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・・・『集結』・・・
・・屋上のふたり・・
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歌い終わっても、そのまま暫くは余韻に浸っていた・・再び拍手が沸き起こる・・パティ・シャノンとミーシャ・ハーレイが握手を求めて来る・・二人一緒に握手を交わすと、2人とも私にハグしてパティは私の右頬に・・ミーシャは左頬にキスをした・・。
シエナ・ミュラーとハンナ・ウエアーとエマ・ラトナーとエドナ・ラティスも来て、外から大きくハグしてくる・・4人ともまた泣いていた・・他にも涙ぐんでいる者が多い・・。
「・・さあ、もう遅いですし、片付けて帰りましょう・・」
そう言って立ち上がり、ギターを隅に立て掛けようとしたが・・
「・・片付けと掃除は私達でやりますから、もう少し弾いていて下さい・・」
と、ハル・ハートリーが私の肩を押さえて座らせる・・確かにダイニングとキッチンで、私が今入れる余地は無いようだし・・他のメンバーも私の周りで聴きたそうな顔をして、熱い視線を向けている・・。
私は両手の指と肩を廻して解してからギターを構え直し、適当に掻き鳴らしながら10年くらい前に配信されていた刑事ドラマとか、学園ドラマとかスタイリッシュな青春ドラマとかラブコメのアニメ作品などの、オープニングやエンディングのテーマを弾き語りで披露した・・4曲歌い終えると、リサさんがこちらを観ているのに気付いたのでギターをその場に立て掛けて立ち上がり、歩み寄る・・。
「・・報告書はできました・・?・・」
「・・はい、プリントも終わりました・・」
「・・ありがとう、じゃ、ちょっとこっちへ・・」
そう言って彼女を私の部屋へ促す。
「・・コピーは・・?・・」
「・・10部です・・」
「・・ありがとう、じゃあこの封筒に入れて・・1部はチーフに・・1部は常務に・・常務への手紙は・・?・・」
「・・これです・・」
「・・じゃ、手紙はこっちに入れてと・・コピーの残りはこの大きい封筒に入れてチーフに渡そう・・リサさん・・チーフにメッセージで、明日の朝は30分早く1階のラウンジで話しましょうと・・」
「・・分かりました・・」
「・・常務と総務部長へのメッセージでは、全乗員が壮行会に参加できますと・・ついてはその前に、壮行会実行委員会とメインスタッフとの面会を希望しますと・・常務には、可及的速やかなる面会を希望しますと送って下さい・・」
「・・分かりました・・」
「・・最重要金庫室使用の件については、私が直接常務に話します・・」
「・・はい・・」
「・・こんなところかな・・?・・今は・・・」
「・・そうですね・・」
「・・じゃあ、よろしくね・・」
「・・はい・・・」
「・・ああ、それとさ・・明日、お弁当を頼めるかな・・?・・屋上の休憩所で食べよう・・?・・」
「・・分かりました・・ありがとうございます・・嬉しいです・・」
「・・そろそろタクシーを呼んで下さい・・何台呼んでも良いから・・」
「・・分かりました・・」
そう言ってリビングに戻る・・片付けや掃除はもうあらかた終わっていて、手の空いている人はライトビールやワインや梅酒を呑んでいる・・。
「・・皆さん、大丈夫ですか・・?・・片付けから掃除までやってくれてありがとう・・今タクシーを呼びますから気を付けて帰って下さい・・明日、壮行会の実行委員長でもあるウチの常務に、全乗員が壮行会に参加できると伝えます・・そして、ついてはその前に、壮行会の実行委員会メンバーとこちらのメインスタッフメンバーとで面会したいと申し入れます・・今週は壮行会が終わるまで、バタバタしてかなり忙しくなると思いますが、体調に留意して事故の無いようにお願いします・・壮行会が終わった後は、制作発表会見と共同記者会見と艦長達へのインタビューと座談会以外で、私から皆さんに招集を掛ける事は控えます・・時間が空いたらマニュアルの読み込みと、私が提示した課題に取り組んで下さい・・」
