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・・『開幕』・・

・・総合共同記者会見・・2・・

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「・・グレイス・カーライル艦長にお会い出来るのでしたら、私も参加してお手伝いさせて頂きます・・」

・・と、エイミー・カールソン艦長も言う・・。

「・・分かりました・・宜しくお願いします・・(・これで7人・)・」

「・・これで敵性集団は230隻弱ですか・・合流される前に、叩かなければなりませんね・・?・・」

・・と、クマール・パラーナ艦長がドリンク・ディスペンサーに出させた、アップルジュースを飲みながら言う・・」

「・・そうだね・・合流されてもやりようはあるんだけど、かなり面倒臭いから・・される前に叩くのが肝要だろう・・2週目のゲームフィールドがどうなるのかは正直、予想も附かない・・出航してお互いの位置が確認出来てから考えるよ・・」

「・・データファイルは、もう来ましたか・・?・・」

・・と、アーロン・フォスター艦長がそう言って、レモンソーダに口を付ける・・。

「・・うん、先刻データ着信音が鳴っていたから、来ていると思うよ・・まだ読んでないけどね・・」

「・・アドル主宰・・同盟に参画する艦が200隻を超えるようになったら・・どのようにしてお互いを守りますか・・?・・」

・・と、ガンナー・ヴァン・ハンプトン艦長がそう訊いて、コーヒーカップをソーサーの上に置く・・。

「・・そうだね・・先ず200隻を超えるのは早ければサードシーズンの終盤・・遅くてもフォースシーズンの中盤にはそうなるだろう・・そうなったら、今参画している各艦にはそれぞれ10隻前後の艦を率いて小集団を形成して貰う・・実際の処、今思い付ける方策はそれぐらいしかない・・そのように小集団を形成して、小集団ごとにお互いを援護し合う・・それが基本方針だね・・経験値を積み上げて来た艦には、場合によってその都度に数隻を率いて貰う、と言う事を考えても好いだろう・・とにかく・・1隻の艦、又は1人の艦長にあまり多くを背負わせたくない・・あとは・・質量兵器の導入を考えよう・・」

「・・質量兵器・・?・・」

・・と、キーナン・エイヴリー副長が怪訝そうな表情で訊く・・。

「・・ああ・・出来るかどうか、現時点では判らないが・・氷を主成分とするデプリを加工して、推進装置を取り付け、質量誘導弾として運用する・・内部に起爆装置を取り付けて爆裂誘導弾としても好い・・戦いの最中にタイミングを計ってそれを使い、敵艦や敵集団にダメージを与えて隙を作らせる事も出来るだろう・・」

「・・アドルさんの才能は本当に・・天才的ですね・・驚異的と言うか、怖い程です・・」

・・と、タイタス・エルダード副長がそう言って、グラスの冷水を飲み干す・・。

「・・こんな事ばっかり思い付いて・・自分でも何なんだろうって思いますよ・・会社員としての自分・・エンジニアとしての自分・・艦長としての自分・・同盟主宰としての自分・・夫としての自分・・父親としての自分・・どれが本当の自分なんだろうか・・?・・又はどれをメインとするべきなのだろうか・・?・・また或いは・・・」

「・・その時々での状況で・・最も必要性が高いと思われるご自分を、メインとされれば宜しいのではないでしょうか・・?・・」

・・そう言った、ラクウェル・アンスパッチ副長の顔をまじまじと観た・・彼女も私を観返して、少し恥かしそうに微笑む・・。

「・・なるほど・・そうするとしましょうか・・私には素晴らしい君達がいる・・とても素晴らしい仲間達がね・・私の性格的な傾向の一つとして自分で背負い込みがちな処がありますが、今後は意識的にそれらを手放して君達にやって貰う・・何か新しく思い付いても簡単なプロットを会議室に書いて、やってくれる人を募る・・誰も手を挙げなければ私がやる・・そう言う事にしよう・・後1時間位で会見が始まるね・・どうしようか・?・ちょっと小腹が空いて来たね・・ハンバーガーでも軽く、食べたいなって感じだけど・・ここに来るまで売店を観掛けなかったし・・ちょっとそこのインターコールで、軽食を頼めるかどうか訊いてみてくれるかな・・?・・」

