247 / 292
地上界にて…
ホテル『クライトン・グラードサルマン』35F スペシャル・スイート
しおりを挟む
日頃から業務提携支援関係の深い賓客を招き、迎えての接待を目的としたディナーパーティーは終了した。
ホテルの正面玄関で迎えのリムジンに乗り込み、帰途に就く賓客の皆様を頭を下げつつ見送った我々は、取り敢えずまた2階のラウンジ・バー『パール・オーシャン』に戻って労をねぎらい合う事にした。
全員でお互いの顔がよく観えるように、また大テーブルに陣取る。
今度はリサとシエナが、すかさず私の両隣に座る……エイミーとアシュリーもそうしようとしたのだが、今回は及ばずにリサの左隣とシエナの右隣に座った。
「……皆さん、今夜は本当にお疲れ様でした。ご苦労様でした。特にお手伝いに来て下さった皆さんには、感謝の言葉もありません……ありがとうございました……少しこちらで寛いで、お話など交わしながら休んで頂きましたら……お帰りの手配については、お申し付け下さい……どちらへでもお送りさせて頂きます……何かお飲みになりますか? 」
「……甘くなく軽いソーダ水をお願いします……常務、今夜のような接待はどの程度の頻度で考えていますか? 」
「……そうですね……理想を言えば、半年に1度程度がベストでしょうか……」
「……また今夜と同じような形態でやるんでしたら、次は男性艦長達も呼びますよ……私ばっかり喋るってのは、もう勘弁して欲しいですから……」
「……アドルさん……今夜は上手に話す事も、ろくにお手伝いも出来ずに申し訳ありませんでした……次回にも呼んで頂ければきっとお役に立ちますので、どうかお許し下さい……」
メアリー・ケイト・シェルハート副長が、申し訳なさそうに頭を下げる。
「……いやいや、そんな……頭を上げて下さい、シェルハート副長……今夜は来て下さっただけでも感謝に堪えません……大丈夫ですよ……そんなに無茶な事は言われませんでしたから……本当にありがとうございました……お疲れ様でしたね……今は寛いで、感想などお聞かせ下さい……」
「……あの、アドル主宰……私こそ何もお手伝い出来ずに申し訳ありませんでした……私だって同盟に参画する艦長なのに……私だって接待の席でお客様を持て成した経験は何度もありましたのに……今夜は何故か何も出来ませんでした……本当に申し訳ありませんでした……何だかその……アドル主宰のお話を、ただ感動するような……痺れるような感覚で聴いていただけでした……すみませんでした……また次の機会にでも呼んで頂ければ、私もきっとお役に立ちますので、今夜はお許し下さい……」
「……アシュリー艦長……本当に大丈夫ですから、気にしないで下さい……貴女が居てくれたからこそ、無茶な事も言われませんでした……貴女の存在と、その魅力のお陰です……感謝しています……今日はお疲れ様でした……今はリラックスして、寛いで下さい……ああ、そうだ……パーティーの中ではご紹介出来ませんでしたね……遅くなってしまって申し訳ありません……こちらが営業本部チーフ・ディレクターのエリック・カンデル……そしてあちらが、営業本部長のハーマン・パーカー常務です……常務、チーフ・カンデル……こちらがアシュリー・アードランド艦長……宣伝・広告代理店『フィニアス・ファーヴ』にお勤めです……」
「……は、あの…初めまして。ご挨拶が遅くなりました……アシュリー・アードランドです……今夜はあの……差し出がましくお手伝いに参上致しました…が、何も出来ずに申し訳ありませんでした……アドル主宰の下で【『ディファイアント』共闘同盟】に参画させて頂いております『カレドン・カサンドラ』の艦長です……ですが普段は、宣伝・広告代理店『フィニアス・ファーヴ』にて広告営業プレゼンスの主任として勤務しております……今回頂きました、この貴重なご縁に感謝申し上げますと共に、これからより善い業務上のお付き合いも宜しければお願いしたいと思いまして、ご挨拶を申し上げます……宜しくお願いします……」
