60 / 298
・・・『始動』・・・
帰宅 2
しおりを挟む
エレカーを最寄りのステーションに向けて走らせている・・助手席ではクレアが物憂げな表情で流れる景色を眺めている・・。
「・・看護師の仕事はどうだい、クレア・?・忙しくて大変だろう・・?・・」
「・・忙しくて大変な時もあるけど大丈夫よ、義兄さん・・ちゃんと休みは取っているから・・それに、今度私ね・・看護師長になれそうなのよ・・義兄さんのおかげでね・・」
「・・俺は何もしてないよ・・クレアが長い間、頑張って来たからだろ・?・おめでとうと言うのは、まだちょっと早いかな・・?・・」
「・・私の仕事ぶりが認められているって言うのは解っているけどね・・でも、義兄さんのネームヴァリューも相当なものよ・・義兄さんの義妹って言う事だけで、話し難かった人ともスムーズに話せるようになったし・・仕事も充実してスムーズにこなせるようになってきていたからね・・」
「・・俺の事がどうであろうとも、それはクレアの実力と頑張りの結果だよ・・至らない義兄だけど誇りに思うよ・・クレアもそれは自分の誇りとして、自信としたら良い・・」
「・・有難う、義兄さん・・感謝してます・・それはそうと姉さんの事なんだけどさ・・?・・」
「・・うん?・・アリソンがどうかしたかい・・?・・」
「・・!?・え?、ああ、ううん、何でもない・・私の勘違いだったみたい・・」
「・・?・そうか・?・・」
と、急に口籠って応えなかったクレアだったのだが、どうやら後部座席に座っているアリシアに改めて気付いたから、のようにも観えた・・。
それから2分ほどして最寄りステーションの正面エントランスに滑り込み、停車する・・。
「・・どうも有難う、お義兄さん・・久し振りに会えて嬉しかったわ・・ゲーム大会、頑張ってね・・病院の皆と一緒に応援してるから・・」
「・・ありがとう、クレア・・頑張るよ・・」
助手席から降りてドアを閉めたクレアが笑顔で言う・・私も右手を挙げて応え、アリシアも降りて助手席に乗り込んでから笑顔で手を振った・・。
友達と待ち合わせているのは、ここから一つ先のステーションだ・・。
「・・アリシアはクレアの事、あまり好きじゃないのかい・・?・・」
「・・クレア叔母さん、パパの事好きなんでしょ・?・今でも・?・・」
「・・恋愛感情って言うより家族的親密感ってレベルだろ・?・まあ結婚前から妙に懐いて来てはいたけどな・・ママにプロポーズする前にしていたデートでも、3回に1回はママにくっ付いて来ていたからな・・」
「・・パパってそう言う処は鈍いんだよね・・」
と、軽い溜息を吐いて言うアリシア・・。
「・・ああ、最近はよく言われるよ・・」
何気なく応えたのだが、アリシアは少し驚いた様子で助手席から私の横顔を数秒観た・・。
「・・叔母さんなんだから、あんまり嫌うなよ・・?・・」
「・・分かってるけどさ・・クレア叔母さんがパパを観る眼・・嫌らしいんだよね・・」
「・・たまにしか会わないんだから、気にしなくて良いよ・・ハンナさんから貰った論文・・読んでるのか・・?・・」
「・・読んでるんだけど結構難しくてさ・・色々質問させて貰ってるんだ・・」
「・・答えてくれてる・・?・・」
「・・うん、すごく解りやすく優しく教えてくれるから感謝してる・・サークル活動の中でも、色々と役に立っているよ・・」
「・・ハンナさんにお礼しなきゃな・・?・・」
「・・そうだね・・ありがとうだけじゃ足りないから考えるよ・・」
「・・うん・・帰ったらママにも言うけど、開幕2日前の26日の夜に、ウチで最後の壮行会を細やかに開くよ・・その時にはハンナさんも招待するから、その時までにアリシアなりのお礼を考えたら好い・・」
「・・うん、分かった・・お父さん・・ありがとう・・」
「・・ウチでやる最後の壮行会には、メインスタッフと職場フロアの同僚を何人か招待する積りなんだよ・・」
「・・へえ・・あっ!、それじゃスコットさんも来るの・・!?・・」
「・・勿論招待するよ・・あいつ、お前に会いたがっていたぞ・・」
「・・へえ、そう・・懐かしいな・・スコットさんが持って来てくれるお土産のチョイスセンスが、いつも最高なんだよね・・いつも私がその時に一番欲しいと思っているものを持って来てくれるから・・ママも感心してたんだよ・・スコットさんのチョイスセンスはパパより上だわねって・・」
「・・へえ、そうなんだ・・パパもそう思っているよ・・」
そう応えて30秒ほどで、友達との待ち合わせ場所に指定したステーションのエントランスロータリーにエレカーは滑り込み、一時駐停車スペースに停めてそのままステーションの出入り口を見上げたが、それらしき若者は見当たらない・・。
モーターを止め、電源も落して2人とも車から降り、階段を上ってステーション出入り口前に立ったが、やはり見当たらない・・。
