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地上界にて…
慰労夕食会
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それ以降は食べながら、飲みながらで話を続けていった。
「……『クライトン』にはカメラやマイクも付いてないですから、何をしようが喋ろうが、気兼ねする必要もなくて好かったでしょう? 」
「……そう思える余裕なんて、全然無かったですよ……ずっと緊急事態が続いていて、対応に追われるばかりでしたね……操艦や戦闘にも、慣れてないですから……」
カーネル副長は、やれやれと言った感じだ。
「……それは直ぐに慣れますよ。今回は総てチャレンジ・ミッションと言う事だったので、どんなに撃たれて叩かれても撃沈の判定は出ないプログラムでしたからね……総てが好い経験となっている筈です……ああ…カメラとマイクは付いてなくても、親睦パーティーはやらなきゃいけなかったんですよね? どんな風にやりました? 」
「……それはもう……宴会+学芸会に、+αしたような感じでしたよ……バーラウンジがゆったりとした、とても居心地の好い場所でしたので……私も含めて皆さん……とても好く楽しめたと思います……」
「…スコットは好い盛り上げ役になったでしょう? 」
「…それはもう…本当に面白い方ですね…」
「……同盟各艦に配付した『ディファイアント』の戦闘記録は、役に立ちましたか? 」
「……それは勿論、大変に役立ちました……勉強にもなりました……ありがとうございました……」
「……お二方とも、疲れていらっしゃるようですね……無理も無いと思います……特別功労休暇は、貴方方にも当て嵌まるのではありませんか? 明日も出社されるのでしょう? 早くお帰りになって、休まれた方が好い……」
「……深いお気遣いをありがとうございます。アドルさん……私達は役員ですし、会社での業務は激務と言う訳でもありませんので、これくらいでは休めませんよ……」
「……是非とも次の出航迄には、心身の疲れを癒して下さい……もうタンクベッドは設置されていますよね? 」
「……ええ、既に設置されています……昨夜はそれで休みましたので、疲れはかなり取れました……」
「……それは好かったです……お疲れでいらっしゃるようですので、あまり難しい話はしない方が良いとは思うのですがひとつだけ……次回のゲームフィールドはグッと狭まって、長くても1日走れば同盟全艦が合流出来るでしょう……細かい予測と指示は出航直後にも出しますが……4隻が合流出来たらそのポイントを集結ポイントとして、その4隻には『ディファイアント』が作ったのと同じ、大質量誘導弾の成形作業に入って貰います……その4隻に、『クライトン』が入る可能性もありますので……それだけ憶えて置いて下さい……宜しくお願いします……」
「……分かりました……胸に留めて置きます……」
「……ありがとうございます……処で、明後日夜の接待についてなのですが……」
「……はい、何でしょう? 」
「……『クライトン』から出席されるのは、どなたでしょう? 」
「……私とカーネルと、フローレンスとベアトリスですね……『ディファイアント』からは、どなたですか? 」
「……『ディファイアント』も含めた、同盟に参画する各艦から……有志として参加して下さいます……人数は…私とリサさんを除いて、ちょうど40人ですね……」
「……そんなに来て頂けるのですか……」
「……ええ…こちらが接待するんですよ、と言う事で…少しお話をしてみた処……手伝わせて欲しいと言う事で…多数の応募を頂きましたのでね……」
「……そうだったのですか……すごいですね……」
「…はい…ま、皆さん女優さんですから…非常に華やかな席になるだろうとは思います……」
「……私もそう思います……」
「…それで…お招きするお客様方は…何名ぐらいになるんでしょうかね? 」
「…私もはっきりとは聞いていないのですが……20人は超えないだろうと思います……」
「……なるほど……この接待を1回やって……今後1年間はやらない腹積もりのようですね……」
「……そうかも知れません……」
「……とにかく…理不尽な事を言われなければ好いですよ……絶対優勝してくれとか、商品のPRをしてくれとか冗談じゃないですからね……」
