いた2種類の携帯端末に於ける、通話アカウント・アドレスとメッセージアカウント・アドレスを、同盟に参画する艦長と副長の全員に送信して共有して下さい……次にローズ・クラーク副長……皆さんに会議室『DSC24』と『GFDSC24』についての詳細な説明を、メッセージにて今日中に送信して下さい……続いてカーラ・ブオノ・マルティーヌ副長……皆さんに会議室『トゥルーダイス』と『GFトゥルーダイス』についての詳細な説明を、メッセージにて今日中に送信して下さい……続いて皆さん……私達同盟は暗号でのシークレットチャンネルを共有しています……これを用いての通信では、傍受されても内容は理解されませんし、発信ポイントや受信ポイントも特定されません……これからその秘密回線に於ける、アプリケーション・セットアップ・システムデータを収めたソリッド・メディアをお渡ししますので、明後日の出航前に艦のコミュニケーションアレイに接続してセットアップして下さい……ガイダンスに従って操作を行なっていけば、直ぐにセットアップは完了しますので、宜しくお願いします……ソリッド・メディアは、ハル参謀からお渡しして下さい……リサさんは皆さんの両手掌の掌紋をスキャンして下さい……ここまでで質問はありますか? 」

「……私達の掌紋データが、先程言われた会議室に入る為のアクセス・キーになるのですね? 」

 と、マグナス・ハンセン艦長。

「……その通りです。詳細は後程に届けられるメッセージにて確認して下さい……」

「……私達の間での通信は秘密回線を使うとして、通常回線はどのように使うのですか? 」

 と、ヘラ・ヒルマー艦長。

「……先ず秘密回線の事を知らない他艦からの通信は通常回線で受信しますし、傍受されても構わない通信は通常回線にて平文で発信します……また、敵性集団を欺瞞通信にて撹乱する場合にも使えるでしょう……その場合には先に通信中継ビーコンを放出して、それを通じて行う必要がありますが……」

「……なるほど…好く分かりました……」

 ハル・ハートリーがソリッド・メディアを2人の艦長に渡した時、総務課の女性社員がスキャナーを携えて入室した……リサさんがスキャナーを受け取り、4人の前に置いて説明を始める……説明を終えて4人からの掌紋データ採集が終わるまで5分程。

「……ハンセン艦長、マルケジーニ副長、ヒルマー艦長、パエス副長……ここまでご協力頂きまして、ありがとうございました……ファーストネームでお呼びしても宜しいですか? 私の事はアドルと呼んで下さい……今同席しているメンバーに於いても、ファーストネームで呼称して下さって結構です……」

「……どう致しまして。こちらこそ、ありがとうございました……ご配慮にも感謝致します……私共も、ファーストネームで呼んで頂いて結構です……」

「……私達も、ファーストネームでの呼称で結構です……お気遣いを頂きまして、ありがとうございます……」

 マグナス・ハンセン艦長が先にそう応えて、ヘラ・ヒルマー艦長がそれに続いた。

「……こちらこそ、ありがとうございました……面談としてはこれで終わり、と言う事になります……お疲れ様でした。ご苦労様でした……弊社にご訪問頂きまして、ありがとうございました……如何でしょうか? もうお昼にも近い時間ですし、ここは食事の出来る場所でもありますので……宜しければ、昼食を一緒に摂りましょう……ここの厨房のメンバーも、自慢の一品を食べて行って欲しいと申しておりましたので……」

「……ご丁寧なお誘いをありがとうございます……喜んでご相伴に与らせて頂きたいと思います……宜しくお願いします……」

「……応じて頂きまして、ありがとうございます……さ、もっとリラックスしてざっくばらんにいきましょう……それで、初日と2日目ではチャレンジミッションに参加しましたか? 」

「……参加しましたが、ファーストステージをクリアするのに1日半も掛かってしまって疲れました……そのせいでセカンドステージでは逃げ回ってばかりで……早々に入港しました……お恥ずかしい限りです……」

 と、マグナス艦長。

「……私達がファーストステージをクリアしたのは、入港時限の1時間前でした……損傷率49%で、手順をひとつ誤れば、その場で沈んでいました……やっとの想いで引き摺るように入港しました……アドル主宰の『ディファイアント』に較べれば、弱々しい限りです……」

 と、ヘラ艦長。

「……マグナス艦長……ヘラ艦長……別に恥かしくもないですし、弱くもないですよ……クリア出来ただけでも、大したものです……連続して撃沈されるだけだった艦も沢山ありましたからね……大事な事は、それらの経験を蓄積して……分析して総括して……自信に繋げていく事だと思います……前向きに考えて、同盟への参画を決意されたんですから……自信にも、直ぐに繋がると思いますよ……大丈夫です……全艦でサポートし合う体制を執りますから……安心して下さい……」

「……ありがとうございます……」

「……両艦とも模擬戦闘チャレンジミッションに集中されていた訳ですから、単艦としての訓練とか演習に掛ける時間は取れなかった訳ですよね? 」

「……そうですね……取れなかった処か、訓練とか演習とか言う発想すら出ませんでした……」

「……分かります……ただ…今度の土日ではシャトルの操縦と船外活動が必要になると思いますので……ときにシュミレーション・ポッドカプセルは、積んでいますか? 」

「……はい……5基、積んでいますが…活用できていません……」

「……分かりました……週末土曜日の出航直後に、総合した指示を同盟参画全艦に対して発信しますので、可能な限りそれに沿っての行動と操艦をお願いします……勿論、無理のない範囲で結構ですので……」

「……分かりました。可能な限り、指示に沿います……」

「……ありがとうございます…宜しくお願いします……それでは皆さん、暫く休憩としましょう……まだあまりリラックス出来てないようですしね……飲み物でも何でも、ウェイターの方に頼んで下さい……私は喫煙休憩室に行きます……」
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