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・・・『始動』・・・
・・フィオナ・コアー・・カリッサ・シャノン・・ 2
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・・リサさんも背筋を伸ばして立ち、自信を持って最後まで発言してから、私の頭越しにスコットに微笑み掛けつつ指名して着席する・・。
・・スコットがリサさんを見遣ってから立ち上がろうとしたが、その前に一昨日のファーストミーティングで知り合ったばかりの男性社員が手を挙げたので、スコットは座った・・。
「・・スコットさん、割り込んですみません・・アドル係長・・15%から始めて10%・・更に5%へと利益率を変移させていくと言われましたが、これらの数値は固定すると言う事で提案されたのでしょうか・・?・・続けてついでに私の意見を提案させて頂きます・・最初の15%は、固定的に捉えても良いだろうと私は考えますが・・15%と10%には、情勢と状況の変化に即応できるようにそれぞれプラス・マイナスで2%ずつの振れ幅を用意しておくのが良いと考えますが、どうでしょうか・・?・・」
「・・まず、質問してくれてありがとう・・さっきの提案の中で提示した変移していく利益率の数値は、モデルと言いますか、一つの目安として言いました・・とは言え最初の15%は、固定的な意味合いが強いです・・20%では高すぎると考えています・・なので今の提案で言われた、10%と5%に振れ幅を付けようと言うのは私も良いと思います・・その方が情勢と状況の変化に即応できるでしょう・・良い改善だと思います・・」
・・私が言葉を切ったので、スコットが立ち上がる・・。
「・・お早うございます・・私も基本的にアドル係長の提案を支持します・・ですが一つだけ、補足を附加します・・それは配信番組のフォースシーズンが始まったら、利益率を更に3%に変移させてそこで最後まで固定する、と言うものです・・私からは以上です・・」
・・スコットはそこで話を区切り、先程手を挙げて発言した男性社員の右隣に座る女性社員を指名して座った・・。
・・スコットが発言している間に携帯端末が帰って来たので、そのままラウンジにメッセージとして送信する・・。
・・スコットが指名した女性社員は、取り敢えず10%の利益率とはするが、情勢・状況の変化に応じて変移を許容する、変動許容制利益率としては、との提案だった・・。
・・その後は指名されて発言したり、手を挙げて発言したりで7名が質問したり発言したりしたが、大きく内容の異なる提案は無かった・・発言が途切れて2分程経った頃合いでチーフ・カンデルが立ち上がる・・。
「・・先ず、積極的且つ活発に様々な提案を示してくれた事に感謝します・・一通りに聴かせて頂きましたが、提案や意見や質問に於いても大体出揃ったのではないだろうかと思われます・・どうでしょうか・・?・・まだありますか・・?・・質問でも疑問でも大丈夫ですよ・・?・・それでは・・ここからは、出して頂いた提案を擦り合わせてまとめていく作業に入ろうと思います・・」
・・そう言い終えた処でラウンジからの飲み物が届き、皆に配られる・・一口・二口と飲み終えるまで暫時休憩となっていたが、再びチーフ・カンデルが座ったままで口を開いた・・。
「・・配信番組のファーストシーズンが終わるまでは、15%の利益率で固定する、と言う案については・・ほぼ同意が採れていると思うが・・どうかな・・?・・」
・・反対意見は出なかった・・頷くメンバーも多い・・。
「・・よし・・それでは、明日の第一回目のトップ会談に於いて、こちらとして持ち寄る最初の利益率の提案は、配信番組のファーストシーズンが終わるまでは15%・・セカンドシーズンが始まってからは10%・・サードシーズンが始まってからは5%・・フォースシーズンからは3%で最後まで固定・・尚、10%と5%については情勢・状況の変化に応じて臨機応変、柔軟に対応して変移させる事も許容する・・と言う事で、この場としては私の権限に於いてこのように決定したい・・良いかな・・?・・」