「……初めまして、アシュリー・アードランド主任……弊社常務のハーマン・パーカーです……そしてこちらがエリック・カンデル・チーフ・ディレクター……含めまして、これからも宜しくお願い致します……今夜はお手伝いに来て頂きまして、誠に感謝しております……お疲れ様でした……暫く寛がれて落ち着かれましたら、お帰りの手配をさせて頂きます……この場ではひと先ず、連絡先の交換をさせて頂きまして……後日ご連絡を頂いた上で、お話を伺う事と致しましょう……それで宜しいでしょうか? 」
「……あ、はい。ご丁寧なご挨拶をありがとうございます……改めまして、ご連絡させて頂きます……今夜はお会い出来て本当に良かったです……感謝申し上げます……ありがとうございました……また、引き合わせて下さいましたアドル・エルク主宰にも感謝申し上げます……本当にありがとうございました……」
彼女からPIDカードのコピーを2枚貰い、チーフ・カンデルに手渡す……チーフ・カンデルは常務からカードを貰い、自分のそれと併せて私にくれたので、そのまま彼女に手渡した。
「……それで? どうでしたかね、今夜は……成功ですかね? 」
「……充分に成功ですわね……全く問題ないと思いますよ……」
「……そりゃ好かった。グレイス艦長のお墨付きが貰えたなら、安心ですよ……いやそれにしても……トップコアメンバーが6人もいらっしゃったとはね……これは予想を超えていましたね……ついでにトップコアの真意を訊いてみれば好かったかな? 案外、ノリで答えてくれたかもね……」
「……トップコアの真意については、いずれ明らかになるでしょう……色々な方面からも聴こえて来るでしょうから……その……リサさんからも聞きましたが、サイン・バードさん? の方面からも、ね……」
「……それで、どうする、アドル? 帰るのか? 」
「……いや…えらい疲れたんで、今夜はここに泊まりたいんですけど好いスか? 」
「……好いだろ? アドル主宰が泊まってくれるとなれば、取って置きの部屋を用意してくれるだろ? 」
「……別にどこの部屋でも好いですけどね……それでね……やって貰える人が居たら頼みたいんだけど……詳しい内容はテキストメッセージで送るから、明日追加で艦内に持ち込む私物を提出するんだよ……それらを揃えてまとめて、持ち出しやすいように整えて欲しいんだけど……誰かやってくれる? 」
「……すみません…今夜はちょっと……」
「……好いよ、リサさん。無理しないで……」
シエナとハンナとリーアが顔を見合わせる。
「……では、私とハンナとリーアで……」
「……私も行きます! 」
「私も! 」
「私も参ります…」
「私もお手伝い致します……」
それらの声がほぼ同時にあがって4人の女性の手が挙がる……観ると、カーラ・ブオノ・マルティーヌ副長にローズ・クラーク副長……メアリー・ケイト・シェルハート副長にトリッシュ・ヴァンサンティン副長だ。
「……あのさ……7人も行ってやる程の仕事じゃないし、もう時間も遅いから帰った方が良いんじゃないの? 」
「……大丈夫です……それに、アドル主宰が普段生活していらっしゃるお宅がどのような所か、興味がありますので……」
「……また、同盟に参画する副長として、主宰の居宅を確認するのは任務の一環であると認めます……」
「……ああ、はあ……やって頂けるんであれば、お願いします……7人でやって頂ければ、15分も掛からないでしょう……ナンバー・ワン、君の端末にテキストは送るから、着いたら手分けして頼む……終わったら、帰りの手配も頼むよ……」
「……シエナさん、これをお預けしますので使って下さい。フルにチャージしてあります……」
「……ありがとう、リサさん。お預かりします……」
そう言って、シエナはリサからビット・カードを受け取った。
「……あの…もしも宜しければ、私もここに泊まらせて頂きたいのですけれども……家が遠いものですから……」
と、エイミー・カールソン艦長。
