『星屑の狭間で』

トーマス・ライカー

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・・・『始動』・・・

・・『ディファイアント』・・3・・

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・・アーレン・ダールはアドル・エルクに、続けて訊こうと思ったが・・控える事にした・・今ここで訊くべきでも、訊いても良いような事でもない・・どの道開幕すれば自分は『ディファイアント』全乗員の主治医と言う事になる・・メディカルファイルなど、後日幾らでも閲覧できるだろう・・。

「・・どうだい、ズライ・?・ここまで『ディファイアント』を観て・・?・・」

「・・すごいです・・ただ、すごいです・・最初はちょっとアドルさんが羨ましいって感じもありましたけど、今は全然ないです・・私には無理です・・」

「・・(笑)・リアリティ番組の配信が始まったら、ズライもよく観て気付いた事があったら教えてな・・?・・」

「・・分かりました・・」

・・やがて中に入っていたシェフの方々がラウンジに出て来て、バーテンダーの皆も揃ってカウンターの向こう側に立った・・最後にマレットとミーシャも出て来て、カウンターの近くに立つ・・私もスツールから降りる・・。

「・・皆さん、お疲れ様でした・・どうぞ、お座り下さい・・厨房は如何でしたか・?・マエストロ・・?・・」

「・・アドルさん・・これはスタッフシェフ全員に共通する感想ですが、とても素晴らしい厨房です・・これ程コンパクトであるにも拘らず、機能的で洗練されていて使い易くレイアウトされている厨房は、これまでに観た事がありません・・ここが自分の厨房だったらとも思いましたし、ここを設計して造った人に羨望を覚えた程です・・」

・・と、マエストロ・ラウレンティスが、ゆったりと座って言う・・。

「・・開幕すれば、ここは皆さんの厨房ですよ・・週末の2日間だけですけどね・・それで・・どのような飲食も可能になりますでしょうか・・?・・それでも、改善点とか改良点などはありませんでしたか・・?・・既に食材などは搬入されておりましたか・・?・・」

「・・はい・・食材、間接材料、調味料、調理用具、それらの何れも、我らの求める量・質・種別共に揃えられるならば、あらゆる調理が可能です・・それらに附いての要望は、マレット・フェントン補給支援部長にお伝えしました・・また・・観て、触って、動かしてみて、考え、皆で統一した改善・改良点に附いては、ミーシャ・ハーレイ生活環境支援部長にお伝えしましたので・・現状では皆、安心しております・・」

・・と、マエストロ・コラントーニが腰に手を当てて、皆を見渡しながら言う・・。

「・・分かりました・・ありがとうございます・・バーテンダーの皆さんはどうでしたか・?・ここのバックバーは・・?・・」

「・・今、マエストロのお二方に仰って頂いたのと、全く同じです・・ここで働きたいと思いました・・週に2日しか来れないのが、淋しいですし悔しいですが・・それくらいに素晴らしい処です・・厨房の皆さんと同じように、要望に附いてはミス・マレットとミス・ミーシャに詳しく伝えましたので、大丈夫です・・まだ大雑把ですが、お酒も一通りの種別では搬入されていますので・・何かお作りしましょうか・・?・・」

「・・ありがとう、チーフ・・でもこの後、番組の制作発表会見があるんでね・・またの機会にお願いします・・そうだ・・チーフのレシピでの、ドライマティーニを予約します・・多分出航後になるでしょうがね・・」

「・・かしこまりました、アドル艦長・・」

「・・皆さんにも気に入って頂けて、本当に好かったです・・まあここでなら、どんな正式な催し物から軽い飲み会まで、何でもできるでしょう・・どんな飲食も可能に出来ると、たった今お墨付きも頂きましたし・・非番の時に気軽にフラッと立ち寄れる雰囲気も出せそうですね・・それと通常直、通常配置での勤務態勢の中でなら・・どんなイベントを企画しても許可します・・誰かの誕生日でも・・どんなお祝い事のパーティーでも、やって好いと思いますよ・・但し、警戒警報が鳴ったら中断して貰いますけどね・・それと、私の誕生会はやらなくて好いですよ・・(笑)・・えー、ここはカメラの数が多いって言いましたね・?・メンテナンスハッチの数も多いので、具体的にはまた連絡網に沿って流しますから、読んで確認して下さい・・それとこれは・・後でも構いませんけれども、未曾有の緊急事態に於けるバーラウンジ全体でのリーダーを決めて置いて下さい・・私からは以上です・・副長・・他には何かあるかな・・?・・」

「・・では一つだけ・・アドル・エルク艦長の誕生会は、私の権限と責任に於いて艦内でも、艦外でも開催します・・艦内の誰にも、この件に於いて異議を唱えられる権利はありません・・私と料理長とチーフを中心に実行委員会を結成し、準備・進行に当たります・・以上です・・」

・・シエナ・ミュラーがそう言い切ると、私以外の全員が拍手した・・料理長が歩み寄って副長と握手を交わし、そのままカウンターまで誘ってチーフとも握手させた・・墓穴を掘る失言の癖は、何とかしないといかんな・・。

「・・艦外誕生会の実行委員会には僕も入りますよ・!・何でも任せて下さい・!・」

・・と、ひと際大きく拍手していたスコットが、興奮気味にシエナに言う・・。

「・・私も入ります・・」

・・と、リサ・ミルズ、マーリー・マトリン、ズライ・エナオが、ほぼ同時に言う・・。

「・・ええ・!、皆さんにもお願いしますね・・」

・・そう言うシエナは満面の笑顔だ・・。

「・・任せて下さい・!・艦外なら社内にも大きく告知しますよ・!・何でしたらウチのスカイラウンジで・・」

「・!・おい、スコット・!・それはマズいよ・・壮行会でもあっただろう・?!・俺はやっかまれてるんだからさ・・?・・」

「・・大丈夫です、アドルさん・・我々保安部が対処しますので、どうぞご安心下さい・!・・」

「・・そうですよ!・先輩・・それに誕生会に於いて、先輩に発言権は無いスからね・・全部、僕達に任しといて下さい・・!・・」

「・・ハァ・・カウンセラー・・私のこの墓穴を掘る失言の癖を何とかしたい・・後で相談に乗ってくれ・・?・・」

「・・分かりました・・誕生会が終わってから、幾らでもお伺い致します・・」

「・・くっ・・君に話を振るんじゃなかったよ・・言ってる途中でもう嫌な予感がしてたんだけどな・・」

「・・それはお生憎様でしたわね、アドル艦長・(笑)・どうぞ、ご期待下さいませ・・(笑)・・」

「・・マルセルさん、ここはもう良いですから、次のデッキに行きましょう・・」

・・そうは言ったが、プロデューサーやディレクター達も、口を隠して腹を押えている・・。

・・デッキ8に移動した・・。
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