・・8割以上のメンバーが無言で頷き、控え目に拍手する・・静まってからチーフがまた発言する・・。
「・・トップ会談は、少なくとも2回行われるだろう・・1回だけでは大枠も決まらないからな・・その後は中級レベルの事務・実務者同士での交渉に移る・・だから最初に持ち寄る案としては、これがベターだと思う・・勿論、相手両社の出方によっては変更を迫られて余儀なくされる場合も考えられるが・・最初の提案はこれで良い・・これで明日のトップ会談に臨みたい・・皆、朝早くからご苦労様でした・・飲み物を飲み終わってからで好いから、各々のフロアに戻って下さい・・アドル・エルク係長とリサ・ミルズ秘書官には明日のトップ会談に於いて、宜しくお願いします・・では、これでセカンドミーティングを終ります・・」
・・そう言い終えるとPADを左手に立ち上がり、右手を挙げて会議室から出て行く・・彼は飲み物を注文しなかった・・続いて20数人が退室して行ったが、私はまだマンデリンが残っているのでカップを取り上げて口を付ける・・マンデリンの旨さが緊張を解していく・・。
「・・アドル係長・・それじゃ、お昼はそちらのラウンジに伺いますね・・お疲れ様でした・・」
・・アンヴローズ・ターリントン女史がPADを携えて立ち上がり、微笑みながらそう言う・・。
「・・お待ちしています、お疲れ様でした・・」
・・私も笑顔でそう応えると、彼女は会釈して退室した・・。
「・・よし・・それじゃ戻ろうか・・?・・」
・・残りのマンデリンを飲み干して携帯端末をポケットに仕舞い、PADを閉じ片手で持ってウチのフロアのメンバーと一緒に歩き出す・・。
「・・やっぱりアンバーさん・・係長に対する態度が普通じゃないですね・・」と、ズライ・エナオ・・。
「・・普通じゃないって・・俺が妻子持ちなのは皆知ってるだろ・・?・・」
「・・ってか、先輩を全く意識していない女性社員なんているんですかね・・?・・」
「・・何を言ってるんだよ・・この敷地内に何人の女性社員がいると思ってるんだ・・?・・6000人じゃ利かない筈だろ・・?・・」
・・そんな軽口を言い合いながら私達はフロアに戻り、通常の業務に入る・・。
・・業務は通常に推移して、昼食休憩時間となった・・。
・・ラウンジの奥の大テーブルに7人で陣取る・・テーブルの中央にはスペシャル・ランチバスケットが置かれて、皆の前には取り皿と飲み物も揃えられているが、スコットの前には単品サイドメニューから2つが用意されている・・。
・・その時、アンバー女史が急ぎ足でラウンジに入って来て、我々を見付けると歩み寄りながら言った・・。
「・・すみません、遅れました・・申し訳ありません・・お疲れ様です・・」
「・・大丈夫ですよ、アンバーさん・・こちらも今揃ったばかりです・・席はそちらで好いですか・・?・・すみません、飲み物が分からなかったもので・・」
「・・大丈夫です、ありがとうございます、失礼します・・」
・・そう言いながら示された席に座ったアンバー女史は、通り掛かったウエイターにジンジャーエールを頼んだ・・。
「・・すごいランチバスケットですね・・何が入っているのですか・・?・・」
「・・美味しい各種サンドイッチの詰め合わせですよ・・でも8人で食べるにはちょっと少ないかなと思いましたので、失礼して僕はサイドメニューを頼んだって訳です・・もしも足りないようでしたら、何でも頼んで下さい・・先輩が奢ってくれますから・(笑)・」
・・と、先回りしてスコットが言う・・。
「・・勿論、追加で何か食べたいものがあったら、何でも頼んで下さい・・私が奢ります・・」
「・・ありがとうございます・・ご相伴に与ります・・」
・・そう応えた処で彼女の頼んだジンジャーエールが来たので、スコットが自分の烏龍茶が入ったグラスを掲げる・・」
