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・・・『集結』・・・
スコットの出逢い・・
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「・・やっぱり、なんだかんだ言っても上から目線だよね・・?・・もう少しで恩着せがましいって言っちゃうところだったよ・・」
と、リフトに乗り込みながら言う・・。
「・・言っても良かったんじゃないんですか・・?・・もう会社はアドルさんに対して、何をどうする事も出来ないでしょうから・・」
と、リサさんが応える・・。
「・・ああ・・それにしても壮行会でも歌うのか・・まあ、ゲームの中でも歌うけどね・・どうせ見世物になるなら、思い切って徹底的になってやろうか・・?・・出来たらギターを新調したいんだよね・・落ち着いたら楽器店に行って観ようか・・」
そう言った時に、自分達のオフィスフロアにリフトが降り着く・・オフィスに入ると同僚たちが私達を拍手で迎えた・・。
「・・何だ・・?・・まさか・・?・・」
「・・中継されていましたね・・」
「・・何でそんな事をするのかなあ・・?・・」
「・・先輩!・また随分格好好い事をやっていたじゃないですか・・弾き語りが上手いだなんて初めて聞きましたよ・・今度聴かせて下さいよ・・」
と、スコットが笑顔で拍手しながら歩み寄って言う・・。
「・・ああ・・慌てなくても明後日にはタップリ聴かせてやるよ・・皆!・もう仕事は始まっているから、締めていくぞ!・・スコット・・彼女、もう暫くしたらここにも来るから、手紙の用意は好いんだろうな・・?・・」
「・・バッチリですよ・・任せて下さい・・」
「・・おう・・じゃ取り敢えず、席に戻って仕事するぞ・・」
『ディファイアント』のメインスタッフ達がドリス・ワーナー女史に引率されてこのオフィスフロアに来たのは、午後の休憩時間に入る15分程前だった・・私の同僚とここでの業務内容についての紹介や説明が終るぐらいの頃合いで休憩時間に入ったので、そのまま皆と一緒に禁煙休憩室に入る・・。
スコットやリサさんやマーリーにも手伝って貰って皆に手ずから飲み物を振舞い、椅子が足りないので立ったまま話していると、スコットが歩み寄って来る・・。
「・・ああ、エドナさん・・改めて紹介します・・僕の同僚で後輩のダグラス・スコット・・僕が本社に来て以来の仲間です・・彼には随分と助けられています・・で、エドナさんの大ファンだそうです・・スコット・・こちらがエドナ・ラティスさん・・『ディファイアント』の砲術長を務められる・・」
「・・初めまして・・エドナ・ラティスさん・・ダグラス・スコットです・・お会い出来て光栄です・・8年前から貴女のファンです・・今日はお逢いできると言う事で、手紙を書いてきました・・ファンレターです・・宜しければお気軽にお読み下さい・・今日はお逢い出来て嬉しかったです・・これからもアドル・エルク先輩を宜しくお願いします・・エドナさんの健康と充実を祈っています・・」
そう言って1通の封書を差し出すと、エドナさんは直ぐに受け取った・・。
「・・こんにちは、初めまして、ダグラス・スコットさん・・エドナ・ラティスです・・ご丁寧にありがとうございます・・お手紙もありがとうございます・・大切に読ませて頂きます・・これからもアドル艦長を宜しくお願い致します・・」
「・・彼はチョイスセンスの好い男でね・・勘も鋭いです・・迷った時とかよく分からない時には、彼にチョイスを任せれば間違いがありません・・頼りになる男ですよ・・」
付け加えてそう紹介すると彼女は笑顔を見せる・・。
「・・何かサインでも致しましょうか・・?・・」
「・・良いんですか!?・感激です!・ありがとうございます!・・じゃあ、これに・・お願いします!・・」
そう言って胸ポケットから手帳とサインペンを取り出すとページを開いて差し出す・・。
受取ってサラっと書き、返す時にエドナは自分から右手を差し出した・・。
「・・あっ・・ありがとうございます!・嬉しいです!・頑張って下さい!・・」
差し出された右手をしっかりと握って頭を下げるスコットである・・。
「・・さっきの懇談会・・本社内で中継されていてね・・」
