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地上界にて…
社宅への車中…
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比較的に大きい黒のSUVに7人は乗り込んで、私の社宅へと向かっている。
この車はリーア・ミスタンテの所有で、今運転しているのも彼女だ。
シエナ・ミュラーは助手席に座って、前を向いている。
「……シエナ……ハンナ……リーア……今日は手伝わせてくれてありがとう……アンタ達とは昔から、色々な事でぶつかり合ったり揉めたりして来たけど……根に持たないでいてくれた事には、感謝してるよ……」
カーラ・ブオノ・マルティーヌは、シエナの真後ろに座っている。
「……アタシ達が呼んだ訳じゃないから……お礼なら、アドル主宰に言ってね……」
そう応えたハンナ・ウェアーは、リーアの真後ろに居る。
「……アドルさんも知ってるんでしょ? アタシ達の…昔からの仲を……」
少し訝し気にカーラが訊く。
「……うん、教えたよ。でもアドルさんはアンタの立場も、ハンプトン艦長の立場も尊重しているから……何も問題にはしなかったよ……」
これにはリーアが運転しながら応えた。
「……アドルさんは、すごい人だね……アタシは初めてお話をしっかり聴いたんだけど……シエナ達が心から信頼して尊敬していて、憧れていて愛しているのがよく解ったよ……アタシもアンタ達と仲良くしてグループに入っていれば、アドルさんに選んで貰えたかもね(笑)……」
「……カーラ……貴女はガンナー・ヴァン・ハンプトン艦長に選ばれて『アグニ・ヤマ』の副長に就いたんでしょ? あまり変なことは言わないで……今の貴女はハンプトン艦長を支えて守らなきゃならない立場なんだから……」
「……冗談だよ(笑)……それにそんな事は言われなくても解ってる……でもアドルさんの最高さ加減は……本当に信じられないレベルだよね(笑)……誰がスタッフ・クルーとしてアドル主宰の元に就いても、彼に就いて行って支えて守るだけで、アドルさんを成長させる事は出来ないだろうね……私は、ガンナー・ヴァン・ハンプトン艦長を支えて守って成長させるよ……それが出来るのは『アグニ・ヤマ』の私達だけだからね……そしていつになるかは判らないけど、アドル・エルク艦長よりも凄い艦長にして観せるよ……」
「……カーラ…貴女……ハンプトン艦長を愛しているんだね? 」
ハンナが優しく穏やかに訊く。
「……うん…愛しているよ……ウチのスタッフ…皆がね……」
「……カーラ……状況が落ち着いたらハイラム・サングスター艦長が同盟参画艦の司令部に声を掛けて、アドル主宰の奥様を訪問してご挨拶しようと言う予定になっているんだけど、具体的に決まったら貴女も来てね? 奥様に逢ったら、もっと好く解ると思うから……」
ハル・ハートリーが、顔を前に向けたままで言う。
「……そう……ハンプトン艦長が行くなら、私も一緒に行くよ……」
「……ローズさん……ハイスクール時代のアドルさんって、どんな感じだったの? 」
ハンナが微笑んで、興味深そうにローズ・クラークを観る。
「……とっても素敵で格好良くて、何でも知っていて頼り甲斐のあるお兄さんでした……ギターの弾き語りで歌ってくれましたし……」
「……何だか、ありありと観えるわね……」
シエナがそう言って息を吐く。
「……アドル主宰が最初に私達全員を紹介して下さったのには驚きました……どうしてそうなさったんでしょう? 」
メアリー・ケイト・シェルハート副長が訊いた。
「……きっと、私達がホステスみたいに観られないようにと思っての事じゃないかしら……」
トリッシュ・ヴァンサンティン副長がそう応じる。
「……アタシ達女優は、そう言う風に観られても仕方ないけどね……」
と、カーラ副長。
「……アドルさんのそう言う処が、可愛くていじらしいんだよね……」
と、ハンナ・ウェアーがそう言って髪を掻き上げる。
「……それにしても……アドルさんひとりに喋らせちゃったのは、本当に申し訳なかったです……ああ言う接待の席で何を話せば好いのか、大体は分かってるつもりだったんですけど……」
ローズさんは、ちょっと悔しそうだ。
「……まあ……アドルさんの話が聴きたかった…って言うのが…皆、強かったんだろうね……無理もないと思うよ……」
そう言ってシエナは助手席で座り直す。