「・・それでは皆さん・・セカンドミーティングの成功を祝して乾杯!・・」
「・・乾杯!・・」
「・・どんどん食べて下さいね・・話は食べながらしましょう・・」
「・・頂きます・・旨いですね、このサンドイッチ・・ちょっとそこいらじゃ食べられない味ですよ・・」
・・と、ヨエル・ハンソンが感嘆する・・。
「・・頂きます・・おう・・そうですね、具材もブレッドも一味違うものを使ってますね・・こんなのメニューにありましたっけ・・?・・」
・・と、ペイトン・クラインも食べながら感心している・・。
「・・これはね・・料理長の特製特別メニューでね・・しかも係長専用のスペシャル・ランチバスケット・クーポンチケットでしか注文できない優れものなんだよね・・」
・・と、マーリー・マトリンがミルクと一緒に食べながら言う・・。
「・・うん・・本当に美味しいです・・こんなに美味しいサンドイッチは初めて食べました・・こんなスペシャルメニューをご馳走して頂けるなんて感激です・・さすがはアドル係長ですね・・今朝の提案も素晴らしかったです・・」
「・・ありがとう、アンバーさん・・どんどん食べてね・・あ、サンドイッチの感想はウチの料理長に言ってやってよ・・喜ぶと思うから・・」
「・・あたしもたまにサンドイッチは作るんですけど、この味は出せないですね・・尤も素材からして全然違うから、揃えられなきゃダメですけどね・・」と、マーリー・マトリン・・。
「・・ウチの料理長は、料理人としちゃ一流だからね・・」
・・と、スコットは言いながらサイドメニューの料理を食べている・・。
「・・アドルさん・・『トゥーウェイ・データ・ネット・ストリーム・ステーション』社の社長とは、お話しましたよね・・?・・」
・・と、リサさんが食べながら問い掛ける・・。
「・・うん・・そうだね・・初めて撮影セットを見学させて貰って・・単独でのインタビュー動画を撮影して・・その後に開かれた合同昼食会でお会いしたね・・あまりそんなにお話は出来なかったけど、話しやすい気さくな方だなとは思ったよ・・」
「・・撮影セットを観られて、どうでしたか・・?・・」
・・と、ヨエル・ハンソンが興味深そうに訊く・・。
「・・うん・・非常に効率的で機能的で使い易そうに観える、洗練されたデザインのセットだったね・・かなり高いレベルで気に入っているよ・・」
「・・艦長の個室って、どうなってるんですか・・?・・」
「・・それはもう素晴らしい・・部屋と言うか住まいだね・・個室の間取りは非公開なんだけど、ネットにアップしない・・他人に渡さない・・見せる場合には肉眼でのみ、と言う条件で画像撮影を許可して貰ってね・・これがそうだよ・・」
・・そう言いながら携帯端末に保存している個室内部の画像を呼び出して、端末ごとヨエルに渡す・・。
「・・これは・!・すごいですね・・艦長の個室ですか・・?・・数人でシェアできますね・・」
「・・メインスタッフとサブスタッフは、全員この個室だよ・・どこにタンクベッドを置けるかな・・?・・」
「・・浴室の近くじゃないでしょうか・・?・・直ぐにシャワーで洗い流せるように・・」
・・と、リサさんが応じる・・。
「・・それもそうだね・・さすがはリサさんだ・・鋭い・・」
「・・ごく常識的な予想だと思います・・」
「・・すみません・・」
「・・いいえ・・」
「・・いや、すごい居室ですね・・個室なんでしょうけど、この住まいで足りないものってあるんでしょうか・・?・・」
・・と、ペイトン・クラインが総ての室内画像を注意深く観察しながら訊く・・。
「・・そうだね・・ワインセラーがあれば、完璧な邸宅だね・・(笑)・」
「・・インタビューの動画って公開されてるんですか・・?・・」
・・と、ズライ・エナオがオレンジジュースを飲んで訊く・・。
「・・まだだね・・23日に公開予定で、この配信番組のPVを制作すると言っていたから、その一部として使われるんだろう・・」