「・・待ち合わせ時間までには・・?・・」
「・・後5分くらい・・」
「・・次の便かな・・?・・」
「・・そうみたい・・後その位で次の上りの便が入るよ・・」
と、アリシアが自分の携帯端末をネットに繋ぎ、近隣路線の運行予定表をブラウジングさせて観て、応える・・。
一服点けようかとも思ったが、公共の場所だし、子供達の前でもあるので止めておこう・・昼食を摂ってからがキツくなるかな・・?・・。
「・・ねえ、パパ・・ゲーム大会が開幕したら毎週の土日は帰れなくなるの・・?・・」
「・・うん・・何の問題も不都合も無いなら、そうなるだろうね・・でもな、アリシア・・『ディファイアント』はメインとサブのスタッフだけでも30人近くになる・・パパはこの中の誰か 1人でも急用が出来たり、急に身体の具合が悪くなったり、急にモチベーションが低下したりしたら、出航は見合わせてウチに帰るよ・・また、2週間続けてフルでゲームに参加したら、その次の週の水曜日か木曜日は休暇を取ってウチに帰るよ・・別に土日を全部ゲームに費やす訳じゃない・・ちょくちょくは帰るから心配するな・・?・・」
「・・分かった・・無理はしないでね・・?・・」
「・・無理なんかするかよ(笑)・!?・所詮はゲームだよ!?(笑)・・遊び事さ・・楽しんでナンボだよ!・・但し、ギリギリまで頭を使って思いっ切り楽しむけどな・(笑)・・」
そう応えた時に、次の上り便がホームに滑り込む・・降りる乗客の中にそれらしき若者を探していると、アリシアが通う学校の制服を着た男女4人のグループがホームに降り立つ・・。
「・・アリシア・・お前、制服着て来いって言ったのか・・?・・」
「・・そんな話はしてないよ・・」
そんな受け答えの間にも彼らはホームからコンコース、改札を通り抜けて出入り口からこちらに歩み寄って来る・・。
「・・おはよう!、ねえ、どうして制服を着て来たのよ?!・そんな話、してなかったじゃない・?!・・」
「・・おはよう!、アリシア・・いやぁ、だって憧れの人に会うんだからさ・・正装じゃないとマズいっしょ?・・あっ、失礼しました、おはようございます!・アドル・エルクさん・・初めまして、テレンス・カシオと言います・・アリシアさんとはクラスメイトです・・お会い出来て光栄です・・今日は宜しくお願いします・・」
そう言って会釈した男子学生は、痩せ型でかなりの長身だが顔付きは逞しい・・黒髪でスッキリと刈り上げた短髪が若いながらも精悍さを醸し出している・・。
「・・おはよう!、アリシア・・おはようございます!・アドル・エルクさん・・初めまして、アデリーン・ジーマです・・同じくクラスメイトとして仲良くしています・・お会い出来て嬉しいです・・今日は宜しくお願いします・・」
そう言って右手を胸に当てた女子学生は、アリシアより若干背が高くて均整が取れている・・素晴らしく輝くゴールドブロンドのロングヘアにショートウェイブが掛けられている・・。
「・・おはようございます!・アドル・エルクさん・・初めまして、ロヒス・ムケーシュと言います・・同じくクラスメイトです・・僕もお会い出来て光栄です・・今日は宜しくお願いします・・」
そう会釈したこちらの男子学生は、名前からして南方系だ・・少し明るいが地黒の肌色・・髪は黒い短髪だが強くカールが掛かっている・・若いのに揉み上げと言うか頬髯が豊かで強そうだ・・丸眼鏡を掛けていなければ、眼光が強くて攻撃的な印象を与えるかも知れない・・。
「・・おはようございます!・アドル・エルクさん・・初めまして、マノン・ドアと言います・・隣のクラスですが、仲良くさせて貰っています・・私もお会い出来て嬉しいです・・今日は宜しくお願いします・・」
スカートの端を持ち上げ、片膝を曲げて会釈したこちらの女子学生は、名前からすると北方系かな・?・すごく肌が白い・・と言うか色が無いようにも観える・・だが髪はカーマイン・ブラウンで素晴らしくサラサラしたミディアムボブだ・・。
「・・4人ともおはよう!・そして、初めまして・・アドル・エルクです・・アリシアと仲良くしてくれて、ありがとう・・今日は宜しくお願いします・・楽しく過ごせれば好いと思います・・僕の事はアドルで好いよ・・ええと、テレンスに、アデリーンに、ロヒスに、マノンだね・?・そう呼んでも好いかな・・?・・」
「・・はい・・」「・・大丈夫です・・」「・・問題ありません・・」「・・お願いします・・」
「・・分かった・・あと一つ、僕の前だからってアリシアを持ち上げて話をしなくても良い・・これも好いかな・・?・・」
4人とも無言で頷く・・。
「・・よし・・それじゃあもうお昼だし、食べに行こう・・メニューの多いランチ・ダイナーで好いね・?・下に車があるから、それで行くよ・・ああ、最後に一つだけ・・僕と一緒にいるとかなり騒がれると思うんだけど、そんなに大きい騒ぎにはならないだろうから、心配しなくても良いし・・驚かなくても好いからね・・?・・」