「……シエナさん、主宰が貴女の事をナンバー・ワンって呼んでいましたけど、すごく格好良いですね……憧れます……」
と、メアリー・ケイト・シェルハートが言う。
「……ありがとう……艦長は艦の代表者だけど、副長はスタッフ・クルーの統率者だよってアドルさんに言われたけど、その意味合いでそう呼んで下さっていると思うのね……そこまで信頼されている事には、本当に感謝しているわ……そう呼ばれてから何かを指示される度に震えが走るけど……」
応えながら震えを鎮めるように両腕を抱える。
「……グレイス・カーライル艦長……副社長ですね……あの方も、とても素敵な方ですね……女性艦長として…私の観てきた限りでは1番だと思います……」
ローズ・クラーク副長が感心して言う。
「……そうね……あれくらいの包容力を、いつか持ちたいわね……」
と、カーラ・ブオノ・マルティーヌ。
皆もそれぞれに頷いた。
「……激励壮行会の時にチラッとアドル主宰に言っていたのが聴こえたんだけど、私に弟がいるなら、きっとアドルさんのような人だろうって……」
シエナが逸話を口にすると皆、感嘆の声を挙げた。
「……アドル主宰が予測されたチャレンジ・ミッションですけど、聴いていると本当にありそうですね……怖いくらいです……」
メアリー・ケイト・シェルハートが言う。
「……アドル主宰との付き合いが短いか彼への理解がまだ浅い人なら、彼の言動を怖いと感じる人もいるでしょう……私達だってそんなに付き合いが長いわけじゃないけど……アドルさんよりもっと怖くて悲しい人を知ってからは……主宰がどんなにショックを伴うような内容を言動で示されたとしても……不安にはなっても怖いと感じる事は、もうないでしょうね……」
リーア・ミスタンテが静かに、強い意志を感じさせて言う。
「……奥様ね? 」
と、カーラ。
「……そう……アドル主宰のご家族を知ってから……私達が一番に守らなければならないのは、奥様とお嬢さんになったのよ……」
と、シエナ・ミュラー。
「……それにしてもトップ・コアのメンバーが6人も来ていたなんて……絶対にアドルさんを探りに来ていたって訳よね? 」
と、トリッシュ・ヴァンサンティン。
「……そうね……」
シエナは一言で応じた。
「……シエナ……アタシね……何だかアドルさんから通話が繋がるような気がしてるんだよね……」
唐突にハンナが言う。
「…あら、そうなの? 」
「……実は私もそんな気がしてるんだよね……」
と、リーアも応じた。
その5秒後に、シエナの端末から着信音が流れる……少し驚いたシエナが端末を取り出して通話を繋いだ。
「…はい、シエナです…あ、艦長…」
「…ナンバー・ワン…スピーカーで頼む…」
「…分かりました…」
応えてスピーカーに切り替え、ボリュームを最大に上げる。
「…皆さん、こんばんは。アドル・エルクです……突然に通話を繋ぎましたのは、皆さんにお詫びを申し上げる為です……如何に好意で引き受けてくれた、と言う事であっても……これは完全に私の私的な用事です……その用事を処理する為に『ディファイアント』のスタッフはおろか、同盟参画各艦の副長の皆さん迄をも巻き込んで、用事を言い付けて私の社宅に向かわせてしまったのは、私の完全な誤りであり、間違いであり、失態でした……端末越しで本当に申し訳ありませんが……伏して謝罪申し上げます……艦長の皆さんにも、申し訳ない想いで一杯です……今更償いようもありませんが……今からでも、ご自由に行動なさって下さい……シエナ副長…リーア機関部長…カウンセラー…今からでも副長の皆さんを、ご希望の場所に迄お送りして差し上げて下さい……君達3人にも本当に申し訳ない事をした……心から謝る……償いは後日に必ずさせて貰うので、今はこの通話だけで許して欲しい…本当に申し訳ない……不適切な判断であり、言動でした……それでは、シエナ副長……後は宜しくお願いします……アドル・エルクより、以上……」
通話の切れた端末を暫く繁々と眺めてから、ポケットに仕舞う。
「……こう言う処があるから…愛さずには居られなくなる……のかも知れないわね……それでは、副長の皆さん……どうしましょうか? 」
「……勿論、主宰の社宅に連れて行って下さい……今更何処にも行けません……」
ローズ・クラーク副長が応じる……他の3人も微笑みつつ頷いた。
「……主宰に女心が解るのは、いつ頃になるかしらね(笑)? 」
と、ハンナ。
「……ファースト・シーズンの半分くらいで、解ってくれれば好いんじゃない(笑)? 」