「・・分かりました、少しお待ちを・・」

・・そう言って、メアリー・ケイト・シェルハート副長が席を立ち、インターコールに歩み寄ってカフを取る・・。

「・・ああ、それと・・もう開幕してからになってしまいますけれども・・皆さん全員を弊社の営業本部にご招待致します・・同盟が完成してから、まだ全員で顔を合わせた事がありませんし・・グレイス・カーライル艦長とカーネル・ワイズ・フリードマン副長は社内におりますので、皆さんにお集まり頂く方が都合が好いと言う事もあります・・勿論、本社の全域を挙げて歓迎させて頂きますし・・業務提携に向けてのお話も少しは出来るでしょう・・来週に入ったらスケジュールの調整を擦り合わせて、日程を決めていきましょう・・」

「・・軽食を頼めるそうです・・メモを取りますので仰って下さい・・?・・」

・・と、カフを置いて振り向いたシェルハート副長が訊く・・。

「・・やったね・・ダブル・チーズバーガーを一つと、ポテトはミディアムサイズで・・ブレンド・ホットコーヒーもミディアムサイズで・・」

・・メアリー・ケイト・シェルハート副長は全員から軽食の注文を聞き、メモを取り終えるとまた振り向いてインターコールのカフを取り上げた・・。

「・・今日の会見では、どのようなお話があるんでしょう・・?・・」

・・と、ジーン・ヴィダル艦長が訊く・・。

「・・そうですね・・先ず数字上の到達点については報告があるでしょう・・参加者の募集は今日の午前0時で締め切られていますから・・そう言えば、私が当選通知を貰ってから今日でちょうど1ヶ月ですよ・・早いですね・・正に怒涛の1ヶ月でしたね・・それで、全参加艦の総数が発表されるでしょう・・次いで各艦種別での参加艦総数が発表されますね・・参加者総数までは言わないかな・?・言ってもあまり意味が無いでしょうし・・質問されれば答えるでしょうけど・・それから・・表彰体制も決定しているでしょうから、発表されるでしょうね・・入賞順位とそれに応じた賞金と副賞迄発表するかな・?・あとは入賞順位に応じた何某かの特典があるかも知れませんね・・」

「・・我々に発言機会はあるでしょうか・・?・・」

・・アジェイ・ナイデュ艦長だ・・喋りたいのかな・・。

「・・まあ・・挨拶と決意表明を2分でまとめて述べてくれと、言われるかも知れませんね・・副長の皆さんに発言の機会があるかどうかは微妙だと思います・・この1ヶ月間で、皆さんはどうでしたか・?・周囲の反応とか、皆さん自身で変わった事はありましたか・・?・・」

「・・今は休職中なので顔は合わせてませんが、上官や部下からは骨休めのつもりで楽しんでくれとのメッセージは貰ってます・・私をサポートしてくれている支援者の人達は・・まだ結構騒いでいるけどね・・」

・・と、ハイラム・サングスター艦長・・一服できないせいか、ソワソワし始めている様子が観て採れる・・。

「・・皆さんの1人1人を題材にして、イラストを描いて欲しいとのオファーを10数件頂いています・・私も皆さんを描きたいと思っていますが、先ずは自分で所蔵するコレクション作品として描こうと思っています・・あとは私が選抜して配置したクルーの皆さんがもう知られていますので、描いて欲しいとのオファーも頂いていますし・・艦やシャトルを描いて欲しいとのオファーも頂いています・・」

・・ジーン・ヴィダル女史は、少し恥かし気だ・・。

「・・私のゼミに所属する学生達が先ず騒ぎ始めました・・当初は批判もありましたが、今では概ね応援して貰っています・・女学生達の中には、私が選抜して配置したクルーに会わせろと言って騒いでる娘もいます・(苦笑)・職員や大学側からは特に何も言われていません・・講義や講座に穴を開ける訳ではありませんから・・」

・・と、エイミー・カールソン政治経済学教授は、やれやれ感を少し漂わせて言う・・。

「・・私のゼミでも大体同様ですね・・ただ男子学生の中でクルーに合わせろとか言う声は、極小数です・・」

・・ザンダー・パスクァール教授は、あくまでも冷静だ・・その後は4人の艦長と6人の副長がそれぞれ自身周辺での変化について語ってくれて、ちょうど語り終えた頃合いで軽食がデリバリーされる・・私は上着が汚れないように脱いで掛けて置き、そのまま彼等と他愛の無い話を続けながら軽食に取り組み始めて腹に収めていった・・食べ終わるぐらいの頃合いで、ハイラム・サングスターさんが更にソワソワし始めてきたので、私に付き合って無理をして我慢しなくても好いですから喫煙室で一服して来て下さいと促すと、申し訳ない・・暫時失礼しますと言い置いて席を立って行った・・。