そう伝えると、テレンス・カシオが一歩進み出る・・。
「・・大丈夫です、アドルさん・・僕達が来たのはガードの意味もありますので、どんな騒ぎが起きてもご心配には及びません・・ご安心下さい・・」
「・・ありがとう、テレンス君・・心強いし、頼もしいとも思うよ・・ただ、僕が今一人でマーケットに行ったりすると、大体30人以上の人から声を掛けられて、20人以上の人にサインを書いてあげて、そのほぼ全員とセルフィーを撮る事になるんだね・・でも、そんなに大きい騒ぎにはならないだろうから大丈夫だよ・・それじゃ行こうか・・?・・」
アリシアは動じていなかったが、4人とも緊張気味の笑顔で頷く・・。
私のエレカーの定員は6人なので、かなりキツい・・目指すランチ・ダイナーの駐車スペースには、10分程で滑り込む・・やはりちょうどお昼時なので席に案内されるまでには、暫く待つ事になる・・今、全く知らない人が私の顔を初めて観た場合・・直ぐに気が付いて驚く人と、数瞬怪訝な顔をしてから気が付いて驚く人に分かれる・・最初に受付カウンターで接客してくれたウェイトレス嬢は、直ぐに気付いて眼を見開くと口を押さえて退がった・・1分ほどして、フロア・マネージャーらしき男性が来て店内でも奥まった位置にある大きなテーブルに、私達を自ら案内してくれる・・。
「・・この店、よく来るけど・・この席に案内して貰った事一度も無いよ・・」
と、テレンス・カシオが周りを見廻しながら言う・・。
「・・ちょっと、はしたないわよ!・やめなさい・・」
と、アデリーンが軽く彼を叩く・・。
それが微笑ましく観えて眼が細まる・・多分、この2人はカップルだな・・。
「・・VIP席なのかな・・?・・」 と、ロヒス・ムケーシュ・・。
「・・まさか・・普通のファミリー・ランチダイナーだよ・?・大家族用に用意してある、大きいテーブルって言うだけだろう・・皆、何でも好きなもの・・食べたいものを沢山頼んで好いからね・・アリシア・・パパにはヘルシーなランチ・セットで頼むよ・・ちょっと失礼して席を外すよ・・10分ぐらいで戻るから・・」
そう断って席を立ち、レストルームで用を足して喫煙室に入る・・一本を咥えて点け、喫いながら携帯端末でメッセージをチェックすると、チーフ・カンデルからのメッセージで、選定されたアイソレーション・タンクベッドメーカーとの間での業務提携プロジェクトをスタートさせるため、プロジェクト・キックオフを行い、そのままチームを編成して発足させるとの事・・ついては、来週月曜日の始業後直ぐに営業本部ビル3階のA大会議室に参集されたい・・とあった・・いよいよ始まるか・・あんまり忙しくならなきゃ好いが・・と思いながらも喫いつつ、メッセージタイトルをスクロールさせていったが・・大して重要なメッセージは来ていない・・クルーからも会社の知り合いからも来ていない・・ああ、リサさんとハルさんに頼んでいた暗号構築の話はどうなっているかな・?・今夜か明日の朝にでも連絡してみるか・・そう思いながら揉み消して喫煙室を出ると、洗面所で手と顔をよく洗って嗽もする・・水気をよく拭き取ってから席に戻った・・。
「・・あ、お帰り・・パパのヘルシー・ランチセットは頼んだよ・・コーヒーで好いよね・・」と、アリシア・・。
「・・ああ、それで好いよ・・」そう応えながらお絞りを使う・・。
立つ前には無かったフルーツの盛り合わせが来ている・・多分アリシアが頼んだものだ・・。
「・・それで・・この中でギターを弾ける人は・・?・・」
男子学生二人が右手を挙げる・・。
「・・そう・・他にも演奏できる楽器はあるの・・?・・僕はアルトサックスを吹くんだけどね・・」
「・・ザハシュが演奏できます・・」と、ロヒス・ムケーシュが手を挙げる・・。
「・・ほぉぅ・・南方の伝統民族楽器だね・・会社の独身寮に住んでいた時に、バハシュを演奏する南方出身で2年先輩の人が隣の部屋に住んでいてね・・色々と教えて貰ったよ・・ザハシュ・バハシュ・ガハシュと言う、3種類の楽器があって・・例えて言うと・・トランペットのA管、C管、B管のような音程の違いなんだよね・・4本弦の楽器で、形や大きさも似通っているんだけど微妙に違う・・本体のカラーリングは自由に塗って好いんだって言う話で・・凄い派手な色にしている演奏家も居るって聞いたよ・・ただ、撥を使って弾くんだけど・・その撥の微妙な形や色合いの違いで・・演奏者の技能・技術・表現力のレベルランクが判るんだって聞いた・・そのレベルランクは、全部で30あって・・その彼のランクは、上から6番目だって聞いた・・何回か演奏を聴かせて貰ったんだけど、勿論感動的だったよ・・ただ、この3種類の楽器で奏でる楽曲の真髄は、ハーモニーとコンビネーションとインタラクションなんだよね・・記録音源から聴かせて貰ったんだけど、そりゃ凄かったし素晴らしかったし感動したよ・・彼からバハシュの手解きを数回受けたんだけど、マスターする迄には至れなかったね・・弾き熟すには凄く難しい楽器だね・・勿論それは、僕にとってだけどね・・やがて彼は社内の配置転換で、出生地に近い南方の事業所に転勤になって・・退寮して行ったっ切り、交流が途絶えてしまってね・・元気なら、もう一度会って教えて貰いたいね・・」