「・・ええ、聴きました・・通りでどこにお邪魔しても、篤く歓迎して頂けたのだなと思っています・・」
シエナ・ミュラーがそう応じる・・。
「・・『ミーアス・クロス』と『リアン・ビッシュ』に確認してね・・?・・何を何曲・・どんな順番で歌うのかとか・・衣装はどうするのかとか・・?・・」
「・・はい・・既に確認しまして、内容はそのままエスター・アーヴ総務部長にメッセージで送信しました・・双方とも2曲ずつ・・デビュー曲と最新リリース曲を歌います・・『ミーアス・クロス』が先に歌います・・衣装も用意してくるとの事です・・」
「・・それで総務部長は・・?・・」
「・・感謝して頂きました・・伴奏の音源は実行委員会で用意して頂けるそうです・・」
と、ハル・ハートリーが淀み無く応えたので、私は感心した・・。
「・・流石は参謀・・速くて的確です・・」
「・・ありがとうございます・・どう致しまして・・」
「・・あの、アドルさん・・さっきはあんな事を言ってしまって済みませんでした・・」
と、カリーナ・ソリンスキーが眼の前に来て頭を下げる・・。
「・・ああ、良いよ・・もうとっくに見世物になっているからね・・無理難題を言われるよりは、徹底的に見世物になってやるさ・・副長・・全クルーのレクチャーとブリーフィング・・最初の撮影セットの見学は、明日中には終わるのかな・・?・・」
「・・はい、それは確実に終ります・・」
「・・了解・・じゃあ私と君の連名でゲーム大会の運営本部に向けて、『ディファイアント』医療部スタッフとバーラウンジスタッフの人事を早く決定して欲しいと送信して下さい・・司令部としても早く面談したいからと付け加えてね・・?・・」
「・・分かりました・・直ぐに送ります・・」
「・・ドリスさん・・見学は、あとどのくらいで終わりますか・・?・・」
「・・あと、40分程ですね・・」
「・・そうですか・・では引き続き、宜しくお願い致します・・」
「・・分かりました・・お任せ下さい・・アドルさん・・今迄お話を伺わせて頂いて、私も確信しました・・アドルさんは素晴らしい方で、最高の艦長にもなられます・・そして『ディファイアント』は確実に最後まで残るでしょう・・本当に、貴方の秘書になりたかったです・・」
「・・ありがとうございます・・ドリスさんに認められて・・私も一人前になれた想いです・・」
丁度そう応えた時に、休み時間終了のチャイムが響く・・皆は私達に会釈して、次の見学部所に向かう・・私も右手を挙げて皆を見送る・・。
「・・おい、スコット・・なかなか好い滑り出しで・・期待できそうだな・・?・・」
「・・どうですかね・・?・・先輩の手前・・上手くあしらったぐらいじゃないんですか・・?・・」
「・・お前、自分の事は悲観的だな・・?(笑)・・」
「・・そりゃそうですよ・・彼女、浮いた噂を聞かないですからね・・」
「・・そうかあ・・よし!・今日も追い込んで・・締め括るぞ!・・」
今日もパートタイムで特別業務サポートが、様々な時間帯で延べにして18人が入ってくれたので、私とリサさんが暫く業務に参加できなくても、充分に余裕を持って遅れを生じさせず、6時間分程度の先行進捗着地で定時終業で今日も終える事が出来た・・終業する10分程前に、ドリス・ワーナー女史に通話を繋いで彼女達がどうしたのか訊いたところ、あの後45分で見学を終えて一緒にお茶を飲んで暫時懇談してから、本社で用意したお土産を進呈してお帰り頂いた、との事だった・・。
まあ無事に済んだな、と言う事で、同僚たちと挨拶を交わしてオフィスフロアを後にする・・1階のカフェラウンジでコーヒーを飲みながら一服点けていると、スコット、リサさん、マーリー、ズライも来て一緒のテーブルに着く・・。
「・・ああ、皆お疲れさん・・悪いけど今日はちょっと疲れたからさ・・もうここから動きたくないんだけど、良いかな・・?・・」
「・・構いませんよ・・私達の為にいつも禁煙席に移動しなくても大丈夫です・・」
と、リサさんも少々お疲れモードかな・・?・・。
「・・珍しいね・・いつもは直帰なのに・・」
「・・私だって週に一回くらいは、ここで一息吐いてから帰りますよ・・」
「・・先輩、今日は本当にありがとうございました・・憧れのエドナ・ラティスさんに逢えて、ちゃんと挨拶出来て、手紙も渡せて、サインも貰えたなんてもう最高っス・・一生の思い出になりますよ・・」