「・・この業務提携交渉が、うまくいくと良いですね・・」
・・アンバー女史が手を止めて言う・・。
「・・うん・?・心配しなくても、うまくいくと思うよ・・何故なら3社にとってウインウインの提携だからね・・相手両社にとっては、渡りに舟の提携話だし、ウチは黒字が維持できるのなら利益率は低くても構わない・・気持ち良くまとまって、契約が締結されると思うね・・」
「・・楽観的ですね・・」
・・と、ズライ・エナオ・・。
「・・うん、最初から楽観的な発案だったよ・・」
・・そう言いながら、携帯端末を返して貰う・・。
「・・個室には、何でも持ち込めるんですか・・?・・」
・・と、ヨエル・ハンソン・・。
「・・事前審査で危険物と判定されなければ、持ち込めるよ・・」
「・・何を持ち込むつもりですか・・?・・」
・・と、アンバー女史が訊く・・。
「・・そうだなぁ・・着替えの私服に酒、煙草・・灰皿にグラス・・読みたい本とギター・・食事の心配はしなくて良いし・・ライブラリィ・データベースから、どんなものでも呼び出せるからね・・考えてみると、持ち込みたいものなんて・・そんなに無いんだね・・ああ、自分の携帯端末は持ち込めないから、家族の写真ぐらいは持って来なきゃいけないね・・」
・・スコットがリサさんを見遣ってから立ち上がろうとしたが、その前に一昨日のファーストミーティングで知り合ったばかりの男性社員が手を挙げたので、スコットは座った・・。
「・・スコットさん、割り込んですみません・・アドル係長・・15%から始めて10%・・更に5%へと利益率を変移させていくと言われましたが、これらの数値は固定すると言う事で提案されたのでしょうか・・?・・続けてついでに私の意見を提案させて頂きます・・最初の15%は、固定的に捉えても良いだろうと私は考えますが・・15%と10%には、情勢と状況の変化に即応できるようにそれぞれプラス・マイナスで2%ずつの振れ幅を用意しておくのが良いと考えますが、どうでしょうか・・?・・」
「・・まず、質問してくれてありがとう・・さっきの提案の中で提示した変移していく利益率の数値は、モデルと言いますか、一つの目安として言いました・・とは言え最初の15%は、固定的な意味合いが強いです・・20%では高すぎると考えています・・なので今の提案で言われた、10%と5%に振れ幅を付けようと言うのは私も良いと思います・・その方が情勢と状況の変化に即応できるでしょう・・良い改善だと思います・・」
・・私が言葉を切ったので、スコットが立ち上がる・・。
「・・お早うございます・・私も基本的にアドル係長の提案を支持します・・ですが一つだけ、補足を附加します・・それは配信番組のフォースシーズンが始まったら、利益率を更に3%に変移させてそこで最後まで固定する、と言うものです・・私からは以上です・・」
・・スコットはそこで話を区切り、先程手を挙げて発言した男性社員の右隣に座る女性社員を指名して座った・・。
・・スコットが発言している間に携帯端末が帰って来たので、そのままラウンジにメッセージとして送信する・・。
・・スコットが指名した女性社員は、取り敢えず10%の利益率とはするが、情勢・状況の変化に応じて変移を許容する、変動許容制利益率としては、との提案だった・・。
・・その後は指名されて発言したり、手を挙げて発言したりで7名が質問したり発言したりしたが、大きく内容の異なる提案は無かった・・発言が途切れて2分程経った頃合いでチーフ・カンデルが立ち上がる・・。
「・・先ず、積極的且つ活発に様々な提案を示してくれた事に感謝します・・一通りに聴かせて頂きましたが、提案や意見や質問に於いても大体出揃ったのではないだろうかと思われます・・どうでしょうか・・?・・まだありますか・・?・・質問でも疑問でも大丈夫ですよ・・?・・それでは・・ここからは、出して頂いた提案を擦り合わせてまとめていく作業に入ろうと思います・・」