「……私も出来ればお願いします……公共の交通機関がもう厳しいもので……」
と、アシュリー・アードランド艦長。
「……私は、明朝のお世話係として宿泊します……」
と、マレット・フェントン補給支援部長。
「……私も同様にお世話係として残ります……」
と、エドナ・ラティス砲術長。
「……私は保安部長として、宿泊される艦長方の警護を致します……」
と、フィオナ・コアー保安部長。
常務が左の内ポケットから何かを取り出して、リサさんに手渡した。
「……リサ・ミルズさん、これを使って宿泊の決済とお帰りの手配を頼みます。明日、返してくれれば好いですから……」
「……はい……これは? 」
「……ビット・ディスケンサー……まだ一般には出回ってないけどね……」
「……分かりました。お借りします……」
「……では、皆さん……長々とお引き留め致しまして、誠に申し訳ありませんでした……もう夜も更けて遅いですので、どうぞお気を付けてお帰り下さい……皆さんの宿泊並びにお帰りの手配は、こちらでつつがなく調えさせて頂きますので、どうぞご心配なさらずに……繰り返して申し上げますが、今回のご協力には本当に感謝致します……また何時でもお気軽に、弊社をお訪ね下さい……挙って歓迎させて頂きます……では、好い夢でお休み下さい……それではまた……」
そう言い終えてハーマン・パーカー常務は立ち上がり、一礼を施した。
私も立ち上がって一人一人と握手を交わし、労った。私の社宅へと向かう7人には特に気を付けるようにと言い含め、その注意を促した。
「……常務……今日は呼んで頂いて、ありがとうございました。リサさん……明日はここから出社するんで、車を廻して下さい……チーフ……明日は同盟に参画希望の艦長達を面談して、終わり次第退社しますので……後は宜しく……グレイス艦長、カーネル副長、フローレンス参謀……明日の面談では、同席をお願いします……ハル参謀……今日来てくれた皆の、帰りの手配を確認して下さい……スタッフ・クルーの皆! 今夜は手伝ってくれて、本当にどうもありがとう! 必ず時間を作って皆一人一人のご家族、関係者の皆さんに対しての挨拶をしに行くよ……今日は気を付けて帰って下さい。本当に、どうもありがとう……」
改めて一人一人とハグを交わして送り出す……リサとは、握手を交わして別れた。
その20分後……ホテル『クライトン・グラードサルマン』の35階……ラクシュリイ・ラウンジ・ホール。
「……アドルさん、スペシャル・スイート3502 確認しました。安全です……」
「……ありがとう、フィオン。しかし、すごいホテルだね……初めて観たよ……」
「……私もです……」
「……いつか、アリソンと泊まりたいな……」
「……分かります……」
「……君の部屋は? 」
「……こちらの直下です……両隣がエイミー・カールソン艦長と、アシュリー・アードランド艦長のお部屋となっています……」
「……分かった。ここで一服してから、部屋に入るよ……」
「……分かりました。私は直下に居ますので、何かあれば端末に……」
「……分かったよ、お疲れ様……」
私達はお互いに歩み寄り、抱き合って3秒キスを交わし、フィオナは笑顔で離れてリフトに乗った。
ホールのDD(ドリンク・ディスペンサー)にコーヒーを出させる。凄く熱いコーヒーが出た。
ソーサーごと持って、灰皿スタンドの近くに座る。凄く柔らかいソファーだ。
美味い! DDに出させたコーヒーとしては、1番美味いと感じた。
マスター・グレード・プレミアム・シガレットを取り出して咥え、点ける。
誰かと通話を繋ぐには、もう遅い時間だ。シエナの端末にテキスト・メッセージはもう送った。仲良くやってくれれば好いな。
アリソンとアリシアの事を考える。次の出航までに短時間でも好い。自宅に戻らないと。
10分間、コーヒーとシガレットを楽しんだ。カップとソーサーを返して、部屋に入る。広くて豪華だが、華美ではない。
コートと上着を脱いで吊るし、キッチンに入って色々と観る。うん……一通りには揃っている。