「・・アドルさん・・今夜はここに泊っても良いですか・・?・・」
と、エドナ・ラティスが私の左手を両手で握って縋るように言ったのだが、これにはシエナ・ミュラーが即応した。
「・・バカな事を言うんじゃないわよ!!エドナ!・シャワーでも浴びて頭を冷やしなさい!・アドルさん、済みませんがシャワーをお借りします・・フィオナ!・カリッサ!・この娘をシャワーに連れて行って!・他の者はもう呑むのは止めて、早く片付けと掃除を終らせて帰る支度をして!・リサさん、タクシーは10台お願いします・・」
「・・分かりました・・」
ちょっと萎縮した雰囲気になりかかっていたので、またギターを取って座る・・掻き鳴らしながらリクエストを募ってみる・・3曲挙がったのでその順番で披露する・・楽器の演奏について訊いてみると、6人がピアノ・・4人がギター・・フルートが2人・・トランペット、テナーサックス、ユーフォニウム、アコーディオンがそれぞれ1人ずついた・・楽器の演奏ではないが合唱団に入っていたと言う人が5人いた・・アコーディオンについてはあまり知識が無かったので、暫く話をしていると社宅の前にタクシーが10台停車したとリサさんから知らされる・・。
「・・アドルさん・・先程は失礼な事を言ってしまって済みませんでした・・」
と、シャワーから戻ったエドナ・ラティスが言う・・。
「・・何も気にしていないから、君も気にしないで良いよ・・気を付けて帰ってね・・?・・」
「・・はい・・」
「・・さあ、皆帰るわよ!・アドルさん・・今日はありがとうございました・・ご迷惑をお掛けして済みません・・ご連絡をお待ちしています・・」
「・・こちらこそ、どうもありがとう・・何も気にしなくて良いですよ・・連絡は早目に入れます・・」
「・・分かりました・・宜しくお願いします・・」
「・・リサさん、明日は朝早いけど頼むね・・それとメッセージの方も宜しく・・」
「・・分かっています・・お休みなさい・・」
他のメンバーも口々に私に挨拶をして外に出て行く・・私も外に出て、ガレージからエマが車を出す時には誘導した・・全員がエマの車とタクシー10台に分乗する・・清算は私とリサさんとで折半して済ませた。
「・・それでは、アドルさん・・また逢える時まで・・」
ハンナ・ウェアーとリーア・ミスタンテとマレット・フェントンが直ぐ近くに立って言ったので、それぞれ握手を交わしてタクシーに乗り込ませる・・全員が乗車したのでドライバー達に合図して発車させた・・。
全車を見送って中に戻る・・屋内は本当に綺麗に片付けられていて掃除も行き届けられていた・・何処にも手を掛ける必要が無い・・私は座ったがギターに眼を留めると取り上げ、絃を外してケースに納めるとガレージに出て車に載せた・・ここに置いておいても弾く機会は多分ない・・もう一台買っても良いかな・・時間が空いたら楽器屋に行って観よう・・。
ベランダに出て一服点ける・・まだそれ程に晩い時間でもないが、明日は早いから早く寝んだ方が好い・・ベランダに出ている間に6人から携帯端末にメッセージが来た・・時間が空いたら逢いに来る旨を伝えている・・私は時間が空いたら少しでもマニュアルを読み込むようにと、少し強い口調で6人全員に返信した・・。
喫い終ったので中に戻り、歯を磨き、顔を洗って寝んだ・・。
翌日(2/8・月)始業前、45分・・1階のカフェラウンジに居るのは私を含めても数人だ・・。
コーヒーを半分まで飲んで、一本を喫い終る・・ちょっと早く来過ぎたかと思った時にリサ・ミルズが対面に座る。