「……それは大丈夫です……もし言われても、総てこちらで引き受けます……それも『ロイヤル・ロード・クライトン』の、役目の一つですから……」
「……申し訳ありません……」
「…どう致しまして…」
「……グレイス艦長……『クライトン』で参謀を務められるのは、フローレンス・スタンハーゲンさんですね? 」
ジン&ビターズを飲み干したハル・ハートリーがグラスを置いて訊いた。
「…ええ、そうですが……」
「……お時間の許せる範囲で結構ですので…同じ参謀として是非、お話したいです……」
「……私も其方のベアトリス・アードランドさんと、同じカウンセラーとしてお話したいですわ……勿論、お時間の許せる範囲内で……」
ハンナ・ウェアーもライト・ビアのボトルを置いて言う。
「……私も其方のシャーレイン・アンブローズさんと、同じ機関部長として意見を交換させて頂きたいです…今後の参考の為にも……」
リーア・ミスタンテも食べる手を止め、ナプキンで口を拭ってからそう言うと……
「……私も御社のエスター・アーヴ総務部長さんとお話したいです……同じ補給支援部長として……」
マレット・フェントンが、最後にそう申し入れて締め括った。
「…(笑)…皆さん、ありがとうございます(笑)…そう言って頂いて本当に嬉しいですし、光栄です……『クライトン』のスタッフ達も喜ぶと思います…本当に……フィフス・ステージまでクリアされた皆さんとお話出来るなんて、願っても無い事でしょう……」
「……喜んで頂けて、善かったですよ……ここに来られて初めて、グレイスさんらしい素敵な笑顔が観れました……」
「……ねえ、シエナさん……アドルさんって、こんなにお口がお上手でしたっけ? 私が感じていたアドルさんの印象とは、また違った側面ですね……」
「…(笑)…私達も最初は気付きませんでしたし、感じ採れませんでした……ですが……アドルさん手ずからのお茶…手料理…スイーツ…カクテル等を頂きながら…話し合いを重ね……弾き語りを聴かせて貰う頃にはもう……」
「…(笑)…よく分かりますよ、シエナさん……私も解って来ました……アドルさんの……気付く迄に時間の掛かる……強烈な魅力がね……その……時間が掛かると言う点も……アドルさんの魅力に強く惹き込まれる……言わば、隠し味ですね……」
「…! その通りです! グレイス艦長!……そのお言葉で私もやっと腑に落ちました……アドル艦長の要請でクルー全員の心理動向データベースを作ったのですが……アドルさんのページだけ、まだ完成していない気がしていました……これでやっと完成させられます……ありがとうございました……」
ハンナ・ウェアーが晴々しい感動の面持ちで、グレイス・カーライル副社長にそう告げる。他のスタッフ達も大きく頷きながら、感動の面持ちを観せる。私とカーネル副長は、少々呆気に捉われていた。
「……どう致しまして…ハンナ・ウェアーさん……ちょっとした思い付きを率直に述べさせて頂いただけですのに、そんなに感じ入って頂けて…私の方こそ光栄です……ありがとうございました……」
「……何だか、あの……(笑)オカズのツマミにされているような気が……しないでもありませんが(笑)……まあ、好いでしょう……ああ、それはそうと…息子さんの反応は如何でしたか? 」
「…はい(笑)…お陰様で…喜んでくれていました…大変に……『クライトン』の報道は、あまりありませんでしたので…『ディファイアント』の活躍には、感激していたようです……」
「……グレイスさん……実は私の同僚に、マーリー・マトリン女史と言う方がおりまして……現状では、非公式及び個人的なのですが……我が同盟のスポークスマンとしての業務を……ボランティア協力者と言うような立場で、要請しています……同盟がこのまま存続し続けて、活動資金が潤沢になりましたら……正式にオファーを出して、専従担当職としてその業務に就いて貰う可能性も視野に入れています……宜しければ……まあ、息子さん自身も宜しければ、ですけれども……同じオファーを息子さんにも出したいです……息子さんのお名前を教えて頂いても? 」
「……マイケル・カーライルと、イアン・カーライルの兄弟でして……マイケルが長男で、現在カレッジの2回生です……」
「……そうですか……ではマイケル君に…私の意向と連絡先を伝えて頂けますでしょうか? 」