色々と取り出しながら、フィオナに通話を繋ぐ。
「……ああ、俺だよ……全員、この部屋に集合だ……ミルクティーを淹れるよ……」
ホテルの正面玄関で迎えのリムジンに乗り込み、帰途に就く賓客の皆様を頭を下げつつ見送った我々は、取り敢えずまた2階のラウンジ・バー『パール・オーシャン』に戻って労をねぎらい合う事にした。
全員でお互いの顔がよく観えるように、また大テーブルに陣取る。
今度はリサとシエナが、すかさず私の両隣に座る……エイミーとアシュリーもそうしようとしたのだが、今回は及ばずにリサの左隣とシエナの右隣に座った。
「……皆さん、今夜は本当にお疲れ様でした。ご苦労様でした。特にお手伝いに来て下さった皆さんには、感謝の言葉もありません……ありがとうございました……少しこちらで寛いで、お話など交わしながら休んで頂きましたら……お帰りの手配については、お申し付け下さい……どちらへでもお送りさせて頂きます……何かお飲みになりますか? 」
「……甘くなく軽いソーダ水をお願いします……常務、今夜のような接待はどの程度の頻度で考えていますか? 」
「……そうですね……理想を言えば、半年に1度程度がベストでしょうか……」
「……また今夜と同じような形態でやるんでしたら、次は男性艦長達も呼びますよ……私ばっかり喋るってのは、もう勘弁して欲しいですから……」
「……アドルさん……今夜は上手に話す事も、ろくにお手伝いも出来ずに申し訳ありませんでした……次回にも呼んで頂ければきっとお役に立ちますので、どうかお許し下さい……」
メアリー・ケイト・シェルハート副長が、申し訳なさそうに頭を下げる。
「……いやいや、そんな……頭を上げて下さい、シェルハート副長……今夜は来て下さっただけでも感謝に堪えません……大丈夫ですよ……そんなに無茶な事は言われませんでしたから……本当にありがとうございました……お疲れ様でしたね……今は寛いで、感想などお聞かせ下さい……」
「……あの、アドル主宰……私こそ何もお手伝い出来ずに申し訳ありませんでした……私だって同盟に参画する艦長なのに……私だって接待の席でお客様を持て成した経験は何度もありましたのに……今夜は何故か何も出来ませんでした……本当に申し訳ありませんでした……何だかその……アドル主宰のお話を、ただ感動するような……痺れるような感覚で聴いていただけでした……すみませんでした……また次の機会にでも呼んで頂ければ、私もきっとお役に立ちますので、今夜はお許し下さい……」
「……アシュリー艦長……本当に大丈夫ですから、気にしないで下さい……貴女が居てくれたからこそ、無茶な事も言われませんでした……貴女の存在と、その魅力のお陰です……感謝しています……今日はお疲れ様でした……今はリラックスして、寛いで下さい……ああ、そうだ……パーティーの中ではご紹介出来ませんでしたね……遅くなってしまって申し訳ありません……こちらが営業本部チーフ・ディレクターのエリック・カンデル……そしてあちらが、営業本部長のハーマン・パーカー常務です……常務、チーフ・カンデル……こちらがアシュリー・アードランド艦長……宣伝・広告代理店『フィニアス・ファーヴ』にお勤めです……」
「……は、あの…初めまして。ご挨拶が遅くなりました……アシュリー・アードランドです……今夜はあの……差し出がましくお手伝いに参上致しました…が、何も出来ずに申し訳ありませんでした……アドル主宰の下で【『ディファイアント』共闘同盟】に参画させて頂いております『カレドン・カサンドラ』の艦長です……ですが普段は、宣伝・広告代理店『フィニアス・ファーヴ』にて広告営業プレゼンスの主任として勤務しております……今回頂きました、この貴重なご縁に感謝申し上げますと共に、これからより善い業務上のお付き合いも宜しければお願いしたいと思いまして、ご挨拶を申し上げます……宜しくお願いします……」
