『星屑の狭間で』

トーマス・ライカー

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・・・『始動』・・・

・・営業本部壮行会・・7・・

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「・・これはこれは、アドル・エルク艦長殿!・・係長にして艦長とは、同じ係長として鼻が高い・・それがこのように、美女に囲まれて美酒を頂くとは!?・・全く羨ましい限りですな!!?・・」

・・野太い声が背後から聞こえて、左肩に右手が置かれる・・ゲイリー・シモンズ・・俺とは大学の卒業と入社で同期だった・・確か今は営業第2課の・・何処のセクションかは忘れたが、同じ係長だ・・自己本位な性格で・・係長会でもあまり良い話は聴かない・・学生時代はボクシング・・ライトクラスの花形で、3年次には学生チャンプになった・・学生時代は気の好い奴だったが、入社してからはウマが合わなくなっている・・。

「・・ゲイル・・もうそんなに飲んでるのか・?・何か食った方が良いぞ・・?・・」

・・そう言いながら取り皿とフォークをテーブルに置いて、後ろを振り返る・・。

「・・あんなに妙齢な奥方がいるのにな・?・アドル・・今日連れて来た女達には・・もうお前の手が付いているのか・・?・・」

「・・ゲイル・・女史の方々の前だぞ・!?・失礼で下卑た物言いは慎め・!・・」

「・・軽巡宙艦のクルーは60人以上だろ・!?・そんなに沢山の女を手懐けているんなら、その中から3人ぐらいコッチに廻してくれてもバチは当たらんだろう・?!・・」

「・・どうしたんだ・!?・ゲイル・?・お前、確か2ヶ月くらい前に、彼女が出来たって話は俺も聞いたが・?・」

「・・振られたんだよ・・3日前にな・・」

「・・そうか・・気持ちは解らんでもないが、それならこんな処で飲んでクダを撒いているより、早く帰って顔を洗って寝たら良い・・これ以上ここで俺の仲間であり、部下でもある彼女達を侮辱するのは、いくらお前でも許さんぞ・!・」

「・・ほう・・お前がその腕と拳で俺に勝てるのか・・?・・」

・・フィオンがゲイルの直ぐ後ろにまで歩み寄って来ていたが、私は左手と目配せで大丈夫だからと伝える・・。

「・・ゲイル・・お前はいくら飲んでいても、こんな所で拳を振るうような馬鹿じゃない・・とにかく座れよ・・話は聴くから・・」

「・・あ~ら・アドル艦長・・こんなに素敵な逞しいお方がお友達なんですか・?・頼り甲斐のありそうなお方ですわね・?・紹介して頂けませんか・?・初めまして・・ハンナ・ウェアーです・・私達と、ちょっとお話しませんか・?・お名前、教えて頂けます・・?・・」

・・ハンナとエマとエドナが私達の間に割って入り、エマとエドナがゲイルの両脇から彼の腕を取って腕を絡ませる・・。

「・・すごく長くて太くて逞しい腕ですね・・」

「・・この筋肉の固さがとても素敵ですわ・・」

・・エマとエドナが両脇から彼を見上げて、絡めた腕を撫でている・・見る見るゲイルの顔が赤くなっていく・・。

「・・ああ、彼はゲイリー・シモンズ・・ゲイルだ・・大学の卒業と入社で同期でね・・同じ係長だ・・気の好い男だよ・・学生時代、ボクシング・ライトクラスでチャンプを張ってた・・2ヶ月前に彼女が出来たんだけど、3日前に振られたそうだ・・少し酔いが回っているようだから、水を飲ませて何か食べさせてやってくれ・・頼むよ・・」

・・ハンナとエドナが何ごとかをゲイルに囁くと、エマと3人で彼を宥めながら連れて行く・・来ていたフィオナとシエナとリサが近くまで寄った・・。

「・・大丈夫ですか・・?・・」

・・フィオナが訊く・・。

「・・ああ、何でもない・・あいつは好い奴なんだよ・・普通なら俺よりパワーはあるし、俊敏で瞬発力も高い・・判断力や予測力も高い・・ただ、我が強くてそれに流されやすいから、あまり好く思われない・・」

「・・もっと注意して観ていれば良かったです・・すみません・・」

・・と、リサが頭を下げる・・。

「・・謝る程の事じゃない・・何でもないよ・・」

「・・あの3人なら上手く宥めるでしょう・・どうぞ・・?・・」

・・シエナがそう言いながら、私が置いた取り皿とフォークを渡してくれる・・。

「・・おお、ありがとう・・腹が減ってるんだよ・・」

・・そう言って、また食べ始める・・。

「・・アドル・!・大丈夫か?!・・」

・・チーフ・カンデルが、早足で来る・・。

「・・ええ、大丈夫です、何でもありません・・」

・・食べながら応える・・。

「・・今話していたのはゲイルか・?・・」

「・・はい・・」

「・・あいつが振られたらしいって話は俺も聞いていたんだがな・・」

「・・ちょっと悪酔いして、私に愚痴を言いに来ただけですよ・・」

「・・それにしても、お前のスタッフの皆さんはすごいな・・ああ、シエナさん、大丈夫でしたか・?・お見苦しい処をお見せした上、とんだお手数をお掛けしてしまって、本当に申し訳ありませんでした・・営業本部を代表してお詫び申し上げます・・」

「・・大丈夫ですよ、エリックさん・・気にしてはおりません・・こう言う事も想定して、今日はアドル艦長に付いて来たんですから、どうぞお顔を上げてください・・」

・・頭を下げて詫びるチーフに、シエナは優しく笑顔で応えた・・。

「・・ご配慮頂き、痛み入ります・・重ねてありがとうございます・・」

「・・私達は女優です・・誉めそやされるのも心無く野次られるのも、日常的な事です・・その場を悪くせず荒げずに受け応えたり、受け流したり出来なければ続けられません・・」

・・シエナと一緒に来ていたパティも口添える・・。

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