「……分かりました…では、努めて率直に…客観的に…伝えて置きます…」
「…ありがとうございます……マイケル君から連絡がありましたら…直ぐにお報せします……」
「……宜しくお願いします……」
その後は、取り立てての話題も無く夕餉が進み、私は頃合いを見計らって食後のミルクティーとコーヒーを淹れに立つ。
食後の飲み物を全員分仕上げ、手伝って貰ってそれぞれの前に供し、自分もコーヒーを片手に座る。観ると既に、夕餉は終わりを告げたようだ。
「……アドルさん……そして、『ディファイアント』の皆さん……連絡もせず突然にお邪魔しましたのに、これ程の夕食をご馳走様して頂きまして、本当にありがとうございました…ご馳走様でした…本当に美味しかったです……アドルさんの優しい対応のお陰で、懸念も無くなりましたので……今夜はぐっすりと眠れるでしょう……」
「……私がスコットを2.3発殴って……貴女にも怒鳴り散らすと思いましたか(笑)?……」
「……ええ…その可能性もあると思いました……失礼な考えで、申し訳ありませんでしたが……今では、安心しています……」
「……スコットが1人で来たら、その可能性はありましたね……そうなる前に止めてくれと……ウチのメンバーには、言いましたが……」
「……私達が、今日訪問すると予測を? 」
カーネル副長が眼を瞠る。引かないで欲しいが仕方ない。
「……ええ…4人と迄は分かりませんでした……3人と迄は分かりましたが……まあ、もう終わりましたので…引かないで下さい……今頃はウチの砲術長と2人で……仲良くやっているでしょう……お引き留めしてしてしまっていたようで、申し訳ありません……タクシーをお呼びしましょうか? 」
「……大丈夫です……社用車で参りましたので……ドライヴァーに待機して貰っています……」
「……そうですか……では、その方にお土産をお持ちしましょう……マレットさん……適当に見繕って、パッケージをお願いします……」
「……分かりました……」
そう言ってマレットがキッチンに立つ。私は立ち上がって右手を差し出した。
「……今日は、わざわざこちらにまでおいで頂きまして、ありがとうございました……色々とお話が出来て、意見交換も出来て好かったです……次は、接待の席ですね……あまり無理のないようにこなして頂いて……心身の疲れを取って頂いて……土曜日の朝……お互いに元気で、お会いしましょう……宜しくお願いします……」
そう言いながら、2人と握手を交わす……リサとは握手しなかった。顔を見合わせて、頷き合うだけだった……マレットが綺麗な包装紙に包んだ料理のパッケージを、紙袋に入れて携えて来る……フィオナとシエナとハンナが、立ち上がった3人の後にさり気なく立つ。
「……では、お気を付けて……お車まで、この3人でお送りします……明後日には出社しますので、宜しくお願いします……」
「……ご馳走様でした、アドルさん……とても美味しかったですし……適切で安心出来る対応を採って頂いた事にも、深く感謝しております……今日はお世話になりました……明後日に会社でお会いしましょう……それでは……」
グレイス・カーライル副社長がそう応え、カーネル・ワイズ・フリードマン副社長とリサと一緒に3人で歩き出す……私は皆と一緒に彼等を玄関まで見送り、玄関から外へはフィオナとシエナとハンナとマレットが、付き添って出て行った。
リビングに戻って座る……漸く今日を無事に凌いだような気がする……自分の住処にずっと居たのに、存外に疲れが残った……4人が戻るには暫く掛かるだろう……同じく戻って来た皆に一服点けて来るからと言い置き、グレンフィデック・18年のボトルとグラスを用意し、コートを着てそれらを携え、ベランダに出る。
デッキチェアーに腰掛けて脚を伸ばす。そんなに寒くはない……出て行った7人の姿はもう観えない……ウィスキーグラスに、スリーフィンガーでモルトを注ぐ……煙草を1本取り出して咥え、点ける……リサは、プレミアムシガレットを買って来てくれなかったな……まあ良いか……喫い、蒸し、燻らせながら半口ずつモルトを含んで味のハーモニーを楽しみ、呑む……考えないし、浮かびもしない……まあ……好い落とし処だったかな……10分弱で喫い終わり、呑み終えた……灰皿で揉み消す……4人はもう戻っているだろう……まだベランダに留まって、煙草の臭いを夜風に吹き散らさせる……ちょっと寒さが堪えて来たので、室内に戻った。