と、リーア。
「……さあ、ちょっと急いで行くわよ! 」
と、シエナ。
この車はリーア・ミスタンテの所有で、今運転しているのも彼女だ。
シエナ・ミュラーは助手席に座って、前を向いている。
「……シエナ……ハンナ……リーア……今日は手伝わせてくれてありがとう……アンタ達とは昔から、色々な事でぶつかり合ったり揉めたりして来たけど……根に持たないでいてくれた事には、感謝してるよ……」
カーラ・ブオノ・マルティーヌは、シエナの真後ろに座っている。
「……アタシ達が呼んだ訳じゃないから……お礼なら、アドル主宰に言ってね……」
そう応えたハンナ・ウェアーは、リーアの真後ろに居る。
「……アドルさんも知ってるんでしょ? アタシ達の…昔からの仲を……」
少し訝し気にカーラが訊く。
「……うん、教えたよ。でもアドルさんはアンタの立場も、ハンプトン艦長の立場も尊重しているから……何も問題にはしなかったよ……」
これにはリーアが運転しながら応えた。
「……アドルさんは、すごい人だね……アタシは初めてお話をしっかり聴いたんだけど……シエナ達が心から信頼して尊敬していて、憧れていて愛しているのがよく解ったよ……アタシもアンタ達と仲良くしてグループに入っていれば、アドルさんに選んで貰えたかもね(笑)……」
「……カーラ……貴女はガンナー・ヴァン・ハンプトン艦長に選ばれて『アグニ・ヤマ』の副長に就いたんでしょ? あまり変なことは言わないで……今の貴女はハンプトン艦長を支えて守らなきゃならない立場なんだから……」
「……冗談だよ(笑)……それにそんな事は言われなくても解ってる……でもアドルさんの最高さ加減は……本当に信じられないレベルだよね(笑)……誰がスタッフ・クルーとしてアドル主宰の元に就いても、彼に就いて行って支えて守るだけで、アドルさんを成長させる事は出来ないだろうね……私は、ガンナー・ヴァン・ハンプトン艦長を支えて守って成長させるよ……それが出来るのは『アグニ・ヤマ』の私達だけだからね……そしていつになるかは判らないけど、アドル・エルク艦長よりも凄い艦長にして観せるよ……」
「……カーラ…貴女……ハンプトン艦長を愛しているんだね? 」
ハンナが優しく穏やかに訊く。
「……うん…愛しているよ……ウチのスタッフ…皆がね……」
「……カーラ……状況が落ち着いたらハイラム・サングスター艦長が同盟参画艦の司令部に声を掛けて、アドル主宰の奥様を訪問してご挨拶しようと言う予定になっているんだけど、具体的に決まったら貴女も来てね? 奥様に逢ったら、もっと好く解ると思うから……」
ハル・ハートリーが、顔を前に向けたままで言う。
「……そう……ハンプトン艦長が行くなら、私も一緒に行くよ……」
「……ローズさん……ハイスクール時代のアドルさんって、どんな感じだったの? 」
ハンナが微笑んで、興味深そうにローズ・クラークを観る。
「……とっても素敵で格好良くて、何でも知っていて頼り甲斐のあるお兄さんでした……ギターの弾き語りで歌ってくれましたし……」
「……何だか、ありありと観えるわね……」
シエナがそう言って息を吐く。
「……アドル主宰が最初に私達全員を紹介して下さったのには驚きました……どうしてそうなさったんでしょう? 」
メアリー・ケイト・シェルハート副長が訊いた。
「……きっと、私達がホステスみたいに観られないようにと思っての事じゃないかしら……」
トリッシュ・ヴァンサンティン副長がそう応じる。
「……アタシ達女優は、そう言う風に観られても仕方ないけどね……」
と、カーラ副長。
「……アドルさんのそう言う処が、可愛くていじらしいんだよね……」
と、ハンナ・ウェアーがそう言って髪を掻き上げる。
「……それにしても……アドルさんひとりに喋らせちゃったのは、本当に申し訳なかったです……ああ言う接待の席で何を話せば好いのか、大体は分かってるつもりだったんですけど……」
ローズさんは、ちょっと悔しそうだ。
「……まあ……アドルさんの話が聴きたかった…って言うのが…皆、強かったんだろうね……無理もないと思うよ……」
そう言ってシエナは助手席で座り直す。
「……シエナさん、主宰が貴女の事をナンバー・ワンって呼んでいましたけど、すごく格好良いですね……憧れます……」
と、メアリー・ケイト・シェルハートが言う。
