『星屑の狭間で』

トーマス・ライカー

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出航

フィオナ・コアー…6…

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ドアが開くと、フィオナ・コアーはスッと入って来て、その後ろでドアが閉まる。

「やあ、保安部長、よく来てくれたね。さあ、座って? 」

私はそう言い、彼女を促してソファーに座らせると、自分も同じソファーの反対側に座る。

「先程の全体集会には、参加できずに申し訳ありませんでした」

「いや、そんな事は好いんだよ。それよりももう、大丈夫なのかい? 」

「はい、もう大丈夫です。ご心配をお掛け致しました」

「何か飲むかい? ミルクティー? 」

「はい、頂きます」

私は立ち上がって、丁寧にミルクティーを淹れた。仕上げに、もっとリラックスできるよう、シナモンも少し使って。

「…美味しいです…これまで頂いた中でも、最も強くアドルさんの思い遣りを感じられる味わいです…」

またソファーの片側に腰を降ろして、今の彼女から感じている違和感について訊く。

「…カラコンを着けているのかい? 」

「いいえ、これが私の裸眼です」

「ほう…」

些か驚く。今観ているフィオナの虹彩は素晴らしく澄んだ、ライト・スカイブルーだ。それに…あれは真珠のピアスか…。

「…これまでに観ていた鳶色の虹彩が、カラコンだったのか…」

「はい…」

そう応えながらフィオナは、頭からウィッグを外した。

「…!…」

ライトブラウンのショートヘア・ウィッグをテーブルに置いて、ゆっくりと両耳のピアスも外して置く。

南国の海を想わせる、ベリーショートのライト・マリンブルーの髪。これがフィオナ・コアー…。

「…それが本当の君か?…」

「そうです…」

私に降りたイメージの総てに符合して腑に落ちる。

「それで、保安部長に復帰したいのかな? 」

「それは…艦長のご判断にお任せします…」

「復帰は認めるよ…意地悪な物言いに聞こえたとしたなら、悪かった…」

「いいえ…そんな事はありません…」

「悪かったよ…ギターを構えて君を想っていたら、君のイメージが降りて来た…今観ている君そのものだった…驚いて、動揺した…だが、それが妄想でない事も解っていた…君への想いが込み上げて、涙が出た…そのままギターを掻き鳴らしていたら、あの曲が出来たって訳だ…悪かったよ、フィオナ…あの曲は歌わないし、楽譜も処分する。許してくれ…」

「…違うんです。アドルさん…」

そう言うとフィオナは、私の直ぐ隣に来て座った。

「…え…」

「あの歌をもう一度、パーティーの中で歌って下さい…私の名前で…」

「フィオン…」

「大丈夫です…私はもう泣きませんし、動揺もしません…私がこの本当の姿で、笑顔であの歌を聴いている処を観て貰えれば、皆にも私が本当に立ち直ったんだと言う事が、解って貰えます…本当にもう大丈夫です…あの時の体験は総て憶えています。でも、もうトラウマではありません…」

フィオナはそう言いながら私の膝に座って両腕で私の首を引き寄せると、唇を重ねて舌を絡めて来た。今までに観て来た彼女からは考えられない程の積極さだ。頭の奥から痺れが走って身体の力が抜けていく。意識がフィオンに惹き込まれそうになったが、残る理性を総動員して彼女の頭を支えると、顔を離す。

「…分かった…分かったよ、フィオン…君がそれを望むのなら、その通りにしよう…じゃあ、さっきの君の話を、副長と参謀とカウンセラーとマレットと、カリッサにも伝えてくれるか? 」

「…はい、分かりました。仰る通りに致します…」

そう言って、また私の首を引寄せようとする彼女を止める。

「…分かった、フィオナ…君の気持は充分に分かったから、今はその代わりに頼みたい事があるんだよ? 」

「…はい、何でしょう? 」

そう訊いて彼女は、私の膝から降りると隣に座った。

「…マッサージをしてくれないか? 」

「…マッサージですか? 」

「そう。サード・ステージが終って、かなり疲れたよ。このままフォース・ステージが始まってしまうと、疲れから判断を誤ってしまう可能性が高くなると思うんだ。君はフィットネスの経験値が高いだろう? マッサージも出来るんじゃないかと思って頼むんだけど、どうかな? 」