もう4人とも、戻って来ている……様子を訊けば、無事に帰って行ったそうだ……また皆に断って、熱いシャワーで身体を温めた……上がってもうパジャマに着替える……リビングに戻って、座った。
「……リサさんと、話ませんでしたね? 」
と、ミーシャ・ハーレイが訊く。
「……そうだったね……まあ…彼女が口を開くとしたら、私が激昂した場合だっただろうな……」
「……3人とも早く寝めて、良く眠って貰えると好いな? 」
「……そうですね、本当に……」
と、ハンナ。
「……そうか……エドナとスコットなら、心配は要らないだろう……仲良くやっているだろうし…気を付けてもいるだろう……それで? 皆はどう感じて、どう思ったかな? 」
「……スコットさんの潔さ? にはある程度の感銘を受けましたが…今回のサプライズは、やはりやり過ぎでしたね……アドルさんが……怒るよりも前に強く落胆されていたのが…よく観て採れました……」
「……うん……適切な評をありがとう、シエナ……(笑)まあ、エドナが思いっ切り引っ叩いてくれたから…溜飲はかなり下がったよ(笑)……他にはあるかい? 」
「……もしも私達がいなくて……スコットさんが1人で来たら、かなり危なかったですね……大事に至らず、好かったです……私もエドナとスコットさんの2人については、心配していません……」
「……ありがとう、ハル参謀……」
その後、他の感想は取り立てて出なかった。皆で座り、私が注いだグレンフィデック・18年のモルト・カスクをチビチビと呑みながら取り留めのない話をする。
明日は、アリシア・シャニーン、エレーナ・キーン、パティ・シャノン、ロリーナ・マッケニットの4人が来る。この4人にもマッサージを施術するつもりだ。
今夜も私は、アイソレーション・タンクベッドで寝ませて貰う事にした。早くスッキリと目覚めたら、色々と確認したい事もある。これだけの人数が居ると、セクシャルなフィーリングにはなれないものだ。大家族のような雰囲気だな。
身体は疲れていないが、気疲れは自覚していたので…その後2時間で、私はタンクベッドに入った。
「……『クライトン』にはカメラやマイクも付いてないですから、何をしようが喋ろうが、気兼ねする必要もなくて好かったでしょう? 」
「……そう思える余裕なんて、全然無かったですよ……ずっと緊急事態が続いていて、対応に追われるばかりでしたね……操艦や戦闘にも、慣れてないですから……」
カーネル副長は、やれやれと言った感じだ。
「……それは直ぐに慣れますよ。今回は総てチャレンジ・ミッションと言う事だったので、どんなに撃たれて叩かれても撃沈の判定は出ないプログラムでしたからね……総てが好い経験となっている筈です……ああ…カメラとマイクは付いてなくても、親睦パーティーはやらなきゃいけなかったんですよね? どんな風にやりました? 」
「……それはもう……宴会+学芸会に、+αしたような感じでしたよ……バーラウンジがゆったりとした、とても居心地の好い場所でしたので……私も含めて皆さん……とても好く楽しめたと思います……」
「…スコットは好い盛り上げ役になったでしょう? 」
「…それはもう…本当に面白い方ですね…」
「……同盟各艦に配付した『ディファイアント』の戦闘記録は、役に立ちましたか? 」
「……それは勿論、大変に役立ちました……勉強にもなりました……ありがとうございました……」
「……お二方とも、疲れていらっしゃるようですね……無理も無いと思います……特別功労休暇は、貴方方にも当て嵌まるのではありませんか? 明日も出社されるのでしょう? 早くお帰りになって、休まれた方が好い……」
「……深いお気遣いをありがとうございます。アドルさん……私達は役員ですし、会社での業務は激務と言う訳でもありませんので、これくらいでは休めませんよ……」
「……是非とも次の出航迄には、心身の疲れを癒して下さい……もうタンクベッドは設置されていますよね? 」
「……ええ、既に設置されています……昨夜はそれで休みましたので、疲れはかなり取れました……」