「……初めまして、アシュリー・アードランド主任……弊社常務のハーマン・パーカーです……そしてこちらがエリック・カンデル・チーフ・ディレクター……含めまして、これからも宜しくお願い致します……今夜はお手伝いに来て頂きまして、誠に感謝しております……お疲れ様でした……暫く寛がれて落ち着かれましたら、お帰りの手配をさせて頂きます……この場ではひと先ず、連絡先の交換をさせて頂きまして……後日ご連絡を頂いた上で、お話を伺う事と致しましょう……それで宜しいでしょうか? 」
「……あ、はい。ご丁寧なご挨拶をありがとうございます……改めまして、ご連絡させて頂きます……今夜はお会い出来て本当に良かったです……感謝申し上げます……ありがとうございました……また、引き合わせて下さいましたアドル・エルク主宰にも感謝申し上げます……本当にありがとうございました……」
彼女からPIDカードのコピーを2枚貰い、チーフ・カンデルに手渡す……チーフ・カンデルは常務からカードを貰い、自分のそれと併せて私にくれたので、そのまま彼女に手渡した。
「……それで? どうでしたかね、今夜は……成功ですかね? 」
「……充分に成功ですわね……全く問題ないと思いますよ……」
「……そりゃ好かった。グレイス艦長のお墨付きが貰えたなら、安心ですよ……いやそれにしても……トップコアメンバーが6人もいらっしゃったとはね……これは予想を超えていましたね……ついでにトップコアの真意を訊いてみれば好かったかな? 案外、ノリで答えてくれたかもね……」
「……トップコアの真意については、いずれ明らかになるでしょう……色々な方面からも聴こえて来るでしょうから……その……リサさんからも聞きましたが、サイン・バードさん? の方面からも、ね……」
「……それで、どうする、アドル? 帰るのか? 」
「……いや…えらい疲れたんで、今夜はここに泊まりたいんですけど好いスか? 」
「……好いだろ? アドル主宰が泊まってくれるとなれば、取って置きの部屋を用意してくれるだろ? 」
「……別にどこの部屋でも好いですけどね……それでね……やって貰える人が居たら頼みたいんだけど……詳しい内容はテキストメッセージで送るから、明日追加で艦内に持ち込む私物を提出するんだよ……それらを揃えてまとめて、持ち出しやすいように整えて欲しいんだけど……誰かやってくれる? 」
「……すみません…今夜はちょっと……」
「……好いよ、リサさん。無理しないで……」
シエナとハンナとリーアが顔を見合わせる。
「……では、私とハンナとリーアで……」
「……私も行きます! 」
「私も! 」
「私も参ります…」
「私もお手伝い致します……」
それらの声がほぼ同時にあがって4人の女性の手が挙がる……観ると、カーラ・ブオノ・マルティーヌ副長にローズ・クラーク副長……メアリー・ケイト・シェルハート副長にトリッシュ・ヴァンサンティン副長だ。
「……あのさ……7人も行ってやる程の仕事じゃないし、もう時間も遅いから帰った方が良いんじゃないの? 」
「……大丈夫です……それに、アドル主宰が普段生活していらっしゃるお宅がどのような所か、興味がありますので……」
「……また、同盟に参画する副長として、主宰の居宅を確認するのは任務の一環であると認めます……」
「……ああ、はあ……やって頂けるんであれば、お願いします……7人でやって頂ければ、15分も掛からないでしょう……ナンバー・ワン、君の端末にテキストは送るから、着いたら手分けして頼む……終わったら、帰りの手配も頼むよ……」
「……シエナさん、これをお預けしますので使って下さい。フルにチャージしてあります……」
「……ありがとう、リサさん。お預かりします……」
そう言って、シエナはリサからビット・カードを受け取った。
「……あの…もしも宜しければ、私もここに泊まらせて頂きたいのですけれども……家が遠いものですから……」
と、エイミー・カールソン艦長。
「……私も出来ればお願いします……公共の交通機関がもう厳しいもので……」