「・・すごく・・お詳しいですね・・」と、ロヒス・・。
「・・パパは何でも知っているし、何でも出来るんだよ・・」と、アリシア・・。
「・・全部彼からの受け売りだよ・・それにしても懐かしいな・・君よりちょっと茶色の濃い肌色で・・素晴らしく白い歯で、好い歯並びをしてた・・人懐っこい笑顔でね・・女性社員にもファンは多かったな・・」
ずっと話をしていて気が付くと、既に頼んだメニューは総て運ばれて来ていた・・。
「・・ああ、悪かったね・・話しに夢中になっていて気付かなかった・・食べよう!・冷めちゃうよ・・」
それから昼食の席となる・・。
「・・それで・・昨日の激励壮行会は最初から観てくれたのかい・・?・・」と、食べながら訊く・・ 。
「・・ええ、生配信での中継を学校のカフェテリアで観ました・・」と、アデリーン・・。
「・・感想を訊いても良いかな・・?・・」
「・・いきなり始まったから、とにかく何よそれって感じだったわね・・何の連絡も無かったし・・」
と、アリシアが食べながらふくれて観せる・・。
「・・報道陣を招待するとは聞いていたんだけど、生配信で全国中継するとまでは聞いてなかったんだよね・・せいぜい配信ニュースで使う動画を撮るぐらいだと思っていたから・・」
「・・乗員の皆さんが1人1人、自己紹介していたのを観ました・・すごく美人で綺麗で素敵な人達でした・・皆さんがアドルさんを凄い人だと言っていたのが印象的でした・・」
と、テレンスが食べるのを止めて言う・・。
「・・私はやっぱり、アドルさんの弾き語りが好かったです・・1曲目も2曲目も、素敵で素晴らしくて最高でした・・2曲目は自作されたんですよね・・?・・」
と、アデリーン・・。
「・・そう・・独身寮に住んでいた時分に作ったね・・」
「・・看護師の仕事はどうだい、クレア・?・忙しくて大変だろう・・?・・」
「・・忙しくて大変な時もあるけど大丈夫よ、義兄さん・・ちゃんと休みは取っているから・・それに、今度私ね・・看護師長になれそうなのよ・・義兄さんのおかげでね・・」
「・・俺は何もしてないよ・・クレアが長い間、頑張って来たからだろ・?・おめでとうと言うのは、まだちょっと早いかな・・?・・」
「・・私の仕事ぶりが認められているって言うのは解っているけどね・・でも、義兄さんのネームヴァリューも相当なものよ・・義兄さんの義妹って言う事だけで、話し難かった人ともスムーズに話せるようになったし・・仕事も充実してスムーズにこなせるようになってきていたからね・・」
「・・俺の事がどうであろうとも、それはクレアの実力と頑張りの結果だよ・・至らない義兄だけど誇りに思うよ・・クレアもそれは自分の誇りとして、自信としたら良い・・」
「・・有難う、義兄さん・・感謝してます・・それはそうと姉さんの事なんだけどさ・・?・・」
「・・うん?・・アリソンがどうかしたかい・・?・・」
「・・!?・え?、ああ、ううん、何でもない・・私の勘違いだったみたい・・」
「・・?・そうか・?・・」
と、急に口籠って応えなかったクレアだったのだが、どうやら後部座席に座っているアリシアに改めて気付いたから、のようにも観えた・・。
それから2分ほどして最寄りステーションの正面エントランスに滑り込み、停車する・・。
「・・どうも有難う、お義兄さん・・久し振りに会えて嬉しかったわ・・ゲーム大会、頑張ってね・・病院の皆と一緒に応援してるから・・」
「・・ありがとう、クレア・・頑張るよ・・」
助手席から降りてドアを閉めたクレアが笑顔で言う・・私も右手を挙げて応え、アリシアも降りて助手席に乗り込んでから笑顔で手を振った・・。
友達と待ち合わせているのは、ここから一つ先のステーションだ・・。
「・・アリシアはクレアの事、あまり好きじゃないのかい・・?・・」
「・・クレア叔母さん、パパの事好きなんでしょ・?・今でも・?・・」
「・・恋愛感情って言うより家族的親密感ってレベルだろ・?・まあ結婚前から妙に懐いて来てはいたけどな・・ママにプロポーズする前にしていたデートでも、3回に1回はママにくっ付いて来ていたからな・・」
「・・パパってそう言う処は鈍いんだよね・・」
と、軽い溜息を吐いて言うアリシア・・。
「・・ああ、最近はよく言われるよ・・」
