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・・『開幕』・・

・・女性艦長達・・4・・

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「・・おはようございます・・分かりました、ローズ副長・・ああ、すみません、お二人共・・長々と立ち話をしてしまって・・どうぞ、お座り下さい・・」

・・私は2人を促して案内し、座って貰う・・。

・・ローズ・クラーク副長・・漆黒のロングヘアが、僅かな風にも靡く・・毛髪が凄く細い・・ロングヘアと言っても、ドリス・ワーナー女史やグレイス・カーライル副社長の7割程の長さだ・・彼女がフフッと微笑んで、私を観るその表情には強烈な既視感が伴う・・。

「・・(微笑)・どうしました・・?・・」

「・・い、いや・・」

・・彼女は私を知っている・・私も彼女を知っている・・どこだ・・?・・いつだ・・?・・いや・・まあいい・・気を取り直して、サングスター氏に注意を向ける・・。

「・・ハイラムさん・・今日参集される女性艦長の皆さんについてのテキストデータをお送りしたのですが、読んで頂けましたか・・?・・」

「・・読みました・・なかなか参考になりそうな内容ですね・・」

・・そう言いながらサングスター艦長は、灰皿を引寄せてシガレットケースとライターを取り出す・・。

「・・『クラウン・カンバーランド』の副長にマティアス・ハルトマン氏が就任されていますが、憶えておられますか・・?・・」

「・・勿論、憶えています・・3年程前に配信番組の中で対談しました・・」

・・ケースからシガレットを1本取り出し、咥えてライターで火を点ける・・。

「・・ハイラムさんから観て、話しやすい方でしたか・・?・・」

「・・なかなか気さくで話しやすい方でしたね・・ほぼ同年代ですので、共通の話題もありました・・」

・・彼が蒸して吐き出す紫煙の馨りが、私の喫いたい気持ちを擽る・・。

「・・それは好かったですね・・もしも気難しい性格だったら、コミュニケーションに難があるかな、と心配しておりましたので・・」

「・・その点について、心配は無いですね・・」

「・・分かりました・・まあ、今日初めてお目に掛かる20人の方々ですから、フラットな自然体で挨拶してから話していきましょう・・」

「・・それが好いと思いますよ・・それではアドルさんの緊張を解してフラットな自然体になって頂くために、おひとつどうぞ・・?・・」

・・そう言ってシガレットケースを開けた状態で、私の前に置いてくれる・・。

「・・やあ、ありがとうございます・・実は生配信前の最後の一服を点けようか、どうしようか迷っていたもので・・」

「・・迷うなら、行うが吉ですよ・・アドルさん・・」

「・・仰る通りですね・・では、頂きます・・あっ・・ありがとうございます・・」

・・そう言いながら1本を取り上げると、ハイラムさんが自分のライターで点けてくれる・・。

「・・クラークさん・・皆さんに飲み物のお好みを訊いて、用意してあげて下さい・・」

「・・分かりました・・」

「・・あっ、私もお手伝いします・・!・・」

・・そう同時に言って、シエナとリサが立ち上がる・・。

・・その時ドアがノックされてハルが応答すると、デザレー・ラベル女史が入室した・・。

「・・お話し中に失礼します・・ヤンセン・パネッティーヤ艦長とシャロン・ヒューズ副長・・ザンダー・パスクァール艦長とアレクシア・ランドール副長をお連れしました・・」

・・そう言って4人を促して入室させると、自身は一礼して退室した・・。

・・飲み物を用意している3人を除き、私とハイラムさんとハルが立ち上がって歩み寄り、4人と両手で握手を交わす・・。

「・・おはようございます・・よく来て下さいました・・ヤンセンさん・・ザンダーさん・・シャロン・ヒューズ副長・・アレクシア・ランドール副長・・昨日に引き続き、今日もご足労をお掛けしました・・今日も宜しくお願いします・・さあどうぞ、お座り下さい・・」

そう言い、4人を促して座って貰う・・。

「・・おはようございます、アドルさん・・やあ、よく眠れたようですね・・サッパリとした好い顔をしていますよ・・会議室の長文記事は読み終えましたが、貴方がよく眠れたのか、心配していました・・」

・・ヤンセン・パネッティーヤ氏が、ピーチソーダのグラスを受取りながら言う・・。

「・・おはようございます、アドルさん・・私も会議室の記事を読んで、貴方がよく眠れたかどうか心配でした・・同時に、やはり貴方の同盟に参画したのは間違いではなかったと確信しました・・今後は我々にも仕事を振って下さい・・」

・・ザンダー・パスクァール氏も、ミルクティーのカップを受取りながら言う・・。

「・・皆さん、どうもありがとうございます・・ご心配をお掛けしました・・失礼して、一服させて頂いています・・確かに昨日は大分疲れていましたが記事の入力が予想よりも早く終わりましたので、睡眠は充分に採れました・・改めて、皆さんと同盟を構築できて好かったと思っています・・ここで暫く話をして、情報を共有したり今出来る打合せを終えられたらここのラウンジキャフェテリアで昼食を摂って、スタジオに入りましょう・・と、その前にメイクがあるのかな・?・ともあれ、それで宜しくお願いします・・」