「・・俺もお前の出逢いに協力出来て善かったよ・・正直、好い滑り出しだったと思うぜ・・でもちょっと堅かったけどな・・スコット・・あと2回は逢えるからな・・次はもっとリラックスしていつものお前らしさを出して、自然体で行けよ・・」
そう言って一本目の煙草を揉み消す・・。
「・・分かりました・・ありがとうございます・・」
そう言って、ちょうど来たウェイトレスにコーヒーを頼む・・。
「・・アドルさんがギターの弾き語りが上手だなんて、初めて知りましたよ・・どうしてスタッフの皆さんは知っていたんですか・・?・・」
そう訊くマーリー・マトリンは、ちょっとふくれっ面だ・・。
「・・ああ、それは・・この前ウチの社宅で2回目のスタッフ会議を開いてね・・その時の流れでちょっと歌う事になっちゃってさ・・久し振りに弾き語りで披露したって訳・・・」
「・・ズルいです・・私も聴きたかったです・・」
「・・明後日にはちゃんと聴かせるから、楽しみにしといてよ・・」
そう言って2本目を取り出す・・。
「・・呑み会で歌ったんですって・・?・・俺、知らなかったですけど・・」
「・・本社に着任して直ぐの・・営業本部の歓迎会で2曲、歌ったんだよ・・お前に初めて会ったのは、その直ぐ後だったからな・・」
そう言って火を点けてコーヒーのお替りを頼む・・。
「・・アドルさん・・ハーマン・パーカー常務の言っていた・・サプライズって何ですか・・?・・」
と、ズライ・エナオが少し声を落して訊いてくる・・私は一服喫って吐き・・一口水を飲んで皆に顔を寄せるように手招きした・・。
「・・これは、リサさんとマーリーは知っているんだけど・・他のフロアメンバーには、まだ誰にも言っていないんだ・・でも明後日には全社員が知る事になる・・懇談会が中継されてから、何か噂を聞いたか・・?・・」
そう言って、もう一服喫って吐く・・。
「・・いや・・サプライズについての話を小耳には挿みましたけど・・皆何の事か、判らないみたいですよ・・」
と、スコットがコーヒーを飲みつつ言う・・。
「・・そうか・・皆、今から言う話は、壮行会が終わるまで他の誰にも言わないでくれ・・頼むな・・(更に声を落す)・・我がクライトン商社は、営利法人としての資格と立場で、このゲーム大会に参加する・・明日の午前中には登録を済ませて、発表は明後日の壮行会の中で行われる・・目的は純粋に、我が社のPRの為だそうだ・・俺はこの話を最初に伝えられた時に、これだけは言って置いた・・もしも会社が今後、会社の中でも・・ゲームの中ででも・・俺や俺の指揮権や艦やクルーに対して、ほんの僅かにでも干渉してきたら・・干渉しようとして来たら、即座に辞表を提出して退職するってね・・」
そう言って、もう一服喫って吐き・・コーヒーを二口飲んだ・・。
スコットもズライも目を丸くして息を呑んでいる・・無理もない・・。
「・・艦種は・・?・・艦長は・・?・・」と、スコット・・。
「・・知らないし、知りたくもないし、興味も無いけど・・明後日には全部明らかになるだろうから、そこで確認するよ・・」
そう言って、もう一服喫って吐く・・。
「・・アドルさんに対する何かしらの意図が、隠されているとお考えですか・・?・・」
「・・それは確実にあるだろうね・・でもそれは直接的なものではなくて・・間接的なベクトル誘導の範疇だろうと思うよ・・例えば・・『ディファイアント』と会社として参加する艦の行動を、様々に対比させて視聴者に見せる事で・・イメージ、印象のベクトルをある程度、誘導・操作しようとする意図はあるのだろうと思うね・・でも俺は、例え誰に何をどう観られようと、何も気にしないし、何の影響も受けないよ・・」
「・・会社として出場する艦種が何で・・艦長が誰かによっても、先輩に対しての隠された意図は・・大分違ってくるんじゃないでしょうかね・・?・・」
「・・うん・・それはまあ俺も、そう思うね・・でもこれ以上考えても仕方ないよ・・」
そう言って、もう一服喫って吐き、灰皿で揉み消すと・・2杯目のコーヒーも飲み干した・・。
「・・それじゃ、俺はこれで帰るよ・・皆、明日もよろしくな・・ゆっくり休んでな・・お疲れさん・・」