何気なく応えたのだが、アリシアは少し驚いた様子で助手席から私の横顔を数秒観た・・。
「・・叔母さんなんだから、あんまり嫌うなよ・・?・・」
「・・分かってるけどさ・・クレア叔母さんがパパを観る眼・・嫌らしいんだよね・・」
「・・たまにしか会わないんだから、気にしなくて良いよ・・ハンナさんから貰った論文・・読んでるのか・・?・・」
「・・読んでるんだけど結構難しくてさ・・色々質問させて貰ってるんだ・・」
「・・答えてくれてる・・?・・」
「・・うん、すごく解りやすく優しく教えてくれるから感謝してる・・サークル活動の中でも、色々と役に立っているよ・・」
「・・ハンナさんにお礼しなきゃな・・?・・」
「・・そうだね・・ありがとうだけじゃ足りないから考えるよ・・」
「・・うん・・帰ったらママにも言うけど、開幕2日前の26日の夜に、ウチで最後の壮行会を細やかに開くよ・・その時にはハンナさんも招待するから、その時までにアリシアなりのお礼を考えたら好い・・」
「・・うん、分かった・・お父さん・・ありがとう・・」
「・・ウチでやる最後の壮行会には、メインスタッフと職場フロアの同僚を何人か招待する積りなんだよ・・」
「・・へえ・・あっ!、それじゃスコットさんも来るの・・!?・・」
「・・勿論招待するよ・・あいつ、お前に会いたがっていたぞ・・」
「・・へえ、そう・・懐かしいな・・スコットさんが持って来てくれるお土産のチョイスセンスが、いつも最高なんだよね・・いつも私がその時に一番欲しいと思っているものを持って来てくれるから・・ママも感心してたんだよ・・スコットさんのチョイスセンスはパパより上だわねって・・」
「・・へえ、そうなんだ・・パパもそう思っているよ・・」
そう応えて30秒ほどで、友達との待ち合わせ場所に指定したステーションのエントランスロータリーにエレカーは滑り込み、一時駐停車スペースに停めてそのままステーションの出入り口を見上げたが、それらしき若者は見当たらない・・。
モーターを止め、電源も落して2人とも車から降り、階段を上ってステーション出入り口前に立ったが、やはり見当たらない・・。
「・・待ち合わせ時間までには・・?・・」
「・・後5分くらい・・」
「・・次の便かな・・?・・」
「・・そうみたい・・後その位で次の上りの便が入るよ・・」
と、アリシアが自分の携帯端末をネットに繋ぎ、近隣路線の運行予定表をブラウジングさせて観て、応える・・。
一服点けようかとも思ったが、公共の場所だし、子供達の前でもあるので止めておこう・・昼食を摂ってからがキツくなるかな・・?・・。
「・・ねえ、パパ・・ゲーム大会が開幕したら毎週の土日は帰れなくなるの・・?・・」
「・・うん・・何の問題も不都合も無いなら、そうなるだろうね・・でもな、アリシア・・『ディファイアント』はメインとサブのスタッフだけでも30人近くになる・・パパはこの中の誰か 1人でも急用が出来たり、急に身体の具合が悪くなったり、急にモチベーションが低下したりしたら、出航は見合わせてウチに帰るよ・・また、2週間続けてフルでゲームに参加したら、その次の週の水曜日か木曜日は休暇を取ってウチに帰るよ・・別に土日を全部ゲームに費やす訳じゃない・・ちょくちょくは帰るから心配するな・・?・・」
「・・分かった・・無理はしないでね・・?・・」
「・・無理なんかするかよ(笑)・!?・所詮はゲームだよ!?(笑)・・遊び事さ・・楽しんでナンボだよ!・・但し、ギリギリまで頭を使って思いっ切り楽しむけどな・(笑)・・」
そう応えた時に、次の上り便がホームに滑り込む・・降りる乗客の中にそれらしき若者を探していると、アリシアが通う学校の制服を着た男女4人のグループがホームに降り立つ・・。
「・・アリシア・・お前、制服着て来いって言ったのか・・?・・」
「・・そんな話はしてないよ・・」
そんな受け答えの間にも彼らはホームからコンコース、改札を通り抜けて出入り口からこちらに歩み寄って来る・・。
「・・おはよう!、ねえ、どうして制服を着て来たのよ?!・そんな話、してなかったじゃない・?!・・」
「・・おはよう!、アリシア・・いやぁ、だって憧れの人に会うんだからさ・・正装じゃないとマズいっしょ?・・あっ、失礼しました、おはようございます!・アドル・エルクさん・・初めまして、テレンス・カシオと言います・・アリシアさんとはクラスメイトです・・お会い出来て光栄です・・今日は宜しくお願いします・・」
そう言って会釈した男子学生は、痩せ型でかなりの長身だが顔付きは逞しい・・黒髪でスッキリと刈り上げた短髪が若いながらも精悍さを醸し出している・・。
「・・おはよう!、アリシア・・おはようございます!・アドル・エルクさん・・初めまして、アデリーン・ジーマです・・同じくクラスメイトとして仲良くしています・・お会い出来て嬉しいです・・今日は宜しくお願いします・・」
