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・・『開幕』・・

・・インタビューと対談と・・9・・

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「・・あ・はい・・配信をご覧の皆さん・・実に10隻中8隻の艦が、『ディファイアント』と共闘する同盟に参画しました・・ザンダー・パスクァール艦長の指揮する『フェイトン・アリシューザ』が1隻だけ、当面は単独で行動すると言う事になります・・本日の生配信スペシャルプログラムでは、男性艦長の皆さんに対してのインタビューと対談に主軸を置く事を企図して進めようとしておりましたが、思いも依らぬサプライズな展開となりました・・それでは、ここで再びアドル・エルク艦長にお話を伺いまして、同盟に参画される艦長の皆さんからもコメントを頂ければと思います・・また、メッセージとして寄せられている質問もご紹介してお応えを頂きながら、寄せて下さった視聴者の方とも対談して頂ければとも思います・・それでは、アドル・エルク艦長・・現時点で同盟に参画するのは10隻となりました・・合同で模擬戦闘も含めて訓練をされるのでしょうが・・どのように行いますか・・?・・」

・・同時刻・・ハーマン・パーカー常務執務室・・。

「・・よし・・来社されるのは20名・・こちらからは2名で、計22名だな・・厨房とスカイラウンジと社長に伝えて下さい・・!・ああ、それと報道メディアからの取材要請は・・?・・」

・・ハーマン・パーカーがモニターからドアに顔を向けて、ドアの脇に立って控えているドリス・ワーナー秘書課渉外主任に訊く・・。

「・・分かりました・・!・現在迄に6社から来ていますが、広報部が対応しています・・」

「・・本社の1階出入り口の前で、横1線に並んでの画像撮影だけ許可すると伝えて下さい・・」

「・・承知しました・・」

・・それだけ応えて彼女は、彼の執務室から退室した・・。

・・ラッチェンス氏からの質問を受けて私はもう二口水を飲み、グラスを置くと脚を組んで手指も組む・・。

「・・そうですねえ・・10隻全艦で行う合同訓練と・・5隻で行う訓練と・・3隻で・・2隻で行う訓練・・それぞれのシフト・フォーマット・パターンを色々なモードで・・コンビネーションやバリエーションも様々に換えながら行える訓練のパターンガイドラインを、出来るだけ沢山考案しながら反復して行いたいですね・・また、同じ訓練をシャトルでも行いますね・・」

「・・具体的に例えて言うと、どうなりますでしょう・・?・・幾つか、ご紹介頂けますか・・?・・」

「・・ええ・・一つには超高速航行訓練と超高速戦闘訓練と空間ポイントレースと空間タイムトライアルレースを兼ねて行いたいですね・・これ以上詳しく言うのは、手の内を明かす事になるので勘弁して下さい・・」

「・・はあ・・レース・・ですか・・?・・何故レースが訓練になるのでしょうか・・?・・」

「・・レースと言っても、闇雲な競争とか競い合いではなくて・・スピードとパワートルク・コントロールもそうなんですけれども、フォーメーションチェンジの好い練習になるんですよ・・あとはミッション対策でもあります・・目的地への先着を競うレースも、タイムトライアルレースも必ずミッションとして発表されるでしょうから・・」

「・・ミッションとして、レースが開催されると予想されているのですね・・?・・」

「・・そうですね・・言うなれば、ミッションは総てレースのようなものですし、各艦ともメインパイロットに就いている方は、それぞれ腕にも脚にも自信のある人達ばかりですから、メンタリティから考えてもレースミッションは、様々なタイプで必ず紹介されますね・・」

・・同時刻・・エマ・ラトナー居宅・・

『ディファイアント』サブ・パイロットの2人・・ソフィー・ヴァヴァサー、ハンナ・ハーパーと3人で生配信を観ながらマニュアルの読み合わせをしていたのだが、手を叩いて跳び上がる・・。

「・!・ヤッター・!・レースがあるって・!?・・」

「・・そうこなくっちゃ・!!・・」

「・・レースなら、何でも頂くわよ・?!・」

「・・アドル・エルク艦長・・他にはどのようなミッションが発表されると予想されますか・・?・・」

「・・飽くまでも予想ですが、トレジャーハント・ミッションは、考えられますね・・隠されているものや目標を探し出すミッション・・それに、アリミ・バールマン艦長が言ったような、交渉事や商売事のようなミッションも充分に考えられるでしょう・・・!・・マルセルさん、そう言えばゲームフィールドについてのデータベースが、私のアクセスコードでも閲覧出来ないのですけれども、ゲームフィールドについてのデータは艦長にも非公開なのですか・・?・・」

「・・アドル・エルク艦長・・残念でもありますし、申し訳ないとも思いますが、ゲームフィールドのデータベースについて承知しているのは、運営委員会のトップメンバーと直属の技術部門メンバーだけなのです・・私でもアクセス出来ません・・」

「・・つまりフィールドの広さは、出航して観ないと判らない・・?・・」

「・・その通りです・・」

「・・参りましたねえ・・フィールドの広さぐらい分からないと、戦略の立てようがありません・・」

「・・それ程重要な事ですか・・?・・」

「・・例えば出航して8時間程度で、他の艦を見付けるくらいだったら、まだ良いんですけれども・・これが丸1日飛び回っても見掛けないとなると、かなりシンドイですね・・戦うにしても他艦を見掛けないのでは、お話にもなりません・・まあ、出航してから暗号回線を開いてお互いの位置を確認すれば、概ねの広さは分かりますか・・それと・・ミッションの発表が2週間に1回程度になるなら、凡そ1週間でミッションがクリア出来るとすると・・そこからもゲームフィールドの広さが、大凡推定出来ますね・・分かりました・・良く言って出たとこ勝負・・悪く言えば行き当たりバッタリって処ですね・・私ばっかり喋っちゃってスミマセン・・」

「・・いえいえ、大丈夫ですよ、アドル艦長・・貴方の発言からトークを膨らませる事が出来ますので・・こちらとしては、感謝しています・・・それでは皆さん・・ここからは、メッセージとして頂きました疑問や質問をご紹介し、艦長の皆さんにお答えを頂きながら、話を進めて行きたいと思います・・先ず、この質問から紹介して皆さんからのお話を伺いたいと思います・・同様の内容での質問を、多くの方からメッセージにて頂きました・・皆さんの試してみたい戦い方とか、戦いの始め方、終わらせ方とはどのようなものでしょうか・・?・・本当に申し訳ないのですが・・また、アドル艦長からお願いします・・」

・・また水を二口飲んで脚を組み直す・・。

「・・先ずこちらが相手を見付けたなら、相手もこちらを見付けています・・余程眼が良ければ、相手より先にこちらが見付けるかも知れませんが、まずそれは無理でしょう・・私でしたら、光学迷彩展開・エンジン停止・アポジモーターを起動して僅かに変針・・これを5秒以内にやって、様子を観ます・・」

「・・その後は、どうしますか・・?・・」

「・・相手艦が離れるようなら、そのままスルー・・接近して来るようなら作戦を考えます・・」

「・・どのような作戦を採られますか・・?・愚問のようですみませんが・・」

「・・それは・(笑)・状況・状態・地形・それに相手艦に因って、色々と変わりますね・・」

「・・本当に愚問だな・・」

・・と、些か呆れたようにサングスター
艦長が言い、座り直す・・。

「・・申し訳ありません・・」

「・・私達は10隻で同盟を組みました・・具体的な事はこれから話し合って決めますが、ある程度協調して行動しますので、単艦で対処するよりも作戦は立てやすいでしょう・・」

「・・分かりました・・ところで皆さんは勝ち戦である場合、相手艦を撃沈する迄戦果を追求しますか・・?・・または、これは負けたと判断する事態・状態・状況とは、どのようなものでしょう・・?・・」

「・・すみません・・これについても同盟に参画して頂けるメンバーで、話し合う必要性を感じています・・私の考えですが、撃沈には拘りません・・と言うよりも、拘っていられる程の余裕は無い・・と言う方が適正でしょう・・繰り返しになりますが、我々は狙われています・・状況の推移に因っては、10数隻から数十隻の敵艦に包囲されてしまう可能性も否めません・・もしもそのような事態になったら、何とか突破して脱出する事しか考えません・・それに・・これも私の感触ですが、損傷率が28%程度に達したなら大概の艦は負けたと思って逃げるでしょう・・それを追い掛けて追い詰めて撃沈にまで追い込むのは、彼我の攻撃力・防御力・機動力にそれ程の差が無い場合には、まず無理ですね・・そうして撃沈に拘っている間は周囲への注意・監視が疎かになりがちなので、何時の間にか別の敵艦に待ち伏せされるか忍び寄られて撃たれます・・なので、相手が逃げたらこちらも離脱するか別の目標に向かうのがセオリーです・・」

「・・詳しい説明をありがとうございます・・では、負けたと判断する事態・状態・状況についてもお願いします・・」

「・・え~・・先ず、重巡宙艦や戦艦を見掛けたら即行で離脱します・・話にも相手にもなりません・・これも私の感触ですが、重巡宙艦とまともに亘り合うには少なくとも軽巡宙艦で20隻分の経験値が必要ですね・・あと、相手艦よりも先に損傷率が15%に達したら、一発逆転の作戦案でも無い限り、離脱しますね・・修理に掛けなければならない時間を考えるなら、例え勝てたにしてもそれ以上の深手を負うより、余程良いと思います・・」

・・ザンダー・パスクァール艦長が右手を挙げる・・。

「・・私ならデコイとシャトルを使って、相手艦を自艦の初撃ポイントにまで誘導します・・」

「・・誘導が成功する迄、どの様に操艦しますか・・?・・」

「・・それは機密事項です・・こんな所で答えられる訳が無いでしょう・・」

「・・失礼しました・・」

「・・(笑)・パスクァール艦長・・私も貴方のように、最短・最小限度で説明できるようになりたいですよ・・」

「・・恐縮です・・エルク艦長・・」

「・・アドルで好いですよ・・」

「・・分かりました・・では、私の事はザンダーと・・」

「・・了解しました・・」

「・・なるほどね・・デコイを使う事は私も考えていましたが、シャトルについては思い付いてなかったですね・・出て貰うパイロットの練度が高くないと、大変ですね・・」

「・・私は地形を上手く利用して戦いたいですね・・」

・・ネヘマイヤ・パーソフ艦長がそう言って水を飲んだ・・。

「・・そうですね・・メインスタッフ間に於ける連携の練度と、反射・反応・操作のスピードを、合同訓練の中で上げていきましょう・・」

「・・ミサイルの運用も、戦術の中に上手く摂り容れて活用したいですね・・」

・・アーロン・フォスター艦長だ・・。

「・・そうですね・・ミサイル運用についてのマニュアルは、多岐に亘って詳述されているので分量は多いですが、結構面白いですよ・・想定するどのような戦術にも、適合するプログラムが組める筈です・・」

「・・戦闘とチャレンジミッションと、どちらに経験値蓄積の主軸を置くべきでしょう・・?・・」

・・と、アジェイ・ナイデュ艦長が訊く・・。

「・・それについても、今日の会談を含めて話し合える場では話し合って行きたいと思っていますが、今は私の考えを言いますね・・初期はチャレンジミッションクリアに注力して、経験値の蓄積を続けたいと思っていますが・・私達グループの平均経験値が、軽巡宙艦で3隻分くらいの経験値になったら対艦戦への介入頻度を少しずつ大きくして行こうと思っています・・」

「・・処で・・我がグループのリーダーは、アドルさんで好いんですかね・・?・・」

・・アリミ・バールマン艦長だ・・この問い掛けが発せらるのは予想していたが、今なのか・・それにしても事態の展開・?・状況の進行・?・が早すぎる・・私は口を開かなかった・・。

「・・アドル・エルク艦長で好いんじゃないのかな・・?・・元々は彼が呼び掛けた、この共闘同盟だ・・彼がリーダーとなるのが自然だろうし、当然と言っても良いだろう・・リーダーとしての彼の資質に疑義を挿むような者はいないと思うが・・勿論、立候補したければしても好い・・彼は止めないだろうしそれ処ろか、立候補した者を全力でサポートするだろう・・アドルさんとはそう言う漢だ・・私は正規軍人ではないが、外郭団体の軍属だ・・それでも階級は中佐だし、艦長でもある・・先廻りして言ってしまうようだが、このグループのリーダーに私は相応しくない・・私が立てばどうしても艦隊調になる・・このゲームの中で、特に今我々が置かれている状況を鑑みるなら・・それはこのグループを更に目立たせてしまう事になってしまい、却って宜しくない・・アドル・エルク艦長の方が遥かに相応しい・・私は真摯にそう思うし、彼の言う事なら自然に従うよ・・」

・・ハイラム・サングスター艦長が落ち着いて静かに語る・・同盟に参画してくれた各艦長達もまた、落ち着いた表情で座って聴いている・・。

「・・マルセルさん・・他に面白い質問は、寄せられてないですか・・?・・」

・・ヤンセン・パネッティーヤ氏が、そう訊く・・。

「・・そうですね・・それでは皆さんにこれから、あるシチュエーションを呈示します・・その事態に直面された時、皆さんならどのように行動するのでしょうか・・?・・お話を膨らませて、伺って参りたいと思います・・皆さんは自艦の艦長として指揮を執られ、航行しています・・センサーが対艦戦を検知しました・・観ると1隻の軽巡宙艦が、もう1隻の軽巡宙艦から砲撃を受けつつ離脱しようとして航走しています・・センサースキャンで逃げている方の艦は、既に損傷率で35%・・シールド・ジェネレーターも壊れているようで機能していません・・逃げ切れるようには観て採れません・・さて・・皆さんでしたら、どのように行動されるでしょうか・・?・・宜しければ挙手にて、ご発言下さい・・では、どうぞ・・」

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