「……それは好かったです……お疲れでいらっしゃるようですので、あまり難しい話はしない方が良いとは思うのですがひとつだけ……次回のゲームフィールドはグッと狭まって、長くても1日走れば同盟全艦が合流出来るでしょう……細かい予測と指示は出航直後にも出しますが……4隻が合流出来たらそのポイントを集結ポイントとして、その4隻には『ディファイアント』が作ったのと同じ、大質量誘導弾の成形作業に入って貰います……その4隻に、『クライトン』が入る可能性もありますので……それだけ憶えて置いて下さい……宜しくお願いします……」
「……分かりました……胸に留めて置きます……」
「……ありがとうございます……処で、明後日夜の接待についてなのですが……」
「……はい、何でしょう? 」
「……『クライトン』から出席されるのは、どなたでしょう? 」
「……私とカーネルと、フローレンスとベアトリスですね……『ディファイアント』からは、どなたですか? 」
「……『ディファイアント』も含めた、同盟に参画する各艦から……有志として参加して下さいます……人数は…私とリサさんを除いて、ちょうど40人ですね……」
「……そんなに来て頂けるのですか……」
「……ええ…こちらが接待するんですよ、と言う事で…少しお話をしてみた処……手伝わせて欲しいと言う事で…多数の応募を頂きましたのでね……」
「……そうだったのですか……すごいですね……」
「…はい…ま、皆さん女優さんですから…非常に華やかな席になるだろうとは思います……」
「……私もそう思います……」
「…それで…お招きするお客様方は…何名ぐらいになるんでしょうかね? 」
「…私もはっきりとは聞いていないのですが……20人は超えないだろうと思います……」
「……なるほど……この接待を1回やって……今後1年間はやらない腹積もりのようですね……」
「……そうかも知れません……」
「……とにかく…理不尽な事を言われなければ好いですよ……絶対優勝してくれとか、商品のPRをしてくれとか冗談じゃないですからね……」
「……それは大丈夫です……もし言われても、総てこちらで引き受けます……それも『ロイヤル・ロード・クライトン』の、役目の一つですから……」
「……申し訳ありません……」
「…どう致しまして…」
「……グレイス艦長……『クライトン』で参謀を務められるのは、フローレンス・スタンハーゲンさんですね? 」
ジン&ビターズを飲み干したハル・ハートリーがグラスを置いて訊いた。
「…ええ、そうですが……」
「……お時間の許せる範囲で結構ですので…同じ参謀として是非、お話したいです……」
「……私も其方のベアトリス・アードランドさんと、同じカウンセラーとしてお話したいですわ……勿論、お時間の許せる範囲内で……」
ハンナ・ウェアーもライト・ビアのボトルを置いて言う。
「……私も其方のシャーレイン・アンブローズさんと、同じ機関部長として意見を交換させて頂きたいです…今後の参考の為にも……」
リーア・ミスタンテも食べる手を止め、ナプキンで口を拭ってからそう言うと……
「……私も御社のエスター・アーヴ総務部長さんとお話したいです……同じ補給支援部長として……」
マレット・フェントンが、最後にそう申し入れて締め括った。
「…(笑)…皆さん、ありがとうございます(笑)…そう言って頂いて本当に嬉しいですし、光栄です……『クライトン』のスタッフ達も喜ぶと思います…本当に……フィフス・ステージまでクリアされた皆さんとお話出来るなんて、願っても無い事でしょう……」
「……喜んで頂けて、善かったですよ……ここに来られて初めて、グレイスさんらしい素敵な笑顔が観れました……」
「……ねえ、シエナさん……アドルさんって、こんなにお口がお上手でしたっけ? 私が感じていたアドルさんの印象とは、また違った側面ですね……」
「…(笑)…私達も最初は気付きませんでしたし、感じ採れませんでした……ですが……アドルさん手ずからのお茶…手料理…スイーツ…カクテル等を頂きながら…話し合いを重ね……弾き語りを聴かせて貰う頃にはもう……」
「…(笑)…よく分かりますよ、シエナさん……私も解って来ました……アドルさんの……気付く迄に時間の掛かる……強烈な魅力がね……その……時間が掛かると言う点も……アドルさんの魅力に強く惹き込まれる……言わば、隠し味ですね……」
「…! その通りです! グレイス艦長!……そのお言葉で私もやっと腑に落ちました……アドル艦長の要請でクルー全員の心理動向データベースを作ったのですが……アドルさんのページだけ、まだ完成していない気がしていました……これでやっと完成させられます……ありがとうございました……」
ハンナ・ウェアーが晴々しい感動の面持ちで、グレイス・カーライル副社長にそう告げる。他のスタッフ達も大きく頷きながら、感動の面持ちを観せる。私とカーネル副長は、少々呆気に捉われていた。
「……どう致しまして…ハンナ・ウェアーさん……ちょっとした思い付きを率直に述べさせて頂いただけですのに、そんなに感じ入って頂けて…私の方こそ光栄です……ありがとうございました……」
「……何だか、あの……(笑)オカズのツマミにされているような気が……しないでもありませんが(笑)……まあ、好いでしょう……ああ、それはそうと…息子さんの反応は如何でしたか? 」
「…はい(笑)…お陰様で…喜んでくれていました…大変に……『クライトン』の報道は、あまりありませんでしたので…『ディファイアント』の活躍には、感激していたようです……」
「……グレイスさん……実は私の同僚に、マーリー・マトリン女史と言う方がおりまして……現状では、非公式及び個人的なのですが……我が同盟のスポークスマンとしての業務を……ボランティア協力者と言うような立場で、要請しています……同盟がこのまま存続し続けて、活動資金が潤沢になりましたら……正式にオファーを出して、専従担当職としてその業務に就いて貰う可能性も視野に入れています……宜しければ……まあ、息子さん自身も宜しければ、ですけれども……同じオファーを息子さんにも出したいです……息子さんのお名前を教えて頂いても? 」
「……マイケル・カーライルと、イアン・カーライルの兄弟でして……マイケルが長男で、現在カレッジの2回生です……」
「……そうですか……ではマイケル君に…私の意向と連絡先を伝えて頂けますでしょうか? 」
「……分かりました…では、努めて率直に…客観的に…伝えて置きます…」
「…ありがとうございます……マイケル君から連絡がありましたら…直ぐにお報せします……」
「……宜しくお願いします……」
その後は、取り立てての話題も無く夕餉が進み、私は頃合いを見計らって食後のミルクティーとコーヒーを淹れに立つ。
食後の飲み物を全員分仕上げ、手伝って貰ってそれぞれの前に供し、自分もコーヒーを片手に座る。観ると既に、夕餉は終わりを告げたようだ。
「……アドルさん……そして、『ディファイアント』の皆さん……連絡もせず突然にお邪魔しましたのに、これ程の夕食をご馳走様して頂きまして、本当にありがとうございました…ご馳走様でした…本当に美味しかったです……アドルさんの優しい対応のお陰で、懸念も無くなりましたので……今夜はぐっすりと眠れるでしょう……」
「……私がスコットを2.3発殴って……貴女にも怒鳴り散らすと思いましたか(笑)?……」
「……ええ…その可能性もあると思いました……失礼な考えで、申し訳ありませんでしたが……今では、安心しています……」
「……スコットが1人で来たら、その可能性はありましたね……そうなる前に止めてくれと……ウチのメンバーには、言いましたが……」
「……私達が、今日訪問すると予測を? 」
カーネル副長が眼を瞠る。引かないで欲しいが仕方ない。
「……ええ…4人と迄は分かりませんでした……3人と迄は分かりましたが……まあ、もう終わりましたので…引かないで下さい……今頃はウチの砲術長と2人で……仲良くやっているでしょう……お引き留めしてしてしまっていたようで、申し訳ありません……タクシーをお呼びしましょうか? 」
「……大丈夫です……社用車で参りましたので……ドライヴァーに待機して貰っています……」
「……そうですか……では、その方にお土産をお持ちしましょう……マレットさん……適当に見繕って、パッケージをお願いします……」
「……分かりました……」
そう言ってマレットがキッチンに立つ。私は立ち上がって右手を差し出した。
「……今日は、わざわざこちらにまでおいで頂きまして、ありがとうございました……色々とお話が出来て、意見交換も出来て好かったです……次は、接待の席ですね……あまり無理のないようにこなして頂いて……心身の疲れを取って頂いて……土曜日の朝……お互いに元気で、お会いしましょう……宜しくお願いします……」