「はい。マッサージについても学んでいますので出来ますが、我流です。それでも宜しければ?…」

「頼むよ。僕の施すマッサージだって我流だしさ…」

「分かりました。それでは寝室に入りましょう…」

そう言って彼女は立ち上がる。私も立ちながら応えた。

「ああ、ありがとう、フィオナ。恩に着るよ…」

「どう致しまして。このくらいは何時でも言って下さい」

2人して寝室に入ると、私は服を脱いでパンツ1枚になり、ベッドにうつ伏せに横たわると両手を左右に拡げた。

観るとフィオナもブラとパンティだけの姿になっている。

「君もそこまで脱ぐのかい? 」

「これが1番動きやすいですから…それに、ここにカメラはありませんよ、アドルさん…」

「…まあ、それもそうだけどな…」

ヘア・リキッド・オイルしか無かったので、彼女はそれを両手に馴染ませてから私の腰の上に膝立ちで跨り、肩甲骨の周辺からマッサージを始めた。

「…うっ…」

腕も指も細いのに力は強い。血管や神経や筋肉の流れに沿って込めて流す力加減は適切だし、ツボを探り出して込める指圧の力加減も的確だ。上手い。身体の奥底に溜まっていた疲れが、白日の下に晒されて溶かされていくようだ。ああ…気持ちが好い…癒される…隅から隅まで解される…体中の細胞から疲れが吸い出されていく…。

フィオナは私が眠らないように、時折足の裏や耳にある痛覚を伴うツボを刺激してくれる。私よりも上手い。構成や手順も効果的で効率的だ。いずれ機会を見付けて、彼女に教えを乞おう。

怒涛の快楽が過ぎ去り、穏やかな夏の海の波打ち際に仰向けで寝ているような感覚だったが、痛い程に屹立している私の局部に強烈な快感が発生したので思わず観ると、いつの間にか全裸になっているフィオナが私の局部を頬張っていた。

「…フィオナ…それは…ダメ…あうっ…」

「…アドルさん…出して下さい…これが最後です…終われば…総ての疲れが…取り去れます…」

フィオナのそれは、アリソンのそれとも、リサのそれとも全く違う、強烈な抗えない快感だった。彼女の顔と肩に手を伸ばそうとしたが、逆に両手を取られた。

成す術も無く支配されて、3分も保たずに放出を余儀なくされた。彼女は直ぐに口にタオルを当てて出すと、再び口で私を含んでねっとりと舐め取ってくれた。

その途中で私は起きて彼女を抱き、体勢を入れ替えて彼女を仰向けに寝かせて上から抱き締めると、唇を重ねて舌を絡め合わせた。驚く程に身体が軽い。物凄く速く動ける。舌を絡め合わせ、お互いに口を舐め回して、彼女の左耳を舐めながら右手で彼女を抱き、左手は彼女の右手と握り合わせたままでいて、彼女の身体に触る事はしなかった。

「…さあ、2人でシャワーを浴びよう…もうあまり時間が無いよ…」

そう言いながら身体を離して起き上がると、彼女の手を取って起き上がらせる。

「…ありがとうございます…」

「僕はすっかり元気になったけど、君を疲れさせちゃったね? 」

「…大丈夫です。鍛えていますから…」

笑顔でそう応えた彼女と2人で全裸のままバスルームに入り、熱いシャワーで汗を流す。ボディソープでお互いに洗い合い、丹念に洗い流す。シャワーを止めると、またお互いに抱き合って1分間だけ舌を絡め合わせて出た。

私は下着を替えてまた同じ服を着る。彼女も服を来て真珠のピアスを着けた。

「ウィッグはどうする? 」

「ここのクローゼットの中に置いて下さい。私達の今日の記念にね? 」

彼女は悪戯っぽく笑ってそう言い、ヘアブラシで私の髪をセットしてくれた。終わるとまた唇を合わせてチュッと吸い合っただけで、私達は笑顔で顔を見合わせ、2人一緒に私の個室から出た。




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