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・・『開幕』・・

・・共闘同盟初会談・・

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・・本社に帰着したのは、やはり私とリサが最初だった・・秘書課の女性社員が出迎えてくれたが、自分達はいいから次に到着する人達に付いて欲しいと言い置いて9階まで上がり、スカイラウンジに向かう・・入口からウェイターに案内されて入室すると、大きい丸テーブルの一角に2人の副社長が座っていたが、私達を観て立ち上がった・・観ると、既に全員のネームプレートがテーブルに置かれていて、私とリサの席は副社長2人の正反対だ・・。

「・・お帰りなさい、アドル艦長・・お疲れ様でした・・」

・・グレイス・カーライル副社長が労ってくれる・・ライトブラウンのロングヘアをこれ以上は出来ない程のサラサラストレートで垂らしている・・。

「・・ありがとうございます、グレイス艦長・・フリードマン副長も・・」

「・・カーネルで良いですよ・・アドル艦長・・座って下さい・・」

「・・ありがとうございます・・カーネル副長・・(座りながら)・・何だか激動の1日ですね・・まだ終わってないですけど・・(笑)・・配信が始まる迄、2隻から始めるんだと思っていたんですよ・・それに、タンクベッドの事を話すかどうかも決めていませんでしたから・・」

・・そこまで言った時に、コーヒーが来た・・香りからマンデリンだと判る・・。

「・・貴女もお疲れ様ですね、リサさん・・?・・」

「・・ありがとうございます・・副社長・・」

「・・何故、タンクベッドの事を話そうと思ったのですか・・?・・」

・・と、カーネル副長が訊く・・。

「・・話さなかったとしても、開幕すればいずれは知れ渡りますし・・話すとすれば、今日しかない・・と思いました・・総合共同記者会見では、それ程に発言の機会があるとも思えませんし・・このタイミングで、私自身で発信すれば・・良くも悪くも事態は進むだろうと思いました・・」

「・・その判断が功を奏しましたね・・」

・・グレイス艦長の笑顔は、すごく魅力的だ・・。

「・・まさか10隻全艦が同盟に参画してくれるとは、全く予想外でしたが・・」

「・・アドル艦長の魅力と才能ですね・・」

「・・そしてこの勢いは、明日にも及ぶでしょう・・」

「・・と言うと・・?・・」

「・・明日も同じ生配信が、女性艦長の皆さんを集めて行われますが・・その番組の中で、2隻か3隻・・同盟への参画を表明してくれるのではないかと、期待しています・・」

「・・20隻全艦が同盟に揃うかも知れませんね・・?・・」

「・・そこまではいかないでしょう・・」

「・・明日も出演されるのですか・・?・・」

「・・出演が要請されれば行きますが、呼ばれなければ行きません・・」

・・その時、秘書課の女性社員が入室して告げた・・。

「・・失礼します・・シエナ・ミュラー様と、ハンナ・ウェアー様をお連れしました・・」

・・4人とも、立ち上がって迎える・・。

「・・失礼します・・」

「・・間に合ったな・・これで出迎えの体制はできた・・副長は私の左に・・カウンセラーはリサさんの右に座って下さい・・」

「・・シエナさん・・ハンナさん・・アドル艦長の発言を間近で観られて如何でしたか・・?・・」

・・グレイス・カーライル副社長が訊いた・・。

「・・とても・・感動的でした・・泣きそうになりました・・」

「・・私は・・もう泣いていました・・」

「・・よく、分かりますよ・・アドル・エルク艦長は、もう『ディファイアント』の艦長と言うだけではなく、『ディファイアント』共闘同盟のリーダーですから、これからはその積りで支えて上げて下さいね・・?・・」