と、アシュリー・アードランド艦長。
「……私は、明朝のお世話係として宿泊します……」
と、マレット・フェントン補給支援部長。
「……私も同様にお世話係として残ります……」
と、エドナ・ラティス砲術長。
「……私は保安部長として、宿泊される艦長方の警護を致します……」
と、フィオナ・コアー保安部長。
常務が左の内ポケットから何かを取り出して、リサさんに手渡した。
「……リサ・ミルズさん、これを使って宿泊の決済とお帰りの手配を頼みます。明日、返してくれれば好いですから……」
「……はい……これは? 」
「……ビット・ディスケンサー……まだ一般には出回ってないけどね……」
「……分かりました。お借りします……」
「……では、皆さん……長々とお引き留め致しまして、誠に申し訳ありませんでした……もう夜も更けて遅いですので、どうぞお気を付けてお帰り下さい……皆さんの宿泊並びにお帰りの手配は、こちらでつつがなく調えさせて頂きますので、どうぞご心配なさらずに……繰り返して申し上げますが、今回のご協力には本当に感謝致します……また何時でもお気軽に、弊社をお訪ね下さい……挙って歓迎させて頂きます……では、好い夢でお休み下さい……それではまた……」
そう言い終えてハーマン・パーカー常務は立ち上がり、一礼を施した。
私も立ち上がって一人一人と握手を交わし、労った。私の社宅へと向かう7人には特に気を付けるようにと言い含め、その注意を促した。
「……常務……今日は呼んで頂いて、ありがとうございました。リサさん……明日はここから出社するんで、車を廻して下さい……チーフ……明日は同盟に参画希望の艦長達を面談して、終わり次第退社しますので……後は宜しく……グレイス艦長、カーネル副長、フローレンス参謀……明日の面談では、同席をお願いします……ハル参謀……今日来てくれた皆の、帰りの手配を確認して下さい……スタッフ・クルーの皆! 今夜は手伝ってくれて、本当にどうもありがとう! 必ず時間を作って皆一人一人のご家族、関係者の皆さんに対しての挨拶をしに行くよ……今日は気を付けて帰って下さい。本当に、どうもありがとう……」
改めて一人一人とハグを交わして送り出す……リサとは、握手を交わして別れた。
その20分後……ホテル『クライトン・グラードサルマン』の35階……ラクシュリイ・ラウンジ・ホール。
「……アドルさん、スペシャル・スイート3502 確認しました。安全です……」
「……ありがとう、フィオン。しかし、すごいホテルだね……初めて観たよ……」
「……私もです……」
「……いつか、アリソンと泊まりたいな……」
「……分かります……」
「……君の部屋は? 」
「……こちらの直下です……両隣がエイミー・カールソン艦長と、アシュリー・アードランド艦長のお部屋となっています……」
「……分かった。ここで一服してから、部屋に入るよ……」
「……分かりました。私は直下に居ますので、何かあれば端末に……」
「……分かったよ、お疲れ様……」
私達はお互いに歩み寄り、抱き合って3秒キスを交わし、フィオナは笑顔で離れてリフトに乗った。
ホールのDD(ドリンク・ディスペンサー)にコーヒーを出させる。凄く熱いコーヒーが出た。
ソーサーごと持って、灰皿スタンドの近くに座る。凄く柔らかいソファーだ。
美味い! DDに出させたコーヒーとしては、1番美味いと感じた。
マスター・グレード・プレミアム・シガレットを取り出して咥え、点ける。
誰かと通話を繋ぐには、もう遅い時間だ。シエナの端末にテキスト・メッセージはもう送った。仲良くやってくれれば好いな。
アリソンとアリシアの事を考える。次の出航までに短時間でも好い。自宅に戻らないと。
10分間、コーヒーとシガレットを楽しんだ。カップとソーサーを返して、部屋に入る。広くて豪華だが、華美ではない。
コートと上着を脱いで吊るし、キッチンに入って色々と観る。うん……一通りには揃っている。
色々と取り出しながら、フィオナに通話を繋ぐ。