・・そう言いながら、マンデリンのカップを受取って一口飲み、一服を喫って蒸して燻らせる・・。

「・・宜しくお願いします・・失礼ですけど、アドルさんも結構なイケメンですね・・それに昨日よりもスーツをピシッと着こなされていてキマってますよ・・僕もアドルさんに恥を搔かせないように、今日はキメて来ました・・」

・・そう言ってパネッティーヤ氏は、髪型を気にして触る・・。

「・・こちらこそ、宜しくお願いします・・アドルさん・・今日は女性艦長の皆さんが参集されますし、中にはファッション・デザイナーの方もいらっしゃいますから、華美では無いにしても清潔感を高めて自信を持って皆さんの前に立てるようにはして来ました・・」

・・そう言ってパスクァール氏は眼鏡を外し、クリーナークロスで軽く拭いて掛け直す・・超絶イケメンでスタイルも好い彼だが、少しも傲慢そうには聴こえない・・。

「・・皆さん・・先ず今日の基本姿勢についてですが、今日の私達はオブザーバーです・・勿論、アドバイザーとして訊かれた事には適切・的確に答えます・・同盟を構成した理由・目的・保持する姿勢・態度・言動・約束できる事・については、先ず私から話します・・その後に気付いた事があれば、その時点で補足して下さい・・願いは、同盟に参画して欲しいと言う事です・・その方が全員にとって有益になりますからね・・ですが無理強いはしませんし、今日の段階で参画を見送ると言う事になっても、特には何も言いません・・言えるような立場でもありません・・それぞれの艦長が、判断を下せば好い話です・・それでもこれだけは彼女達に約束します・・例え開幕までに参画して貰えなくても、同盟は彼女達の艦を見守り・・援護します・・それが出来るようにする為に、暗号秘密回線の設定だけはして欲しいと願い出ます・・これぐらいですね・・後は彼女達の反応を受けて・・話を進めます・・」

「・・賛成しますよ、アドルさん・・やはりリーダーは貴方で好いし、貴方しかいない・・」

・・そう言ってハイラムさんは、満足そうに深く一服を喫い付けて蒸して燻らせる・・。

「・・僕も賛成しますよ、アドルさん・・貴方が呼び掛けて作った同盟ですから・・僕はどこまでも貴方に協力します・・」

・・と、ヤンセンさん・・。

「・・勿論、私も賛成ですし協力は惜しみません・・自分の総てで同盟に貢献します・・」

・・と、ザンダーさんもそう言い、二口飲んだミルクティーのカップを置いた・・。

・・ここでハルの視線に気付いた私は、あるひとつを思い立った・・。

「・・ええ・・ハイラムさんとローズさんはもう既にご存知ですが、紹介しましょう・・『ディファイアント』で作戦参謀に就任して貰いました・・ハル・ハートリーです・・」

「・・ああ・!・貴女があの高名な国際弁護士の・・お会いできて光栄です・・ザンダー・パスクァールです・・宜しくお願いします・・」

「・・こちらこそ、宜しくお願い致します・・ザンダー・パスクァール艦長・・ハル・ハートリーです・・アドル・エルク艦長を支えて、同盟の運航にも尽力させて頂きます・・」

「・・いやあ、叡智を極めた女性とは、貴方のような方を顕すのでしょうね・・しかも女優さんですしね・・すみません、申し遅れました・・ヤンセン・パネッティーヤです・・いつぞやは満足なご挨拶も出来ずに申し訳ありませんでした・・未だ知らないものも処も多々あると思いますので、ご教授の程を宜しくお願い致します・・」

「・・ご丁寧にありがとうございます・・ヤンセン・パネッティーヤ艦長・・『ディファイアント』で作戦参謀を務めます、ハル・ハートリーです・・私の知る限りの処でしたら適宜にお伝えさせて頂きたいと思っておりますので、こちらこそ、宜しくお願い致します・・」

「・・皆さん、会議室『DSC24』についてですが・・今日、何人かは同盟に参画して頂ける方が増えると思いますので、その規模に合わせて記事の内容をアップデートします・・皆さんには引き続き読了の上、意見・提案・提言・補足の書き込みをお願いします・・小さい事でも構いません・・それと、暗号秘密回線システムデータのインストゥールとセットアップもお願いします・・終わりましたら、『トゥルーダイス』の方に書き込んで下さい・・次に昨日の事を報告します・・その前に、皆さんはSNSにアカウントをお持ちですか・・?・・私は取り敢えず5つの世界で主流のSNSサイトにアカウントを持っていますが、活用しているのはパーソン・ファイルとインディビジュアル・コネクションだけで、他のSNSサイトにはあまり書き込んでおりません・・ましてや艦長に選抜された事はおろか、ゲーム大会の事に付いても全く書き込んでおりません・・」

「・・私のアカウントは、パーソン・ファイルだけです・・警備艦隊のメインサイトが、SNSのようにもなってはいますが・・」

・・そう応えてハイラムさんが、喫っていたプレミアムシガレットを灰皿で揉み消す・・。

「・・僕も5種類全部のSNSでアカウントを持っていますけど・・仕事で活用しているのがパーソン・ファイルで、プライベートではパーソナル・コネクションを使っています・・僕もゲーム大会の事は1行も書いていません・・」

・・そう言って、ヤンセン・パネッティーヤ艦長は飲み干したピーチソーダのグラスを置く・・。

「・・私のアカウントは、インディビジュアル・ファイルだけです・・それも、繋がっているのは大学関係者だけでして・・しかし何故SNSの話を・・?・・」

・・そう言ってザンダーさんは、右手の中指で眼鏡のブリッジを少し上げる・・。

「・・唐突に思い付いたのですがSNSの中に、艦長達のグループ乃至は会議室が必ずある筈です・・そこで難易度が高いだろうとは思ったのですが、アリミ・バールマン艦長に通話を繋いでグループ乃至会議室が見付かったら、何とか潜入して貰って情報を収集して欲しいと依頼しました・・アリミ艦長からは、クマール・パラーナ艦長とアーロン・フォスター艦長とも連絡を執って、トライしてみるとの返答を頂きましたが・・」

「・・仰る通り・・難易度はかなり高いですね・・我々の顔も名前も総て割れていますから・・」

・・と、ハイラムさん・・。

「・・グループでも会議室でも、入る事さえ出来ないんじゃないかな・・手引きしてくれる人がいるなら別でしょうけど・・」

・・と、ヤンセンさん・・。

「・・潜入できたとして・・収集したい情報と言うのは・・?・・」

・・と、そう訊いてザンダーさんは、飲み干したミルクティーのカップを置く・・。

「・・知る事が出来るのなら、非常に助かる情報がふたつ・・ひとつはゲームフィールドについてです・・我々のアクセスコードを以てしても、ゲームフィールドデータにはアクセス出来ない・・フィールドの広さだけでも判れば、と思っています・・もうひとつは、何人の艦長が今連絡を執り合って我々を攻撃する為の段取りを組んでいるのか、です・・このふたつが判れば、我々の対処の段取りも組み易くなるのですが・・」

「・・一つ目はまず無理でしょうねえ・・ゲームが開幕しても開示はしないでしょう・・連絡を執り合えば大凡の広さは推定できるでしょうが・・ハッキングを掛けようとしても防壁は恐らく5重か6重・・どれ一つを取ってしても、突破はかなり厳しいでしょう・・」

・・と、ヤンセンさん・・。

「・・60000隻の1%で600隻・・これだけ敵性艦がいるとして、それが統率の執れた艦隊だったら・・我々はファーストシーズンの最終回を待たずに全滅する・・それが最悪のシナリオだろうな・・」

・・そう言って、ハイラムさんが顎を撫でる・・。

「・・それ程の酷い展開にはならないんじゃないかなとは思いますが、もしもかなり厳しい包囲陣の中に同盟グループが置かれたとしたら、『ディファイアント』が単艦で揺動撹乱を掛けます・・すれば包囲陣も歪んで延びる部分が出て来るでしょうから、そこを突破して下さい・・それしかないでしょう・・それにミッショントライにエントリーしていれば、ミッションが終了する迄の間は攻撃されません・・ミッショントライにエントリーしている艦を攻撃するのは、重大な規約違反になりますからね・・包囲された場合の艦隊行動についても、思い付く限り『DSC24』にアップしますので、読んで置いて下さい・・」

・・私はここで言葉を切った・・現状でこのメンバーに話して置くべき重要な事項が他にあるだろうか・・?・・。

「・・皆さんからはどうですか・・?・・これから女性艦長達に会う前に、ここで話して置くべき事はありますか・・?・・」

「・・同盟への新参画者があった場合、生配信の後でミーティングしますか・・?・・」

・・と、ザンダーさん・・。

「・・その必要は感じていますね・・まあ、皆さんのご都合を訊いた上で、時間が無いようでも簡単な説明と左掌のスキャンはさせて頂きたいですね・・」

「・・『インターナショナル・クライトン・エンタープライズ』との、業務提携に関するお話はしますか・・?・・」

・・と、ヤンセンさん・・。

「・・今日、私からその話はしません・・艦長さん達の中の誰かからそれに類する提案や希望があった場合に、1程度のお答えはさせて頂きますが・・また、アイソレーション・タンクベッドについては、話の流れからそれに言及する可能性はありますね・・」

「・・今は、こんな処で好いんじゃないかね・・?・・後は実際に女性艦長さん達に会ってから、臨機応変に対応していけば好いだろう・・?・・」

・・と、ハイラムさん・・。

「・・そうですね・・こんな処でしょうか・・」

・・と、ザンダーさん・・。

「・・分かりました・・それでは、生配信前の事前協議としては以上で終わります・・ラウンジに行って昼飯にしましょう・・ここの料理も美味しいですよ・・」

「・・そいつは楽しみですな・・腹を空かせて来た甲斐がありましたよ・・」

・・そう言って、ハイラムさんはゆっくりと立ち上がった・・。

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