「……ありがとう……艦長は艦の代表者だけど、副長はスタッフ・クルーの統率者だよってアドルさんに言われたけど、その意味合いでそう呼んで下さっていると思うのね……そこまで信頼されている事には、本当に感謝しているわ……そう呼ばれてから何かを指示される度に震えが走るけど……」
応えながら震えを鎮めるように両腕を抱える。
「……グレイス・カーライル艦長……副社長ですね……あの方も、とても素敵な方ですね……女性艦長として…私の観てきた限りでは1番だと思います……」
ローズ・クラーク副長が感心して言う。
「……そうね……あれくらいの包容力を、いつか持ちたいわね……」
と、カーラ・ブオノ・マルティーヌ。
皆もそれぞれに頷いた。
「……激励壮行会の時にチラッとアドル主宰に言っていたのが聴こえたんだけど、私に弟がいるなら、きっとアドルさんのような人だろうって……」
シエナが逸話を口にすると皆、感嘆の声を挙げた。
「……アドル主宰が予測されたチャレンジ・ミッションですけど、聴いていると本当にありそうですね……怖いくらいです……」
メアリー・ケイト・シェルハートが言う。
「……アドル主宰との付き合いが短いか彼への理解がまだ浅い人なら、彼の言動を怖いと感じる人もいるでしょう……私達だってそんなに付き合いが長いわけじゃないけど……アドルさんよりもっと怖くて悲しい人を知ってからは……主宰がどんなにショックを伴うような内容を言動で示されたとしても……不安にはなっても怖いと感じる事は、もうないでしょうね……」
リーア・ミスタンテが静かに、強い意志を感じさせて言う。
「……奥様ね? 」
と、カーラ。
「……そう……アドル主宰のご家族を知ってから……私達が一番に守らなければならないのは、奥様とお嬢さんになったのよ……」
と、シエナ・ミュラー。
「……それにしてもトップ・コアのメンバーが6人も来ていたなんて……絶対にアドルさんを探りに来ていたって訳よね? 」
と、トリッシュ・ヴァンサンティン。
「……そうね……」
シエナは一言で応じた。
「……シエナ……アタシね……何だかアドルさんから通話が繋がるような気がしてるんだよね……」
唐突にハンナが言う。
「…あら、そうなの? 」
「……実は私もそんな気がしてるんだよね……」
と、リーアも応じた。
その5秒後に、シエナの端末から着信音が流れる……少し驚いたシエナが端末を取り出して通話を繋いだ。
「…はい、シエナです…あ、艦長…」
「…ナンバー・ワン…スピーカーで頼む…」
「…分かりました…」
応えてスピーカーに切り替え、ボリュームを最大に上げる。
「…皆さん、こんばんは。アドル・エルクです……突然に通話を繋ぎましたのは、皆さんにお詫びを申し上げる為です……如何に好意で引き受けてくれた、と言う事であっても……これは完全に私の私的な用事です……その用事を処理する為に『ディファイアント』のスタッフはおろか、同盟参画各艦の副長の皆さん迄をも巻き込んで、用事を言い付けて私の社宅に向かわせてしまったのは、私の完全な誤りであり、間違いであり、失態でした……端末越しで本当に申し訳ありませんが……伏して謝罪申し上げます……艦長の皆さんにも、申し訳ない想いで一杯です……今更償いようもありませんが……今からでも、ご自由に行動なさって下さい……シエナ副長…リーア機関部長…カウンセラー…今からでも副長の皆さんを、ご希望の場所に迄お送りして差し上げて下さい……君達3人にも本当に申し訳ない事をした……心から謝る……償いは後日に必ずさせて貰うので、今はこの通話だけで許して欲しい…本当に申し訳ない……不適切な判断であり、言動でした……それでは、シエナ副長……後は宜しくお願いします……アドル・エルクより、以上……」
通話の切れた端末を暫く繁々と眺めてから、ポケットに仕舞う。
「……こう言う処があるから…愛さずには居られなくなる……のかも知れないわね……それでは、副長の皆さん……どうしましょうか? 」
「……勿論、主宰の社宅に連れて行って下さい……今更何処にも行けません……」
ローズ・クラーク副長が応じる……他の3人も微笑みつつ頷いた。
「……主宰に女心が解るのは、いつ頃になるかしらね(笑)? 」
と、ハンナ。
「……ファースト・シーズンの半分くらいで、解ってくれれば好いんじゃない(笑)? 」
と、リーア。
「……さあ、ちょっと急いで行くわよ! 」
と、シエナ。
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