「・・はい・・心得ました・・ありがとうございます・・」

「・・はい・・肝に銘じます・・ありがとうございます・・」

「・・アドル艦長は、これからどうされるのですか・・?・・」

「・・訓練計画の立案と、それに付随する各種の段取りに超速で着手して行い、全艦で共有します・・ここではその為の説明をします・・」

・・そう言って、コーヒーを二口飲む・・。

・・また、秘書課の女性社員が入室して告げる・・。

「・・失礼します・・ハイラム・サングスター様と、ローズ・クラーク様をお連れしました・・」

・・全員が起立する・・。

「・・失礼致します・・」

・・そう言って入室した2人は、先ず私達の処に歩み寄ってにこやかに握手を交わす・・。

「・・ローズ・クラークです・・改めて宜しくお願いします・・」

「・・こちらこそ、宜しくお願いします・・」

・・会釈して離れた2人は2人の副社長に歩み寄り、握手を交わした・・。

「・・こんにちは・・初めまして・・ハイラム・サングスターと申します・・お会いできて嬉しいです・・これから宜しくお願いします・・素晴らしい会社ですね・・お招き、ありがとうございます・・」

「・・初めまして・・グレイス・カーライルと申します・・こちらこそ、お会いできて光栄ですわ・・宜しくお願い致します・・ありがとうございます・・どうぞ、ゆっくりなさって行って下さい・・」

・・4人はお互いに挨拶と握手を交わして少し話し、会釈して離れると自席に着いた・・。

・・それからの20分間で16人の艦長と副長が本社に到着し、スカイラウンジに通されると全員が私達と挨拶して握手を交わして自席に着いた・・。

・・リサに連絡して貰って、ケーキとお茶を運び入れて貰う・・。

・・私はもう一口、マンデリンを飲んで立ち上がる・・。

「・・皆さん、お疲れ様でした・・ご無事で到着されました事に感謝します・・お疲れであろうと言う事で、お茶とケーキを用意しました・・どうぞ、召し上がって下さい・・頂きながら話を進めていきたいと思います・・ショートケーキが小さめである処は、ご容赦下さい・・元は10号サイズのザッハトルテ・ホールケーキだったのですが、24個に切り分けましたのでこの大きさになりました・・この建物の1階にあります、カフェ・ラウンジの料理長が腕を振るって焼きましたので、どうぞご賞味下さい・・それでは先ず初めに・・この同盟の名称ですが、【『ディファイアント』共闘同盟】とさせて頂いても宜しいでしょうか・・?・・他に候補があれば遠慮なく提案して下さい・・」

「・・【『ディファイアント』共闘同盟】で好いと思いますよ・・分かりやすいし強そうだ・・アドル・エルク艦長がリーダーですからね・・おっ・旨いですね、このケーキ・・ザッハトルテは好きなんですけれども、こんなに旨いのは初めてですよ・・」

・・一口食べて、ヤンセン・パネッティーヤ艦長が眼を瞠る・・。

「・・私も同感ですな・・後で、その料理長の方にもご挨拶申し上げたいですな、アドルさん・?・」

・・ハイラム・サングスター艦長も、ケーキとお茶の味わいには驚いたようだ・・。

「・・ありがとうございます・・ウチの料理長が聞いたら喜びます・・それでは、皆さん・・グループの名称については、これで宜しいでしょうか・・?・・」

・・皆、ケーキとお茶の味を楽しみながら、満足そうに頷く・・。

「・・ありがとうございます・・終わったら、帰り掛けにラウンジに寄りましょう・・ウチの料理長に紹介しますよ・・それでは、次に移ります・・『ディファイアント』と『ロイヤル・ロード・クライトン』との間で現在共有している、暗号秘密通信回線のアプリケーション・システム・データのコピーを、皆さんに配布します・・リサさん・・?・・」

・・リサがスッと立ち上がって、9人の副長にソリッドメディアを一つずつ手渡して廻り、また自席に着く・・。

「・・今お渡ししたメディアからダウンロードして頂いて、暗号秘密通信回線のセットアップをお願いします・・これで発信ポイントは特定されますが、通信を傍受されても内容は判りません・・ですがどのようなシステムもいずれ解析されてしまいますので2ヶ月に1度、アップデートを行います・・話が前後してすみませんが、今ここに集っている私達が今後も定期的にこのような会合を持つのは、物理的にも時間的にも難しい場合があるでしょう・・ですので、サイバー・クラウド・スペースに私達が使う会議室を2つ作ります・・一つの会議室のメンバーは、艦長と副長のみ・・もう一つは、参謀と機関部長のみで使います・・艦長と副長だけで行うのは、共闘同盟首脳部会議です・・取り敢えず1ヶ月に1回は、サイバースペースの中で会合を持ちます・・参謀と機関部長のみで行う会議では、主に暗号秘密通信回線のアプリケーション・システム・アップデートについて討議します・・会議室に入る為のパスコードは、艦名・氏名・アクセスコード・・それに艦長と副長の場合には、左手の掌紋パターンとし、参謀と機関部長の場合には右手の掌紋パターンとします・・今スキャナーを持って来て貰いますので、掌紋パターンをスキャニングさせて下さい・・それで・・会議室の名称はどうしましょう・・?・・」

・・そう言って、またマンデリンを二口飲む・・。

「・・美味しい24個のショートケーキ・・ですから、『DSC24』で、どうでしょう・・?・・」

・・ザンダー・パスクァール艦長が、ロシアンティーのカップを置いて言う・・。

「・・好いですね・・それに決めましょう・・参謀と機関部長の会議室は、どんな名称にしましょうか・・?・・」

「・・Tea room of the Operation director and Chief Engineer ・・だとして・・頭文字で、TRODACEとすると・・『トゥルーダイス』なんてどうでしょう・・?・・」

・・アーロン・フォスター艦長も.ミントティーのカップを置いて言う・・。

「・・なるほど・・流石はハイスクールで歴史を教えておられる方だ・・なかなか洒落が利いていますね・・」

・・と、アリミ・バールマン艦長が評する・・。

「・・作戦参謀と、機関部長のお茶室ですか・・好いですね・・それにしましょう・・『DSC24』の作成はリサ・ミルズ女史が行い、『トゥルーダイス』の作成はシエナ・ミュラー副長が行います・・『DSC24』の議長は私が務め、スポークスマンはシエナ・ミュラー副長が務めます・・『トゥルーダイス』の議長は『ディファイアント』の機関部長、リーア・ミスタンテが務め、同じくスポークスマンは作戦参謀、ハル・ハートリーが務めます・・私は当面、『DSC24』に於いて立案した訓練計画をどんどん書き込みますので、読んで下さい・・それで思い付いたら、感想・提案・要望等お寄せ下さい・・それでは・・」

「・・お話し中にすみません、失礼致します・・」

「・・入口の方から聞こえたので見遣ると、秘書課の女性社員が私を観ている・・」

「・・はい・?!・何でしょう・・?・・」

「・・お話し中の処を大変に申し訳ありませんが、社長が一言ご挨拶を申し上げたいと・・」

「・・!・ああっ、すみません・!・そうでした・!・すっかり失念していて、勝手に始めていました・・何せ、やる事が多いもので・・すみません、どうぞお入り下さい・・」

・・そう言って、マンデリンを飲み干した・・。

・・ウェイターがドアを開くと、トーマス・クライトン社長が入室する・・テーブルに歩み寄るが2m程離れた処で立ち止まり、両手を身体の前で組んだ・・。

「・・【『ディファイアント』共闘同盟】の皆さん・・ようこそ弊社にご来社頂きました・・心から歓迎させて頂きます・・弊社社長を務めております、トーマス・クライトンです・・どうぞ宜しくお願い致します・・【『ディファイアント』共闘同盟】の初会合をここで開いて頂いて、ありがとうございます・・どうぞ、ごゆっくりなさって行って下さい・・社長として皆様にご挨拶を申し上げますと共に、弊社役員会を代表して一つ申し上げます・・【『ディファイアント』共闘同盟】に参画される11隻に所属される皆様を、弊社『インターナショナル・クライトン・エンタープライズ』は、全力を以て支援させて頂きます・・ご要望やご注文やご提案がございましたら、どうぞ何なりとお申し付け下さい・・私共は何時でも皆様と共にあると言う事を、どうかお忘れなきように宜しくお願い致します・・お話し中の処をお邪魔致しました・・どうぞ、ごゆっくりなさって行って下さい・・それでは、これにて失礼致します・・」

・・トーマス・クライトン社長はそのままの位置で45°腰を折って5秒静止すると、顔を上げて退室して行った・・。

「・・アドル艦長・・貴方も素晴らしいが、トーマス・クライトン社長も・・グレイス・カーライル艦長も素晴らしい・・この会社は素晴らしい人達が沢山集まっているのですね・・」

「・・ありがとうございます・・そこまで仰って頂けると、私自身も感無量です・・同僚の皆も喜びます・・それでは・・リサさん、スキャナーを廻して下さい・・艦長の皆さんは左手の掌紋を・・副長の皆さんは右手の掌紋をスキャニングして下さい・・パターンデータには、お名前とアクセスコードの付記をお願いします・・え~・・艦長の皆さんは、それぞれお顔とお名前が一致して認識出来ているのではないのかな、と思いますが・・副長の皆さんは、まだお互いにお顔とお名前が一致して認識出来ていない部分もあるのではなかろうかな、と思います・・ので、全員のスキャニングが終わる迄の間、副長の皆さんの自己紹介をお願いします・・艦名とお名前だけでも結構ですので、宜しくお願いします・・では、こちらから始めましょう・・」

・・右隣のリサがスキャナーを私の前に置いたので左の掌を置いてスキャンさせ、名前とアクセスコードを書き込んで左隣のシエナに渡す・・彼女は右の掌をスキャンさせて名前とアクセスコードを書き込み、左隣のアジェイ・ナイデュ艦長に渡した・・。

「・・皆さん・・【『ディファイアント』共闘同盟】に参画して頂いて、本当にありがとうございます・・『ディファイアント』の副長を務めます、シエナ・ミュラーです・・どうぞ、宜しくお願い致します・・」

「・・『ダルモア・エレクトス』にて、副長を務めます・・トリッシュ・ヴァンサンティンです・・宜しくお願い致します・・」

「・・『バトゥ・ウルス』にて、副長を務めます・・メアリー・ケイト・シェルハートです・・宜しくお願いします・・」

「・・『チャッカラタナ・ヴァルティン』にて、副長を拝命しました・・フランセス・ラングフォードです・・お見知り置きを・・」

「・・『ラバブ・ドゥーチェン』にて、副長を仰せ付かりました・・ラクウェル・アンスパッチです・・宜しくお願いします・・」

「・・『アレクサンドラ・フランクランド』にて、副長に専任致しました・・アルレーン・ラングトリーです・・どうぞ、宜しくお願いします・・」

「・・『アグニ・ヤマ』にて、副長に選任されました・・カーラ・ブオノ・マルティーヌです・・宜しくお願いします・・」

「・・『トルード・レオン』にて、副長の任に就きました・・シャロン・ヒューズです・・宜しくお願いします・・」

「・・『フェイトン・アリシューザ』にて、副長に就任致しました・・アレクシア・ランドールです・・お見知り置き下さい・・」

「・・『サライニクス・テスタロッツァ』にて、副長を務めます・・ローズ・クラークです・・宜しくお願いします・・。

「・・『ロイヤル・ロード・クライトン』にて、副長の任に就きました・・カーネル・ワイズ・フリードマンです・・宜しくお見知り置き下さい・・」

・・副長の自己紹介が全員終わったその時、まるで計ったかのように私の携帯端末に通話が繋がった・・観れば予測通り・・マルセル・ラッチェンスプロデューサーからだ・・。

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