「……ああ、俺だよ……全員、この部屋に集合だ……ミルクティーを淹れるよ……」
0
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
【『星屑の狭間で』『パラレル2』(アドル・エルク独身編)】
トーマス・ライカー
SF
舞台は、数多ある地球圏パラレルワールドのひとつ。
超大規模、超高密度、超高速度、超圧縮高度複合複層処理でのハイパー・ヴァーチャル・エクステンデッド・ミクシッド・リアリティ(超拡張複合仮想現実)の技術が、一般にも普及して定着し、ハイパーレベル・データストリーム・ネットワークが一般化した未来社会。
主人公、アドル・エルクは36才で今だに独身。
インターナショナル・クライトン・エンタープライズ(クライトン国際総合商社)本社第2棟・営業3課・セカンドセクション・フォースフロアで勤務する係長だ。
政・財・官・民・公・軍がある目的の為に、共同で構築した『運営推進委員会』
そこが企画した、超大規模ヴァーチャル体感サバイバル仮想空間艦対戦ゲーム大会。
『サバイバル・スペース・バトルシップ』
この『運営推進委員会』にて一席を占める、データストリーム・ネットワーク・メディア。
『トゥーウェイ・データ・ネット・ストリーム・ステーション』社が企画した
『サバイバル・スペースバトルシップ・キャプテン・アンド・クルー』と言う連続配信リアル・ライヴ・ヴァラエティショウが、民間から男性艦長演者10名と女性艦長演者10名を募集し、アドル・エルクはそれに応募して当選を果たしたのだ。
彼がこのゲーム大会に応募したのは、これがウォー・ゲームではなく、バトル・ゲームと言う触れ込みだったからだ。
ウォー・ゲームであれば、参加者が所属する国・団体・勢力のようなものが設定に組み込まれる。
その所属先の中での振る舞いが面倒臭いと感じていたので、それが設定に組み込まれていない、このゲームが彼は気に入った。
だがこの配信会社は、艦長役演者に当選した20名を開幕前に発表しなかった。
連続配信リアル・ライヴ・ヴァラエティショウが配信されて初めて、誰が選ばれたのかが判る仕掛けにしたのだ。
艦長役演者に選ばれたのが、今から90日前。以来彼は土日・祝日と終業後の時間を使って準備を進めてきた。
配信会社から送られた、女性芸能人クルー候補者名簿から自分の好みに合い、能力の高い人材を副長以下のクルーとして選抜し、面談し、撮影セットを見学し、マニュアルファイルを頭に叩き込み、彼女達と様々な打ち合わせや協議を重ねて段取りや準備を積み上げて構築してきた。
彼の目的はこのゲーム大会を出来る限りの長期間に亘って楽しむ事。
会社からの給与とボーナス・艦長報酬と配信会社からのギャラ・戦果に応じた分配賞金で大金持ちになる事と、自分が艦長として率いる『ディファイアント』に経験値を付与し続けて、最強の艦とする事。
スタッフ・クルー達との関係構築も楽しみたい。
運営推進委員会の真意・本当の目的は気になる処だが、先ずは『ディファイアント』として、戦い抜く姿を観せる事だな。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】
一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。
しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。
ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。
以前投稿した短編
【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて
の連載版です。
連載するにあたり、短編は削除しました。
悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる