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・・『開幕』・・

・・本社へ・・

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・・語り終えたのだが、私達はそれぞれの席には戻らずに、マルセルさんの顔を全員で見遣る・・。

・・同時刻・・本社1階・・カフェラウンジ・・厨房・・

「・・2人増えて24人か・・このホール・ケーキ・・24個に切り分けなきゃならんのか・・厳しいが、仕方ないな・・」

「・・配信をご覧の皆さん、マルセル・ラッチェンスです・・本日のスペシャル・プログラム・・男性艦長の皆さんにお集まり頂いての、インタビューと対談をお届けしております・・ゲーム大会はまだ開幕しておりませんが、既に歴史的な展開を見せております・・アドル・エルク艦長が提唱して呼び掛けられました、所謂『ディファイアント』共闘同盟が、やはり11隻にて結成され成立致しました・・そしてたった今・・アドル・エルク艦長から明日参集される女性艦長の皆さんに向けての、同盟への参画を促されるメッセージが申し入れられました・・これが明日の、女性艦長の皆さんに集って頂いて行われる、インタビューと対談のスペシャル生配信プログラムに於いて、どのような展開や状況の変化や結果を現出せしめるのか・・現時点では予想や予測も出来るものではありませんが、是非とも明日の生配信プログラムにご期待を頂ければと思います・・本日の生配信プログラムでは、なかなか思い通りに進める事が出来ませんでした事を、ここで謝罪させて頂きます・・弊社メインサイトにアクセスされている皆さんから、本当に沢山のメッセージを頂いておりましたが、その殆どは紹介する事さえ出来ませんでした・・これに附きましてもここで謝罪させて頂きます・・只、同盟の成立に賛成を表明されたメッセージは総数の88%にも上り、反対を表明されたメッセージは6%・・表明の無かったメッセージは6%でした・・物足りなさを感じておりますのは私だけではなく、ご覧の皆さんもそうであろうと思います・・このような艦長の皆さんに集って頂いての生配信プログラムは、今後も提案して参りたいと思っておりますので、今回至りませんでした処は次回にて挽回して参りたいと思います・・それでは・・長時間に亘りお付き合いを頂きまして、艦長の皆さんに於かれましても配信をご覧の皆さんに於かれましても、本当にありがとうございました・・お疲れ様でございました・・取り敢えず明日の・・女性艦長の皆さんに集って頂いての、インタビューと対談の生配信スペシャルにて、またお会いしましょう・・本日は本当にありがとうございました・・お疲れ様でした・・これで配信を終了します・・」

「・・カット・・」

・・アランシス・カーサーの声で配信は閉じられ、ネットワークとも切断され、収録も止められ、照明も落される・・マルセル・ラッチェンスも立ち上がった・・。

「・・皆さん・・ご協力、本当にありがとうございました・・期待以上、予想以上の番組になりました・・どんなに重ねて感謝しても足りません・・私も本当に感動しました・・」

・・そう言いながらアランシス・カーサーと共に彼は歩み寄り、それぞれ全員と握手を交わす・・私達もお互いに労いと感謝の言葉を掛け合いながら握手を交わし合う・・カフェダイナーのセットでテーブルに着いたままこちらを観ている3人を手招いたのだが、何故かそこにいる全員が立ち上がって歩み寄って来る・・。

・・ハンナ・ウェアーが小走りに来て、泣き笑いの顔のまま私をハグした・・。

「・・アドル艦長、貴方は最高です・・」

「・・どうした、カウンセラー・?・ありがとう・・」

・・そう言って彼女の頭を右手で2回撫でる・・。

・・直ぐに来たシエナ・ミュラーがハンナを私から優しく引き離す・・。

「・・マルセルさん、アランシスさん・・素晴らしく有意義な交流の場を設けて下さいまして、本当にありがとうございました・・状況がここ迄、好いベクトルにて進むとは想像も出来ませんでした・・そして各艦の皆さん・・改めて同盟への参画に感謝して・・感謝の言葉も無いですが・・皆さんを歓迎致します・・早速ですが、紹介します・・『ディファイアント』の副長・シエナ・ミュラーと、カウンセラー・ハンナ・ウェアー・・そして、弊社役員会が専任秘書として私に就けてくれたリサ・ミルズ女史です・・今リサ・ミルズ女史から、弊社ゲストパーキングエリアの位置をお伝えします・・皆さんは車で来られましたか・・?・・」

・・この問いに艦長達は、無言だったが頷いた・・。

「・・分かりました・・それでは、早速参りましょう・・移動に掛かる時間も正直、勿体ないですからね・・副長の皆さんは、ミルズ女史にお名前をお伝え下さい・・それでは、マルセルさん、アランシスさん・・慌ただしくて申し訳ありませんが、今日はこれにて失礼致します・・もしも何かありましたら、何時でも構いませんので通話を繋いでください・・」

「・・アドル艦長・・こちらこそ感謝し切れません・・この番組のコンセプトも貴方の発案でしたからね・・素晴らしく感動的な番組でした・・弊社メインサイトへのアクセス数も、史上最多数でした・・開幕後も続けて企画したいと考えておりますので、その際にはまた宜しくお願いします・・それで・・何があると予想されているのですか・・?・・」

「・・おそらくですが・・女性艦長のどなたかから連絡があって・・明日も私に出て欲しい、と言う要請が届けられるかも知れません・・まあ、分かりませんがね・・」

「・・分かりました・・何かありましたら、直ぐにご連絡します・・それじゃ、行きましょうか・・?・・」

・・リサが各艦の副長達とメディアカードを交換する・・シエナも彼女達とカードを交換した・・私もザンダー・パスクァール艦長とネヘマイヤ・パーソフ艦長とガンナー・ヴァン・ハンプトン艦長に自分のメディアカードを渡して、彼等からもカードを受け取った・・そのまま全員でスタジオから退室し、1階まで降りて正面玄関から外に出る・・既に全車が階段下に横付けされている・・。

「・・それじゃ、皆さん・・宜しくお願いします・・後程また・・」

・・艦長達に向かってそう言うと、見送ってくれているマルセルさん達に手を振って応え、自分の車に乗り込んで発車する・・。

「・・リサ・・秘書課に繋いで、艦名と全員の氏名を伝えて・・?・・バラバラに到着するから、その都度ご案内するようにって・・それと、もう来てるだろうメディアにどう対応するかも訊いて・・?・・多分、スカイラウンジで会談すると思うんだけど・・?・・」

「・・分かりました、確認します・・」

「・・社長は挨拶したら、退席する・・副社長が2人出るから、常務は顔を出さないだろう・・まあ、関係無いしね・・それで、議長は俺が務めると・・リサ・・会談の席上でも言うけど、サイバー・クラウドスペースに俺達専用の会議室が必要だ・・君が製作してくれ・・?・・会議室名は会談で決める・・メンバーは艦長と副長だけ・・パスコードは、艦名・氏名・アクセスコードと左手の掌紋で認証しよう・・スキャナーを用意して貰って・・?・・それから・・一杯奢るって言ったけど、夕方からやってるBARってあったっけ・・?・・」

「・・分かりました・・とにかく確認して、探します・・」

「・・頼むよ・・それと、ごめんね・・お母さんに挨拶出来なくなった・・」

「・・それは、いつでも良いですから・・気にしないで下さい・・」

「・・ありがとう・・」

・・それから私が口を噤んでいる間に、リサは通話で色々と話した・・。

「・・艦名と全員の氏名を伝えて対応をお願いしました・・メディアは6社が既に来ているそうで・・常務からの指示で、本社正面玄関の前で横一線に並んでの、画像撮影だけが許可されているそうです・・やはり会談は、スカイラウンジで行われます・・BARを検索しましたが、19:00開店の店が1軒・・ですが店内は狭いです・・」

「・・分かった、ありがとう・・酒の事は料理長に相談してみるよ・・」

・・そうリサに応えてから60秒程して、私の携帯端末に通話が繋がる・・観ると、カーステン・リントハートからだ・・。

「・・あれ・?・チーフからだ・・何だろう・・?・・」

・・そう言って端末を車のコンソールにセットし、ハンズフリーで応答する・・。

「・・はい、どうしましたか・?・チーフ・・?・・」

「・・アドルさん・・今、話しても大丈夫ですか・・?・・」

「・・大丈夫ですよ、どうぞ・・?・・」

「・・実は私も先程の生配信を観ておりました・・それで取って置きのモルトが1本、手に入ったものですから、今からそちらにお持ちします・・」

「・・本社迄、来て頂けるんですか・・?・・」

「・・はい、グラスと一緒にお持ちします・・」

「・・それは大変に有難いですね、チーフ・・本社9階のスカイラウンジにて会談を行いまして、話し合いが終わったら全員で乾杯しようと思っています・・」

「・・分かりました、アドルさん・・私からも同盟の成立をお祝い申し上げます・・最初から観ていましたが、お話には大変感動しました・・」

「・・ありがとう、チーフ・・まさかあそこ迄話が進むとはね・・配信が始まるまで、2隻から始めるんだと思っていたから・・」

「・・総てアドルさんの才能と魅力ですね・・男でも惚れます・・」

「・・チーフにそこまで言われると、かなり擽ったいですよ・・処で取って置きの一本って何です・・?・・」

「・・サンクロスト・トラッシュの30年物です・・」

「・・チーフ・・そんな高い酒を何本買ったんですか・・?・・」

「・・1本だけですよ、アドルさん・・これは私の一存で、貴方へのプレゼントとして買いました・・貴方が特別な時に、特別な場所で、特別な人達と乾杯する為の物です・・同盟成立の、私からのお祝いです・・」

「・・チーフ・・本当にありがとう・・24人にツーフィンガーで注いでも大丈夫かな・・?・・」

「・・大丈夫です・・4分の1くらいは残ります・・」

「・・分かりました・・本社に着いたら、秘書課の人に案内して貰えるようにします・・本社の住所は私のメディアカードに載っています・・標識を見て、ゲスト・パーキングエリアに駐車して下さい・・それじゃ、向こうで会いましょう・・気を付けて・・」

「・・アドルさんもお気を付けて・・それでは・・」

・・通話は終わった・・私はエレカーの運転を安全運転レベルでAIに任せ、ウィンドウのスモークレベルを9迄上げると、シートをリクライニングさせ、リサを抱き寄せ、抱き合ってキスを交わした・・。

・・それより少し前・・ハンナ・ウェアーのエレカー・・

「・・アンタねえ・!・どうしてあそこでアドルさんに抱き付いたのよ・・!?・・皆、観てたじゃない・!・アドルさんの評判を考えなさいよね・!・」

「・・だって・・我慢出来なかったんだもの・・」

「・・アタシだってギリギリで我慢したんだよ・!・アンタ、アドルさんの前じゃ12才だね・!・アタシはまだ15才だけどさ・・今度やったらマジで殴るから憶えときなさいよ・!?・」

「・・分かったわよ・・それにしても、驚いたわね・・?・・」

「・・何が・・?・・」

「・・あの娘が副長だっただなんて・・」

「・・そうね・・私にも予想外だったわ・・」

「・・アドルさんに言う・・?・・」

「・・彼女とのこれからの関わりの中で、何かが起きたら言うわ・・それまでは言わない・・」

・・その時、シエナの端末に通話が繋がる・・相手を確認してスピーカーに切り換えた・・。

「・・ハルからよ・・どうしたの・?・ハル・?・」

「・・本社に向かっているの・・?・・」

「・・そう・・何・・?・・」

「・・アンタ達2人で、アドルさんのサポートは大丈夫なの・・?・・」

「・・リサさんもいるから、大丈夫だと思うよ・・」

「・・とにかく、アドルさんに恥を搔かせないでよ・・イイわね・・?・・」

「・・さっきハンナが皆の前でアドルさんに抱き付いてさ・・」

「・・次は私が代わりに行くわ・・ハンナは、データベースの作成が遅れているわよ・?・少し集中して仕上げなさい・・!?・・」

「・・分かった・・」

「・・今日は任せるから、くれぐれも頼むわよ・・会社の中なら、リサさんの後ろに控えていなさい・・?・・」

「・・分かった・・ハルは憶えてる・・?・・カーラ・ブオノ・マルティーヌ・・?・・」

「・・彼女がどうしたのよ・・?・・」

「・・副長になっているわよ・・」

「・・なら尚の事、堂々として隙を見せないでいなさい・・」

「・・分かった・・」

「・・じゃあね、頼んだわよ・・」

・・それで通話は終わった・・。




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