そう言いながら、2人と握手を交わす……リサとは握手しなかった。顔を見合わせて、頷き合うだけだった……マレットが綺麗な包装紙に包んだ料理のパッケージを、紙袋に入れて携えて来る……フィオナとシエナとハンナが、立ち上がった3人の後にさり気なく立つ。
「……では、お気を付けて……お車まで、この3人でお送りします……明後日には出社しますので、宜しくお願いします……」
「……ご馳走様でした、アドルさん……とても美味しかったですし……適切で安心出来る対応を採って頂いた事にも、深く感謝しております……今日はお世話になりました……明後日に会社でお会いしましょう……それでは……」
グレイス・カーライル副社長がそう応え、カーネル・ワイズ・フリードマン副社長とリサと一緒に3人で歩き出す……私は皆と一緒に彼等を玄関まで見送り、玄関から外へはフィオナとシエナとハンナとマレットが、付き添って出て行った。
リビングに戻って座る……漸く今日を無事に凌いだような気がする……自分の住処にずっと居たのに、存外に疲れが残った……4人が戻るには暫く掛かるだろう……同じく戻って来た皆に一服点けて来るからと言い置き、グレンフィデック・18年のボトルとグラスを用意し、コートを着てそれらを携え、ベランダに出る。
デッキチェアーに腰掛けて脚を伸ばす。そんなに寒くはない……出て行った7人の姿はもう観えない……ウィスキーグラスに、スリーフィンガーでモルトを注ぐ……煙草を1本取り出して咥え、点ける……リサは、プレミアムシガレットを買って来てくれなかったな……まあ良いか……喫い、蒸し、燻らせながら半口ずつモルトを含んで味のハーモニーを楽しみ、呑む……考えないし、浮かびもしない……まあ……好い落とし処だったかな……10分弱で喫い終わり、呑み終えた……灰皿で揉み消す……4人はもう戻っているだろう……まだベランダに留まって、煙草の臭いを夜風に吹き散らさせる……ちょっと寒さが堪えて来たので、室内に戻った。
もう4人とも、戻って来ている……様子を訊けば、無事に帰って行ったそうだ……また皆に断って、熱いシャワーで身体を温めた……上がってもうパジャマに着替える……リビングに戻って、座った。
「……リサさんと、話ませんでしたね? 」
と、ミーシャ・ハーレイが訊く。
「……そうだったね……まあ…彼女が口を開くとしたら、私が激昂した場合だっただろうな……」
「……3人とも早く寝めて、良く眠って貰えると好いな? 」
「……そうですね、本当に……」
と、ハンナ。
「……そうか……エドナとスコットなら、心配は要らないだろう……仲良くやっているだろうし…気を付けてもいるだろう……それで? 皆はどう感じて、どう思ったかな? 」
「……スコットさんの潔さ? にはある程度の感銘を受けましたが…今回のサプライズは、やはりやり過ぎでしたね……アドルさんが……怒るよりも前に強く落胆されていたのが…よく観て採れました……」
「……うん……適切な評をありがとう、シエナ……(笑)まあ、エドナが思いっ切り引っ叩いてくれたから…溜飲はかなり下がったよ(笑)……他にはあるかい? 」
「……もしも私達がいなくて……スコットさんが1人で来たら、かなり危なかったですね……大事に至らず、好かったです……私もエドナとスコットさんの2人については、心配していません……」
「……ありがとう、ハル参謀……」
その後、他の感想は取り立てて出なかった。皆で座り、私が注いだグレンフィデック・18年のモルト・カスクをチビチビと呑みながら取り留めのない話をする。
明日は、アリシア・シャニーン、エレーナ・キーン、パティ・シャノン、ロリーナ・マッケニットの4人が来る。この4人にもマッサージを施術するつもりだ。
今夜も私は、アイソレーション・タンクベッドで寝ませて貰う事にした。早くスッキリと目覚めたら、色々と確認したい事もある。これだけの人数が居ると、セクシャルなフィーリングにはなれないものだ。大家族のような雰囲気だな。
身体は疲れていないが、気疲れは自覚していたので…その後2時間で、私はタンクベッドに入った。
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【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
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