・・彼が喫煙室から帰って来る頃合いでは既に全員が食べ終わっていて、ゴミも片付けられていた・・リサが私の上着に携帯ブラシを掻けて渡してくれる・・礼を言って受け取り、着てコーヒーを飲み干した時・・ドアが開いて若い男女の職員が入って来た・・。

「・・お待たせ致しまして、申し訳ありません・・会見の準備が整いましたのでご案内致します・・どうぞこちらへおいで下さい・・」

・・2人が胸に付けているプレートには、名前ではなくコードナンバーが記されている・・相変らず名前は重視していないようだ・・。

「・・分かりました・・案内をどうもありがとうございます・・それでは皆さん・!・行きましょうか・・」

・・そう言って立ち上がると、上着のボタンを留めて歩き出す・・C7会議室を出るとリフトで3階昇り、30階で降りる・・この階は大ホールと広大なエントランス・ラウンジで構成されているので、この階が会見場である事は明らかだ・・ラウンジを見渡すとスコット・ズライ・マーリーも含めて、『ディファイアント』のスタッフクルーも集まって来てくれている・・皆私を観止めると、眼を瞠って歩み寄って来る・・。

「・・よお・!・来たな・・!?・・」

「・・そりゃ来ますよ、先輩・・スペシャル・パスが使えるイベントは、今日で終わりですからね・・新調スーツがピッタシでバッチリじゃないスか・・キマっててイケてますよ・!・リサさんの観立てでしょ・?・やっぱりね・・カッコ好くキメて下さいよ・先輩・・?!・・」

「・・おう・!・任しとけ・!・悪いがもう会見が始まる・・終わったら、皆に紹介するからな・・だから・・」

・・ここでスコットの右肩に左手を乗せて引寄せ、彼の左耳に向けて・・。

「・・チャンスは逃がすな・!・彼女としっかり話せ・・!・・」

「・・了解・・」

「・・それじゃ、皆さん・・行きましょう・・もう会見が始まります・・終わったら社の同僚と『ディファイアント』のスタッフ・クルーを紹介させて頂きますので・・!・・」

「・・アドルさん・・格好好いですよ・・頑張って下さい・・」

・・不意にカーステン・リントハートが人波の中から現れて、私の右手を握る・・。

「・・チーフ・!?・来てくれてありがとう・!・観ていて下さい・・後で皆に紹介しますから・・?・・」

「・・分かりました・・最後まで居ます・・」

「・・それじゃ、後で・・!・・」

・・そう応えた私は迎えに来てくれた職員2人に案内されて、大ホールのステージへと続く舞台袖への入り口になるドアから中に入り、皆も後に続いて入って行った・・ステージまで案内されて出て行くと凄く広い・・前のカーテンから最後部迄の幅で、30M・・左右両端の全幅で言うと90Mはありそうだ・・1人用のソファーが全員分・・1M
程の間隔で並べられている・・職員の2人から、座る席についての指示は無かったが・・取り敢えず艦長と副長のペアと言う事で、私とシエナは真ん中辺りのソファーに座り、他の皆もペアとなって思い思いに左右に拡がって座っていった・・カーテンで遮られていて観えないが、客席の騒めきが徐々に大きくなっていく・・私は社で催された記者会見を思い出した・・あれとは比べ物にもならない位の大規模な会見になるのだろうが・・来てくれた皆も、会場に入れるのだろうか・・?・・不意にステージの最前中央部が開いてマイクがセットされた演台がせり上がる・・30秒程を置いて、反対の舞台袖から40代前半と観られる長身でスーツを着込んだ男性が入り、私達に向けてしっかりと頭を下げてから演台を前にして立った・・そして場内アナウンスが流れ始める・・。

「・・ご入場の皆様に申し上げます・・本日はゲーム大会・『サバイバル・スペースバトルシップ』運営推進委員会主催の、総合共同記者会見にご参集を頂きまして誠にありがとうございます・・予定通りに会見を開催致しますがその前に、幾つかのお願いを申し上げます・・間も無くカーテンを開きまして会見を執り行いますのでお静かにお願い致します・・また場内は充分にライトアップ致しますので、ストロボ発光はご遠慮下さいますように宜しくお願い申し上げます・・初めに当委員会の首席報道官より発表が行われますので、終わりましたらそれについての質疑応答に移行させて頂きますので挙手して頂くか、接続されておられる方に於かれては『挙手』をクリックorタップにて宜しくお願い致します・・その後、登壇されておられます20名の選抜された艦長の皆様から短くご挨拶と決意表明を頂き、同時にその艦長の方に対しての質疑を受け付けて応答して頂きます・・以上のような流れとさせて頂きますので宜しくお願い致します・・それでは只今より開会致します・・」