席を立って右手を挙げて挨拶すると、踵を反す・・お疲れ様でしたの声を背中で聴きながら、カフェラウンジから外に出て駐車スペースに向かう・・。
と、リフトに乗り込みながら言う・・。
「・・言っても良かったんじゃないんですか・・?・・もう会社はアドルさんに対して、何をどうする事も出来ないでしょうから・・」
と、リサさんが応える・・。
「・・ああ・・それにしても壮行会でも歌うのか・・まあ、ゲームの中でも歌うけどね・・どうせ見世物になるなら、思い切って徹底的になってやろうか・・?・・出来たらギターを新調したいんだよね・・落ち着いたら楽器店に行って観ようか・・」
そう言った時に、自分達のオフィスフロアにリフトが降り着く・・オフィスに入ると同僚たちが私達を拍手で迎えた・・。
「・・何だ・・?・・まさか・・?・・」
「・・中継されていましたね・・」
「・・何でそんな事をするのかなあ・・?・・」
「・・先輩!・また随分格好好い事をやっていたじゃないですか・・弾き語りが上手いだなんて初めて聞きましたよ・・今度聴かせて下さいよ・・」
と、スコットが笑顔で拍手しながら歩み寄って言う・・。
「・・ああ・・慌てなくても明後日にはタップリ聴かせてやるよ・・皆!・もう仕事は始まっているから、締めていくぞ!・・スコット・・彼女、もう暫くしたらここにも来るから、手紙の用意は好いんだろうな・・?・・」
「・・バッチリですよ・・任せて下さい・・」
「・・おう・・じゃ取り敢えず、席に戻って仕事するぞ・・」
『ディファイアント』のメインスタッフ達がドリス・ワーナー女史に引率されてこのオフィスフロアに来たのは、午後の休憩時間に入る15分程前だった・・私の同僚とここでの業務内容についての紹介や説明が終るぐらいの頃合いで休憩時間に入ったので、そのまま皆と一緒に禁煙休憩室に入る・・。
スコットやリサさんやマーリーにも手伝って貰って皆に手ずから飲み物を振舞い、椅子が足りないので立ったまま話していると、スコットが歩み寄って来る・・。
「・・ああ、エドナさん・・改めて紹介します・・僕の同僚で後輩のダグラス・スコット・・僕が本社に来て以来の仲間です・・彼には随分と助けられています・・で、エドナさんの大ファンだそうです・・スコット・・こちらがエドナ・ラティスさん・・『ディファイアント』の砲術長を務められる・・」
「・・初めまして・・エドナ・ラティスさん・・ダグラス・スコットです・・お会い出来て光栄です・・8年前から貴女のファンです・・今日はお逢いできると言う事で、手紙を書いてきました・・ファンレターです・・宜しければお気軽にお読み下さい・・今日はお逢い出来て嬉しかったです・・これからもアドル・エルク先輩を宜しくお願いします・・エドナさんの健康と充実を祈っています・・」
そう言って1通の封書を差し出すと、エドナさんは直ぐに受け取った・・。
「・・こんにちは、初めまして、ダグラス・スコットさん・・エドナ・ラティスです・・ご丁寧にありがとうございます・・お手紙もありがとうございます・・大切に読ませて頂きます・・これからもアドル艦長を宜しくお願い致します・・」
「・・彼はチョイスセンスの好い男でね・・勘も鋭いです・・迷った時とかよく分からない時には、彼にチョイスを任せれば間違いがありません・・頼りになる男ですよ・・」
付け加えてそう紹介すると彼女は笑顔を見せる・・。
「・・何かサインでも致しましょうか・・?・・」
「・・良いんですか!?・感激です!・ありがとうございます!・・じゃあ、これに・・お願いします!・・」
そう言って胸ポケットから手帳とサインペンを取り出すとページを開いて差し出す・・。
受取ってサラっと書き、返す時にエドナは自分から右手を差し出した・・。
「・・あっ・・ありがとうございます!・嬉しいです!・頑張って下さい!・・」
差し出された右手をしっかりと握って頭を下げるスコットである・・。
「・・さっきの懇談会・・本社内で中継されていてね・・」
「・・ええ、聴きました・・通りでどこにお邪魔しても、篤く歓迎して頂けたのだなと思っています・・」
シエナ・ミュラーがそう応じる・・。
「・・『ミーアス・クロス』と『リアン・ビッシュ』に確認してね・・?・・何を何曲・・どんな順番で歌うのかとか・・衣装はどうするのかとか・・?・・」
「・・はい・・既に確認しまして、内容はそのままエスター・アーヴ総務部長にメッセージで送信しました・・双方とも2曲ずつ・・デビュー曲と最新リリース曲を歌います・・『ミーアス・クロス』が先に歌います・・衣装も用意してくるとの事です・・」
「・・それで総務部長は・・?・・」
「・・感謝して頂きました・・伴奏の音源は実行委員会で用意して頂けるそうです・・」
と、ハル・ハートリーが淀み無く応えたので、私は感心した・・。
「・・流石は参謀・・速くて的確です・・」
「・・ありがとうございます・・どう致しまして・・」
「・・あの、アドルさん・・さっきはあんな事を言ってしまって済みませんでした・・」
と、カリーナ・ソリンスキーが眼の前に来て頭を下げる・・。
「・・ああ、良いよ・・もうとっくに見世物になっているからね・・無理難題を言われるよりは、徹底的に見世物になってやるさ・・副長・・全クルーのレクチャーとブリーフィング・・最初の撮影セットの見学は、明日中には終わるのかな・・?・・」
「・・はい、それは確実に終ります・・」
「・・了解・・じゃあ私と君の連名でゲーム大会の運営本部に向けて、『ディファイアント』医療部スタッフとバーラウンジスタッフの人事を早く決定して欲しいと送信して下さい・・司令部としても早く面談したいからと付け加えてね・・?・・」
「・・分かりました・・直ぐに送ります・・」
「・・ドリスさん・・見学は、あとどのくらいで終わりますか・・?・・」
「・・あと、40分程ですね・・」
「・・そうですか・・では引き続き、宜しくお願い致します・・」
「・・分かりました・・お任せ下さい・・アドルさん・・今迄お話を伺わせて頂いて、私も確信しました・・アドルさんは素晴らしい方で、最高の艦長にもなられます・・そして『ディファイアント』は確実に最後まで残るでしょう・・本当に、貴方の秘書になりたかったです・・」
「・・ありがとうございます・・ドリスさんに認められて・・私も一人前になれた想いです・・」
丁度そう応えた時に、休み時間終了のチャイムが響く・・皆は私達に会釈して、次の見学部所に向かう・・私も右手を挙げて皆を見送る・・。
「・・おい、スコット・・なかなか好い滑り出しで・・期待できそうだな・・?・・」
「・・どうですかね・・?・・先輩の手前・・上手くあしらったぐらいじゃないんですか・・?・・」
「・・お前、自分の事は悲観的だな・・?(笑)・・」
「・・そりゃそうですよ・・彼女、浮いた噂を聞かないですからね・・」
「・・そうかあ・・よし!・今日も追い込んで・・締め括るぞ!・・」
今日もパートタイムで特別業務サポートが、様々な時間帯で延べにして18人が入ってくれたので、私とリサさんが暫く業務に参加できなくても、充分に余裕を持って遅れを生じさせず、6時間分程度の先行進捗着地で定時終業で今日も終える事が出来た・・終業する10分程前に、ドリス・ワーナー女史に通話を繋いで彼女達がどうしたのか訊いたところ、あの後45分で見学を終えて一緒にお茶を飲んで暫時懇談してから、本社で用意したお土産を進呈してお帰り頂いた、との事だった・・。
まあ無事に済んだな、と言う事で、同僚たちと挨拶を交わしてオフィスフロアを後にする・・1階のカフェラウンジでコーヒーを飲みながら一服点けていると、スコット、リサさん、マーリー、ズライも来て一緒のテーブルに着く・・。
「・・ああ、皆お疲れさん・・悪いけど今日はちょっと疲れたからさ・・もうここから動きたくないんだけど、良いかな・・?・・」
「・・構いませんよ・・私達の為にいつも禁煙席に移動しなくても大丈夫です・・」
と、リサさんも少々お疲れモードかな・・?・・。
「・・珍しいね・・いつもは直帰なのに・・」
「・・私だって週に一回くらいは、ここで一息吐いてから帰りますよ・・」
「・・先輩、今日は本当にありがとうございました・・憧れのエドナ・ラティスさんに逢えて、ちゃんと挨拶出来て、手紙も渡せて、サインも貰えたなんてもう最高っス・・一生の思い出になりますよ・・」
「・・俺もお前の出逢いに協力出来て善かったよ・・正直、好い滑り出しだったと思うぜ・・でもちょっと堅かったけどな・・スコット・・あと2回は逢えるからな・・次はもっとリラックスしていつものお前らしさを出して、自然体で行けよ・・」
そう言って一本目の煙草を揉み消す・・。
「・・分かりました・・ありがとうございます・・」
そう言って、ちょうど来たウェイトレスにコーヒーを頼む・・。
「・・アドルさんがギターの弾き語りが上手だなんて、初めて知りましたよ・・どうしてスタッフの皆さんは知っていたんですか・・?・・」
そう訊くマーリー・マトリンは、ちょっとふくれっ面だ・・。
「・・ああ、それは・・この前ウチの社宅で2回目のスタッフ会議を開いてね・・その時の流れでちょっと歌う事になっちゃってさ・・久し振りに弾き語りで披露したって訳・・・」
「・・ズルいです・・私も聴きたかったです・・」
「・・明後日にはちゃんと聴かせるから、楽しみにしといてよ・・」
そう言って2本目を取り出す・・。
「・・呑み会で歌ったんですって・・?・・俺、知らなかったですけど・・」
「・・本社に着任して直ぐの・・営業本部の歓迎会で2曲、歌ったんだよ・・お前に初めて会ったのは、その直ぐ後だったからな・・」
そう言って火を点けてコーヒーのお替りを頼む・・。
「・・アドルさん・・ハーマン・パーカー常務の言っていた・・サプライズって何ですか・・?・・」
と、ズライ・エナオが少し声を落して訊いてくる・・私は一服喫って吐き・・一口水を飲んで皆に顔を寄せるように手招きした・・。
「・・これは、リサさんとマーリーは知っているんだけど・・他のフロアメンバーには、まだ誰にも言っていないんだ・・でも明後日には全社員が知る事になる・・懇談会が中継されてから、何か噂を聞いたか・・?・・」
そう言って、もう一服喫って吐く・・。
「・・いや・・サプライズについての話を小耳には挿みましたけど・・皆何の事か、判らないみたいですよ・・」
と、スコットがコーヒーを飲みつつ言う・・。
「・・そうか・・皆、今から言う話は、壮行会が終わるまで他の誰にも言わないでくれ・・頼むな・・(更に声を落す)・・我がクライトン商社は、営利法人としての資格と立場で、このゲーム大会に参加する・・明日の午前中には登録を済ませて、発表は明後日の壮行会の中で行われる・・目的は純粋に、我が社のPRの為だそうだ・・俺はこの話を最初に伝えられた時に、これだけは言って置いた・・もしも会社が今後、会社の中でも・・ゲームの中ででも・・俺や俺の指揮権や艦やクルーに対して、ほんの僅かにでも干渉してきたら・・干渉しようとして来たら、即座に辞表を提出して退職するってね・・」
そう言って、もう一服喫って吐き・・コーヒーを二口飲んだ・・。
スコットもズライも目を丸くして息を呑んでいる・・無理もない・・。
「・・艦種は・・?・・艦長は・・?・・」と、スコット・・。
「・・知らないし、知りたくもないし、興味も無いけど・・明後日には全部明らかになるだろうから、そこで確認するよ・・」
そう言って、もう一服喫って吐く・・。
「・・アドルさんに対する何かしらの意図が、隠されているとお考えですか・・?・・」
「・・それは確実にあるだろうね・・でもそれは直接的なものではなくて・・間接的なベクトル誘導の範疇だろうと思うよ・・例えば・・『ディファイアント』と会社として参加する艦の行動を、様々に対比させて視聴者に見せる事で・・イメージ、印象のベクトルをある程度、誘導・操作しようとする意図はあるのだろうと思うね・・でも俺は、例え誰に何をどう観られようと、何も気にしないし、何の影響も受けないよ・・」
「・・会社として出場する艦種が何で・・艦長が誰かによっても、先輩に対しての隠された意図は・・大分違ってくるんじゃないでしょうかね・・?・・」
「・・うん・・それはまあ俺も、そう思うね・・でもこれ以上考えても仕方ないよ・・」
そう言って、もう一服喫って吐き、灰皿で揉み消すと・・2杯目のコーヒーも飲み干した・・。
「・・それじゃ、俺はこれで帰るよ・・皆、明日もよろしくな・・ゆっくり休んでな・・お疲れさん・・」
席を立って右手を挙げて挨拶すると、踵を反す・・お疲れ様でしたの声を背中で聴きながら、カフェラウンジから外に出て駐車スペースに向かう・・。
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