そう言って右手を胸に当てた女子学生は、アリシアより若干背が高くて均整が取れている・・素晴らしく輝くゴールドブロンドのロングヘアにショートウェイブが掛けられている・・。
「・・おはようございます!・アドル・エルクさん・・初めまして、ロヒス・ムケーシュと言います・・同じくクラスメイトです・・僕もお会い出来て光栄です・・今日は宜しくお願いします・・」
そう会釈したこちらの男子学生は、名前からして南方系だ・・少し明るいが地黒の肌色・・髪は黒い短髪だが強くカールが掛かっている・・若いのに揉み上げと言うか頬髯が豊かで強そうだ・・丸眼鏡を掛けていなければ、眼光が強くて攻撃的な印象を与えるかも知れない・・。
「・・おはようございます!・アドル・エルクさん・・初めまして、マノン・ドアと言います・・隣のクラスですが、仲良くさせて貰っています・・私もお会い出来て嬉しいです・・今日は宜しくお願いします・・」
スカートの端を持ち上げ、片膝を曲げて会釈したこちらの女子学生は、名前からすると北方系かな・?・すごく肌が白い・・と言うか色が無いようにも観える・・だが髪はカーマイン・ブラウンで素晴らしくサラサラしたミディアムボブだ・・。
「・・4人ともおはよう!・そして、初めまして・・アドル・エルクです・・アリシアと仲良くしてくれて、ありがとう・・今日は宜しくお願いします・・楽しく過ごせれば好いと思います・・僕の事はアドルで好いよ・・ええと、テレンスに、アデリーンに、ロヒスに、マノンだね・?・そう呼んでも好いかな・・?・・」
「・・はい・・」「・・大丈夫です・・」「・・問題ありません・・」「・・お願いします・・」
「・・分かった・・あと一つ、僕の前だからってアリシアを持ち上げて話をしなくても良い・・これも好いかな・・?・・」
4人とも無言で頷く・・。
「・・よし・・それじゃあもうお昼だし、食べに行こう・・メニューの多いランチ・ダイナーで好いね・?・下に車があるから、それで行くよ・・ああ、最後に一つだけ・・僕と一緒にいるとかなり騒がれると思うんだけど、そんなに大きい騒ぎにはならないだろうから、心配しなくても良いし・・驚かなくても好いからね・・?・・」
そう伝えると、テレンス・カシオが一歩進み出る・・。
「・・大丈夫です、アドルさん・・僕達が来たのはガードの意味もありますので、どんな騒ぎが起きてもご心配には及びません・・ご安心下さい・・」
「・・ありがとう、テレンス君・・心強いし、頼もしいとも思うよ・・ただ、僕が今一人でマーケットに行ったりすると、大体30人以上の人から声を掛けられて、20人以上の人にサインを書いてあげて、そのほぼ全員とセルフィーを撮る事になるんだね・・でも、そんなに大きい騒ぎにはならないだろうから大丈夫だよ・・それじゃ行こうか・・?・・」
アリシアは動じていなかったが、4人とも緊張気味の笑顔で頷く・・。
私のエレカーの定員は6人なので、かなりキツい・・目指すランチ・ダイナーの駐車スペースには、10分程で滑り込む・・やはりちょうどお昼時なので席に案内されるまでには、暫く待つ事になる・・今、全く知らない人が私の顔を初めて観た場合・・直ぐに気が付いて驚く人と、数瞬怪訝な顔をしてから気が付いて驚く人に分かれる・・最初に受付カウンターで接客してくれたウェイトレス嬢は、直ぐに気付いて眼を見開くと口を押さえて退がった・・1分ほどして、フロア・マネージャーらしき男性が来て店内でも奥まった位置にある大きなテーブルに、私達を自ら案内してくれる・・。
「・・この店、よく来るけど・・この席に案内して貰った事一度も無いよ・・」
と、テレンス・カシオが周りを見廻しながら言う・・。
「・・ちょっと、はしたないわよ!・やめなさい・・」
と、アデリーンが軽く彼を叩く・・。
それが微笑ましく観えて眼が細まる・・多分、この2人はカップルだな・・。
「・・VIP席なのかな・・?・・」 と、ロヒス・ムケーシュ・・。
「・・まさか・・普通のファミリー・ランチダイナーだよ・?・大家族用に用意してある、大きいテーブルって言うだけだろう・・皆、何でも好きなもの・・食べたいものを沢山頼んで好いからね・・アリシア・・パパにはヘルシーなランチ・セットで頼むよ・・ちょっと失礼して席を外すよ・・10分ぐらいで戻るから・・」
