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・・・『始動』・・・

・・『ディファイアント』・・4・・

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「・・ここは全乗員がゆったりと座って参加できる全体会議室と、多用途・多目的に使える倉庫・格納庫・保管庫・冷蔵庫・冷凍庫のデッキです・・例えどのような物資・資材・原材料・燃料・食材・調味料・生鮮食料品などのような物であっても・・安全に、適正・適切に、衛生的に保管・保存の出来るスペースとなっています・・」

・・マルセルさんは、そこで言葉を切った・・。

「・・はい、それでは皆さん、会議室に入って適当に座って下さい・・少しお話があります・・」

そう言って会議室に入り、ビューワーの前まで歩いて行って振り返る・・皆もそれぞれ思い思いに座り、また最後にフィオンが入ってドアを閉める・・。

「・・スターターセレモニーが終わって『ディファイアント』に乗艦したら、先ずこの部屋に全員で集まります・・ここで改めて点呼を執って欠員の有無を確認してから、私から短く訓示も含めてのブリーフィングを行います・・その後、各部所に分かれて配置に着いて貰い、プレ・フライトチェックに入ります・・開始後1時間での出航を目標としますが・・2時間でも許容します・・なので、遅くとも2時間で出航します・・今の段階での基本方針ですけれども・・出航して最初の2日間・・最初の土日ですね・・この期間内は原則として訓練に充てます・・まあ、他の艦も大概、訓練をするでしょう・・もし挑んで来るような艦がいたとしても、遣り過してスルーする方針で行きます・・『ディファイアント』としては、充分に訓練を積まない内にこちらから戦闘に臨むような事はしない、と、申し上げます・・そして、具体的な訓練内容とスケジュールについては、出航後に全乗員に向けて通知します・・まあ訓練と言っても、あまりストレスにならないレベルで行います・・最初から何時間も根を詰めてはやりません・・安心して下さい・・それでは・・次のデッキに移動しましょう・・」

・・そう言い終えると、歩き出して会議室から出る・・皆も立ち上がって後に続く・・。

・・デッキ7に移動した・・。

・・うん?・眼の迷いかと一瞬思ったが、間違いない・・機体数が増えている・・。

「・・アドルさん・・?・・」

・・シエナが左に来て言う・・。

「・・うん・・増えているね・・」

「・!・先輩・!・ここってもしかしてシャトルの・・?・・」

「・・ああ、お前の想像通りだよ・・」

「・・皆さん、ここがシャトルと脱出ポッドの格納庫兼発進デッキです・・シャトルは10人乗りの機体が10機・・脱出ポッドは5人乗りの機体が15機、格納されています・・ので、何があっても全乗員が搭乗できます・・発進の際は機体がそれぞれ8方位からアームで保持・確保され、操縦パターンに応じて機体の姿勢が制御されます・・機体外の情景は、キャノピーの内側に制御された動画として投映されますので、臨場感に変わりはありません・・マニュアルにも詳細に明記されておりますので、読んで頂きたいのですがこの機体は、ポッドモジュール・コンビネーション・バリエントシップと呼ばれる種別でして・・コックピットブロックモジュールとエンジンブロックモジュールを主軸として・・後は様々なポッドモジュールの組み合わせや組み換えで・・その都度に、必要に応じた機体の構成ができる、と言うものです・・なので、構成によっては強力な戦闘性能を付加する事も出来ます・・」

「・・マルセルさん・・機体数を増やしたのには、何か意図する処があるのですか・・?・・」

「・・特には無いですね、アドルさん・・増やした方が面白くなるだろうと言う意見はありました・・」

「・・そうですか・・分かりました・・皆さんにシャトルと脱出ポッドの内部を観て貰いましょう・・副長・・参謀・・カウンセラー・・保安部長・・補給支援部長・・生活環境支援部長は、アクセス承認コードを入力して何機かのハッチを開けて下さい・・」

・・メインスタッフ6人でシャトル4機、ポッド3機のハッチを開ける・・最も手前のシャトルに、リサが同僚達を伴って入る・・2機目のシャトルに、副長が厨房のスタッフを伴って入る・・3機目のシャトルに、参謀がバーテンダー達を伴って入り、4機目のシャトルに、カウンセラーがクルー達を連れて入った・・。

私は脱出ポッドの1機に、マレットとフィオンとミーシャを連れて入った・・。

「・・うん、狭くて居住性は低いが、脱出ポッドだから仕方ない・・パネルもコンパクトで、これなら使い易いね・・」

「・・アドルさん、機体数が両方とも増えていましたが・・?・・」

・・と、フィオンが訊く・・。

「・・うん・・それを踏まえ、今日全員が集まったらパイロット候補生のグループ設定について、話をするよ・・」

・・私達が脱出ポッドから出ると、シャトルの中を観ていたメンバーも出て来た・・スコットが大分興奮しているようだ・・。

「・!先輩!・超格好好いじゃないスか!・このシャトルのコックピット!・最新型ポッドレーサーのそれより格好好いですよ・!・俺も乗りたいスよ・・もうウチの会社の艦に席は無いスかね・?!・・」