・・そう言い終えた処でラウンジからの飲み物が届き、皆に配られる・・一口・二口と飲み終えるまで暫時休憩となっていたが、再びチーフ・カンデルが座ったままで口を開いた・・。
「・・配信番組のファーストシーズンが終わるまでは、15%の利益率で固定する、と言う案については・・ほぼ同意が採れていると思うが・・どうかな・・?・・」
・・反対意見は出なかった・・頷くメンバーも多い・・。
「・・よし・・それでは、明日の第一回目のトップ会談に於いて、こちらとして持ち寄る最初の利益率の提案は、配信番組のファーストシーズンが終わるまでは15%・・セカンドシーズンが始まってからは10%・・サードシーズンが始まってからは5%・・フォースシーズンからは3%で最後まで固定・・尚、10%と5%については情勢・状況の変化に応じて臨機応変、柔軟に対応して変移させる事も許容する・・と言う事で、この場としては私の権限に於いてこのように決定したい・・良いかな・・?・・」
・・8割以上のメンバーが無言で頷き、控え目に拍手する・・静まってからチーフがまた発言する・・。
「・・トップ会談は、少なくとも2回行われるだろう・・1回だけでは大枠も決まらないからな・・その後は中級レベルの事務・実務者同士での交渉に移る・・だから最初に持ち寄る案としては、これがベターだと思う・・勿論、相手両社の出方によっては変更を迫られて余儀なくされる場合も考えられるが・・最初の提案はこれで良い・・これで明日のトップ会談に臨みたい・・皆、朝早くからご苦労様でした・・飲み物を飲み終わってからで好いから、各々のフロアに戻って下さい・・アドル・エルク係長とリサ・ミルズ秘書官には明日のトップ会談に於いて、宜しくお願いします・・では、これでセカンドミーティングを終ります・・」
・・そう言い終えるとPADを左手に立ち上がり、右手を挙げて会議室から出て行く・・彼は飲み物を注文しなかった・・続いて20数人が退室して行ったが、私はまだマンデリンが残っているのでカップを取り上げて口を付ける・・マンデリンの旨さが緊張を解していく・・。
「・・アドル係長・・それじゃ、お昼はそちらのラウンジに伺いますね・・お疲れ様でした・・」
・・アンヴローズ・ターリントン女史がPADを携えて立ち上がり、微笑みながらそう言う・・。
「・・お待ちしています、お疲れ様でした・・」
・・私も笑顔でそう応えると、彼女は会釈して退室した・・。
「・・よし・・それじゃ戻ろうか・・?・・」
・・残りのマンデリンを飲み干して携帯端末をポケットに仕舞い、PADを閉じ片手で持ってウチのフロアのメンバーと一緒に歩き出す・・。
「・・やっぱりアンバーさん・・係長に対する態度が普通じゃないですね・・」と、ズライ・エナオ・・。
「・・普通じゃないって・・俺が妻子持ちなのは皆知ってるだろ・・?・・」
「・・ってか、先輩を全く意識していない女性社員なんているんですかね・・?・・」
「・・何を言ってるんだよ・・この敷地内に何人の女性社員がいると思ってるんだ・・?・・6000人じゃ利かない筈だろ・・?・・」
・・そんな軽口を言い合いながら私達はフロアに戻り、通常の業務に入る・・。
・・業務は通常に推移して、昼食休憩時間となった・・。
・・ラウンジの奥の大テーブルに7人で陣取る・・テーブルの中央にはスペシャル・ランチバスケットが置かれて、皆の前には取り皿と飲み物も揃えられているが、スコットの前には単品サイドメニューから2つが用意されている・・。
・・その時、アンバー女史が急ぎ足でラウンジに入って来て、我々を見付けると歩み寄りながら言った・・。
「・・すみません、遅れました・・申し訳ありません・・お疲れ様です・・」
「・・大丈夫ですよ、アンバーさん・・こちらも今揃ったばかりです・・席はそちらで好いですか・・?・・すみません、飲み物が分からなかったもので・・」
「・・大丈夫です、ありがとうございます、失礼します・・」
・・そう言いながら示された席に座ったアンバー女史は、通り掛かったウエイターにジンジャーエールを頼んだ・・。
「・・すごいランチバスケットですね・・何が入っているのですか・・?・・」
「・・美味しい各種サンドイッチの詰め合わせですよ・・でも8人で食べるにはちょっと少ないかなと思いましたので、失礼して僕はサイドメニューを頼んだって訳です・・もしも足りないようでしたら、何でも頼んで下さい・・先輩が奢ってくれますから・(笑)・」
・・と、先回りしてスコットが言う・・。
「・・勿論、追加で何か食べたいものがあったら、何でも頼んで下さい・・私が奢ります・・」
「・・ありがとうございます・・ご相伴に与ります・・」
・・そう応えた処で彼女の頼んだジンジャーエールが来たので、スコットが自分の烏龍茶が入ったグラスを掲げる・・」
「・・それでは皆さん・・セカンドミーティングの成功を祝して乾杯!・・」
「・・乾杯!・・」
「・・どんどん食べて下さいね・・話は食べながらしましょう・・」
「・・頂きます・・旨いですね、このサンドイッチ・・ちょっとそこいらじゃ食べられない味ですよ・・」
・・と、ヨエル・ハンソンが感嘆する・・。
「・・頂きます・・おう・・そうですね、具材もブレッドも一味違うものを使ってますね・・こんなのメニューにありましたっけ・・?・・」
・・と、ペイトン・クラインも食べながら感心している・・。
「・・これはね・・料理長の特製特別メニューでね・・しかも係長専用のスペシャル・ランチバスケット・クーポンチケットでしか注文できない優れものなんだよね・・」
・・と、マーリー・マトリンがミルクと一緒に食べながら言う・・。
「・・うん・・本当に美味しいです・・こんなに美味しいサンドイッチは初めて食べました・・こんなスペシャルメニューをご馳走して頂けるなんて感激です・・さすがはアドル係長ですね・・今朝の提案も素晴らしかったです・・」
「・・ありがとう、アンバーさん・・どんどん食べてね・・あ、サンドイッチの感想はウチの料理長に言ってやってよ・・喜ぶと思うから・・」
「・・あたしもたまにサンドイッチは作るんですけど、この味は出せないですね・・尤も素材からして全然違うから、揃えられなきゃダメですけどね・・」と、マーリー・マトリン・・。
「・・ウチの料理長は、料理人としちゃ一流だからね・・」
・・と、スコットは言いながらサイドメニューの料理を食べている・・。
「・・アドルさん・・『トゥーウェイ・データ・ネット・ストリーム・ステーション』社の社長とは、お話しましたよね・・?・・」
・・と、リサさんが食べながら問い掛ける・・。
「・・うん・・そうだね・・初めて撮影セットを見学させて貰って・・単独でのインタビュー動画を撮影して・・その後に開かれた合同昼食会でお会いしたね・・あまりそんなにお話は出来なかったけど、話しやすい気さくな方だなとは思ったよ・・」
「・・撮影セットを観られて、どうでしたか・・?・・」
・・と、ヨエル・ハンソンが興味深そうに訊く・・。
「・・うん・・非常に効率的で機能的で使い易そうに観える、洗練されたデザインのセットだったね・・かなり高いレベルで気に入っているよ・・」
「・・艦長の個室って、どうなってるんですか・・?・・」
「・・それはもう素晴らしい・・部屋と言うか住まいだね・・個室の間取りは非公開なんだけど、ネットにアップしない・・他人に渡さない・・見せる場合には肉眼でのみ、と言う条件で画像撮影を許可して貰ってね・・これがそうだよ・・」
・・そう言いながら携帯端末に保存している個室内部の画像を呼び出して、端末ごとヨエルに渡す・・。
「・・これは・!・すごいですね・・艦長の個室ですか・・?・・数人でシェアできますね・・」
「・・メインスタッフとサブスタッフは、全員この個室だよ・・どこにタンクベッドを置けるかな・・?・・」
「・・浴室の近くじゃないでしょうか・・?・・直ぐにシャワーで洗い流せるように・・」
・・と、リサさんが応じる・・。
