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・・・『始動』・・・

・・アーネット芸能プロダクション・・

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・・そう言って立ち上がると、皆で飲み終えたカップを集めてシンクに持ち込む・・私も含めて10数人で洗って拭き上げて収納するから、数分で終わる・・手を拭いてシャツの袖を戻しながらリサを見遣ると、名残惜しそうな表情で私を観ているから、皆が観ている前だったが抱き寄せて軽くキスした・・。

「・・そんなもう二度と逢えなくなるような顔をするなよ・・」

・・上着を着てコートに袖を通し、バッグを持つ・・。

「・・それじゃ、また明日な・・!?・・」

「・・はい・・お気を付けて・・」  「・・ああ、ありがとう・・」

・・手を振って、皆で廊下に出る・・。

「・・社長と奥様に宜しくね・・」  「・・はい・・」

・・リフトホールに向い、3本のリフトに分かれて乗る・・地下3階の駐車スペースへ降りるまでに、エマとマレットとリーアに絡まれる・・。

「・・どうしてリサさんとキスしたんですか・?・ずっと我慢してたんですよ・・?・・」

・・そんなような事を言われて、3人に次々と唇を奪われる・・。

「・・分かった分かった悪かった・!・もう開幕迄バタバタして時間が無いけど、開幕したら平日の夜は暇になるから、3時間デートしような・?・どんなデートがしたいか、考えておいてよ・・?・・」

・・地下3階に着いて駐車スペースに出ると、シエナとハンナが傍に来る・・。

「・・アドルさん、もしも宜しければウチの社においで頂けませんか・・?・・社の者がご挨拶したいと申しておりますし、お昼もご一緒したいですので・・?・・」

「・・うん、そうだね・・ありがとう・・できればクルーのご家族とか関係者の方には、開幕までにご挨拶したいと思ってはいるんだけど・・とても間に合わない・・君の申し出は嬉しいよ・・仕事の邪魔にならないなら、伺いたいけど・・?・・」

「・・ありがとうございます・・皆も喜びます・・邪魔になんて、とんでもありません・・私やハンナも、今はこれが仕事ですから・・」

「・・分かった・・伺います・・芸能プロダクションだよね・・?・・」

「・・はい、『アーネット・エンターテインメント』と言います・・今ここいるメンバーで所属しているのは、私とハンナとパティとカリーナとエドナとミーナンです・・」

「・・分かった・・お邪魔するよ・・」

「・・ありがとうございます、嬉しいです・・皆!、今からアドル艦長を『アーネット』にご招待するわよ・!・」

・・他の4人からも歓声が挙がる・・。

「・・それで、どうしようか・?・ここから近いんだっけ・・?・・」

「・・はい、リサさんの部屋から観えます・・」

「・・15階からなら、かなり遠くでも観えるからなあ・・」

「・・ハンナの車でお連れして、またここにお送りします・・少し狭くて混み合う交差点を幾つか通りますから・・自動追尾させていると、かなり厳しいと思いますので・・」

「・・分かった・・じゃあ、お世話になるよ・・」

・・そう言うと、バッグを新しい車に入れて2台ともにロックを掛ける・・ハンナが運転席に座り、シエナが助手席に座る・・私は後部座席で、エドナとカリーナに挿まれて真ん中に座る・・発車してすぐにヤバい予感がしたが、案の定だった・・。

「・・ねえ、アドルさん・・どうしてリサさんとキスしたんですか・?・ずっと我慢してたんですよ・・」

・・みたいなことを車内でも言われて、両側からブチュ~っとされる・・。

「・・アンタ達!・いい加減にしなさいよ!!・」

・・ハンナからの怒声が飛ぶが、終わったのはそれから10秒後だ・・。

「・・分かったよ!・悪かったよ!・もう開幕迄バタバタして時間が無いけど、開幕したら平日の夜は暇になるから、3時間デートしような・?・どんなデートがしたいか、考えておいてよ・・!?・・」

・・大きく息を吐いて、呼吸を整える・・。

「・・アドルさん、もう少し自制して下さい・・」

・・と、シエナ・ミュラーが振り向かずに言う・・。

「・・分かった、悪かった、シエナ・・気を付けるよ・・」

・・それから数分は無言でいたが、ふと思い付いて訊いた・・。

「・・なあ・?・金額については明日の制作発表会見で発表されるんだろうけど、俺の出演料は『トゥーウェイ・データ・ネット・ストリーム・ステーション』社から支払われるんだよね・・君達は運営本部から支給されると思うんだけど、幾らで提示されているの・・?・・」

「・・大体75万から80万ですね・・私の知る限り、ですが・・」

・・と、またシエナが振り向かないで応える・・。

「・・へえ、すごいね・・俺の今の給料が税込みで37万と少しだから、倍以上か・・」

「・・アドルさん、芸能界は華やかな世界に観えるでしょうけれども、殆どの俳優・タレントは固定収入が無いと見做されていて、ローンも組めないような状況なのですよ・・」

「・・そうか、分かった・・金銭的な話をしたのは悪かった・・」

・・それから程無くして車は3階建てのビルの敷地内に入り、建物脇の駐車スペースにハンナは車を停める・・私は降りて建物を見上げた・・。

「・・もしかして、自社ビル・・?・・」

「・・はい、そうです・・先代の社長が、元俳優なんですが堅実な人で、少しずつ遣り繰りしてお金を貯めてこのビルを買い取りました・・築年数は長いです・・ようこそ、アドルさん・・アーネット・エンターテインメントへ・!・」

・・社長室兼応接室のような部屋に通された私は、私よりも若い、端整な顔立ちの青年に出迎えられ、握手を交わしてから、ちょっと豪華なソファーセットに促されて、座らされた・・。

「・・初めまして、アドル・エルクさん・・我がアーネット・エンターテインメントにようこそおいで下さいました・・歓迎させて頂きます・・私がマスターマネージャーの、ウィリアム・アーネットです・・ウィルと呼んで下さい・・」

・・これはなかなかのハンサムガイだな・・そのまま若手人気俳優と言っても充分だ・・。
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