「・・もう『ロイヤル・ロード・クライトン』の席は、全部埋まったんじゃないのか・?!・・壮行会の時にはもう、全クルーが決定していたんじゃないのかな・・?・・正直に言うと、俺はお前の心配までしたくないよ・・」

・・私がそう言うと、スコットは渋いような、複雑な表情を返した・・。

「・・アドルさん・・これらのシャトルは、どのように運用されるのですか・・?・・」

・・そうチーフ・リントハートが訊く・・。

「・・そうですね・・通信が使えないか、使うべきで無い状況の場合に、連絡艇として出すとか・・文字通り他の艦を訪問する場合とか、シャトルのセンサーシステムを艦のそれとリンクさせて、センサーの探査範囲を拡げたりとか・・またそれよりも遠い、遠隔宙域への偵察に出て貰うと言う場合もあるでしょう・・また、運営本部が月に2.3回紹介するミッションに取り組む際、シャトルを出した方が好い場合もあるでしょう・・ポッドモジュールの組み換えによっては、空間戦闘機や攻撃機として使えない訳でもありませんが・・元々はシャトルとして設計された機体ですので、重巡宙艦や戦艦に配備されている戦闘機と渡り合っても勝ち目は薄いでしょうね・・」

「・・それでも、作戦と言うか、戦術の一部としてなら使えるのではないですか・・?・・」

・・そうライル・アルバート君が訊く・・。

「・・今の処、考えられるのは2つ・・『ディファイアント』の攻撃力・防御力・機動力が著しく低下していて、脱出も直ぐには出来ない場合に機動力と攻撃力を強化したシャトルを出して、敵艦の眼を逸らしつつ援護もして貰う・・もう一つは予めシャトル戦隊を発進させて置き、敵艦と交戦して注意を引き付け時間を稼いでいる間に、敵艦の反対側迄廻り込んで貰い、こちらとタイミングを合わせて挟撃を掛ける・・ですね・・」

「・・アドルさん・・その、ミッションと言うのは、どう言ったものなのでしょうか・・?・・」

・・と、ヘイシャム・ハイムリック医師が訊いた・・。

「・・ミッションについてもマニュアルに詳しく書かれていますので、読んでおいて頂きたいのですが・・運営本部は月に2.3回位の頻度で全参加艦に対し、段取りを完了した上でチャレンジミッションを発表します・・これは紹介と言うか推奨ですね・・チャレンジミッションに参加してクリア出来れば、相当の経験値が艦に付与されますし、場合によっては賞金も授与されます・・参加するかしないかは艦長の判断に依りますが、番組に出演する我々20艦には強く推奨されます・・何故ならミッションに取り組む様子は、放映素材として好い画になるでしょうからね・・多分最初のミッションが発表されるのは、開幕後3週目の土曜日になると思います・・それまでは訓練に勤しむ艦が多いでしょうし、発表しても参加艦は少ないでしょう・・チャレンジミッションの形態は種々様々に企画されます・・発表されなければ、具体的には何も判りません・・勿論『ディファイアント』は積極的にミッションに参加します・・他の19艦も参加するでしょう・・私としては、20隻全艦で効率良く経験値を上げていければ好いと思っています・・」

「・・経験値を上げる事は、かなり重要ですか・・?・・」

・・そう、イヴァン・ハリトーノフシェフが訊く・・。

「・・そうですね・・このゲームに参加する全艦は、10万隻に近付きつつあります・・超えるかどうかは判りません・・軽巡宙艦は、多分6万隻を超えるでしょう・・その他が、重巡宙艦と戦艦です・・はっきりと申し上げて、軽巡宙艦15隻分くらいの経験値を積まないと重巡宙艦と遭遇しても、まともに渡り合うどころか身を守る事すらおぼつかないでしょう・・観掛けたら即行で逃げないと、グズグズしていたらハチの巣にされますよ・・」

「・・シャトル・パイロットは、どのように選抜しますか・・?・・」

・・と、フーダ・ゾービ女医が訊いた・・。

「・・今夜、配信番組の制作発表会見がここで開かれますので、私が選んだクルーは全員が集まる事になっていますが・・その際に、私からパイロット候補生のグループ設定について、話そうと思っています・・先ずパイロットチームの3人と、主任機関士2人を含む機関部要員の9名・・補給支援スタッフの2人と、生活環境支援スタッフの2人・・保安部要員の7名・・医療室スタッフの3名・・サポートクルーの3名・合わせて28名を、最初のパイロット候補生グループメンバーとして設定し、シミュレーションを含む操縦訓練に入って貰います・・メンバーそれぞれの訓練状況と操縦練度の把握・認定・管理は、本艦の副長とメインパイロットの両名共同で担当して貰い・・シャトル運用の必要性が生じた場合には、その都度司令部にて協議して運用の可否も含めてパイロットの選抜を行う、と言う流れにしたいと思っています・・」

・・その後暫くは質問も無く、全員が静かに私の顔を観ていた・・。

「・・それじゃあ・・質問も無いようですので、次のデッキに行きましょうか・?・マルセルさん・・?・・」

「・・あ・はい、分かりました・・では、どうぞこちらへ・・」

・・デッキ6に移動した・・。

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