そう断って席を立ち、レストルームで用を足して喫煙室に入る・・一本を咥えて点け、喫いながら携帯端末でメッセージをチェックすると、チーフ・カンデルからのメッセージで、選定されたアイソレーション・タンクベッドメーカーとの間での業務提携プロジェクトをスタートさせるため、プロジェクト・キックオフを行い、そのままチームを編成して発足させるとの事・・ついては、来週月曜日の始業後直ぐに営業本部ビル3階のA大会議室に参集されたい・・とあった・・いよいよ始まるか・・あんまり忙しくならなきゃ好いが・・と思いながらも喫いつつ、メッセージタイトルをスクロールさせていったが・・大して重要なメッセージは来ていない・・クルーからも会社の知り合いからも来ていない・・ああ、リサさんとハルさんに頼んでいた暗号構築の話はどうなっているかな・?・今夜か明日の朝にでも連絡してみるか・・そう思いながら揉み消して喫煙室を出ると、洗面所で手と顔をよく洗って嗽もする・・水気をよく拭き取ってから席に戻った・・。
「・・あ、お帰り・・パパのヘルシー・ランチセットは頼んだよ・・コーヒーで好いよね・・」と、アリシア・・。
「・・ああ、それで好いよ・・」そう応えながらお絞りを使う・・。
立つ前には無かったフルーツの盛り合わせが来ている・・多分アリシアが頼んだものだ・・。
「・・それで・・この中でギターを弾ける人は・・?・・」
男子学生二人が右手を挙げる・・。
「・・そう・・他にも演奏できる楽器はあるの・・?・・僕はアルトサックスを吹くんだけどね・・」
「・・ザハシュが演奏できます・・」と、ロヒス・ムケーシュが手を挙げる・・。
「・・ほぉぅ・・南方の伝統民族楽器だね・・会社の独身寮に住んでいた時に、バハシュを演奏する南方出身で2年先輩の人が隣の部屋に住んでいてね・・色々と教えて貰ったよ・・ザハシュ・バハシュ・ガハシュと言う、3種類の楽器があって・・例えて言うと・・トランペットのA管、C管、B管のような音程の違いなんだよね・・4本弦の楽器で、形や大きさも似通っているんだけど微妙に違う・・本体のカラーリングは自由に塗って好いんだって言う話で・・凄い派手な色にしている演奏家も居るって聞いたよ・・ただ、撥を使って弾くんだけど・・その撥の微妙な形や色合いの違いで・・演奏者の技能・技術・表現力のレベルランクが判るんだって聞いた・・そのレベルランクは、全部で30あって・・その彼のランクは、上から6番目だって聞いた・・何回か演奏を聴かせて貰ったんだけど、勿論感動的だったよ・・ただ、この3種類の楽器で奏でる楽曲の真髄は、ハーモニーとコンビネーションとインタラクションなんだよね・・記録音源から聴かせて貰ったんだけど、そりゃ凄かったし素晴らしかったし感動したよ・・彼からバハシュの手解きを数回受けたんだけど、マスターする迄には至れなかったね・・弾き熟すには凄く難しい楽器だね・・勿論それは、僕にとってだけどね・・やがて彼は社内の配置転換で、出生地に近い南方の事業所に転勤になって・・退寮して行ったっ切り、交流が途絶えてしまってね・・元気なら、もう一度会って教えて貰いたいね・・」
「・・すごく・・お詳しいですね・・」と、ロヒス・・。
「・・パパは何でも知っているし、何でも出来るんだよ・・」と、アリシア・・。
「・・全部彼からの受け売りだよ・・それにしても懐かしいな・・君よりちょっと茶色の濃い肌色で・・素晴らしく白い歯で、好い歯並びをしてた・・人懐っこい笑顔でね・・女性社員にもファンは多かったな・・」
ずっと話をしていて気が付くと、既に頼んだメニューは総て運ばれて来ていた・・。
「・・ああ、悪かったね・・話しに夢中になっていて気付かなかった・・食べよう!・冷めちゃうよ・・」
それから昼食の席となる・・。
「・・それで・・昨日の激励壮行会は最初から観てくれたのかい・・?・・」と、食べながら訊く・・ 。
「・・ええ、生配信での中継を学校のカフェテリアで観ました・・」と、アデリーン・・。
「・・感想を訊いても良いかな・・?・・」
「・・いきなり始まったから、とにかく何よそれって感じだったわね・・何の連絡も無かったし・・」
と、アリシアが食べながらふくれて観せる・・。
「・・報道陣を招待するとは聞いていたんだけど、生配信で全国中継するとまでは聞いてなかったんだよね・・せいぜい配信ニュースで使う動画を撮るぐらいだと思っていたから・・」
「・・乗員の皆さんが1人1人、自己紹介していたのを観ました・・すごく美人で綺麗で素敵な人達でした・・皆さんがアドルさんを凄い人だと言っていたのが印象的でした・・」
と、テレンスが食べるのを止めて言う・・。
「・・私はやっぱり、アドルさんの弾き語りが好かったです・・1曲目も2曲目も、素敵で素晴らしくて最高でした・・2曲目は自作されたんですよね・・?・・」
と、アデリーン・・。
「・・そう・・独身寮に住んでいた時分に作ったね・・」
0
お気に入りに追加
83
あなたにおすすめの小説
『星屑の狭間で』(対話・交流・対戦編)
トーマス・ライカー
SF
国際総合商社サラリーマンのアドル・エルクは、ゲーム大会『サバイバル・スペースバトルシップ』の一部として、ネット配信メディア・カンパニー『トゥーウェイ・データ・ネット・ストリーム・ステーション』社が、配信リアル・ライヴ・バラエティー・ショウ『サバイバル・スペースバトルシップ・キャプテン・アンド・クルー』に於ける、軽巡宙艦艦長役としての出演者募集に応募して、凄まじい倍率を突破して当選した。
艦長役としての出演者男女20名のひとりとして選ばれた彼はそれ以降、様々な艦長と出会い、知り合い、対話し交流もしながら、時として戦う事にもなっていく。
本作では、アドル・エルク氏を含む様々な艦長がどのように出会い、知り合い、対話し交流もしながら、時として戦い合いもしながら、その関係と関係性がどのように変遷していくのかを追って描く、スピンオフ・オムニバス・シリーズです。
『特別解説…1…』
この物語は三人称一元視点で綴られます。一元視点は主人公アドル・エルクのものであるが、主人公のいない場面に於いては、それぞれの場面に登場する人物の視点に遷移します。
まず主人公アドル・エルクは一般人のサラリーマンであるが、本人も自覚しない優れた先見性・強い洞察力・強い先読みの力・素晴らしい集中力・暖かい包容力を持ち、それによって確信した事案に於ける行動は早く・速く、的確で適切です。本人にも聴こえているあだ名は『先読みのアドル・エルク』
追記
以下に列挙しますものらの基本原則動作原理に付きましては『ゲーム内一般技術基本原則動作原理設定』と言う事で、ブラックボックスとさせて頂きます。
ご了承下さい。
インパルス・パワードライブ
パッシブセンサー
アクティブセンサー
光学迷彩
アンチ・センサージェル
ミラージュ・コロイド
ディフレクター・シールド
フォース・フィールド
では、これより物語が始まります。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【『星屑の狭間で』『パラレル2』(アドル・エルク独身編)】
トーマス・ライカー
SF
舞台は、数多ある地球圏パラレルワールドのひとつ。
超大規模、超高密度、超高速度、超圧縮高度複合複層処理でのハイパー・ヴァーチャル・エクステンデッド・ミクシッド・リアリティ(超拡張複合仮想現実)の技術が、一般にも普及して定着し、ハイパーレベル・データストリーム・ネットワークが一般化した未来社会。
主人公、アドル・エルクは36才で今だに独身。
インターナショナル・クライトン・エンタープライズ(クライトン国際総合商社)本社第2棟・営業3課・セカンドセクション・フォースフロアで勤務する係長だ。
政・財・官・民・公・軍がある目的の為に、共同で構築した『運営推進委員会』
そこが企画した、超大規模ヴァーチャル体感サバイバル仮想空間艦対戦ゲーム大会。
『サバイバル・スペース・バトルシップ』
この『運営推進委員会』にて一席を占める、データストリーム・ネットワーク・メディア。
『トゥーウェイ・データ・ネット・ストリーム・ステーション』社が企画した
『サバイバル・スペースバトルシップ・キャプテン・アンド・クルー』と言う連続配信リアル・ライヴ・ヴァラエティショウが、民間から男性艦長演者10名と女性艦長演者10名を募集し、アドル・エルクはそれに応募して当選を果たしたのだ。
彼がこのゲーム大会に応募したのは、これがウォー・ゲームではなく、バトル・ゲームと言う触れ込みだったからだ。
ウォー・ゲームであれば、参加者が所属する国・団体・勢力のようなものが設定に組み込まれる。
その所属先の中での振る舞いが面倒臭いと感じていたので、それが設定に組み込まれていない、このゲームが彼は気に入った。
だがこの配信会社は、艦長役演者に当選した20名を開幕前に発表しなかった。
連続配信リアル・ライヴ・ヴァラエティショウが配信されて初めて、誰が選ばれたのかが判る仕掛けにしたのだ。
艦長役演者に選ばれたのが、今から90日前。以来彼は土日・祝日と終業後の時間を使って準備を進めてきた。
配信会社から送られた、女性芸能人クルー候補者名簿から自分の好みに合い、能力の高い人材を副長以下のクルーとして選抜し、面談し、撮影セットを見学し、マニュアルファイルを頭に叩き込み、彼女達と様々な打ち合わせや協議を重ねて段取りや準備を積み上げて構築してきた。
彼の目的はこのゲーム大会を出来る限りの長期間に亘って楽しむ事。
会社からの給与とボーナス・艦長報酬と配信会社からのギャラ・戦果に応じた分配賞金で大金持ちになる事と、自分が艦長として率いる『ディファイアント』に経験値を付与し続けて、最強の艦とする事。
スタッフ・クルー達との関係構築も楽しみたい。
運営推進委員会の真意・本当の目的は気になる処だが、先ずは『ディファイアント』として、戦い抜く姿を観せる事だな。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる