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・・・『始動』・・・

・・全員集合・・

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「・・副長・・他の皆が今どうしているか、通話で訊いて・・?・・」

・・歩きながら言う・・。

「・・分かりました・・」

「・・マエストロ・・お疲れですか・・?・・」

「・・いや、アドルさん・・まだ全然大丈夫ですよ・・お気遣いをどうもありがとう・・」

「・・良かった・・初めて全員が集合する記念に画像撮影をしますので、もう少しお付き合いを願います・・皆さん、『ディファイアント』は如何でしたか・・?!・・」

「・・とても気に入りましたよ、アドルさん・・早く乗りたくて、待ち切れないですね・・素晴らしい完成度の医療施設にも感動しました・・週に2日しか乗れないのが、残念でなりませんね・・もしもこんな医療現場が求人を出していたら、迷わず応募します・・」

・・と、ブランドン・ダルトン医師が感動して言う・・。

「・・全く同感ですね・・是非皆さんと一緒に、出来るだけ長い間『ディファイアント』に乗っていたいです・・」

・・と、エフライム・ハークネス医師も追従して言う・・。

「・・私は、素晴らしく理想的なバックバーに入れた事にも感謝していますが・・その前に、アドルさんが艦長を務める『ディファイアント』に乗れた事に感謝します・・今日初めてお会いしたばかりですが、アドルさんの人柄・為人には感銘を受けました・・これから週に2日間だけですが、微力を尽くしたいと思います・・」

・・と、カーステン・リントハート・チーフバーテンダーが言う・・。

「・・ありがとうございます、チーフ・・私も『ディファイアント』のバーラウンジにチーフを迎える事が出来て嬉しいですし、感謝しています・・バーラウンジがクルーの憩いの場になると、もう確信していますし・・非番の時にカウンターに着いて、チーフ手ずからの一杯を頂くのが今から楽しみです・・」

「・・アドルさん、私も『ディファイアント』に派遣された事、貴方が艦長を務められる事に感謝していますし、チーフと同じにアドルさんの人柄に感銘を受けました・・皆さんがラウンジに来られた時には、私の総てで接客させて頂きます・・」

・・と、そう言ってイアン・サラッド・サブバーテンダーが、歩きながら会釈する・・。

「・・ありがとうございます、ミスター・イアン・・貴方に作って貰える最高の一杯も、今から楽しみです・・」

「・・アドルさん・・遅れましたが、我ら厨房の者達も挙って『ディファイアント』に派遣されました事を感謝していますし、貴方に逢えた事に感謝しています・・マエストロ・コラントーニとのお話では、近年に無かった感動と感銘を受けました・・週に2日間だけですが、最高に楽しんで貰える料理を作ります・・」

・・と、そう言ってマエストロ・ラウレンティスは、歩きながら私と握手を交わした・・。

「・・ありがとうございます、マエストロ・ラウレンティス・・私も皆さんを『ディファイアント』の厨房に迎える事が出来て感謝していますし、光栄にも思いますし、皆さんを派遣してくれた運営本部にも感謝しています・・皆さんが作ってくれる最高の一品が、今から本当に楽しみです・・」

・・やがて皆は退艦し、スペースポート・・ドックエッジ・・スペースドックからスターターセレモニーホールへと到り、リフトで『トゥーウェイ・データ・ネット・ストリーム・ステーション』社の1階・エントランスホールへと戻り着いた・・。

「・・アドルさん・・他のクルーはまとまって、後20分程でここに着きます・・」

・・と、シエナが傍に寄って来て言う・・。

「・・分かった・・シエナ・・ありがとう・・マルセルさん・・!・・全員集合は約20分後だそうです・・」

「・・分かりました・・それでは20分後くらいの頃合いを見計って、皆さんを5階のスタジオにご案内します・・」

「・・我々の、言わばポートレートな記念撮影に、スタジオを使って下さるのですか・・?・・何か少し申し訳なく思いますが・・?・・」

「・・何、構いませんよ・・撮影画像は私共にも下さると言う事ですから、上質に撮りましょう・?・」

「・・ありがとうございます・・」 

「・・どう致しまして・・」

「・・それでは皆さん・・後20分程で残りのクルーが到着して、全員集合となりますので・・それまでそちらのラウンジで座って待ちましょう・・受付の女史に頼めば、何でも持って来てくれますよ・・」

・・そう言って私は皆を1階ホール奥のラウンジへと誘い、副長以下のスタッフ達にも目配せして、皆をラウンジの席へと誘導して貰う・・見遣るとマレット・フェントンがアランシス・カーサーと・・ミーシャ・ハーレイがハイラム・ケラウェイと・・それぞれお互いに自分の携帯端末を出し合ってリンクさせ、データを共有させながら話をしている・・追加の物資・物品の補給と、改善・改良点についてだろう・・なかなか好い手際のようだ・・シエナは・?・ドクター達と同じように携帯端末をリンクさせ合いながら話しているし、ハンナもバーテンダー達と同じようにしているし、ハルも厨房の皆さん達と同じようにして話している・・もう一々言わなくても、ネットワークの形成は任せて好いだろう・・ふとスコットを探すと、マーリーと一緒にエレインと話をしている・・上手く好みを聴き出してくれると好いんだが・・ズライは・・?・・カーラ・ヘンリエッタ女史と親し気に話している・・あの2人、知り合いか・・?・・ちょっと訊いてみよう・・。

「・・やあ、ズライ・・『ディファイアント』はどうだったかな・・?・・面白かった・・?・・」

「・・はい・!・すごく面白かったですし、楽しかったです・・スコットさんが言ったように、私も乗りたいと思いました・・今日は見せて下さってありがとうございました・・」

「・・(笑)今日はまだ終わってないから、まだまだ沢山観ていってよ・?・ところで・・ヘンリエッタ女史とはお知り合いなの・・?・・」

「・・はい・!・カーラとは、ミドルスクールの2年生の時に同じクラスでした・・好い友達になれましたが、三学期に入って直ぐくらいで彼女が転校して行ったので・・でも、連絡は頻繁に執り合っていました・・だから彼女が研究員として登用された時には、2人でお祝いをしたんです・・」

「・・そうだったんだ・・お互いに好い友達なんだね・・?・・」

「・・はい・!・ズライは私よりも頭の回転が速いんです・・飲み込みが早くて、適応力は私よりもずっと高いんです・・でも今はまだ・・自分に合うライフワークを探しています・・アドルさん・・ズライの事も、宜しくお願いします・・」

「・・(笑)分かっていますよ、カーラさん・・彼女の素晴らしさは私だけでなく、職場の同僚達も充分に承知しています・・彼女には充分に助けられていますので、私達も彼女をサポートします・・仕事の事については、また後で話そうな・?・ズライ・・?・・」

「・・はい・・ありがとうございます・・」

・・ズライが少し涙ぐんで頭を下げたので、彼女の右肩に優しく左手を置いて頷く・・視線を感じた気がしたので観ると、マルセルさんが微笑まし気にこちらを観ている・・眼が合ったので2人に右手を挙げて挨拶すると、彼に歩み寄った・・。

「・・マルセルさん・・配信番組の制作発表会見は、このビルの中で開催されるのですか・・?・・」

「・・そうです・・アドルさん・・このビルの8階がホールになっておりますので、そこで開催します・・」

「・・このビルの中の何処かで、会見の模様を観られますでしょうか・・?・・」

「・・そうですね・・この1階・エントランスホールに設置してあるモニターにも、会見の模様は生で中継しますが・・ここですと外との出入りが激しいので落ち着いては観られないでしょうし、あまつさえ報道陣に見付かればたちまち囲まれますから、観る処の話でもなくなるでしょう・・以前にご案内したラウンジに大型のモニターを設置して、弊社社員用の特別観賞室とする予定ですので、宜しければおいで下さい・・ここよりは遥かに落ち着いて観られると思います・・」

「・・それは大変に有難いお誘いですが、ご迷惑になりませんか・・?・・」

「・・なんの、アドルさん・・とんでもないですよ・・他の方ならばいざ知らず、貴方と『ディファイアント』クルーの皆さんでしたら、我々は挙って歓迎致します・・オンライン・トップミーティングでの貴方からの提案には、皆感動しましたし・・貴方から頂いたあの差し入れのお礼も、まだ出来ておりませんのでね・・何の気兼ねも要りません・・堂々とおいで下さい・・」

「・・分かりました・・どうもありがとうございます・・そこまで仰って頂けるのでしたら、遠慮なく全員でお邪魔させて頂きます・・」

・・そう応えた時に、シエナとハルとフィオナが傍に来た・・。

「・・アドルさん、到着しました・・全員集合です・・」

「・・分かった、ありがとう・・マルセルさん、到着しました・・全員集合です・・全員が入ると、ここはもう手狭になりますので、5階に移動しましょう・・?・・」

「・・そうですね、分かりました・・それでは皆さん、これより5階に上がります・・リフトホールに移動して頂きまして、3本のリフトに分乗して上がって下さい・・宜しくお願いします・・」

・・人々が移動を始める・・厨房の皆はシエナに任せ、ドクター達はハルに任せ、バーテンダー達はハンナに任せて私とリサとフィオナは、後から到着して合流した皆を出迎え、労を労って一緒にリフトホールへと移動する・・皆、私に笑顔を見せて眼を合わせてくれる・・頼もしい仲間達だ・・5階のスタジオには入った事があるが、私達が入ると既に良く片付けられていて、広い空間が開けていた・・。

「・・改めまして、皆さん、ようこそ当社、『トゥーウェイ・データ・ネット・ストリーム・ステーション』社へとおいで頂きました・・歓迎させて頂きます・・マルセル・ラッチェンスです・・先ず、『ディファイアント』のクルーの皆さんが全員、今日初めて一堂に会しました事に、お祝いを申し上げます・・艦長を務められるアドルさんより、この機会に全クルーの集合写真を記念として撮影しておきたいとのお申し出を受けまして、微力ながらお手伝いをさせて頂く事となりました・・どうぞ宜しくお願い致します・・その為に、この5階のスタジオフロアへとご案内させて頂きました・・こちらで熟練のカメラマンをご用意させて頂きましたので、どうぞお任せ頂きたいと思います・・リラックスして頂いて、好い笑顔で好い写真を撮りましょう・・!・・」

・・そう言い終えると彼は数歩退がり、代わってアランシス・カーサーがカメラマンを伴って進み出る・・『ディファイアント』のクルーだけでも84人・・私の同僚達も含めれば88人だ・・とても自分達でフォーメーションをコントロール出来るものでもなく、アランシス・カーサーとカメラマンの指示に従って動くしかない・・指示に従って色々と動き、様々にフォーメーションを組み換えて撮影していく・・全体集合フォーメーションでの画像を10数パターンで撮影した後は、少人数グループでの撮影に移行した・・『ディファイアント』司令部を初めとして、各部所毎に私と副長も入って様々なフォーメーションパターンで撮影を進めていく・・同僚達のグループには、副長とドクターとマエストロ・コラントーニにも入って貰った・・何枚撮ったか全く判らない・・30分も過ぎた位の頃合いで、漸く撮影会は終了した・・。

「・・皆さん、ご苦労様でした・・お疲れ様でした・・アドルさんもお疲れ様でした・・撮影した画像は総て・・これは確約致しますが、総て送らせて頂きます・・どちらにお送りしましょうか・・?・・」

・・私はリサと副長を交互に見遣る・・2人とも頷く・・。

「・・分かりました、ありがとうございます、マルセルさん・・撮影した画像は総て、副長とリサさんの双方に送って下さい・・宜しいでしょうか・・?・・」

「・・分かりました・・アドルさん・・誓ってそのようにさせて頂きます・・こちらこそ、本当にありがとうございました・・それではお疲れでしょうから、このままラウンジにご案内致します・・ラウンジへはデザレー・ラベル女史がご案内致します・・私共は会見の準備と最終の打合せがございますので、ここで失礼させて頂きます・・ごゆっくりお楽しみ下さいますように・・」

「・・重ね重ねにありがとうございます、マルセルさん・・大人数ですが、お邪魔させて頂きます・・またお会いしましょう・・」

「・・こちらこそ、またお会い出来る時を楽しみにしております・・それでは・・」

・・そう言ってデザレー・ラベル女史を残し、彼らは退室して行った・・。

「・・それではラウンジへとご案内致します・・私の後にお続き下さい・・」

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