「・・それもそうだね・・さすがはリサさんだ・・鋭い・・」
「・・ごく常識的な予想だと思います・・」
「・・すみません・・」
「・・いいえ・・」
「・・いや、すごい居室ですね・・個室なんでしょうけど、この住まいで足りないものってあるんでしょうか・・?・・」
・・と、ペイトン・クラインが総ての室内画像を注意深く観察しながら訊く・・。
「・・そうだね・・ワインセラーがあれば、完璧な邸宅だね・・(笑)・」
「・・インタビューの動画って公開されてるんですか・・?・・」
・・と、ズライ・エナオがオレンジジュースを飲んで訊く・・。
「・・まだだね・・23日に公開予定で、この配信番組のPVを制作すると言っていたから、その一部として使われるんだろう・・」
「・・この業務提携交渉が、うまくいくと良いですね・・」
・・アンバー女史が手を止めて言う・・。
「・・うん・?・心配しなくても、うまくいくと思うよ・・何故なら3社にとってウインウインの提携だからね・・相手両社にとっては、渡りに舟の提携話だし、ウチは黒字が維持できるのなら利益率は低くても構わない・・気持ち良くまとまって、契約が締結されると思うね・・」
「・・楽観的ですね・・」
・・と、ズライ・エナオ・・。
「・・うん、最初から楽観的な発案だったよ・・」
・・そう言いながら、携帯端末を返して貰う・・。
「・・個室には、何でも持ち込めるんですか・・?・・」
・・と、ヨエル・ハンソン・・。
「・・事前審査で危険物と判定されなければ、持ち込めるよ・・」
「・・何を持ち込むつもりですか・・?・・」
・・と、アンバー女史が訊く・・。
「・・そうだなぁ・・着替えの私服に酒、煙草・・灰皿にグラス・・読みたい本とギター・・食事の心配はしなくて良いし・・ライブラリィ・データベースから、どんなものでも呼び出せるからね・・考えてみると、持ち込みたいものなんて・・そんなに無いんだね・・ああ、自分の携帯端末は持ち込めないから、家族の写真ぐらいは持って来なきゃいけないね・・」
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連続配信リアル・ライヴ・ヴァラエティショウが配信されて初めて、誰が選ばれたのかが判る仕掛けにしたのだ。
艦長役演者に選ばれたのが、今から90日前。以来彼は土日・祝日と終業後の時間を使って準備を進めてきた。
配信会社から送られた、女性芸能人クルー候補者名簿から自分の好みに合い、能力の高い人材を副長以下のクルーとして選抜し、面談し、撮影セットを見学し、マニュアルファイルを頭に叩き込み、彼女達と様々な打ち合わせや協議を重ねて段取りや準備を積み上げて構築してきた。
彼の目的はこのゲーム大会を出来る限りの長期間に亘って楽しむ事。
会社からの給与とボーナス・艦長報酬と配信会社からのギャラ・戦果に応じた分配賞金で大金持ちになる事と、自分が艦長として率いる『ディファイアント』に経験値を付与し続けて、最強の艦とする事。
スタッフ・クルー達との関係構築も楽しみたい。
運営推進委員会の真意・本当の目的は気になる処だが、先ずは『ディファイアント』として、戦い抜く姿を観せる事だな。
絶世のディプロマット
一陣茜
SF
惑星連合平和維持局調停課に所属するスペース・ディプロマット(宇宙外交官)レイ・アウダークス。彼女の業務は、惑星同士の衝突を防ぐべく、双方の間に介入し、円満に和解させる。
レイの初仕事は、軍事アンドロイド産業の発展を望む惑星ストリゴイと、墓石が土地を圧迫し、財政難に陥っている惑星レムレスの星間戦争を未然に防ぐーーという任務。
レイは自身の護衛官に任じた凄腕の青年剣士、円城九太郎とともに惑星間の調停に赴く。
※本作はフィクションであり、実際の人物、団体、事件、地名などとは一切関係ありません。

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