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出航

艦長・シエナ・ミュラー

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「リーア、中継ビーコンはまだ生きているわね? 」

「はい、全基稼働中です」

「カリーナ、彼我4隻の損傷率をお願い」

「はい、『レッド』29%! 『ブルー』50%! 『イエロー』29%! 本艦が5%です! 」

「アリシア、放出ミサイルは残り18基ね?! 」

「はい、そうです! 」

「分かったわ! 2人ともありがとう。アリシア、放出ミサイルの内4基を8秒間隔で順次に起爆するよう、セットをお願い。それと残り14基の総てに、『イエロー』からの漏洩放射線をホーミングするよう、プログラム入力して? 」

「了解……セット完了……プログラム入力完了…」

「ありがとう。エマ、ミサイルが起爆したらエンジン始動、最短時間で回頭左180°。『イエロー』へのインターセプト・コースを採って全速発進! 」

「了解」

「気付かれて対応を採られる前に『イエロー』に肉迫し、これを撃沈します! エドナ、タイミングと照準も任せるから、ハイパー・ヴァリアント炸裂徹甲弾4連射。レナは前部主砲4砲塔で斉射5連。アリシアはフロントから徹甲弾頭ミサイルを3連斉射。この1連の攻撃で撃沈します! 」

「了解」

「OK」

「分かりました」

「ミサイル起爆と同時に放出ミサイル起動! 同時にエンジン始動! 全速行動開始! 5! 4! 総員! 用意! 行くわよ! FIRE! 」

 最初のミサイルが起爆。同時に放出ミサイルが起動して航走開始。

「エンジン始動! 両舷全速急速左回頭! 『イエロー』へのインターセプト・コースセット! 」

「ヴァリアント、用意好し! 」

「主砲、用意好し! 」

「フロント・ミサイル準備好し! 」

 2基目のミサイルが起爆。

「ミサイル着弾7秒前! 」

「ミサイル初回斉射! 」

「レナ! 同時にいくわよ! 」

「OK! エドナ! 」

「発射‼︎   」

 ハイパー・ヴァリアントと前部主砲が光と焔を迸らせる。

 3基目のミサイルが起爆。

「放出ミサイル着弾! 」

 放出ミサイル14基が着弾して蹌踉めく『イエロー』

 その2秒前にハイパー・ヴァリアント炸裂徹甲弾が4連続で『イエロー』左舷前部に命中。

 前部主砲の集中斉射も3回まで命中。

 『イエロー』はシールドをアップさせたがそれは、4回目・5回目の主砲斉射と2回目までのフロント・ミサイル斉射攻撃で消失した。

 最後のミサイルが起爆。

 3回目最後の徹甲弾頭フロント・ミサイル8基が『イエロー』艦内に突入して炸裂。

 エドナ・ラティスは止めの意味で、炸裂徹甲弾を最後に1発だけ撃ち込んだ。

「『レッド』『ブルー』が急速接近! 射程距離まで15秒! 」

「面舵40°! アップピッチ10°! 全速離脱! 無制限加速! 」

「了解! 離脱します! 」

 面舵・上げ舵で離脱をかけ、離れ始める『ディファイアント』の左後方で『イエロー』は爆発。

「エマ、6分でエンジン停止」

「了解」

「……ふう……」

 息を吐いて座り直し、髪を掻き上げる。ちょっと変な汗をかいた。メイクを直したい。

 私に顔を向けて笑顔を作る。

「どうでしたか? 」

 私も笑顔で彼女の顔を観返しながら、ゆっくりと大きい拍手を15秒。

「素晴らしい! 完璧で、満点です! 非の打ち処がない! どのようなコメントも必要ない! 正直、ここまで完璧にやれるとは思っていなかった。これからは時々交代しよう(笑)そうすれば、楽が出来る(笑)冗談だよ(笑)? 」

「ありがとうございます。でも褒め過ぎですよ。すごく緊張して、かなり疲れました…」

「…そうか…本当にご苦労さん。エマ、12分でエンジン停止だ…」

「了解」

「全乗員に20分の休憩を許可する。短いが自由に過ごしてくれ。その後、ハル・ハートリー参謀に指揮権を移譲する…以上だ…」

 そう言うと私は立ち上がり、シエナと握手を交わして彼女の右肩を左手で軽く叩いた。嬉しそうな笑顔だ。

「ちょっと失礼します」

 そう断ってシエナは立ち上がり、ブリッジから出て行った。私は艦長控室に入ると、ドリンク・ディスペンサーに甘くないソーダ水を出させて、ソファーの端に座った。ほぼ直ぐ後でカウンセラーが入って来て、レモンソーダを出させるとソファーの反対側の端に座る。

 その5分後にインターコールが鳴ったので応答すると、シエナ・ミュラーが入室した。

「本当にご苦労さん。よくやってくれたね。正直、驚いたよ…」

「ありがとうございます。自分でも驚いています。自分でも、よく出来たものだと思いました。それと、これまでに感じた事のない緊張感と疲労感でした…」

 レスト・ルームでメイクを直して来たのだろうか? 安堵感を漂わせて観せる、美しさが増している。ブルーベリーソーダを出させて、対面のソファーに座る。

「カウンセラーには、どう観えたかな? 」

「はい。シエナの統率力にはプロダクション内でも定評がありましたので、衝撃的に驚嘆はしませんでしたが、それでも艦長に次ぐ指揮官としては、本当に素晴らしい指揮振りだと思いました。そして改めて、彼女を副長に選んだアドルさんの慧眼に驚嘆しました…」

「いやいや、シエナ・ミュラー艦長による先程の指揮と操艦は、僕の予想や期待も大きく超えていて、本当に驚かされた。そしてこの先出航後、僕に何か不測の事態が起きて1時的に指揮不能となったとしても、彼女になら充分に任せられると確信したよ…」

「…ありがとうございます…本当に…」

「これは以前から言っているけど、艦長が言い終わった後でなら、他の誰がそれに対して異を唱えても構わない。それが僕達の関係性だからね。だけど戦闘指揮・操艦指示に於いては、取り敢えず異は唱えず、迅速に指示通り実行する。これが原則で前提だ。これを踏まえた上で、ハル・ハートリー参謀が艦長席に座るなら、シエナ・ミュラーが副長を務める。エレーナ・キーン参謀補佐が艦長席に座るのなら、ハル・ハートリーが副長を務める。私はずっと参謀補佐の席に座って基本的に口は出さない。このまま続けよう。じゃあ、行こうか? 」

 そう言ってソーダ水を飲み干し、グラスを置いて立ち上がった。
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