・・ステージと観客席を遮っていたカーテンが、左右にスルスルと開き始める・・ストロボは8回程発光したが、それ以上は無かった・・会場内が一際明るくライトアップされる・・眼を細めて観客席の後方部を見晴かすと、仲間達が広く座って観てくれているのが分った・・マイクの角度を少し調節して、彼が口を開く・・。

「・・こんばんは、ご入場・ご参集の皆様には御礼申し上げます・・『スペース・バトルシップ』運営推進委員会の主席報道官です・・決定事項を発表させて頂き、その後質疑に応答致します・・本日の午前0時を以ちまして、参加者の募集は締め切られました・・大会参加艦総数は、112348隻となっております・・それでは内訳を発表致します・・軽巡宙艦総数・63486隻・・重巡宙艦総数・39765隻・・戦艦総数・9097隻となりました・・尚、運営推進委員会本部として用意致しました補給艦は60000隻・・工作作業艦は40000隻となっております・・大会参加者総数及び、サブスタッフ迄の参加者氏名に付いては、当委員会本部のメインサイトをご参照下さい・・各艦種に於けるオプションパーツ・オプション装備・搭載兵器や兵装に於いては、今から5時間前に最終の改訂が実施されましたので、こちらも本部のメインサイトをご参照下さい・・次に表彰条項について発表致します・・入賞順位は10位迄設定致しました・・それぞれ1隻が認定されます・・それぞれの入賞順位に於いて表彰状・トロフィー・盾・賞金・副賞・入賞順位に応じた特典が授与されます・・具体的な金額とか、副賞・特典の内容に関しましても今から3時間前に最終の改訂が実施されましたので、こちらに於きましても本部のメインサイトをご参照下さい・・次にゲームフィールドについて発表致します・・ゲームフィールドは2週間に一度、改訂されます・・これはチャレンジミッションの発表に附随して改訂されるものとご承知置き下さい・・開幕後に於けるゲームフィールド・データベースへのアクセスと閲覧に附きましては、艦長と副長のアクセス承認コードのみに於いて可能となります・・が、次に改訂されるゲームフィールドのデータに附いては、本部に於いて2週間に一度の換装が実施されるまで、一切が非公開とされますのでご承知置き下さい・・つまり、チャレンジミッションの発表と同時にゲームフィールド・データは改訂され、実際に換装されます・・尚、チャレンジミッションに関するデータが実際の改訂前に公開されるような事も一切ございませんので、これも併せてご承知置き下さい・・」

・・私達は彼の後ろで並んで座って発表を聴きながら一様にかなり驚いて、お互いに顔を見合わせたりしていた・・正直、10万隻を超える事になるとは考えていなかったし、戦艦と重巡を合わせて49000隻弱となった事も衝撃だった・・これでは下手をすると軽巡は、殆ど生き残れなくなるかも知れない・・もっと早い段階で、同盟に参画する艦は200隻を超える事になるだろう・・とてもじゃないが戦っている場合じゃない・・そんな暇も無い・・ミッションにしゃかりきに取り組んで、経験値の積み上げを図るしかない・・一つの朗報としては(朗報と言えるかどうかだが)単艦での訓練期間を4日間執れる事だ・・これは訓練プログラムの見直しが必要だな・・。

「・・このゲーム大会に於けるゲームルールの詳細に於きましても、2時間前に最終改訂が実施されて最終決定ゲームルール条項として認定されましたので、これもメインサイトに於いてご確認下さい・・以上・・大変に雑駁且つ簡単ではございましたが、発表及び報告とさせて頂きます・・現在ご入場の皆様と運営推進本部メインサイトに接続されている皆様に於かれましては、今回のみの特別措置としてスペシャル・フリー・アクセス承認コードが提示されております・・使用して頂ければ会見終了時までの限定で、ゲームフィールド・データとチャレンジミッション・データを除く、総てのデータへのアクセスと閲覧が可能となっております・・どうぞお手持ちの端末でアクセス・閲覧して頂きながら、質疑をお寄せ頂ければと思います・・それではどうぞ・・」

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