「・・おはようございます・・早いですね・・」
「・・おはよう・・うん・・かなり早く出たよ・・何か飲む・・?・・」
「・・いえ、これで良いです・・」
そう言って自分の保温ボトルをテーブルの上に置く・・。
「・・お弁当は、作って来てくれた・・?・・」
「・・勿論、作って来ましたよ・・」
「・・ありがとう・・楽しみだよ・・屋上の休憩所って、施錠されているのかな・・?・・」
「・・多分施錠されていないと思いますが、確認しますね・・」
「・・ありがとう・・」
「・・どう致しまして・・それにしてもアドルさん・・歌もギターもお上手で、本当にビックリしましたよ・・」
「・・何年も弾いていなかったんだけれどもね・・憶えているもんだね・・」
その時にエリック・カンデルが、ピーチツリーソーダのグラスを持って入って来た・・リサさんが席を立とうとするのを右手を挙げて制して彼女の隣に座る・・。
「・・おはよう・・2人とも随分早いな・・俺もこんなに早く来るのは久し振りだよ・・それで・?・朝っぱらからどんな話があるのかな・・?・・」
「・・お早うございます・・取り敢えずこれを・・」
そう言って彼の眼の前に内ポケットから取り出した封筒を置く・・。
「・・何だい、これは・・?・・」と、そう言いながら開封して中のプリントを出す・・。
「・・報告書です・・」
「・・報告書・・?・・それだったら、メッセージで送ってくれれば良いのにさ・・」
「・・今回は内容がちょっと特殊なんで・・取り敢えず読んで下さい・・」
エリック・カンデルは分かったと言う風に右手を挙げると、読み始める・・読み終えた彼がプリントをテーブルに置いて、ソーダを二口飲むまで10分少々だった・・。
「・・なるほどな・・だから紙の報告書にしたのか・・うん・・なかなか面白いビジネスプランだな・・俺もこれは実現性の高いプランだと思うよ・・お前にも一肌脱いで貰えれば、結構早く実現するかも知れん・・よし、分かった!・早速常務に報告して、今朝の朝会に掛けて貰おう・・」
「・・そうですか!・ありがとうございます・・それではこちらが常務への1通と、役員の皆さん方への報告書です・・同じ内容ですが・・」
そう言って同じもう1通の封筒と、大きい封筒をチーフ・カンデルの眼の前に置く・・。
「・・おう、用意が好いな・・こいつを常務に渡して、先ずは読んで貰えば好い訳だな・・分かった・・説明は任せてくれ・・俺の感触だが、こいつは通るよ・・何故なら関わるほぼ全員がウインウインだからな・・それで・・他にはまだ何かあるのか・・?・・」
「・・実は常務への封筒にはもう1通の書簡が入っています・・それは、『ディファイアント』の艦長である私から役員会と壮行会実行委員会に対しての要請書です・・内容については、常務に訊いて下さい・・」
「・・分かった・・封筒は総て常務に直接手渡すよ・・他には何かあるか・・?・・」
「・・営業本部としての壮行会はあるんですか・・?・・」
「・・大規模にはやれないな・・呑み会で好いんならいつでもやれるがね・・?・・」
「・・分かりました・・決まったら、誘って下さい・・私からは以上です・・」
「・・そうか・・分かった・・お前・・大分、らしくなってきたな・・開幕してからのお前がどう変わっていくか、楽しみだよ・・それじゃあな・・」
そう言ってエリック・カンデルは席を立つと、グラスを左手で、3つの封筒を右手で持って出て行った・・右肩越しに彼を見送ってから顔をリサ・ミルズに向ける・・。
「・・らしくなってる・・?・・」
「・・らしくなってきていますね・・私としては複雑ですけれども・・」
「・・リサさんにとっては・・当選する前の僕の方が好いの・・?・・」
「・・好いですね・・私にとっては・・」
「・・そうですか・・じゃ、今日のブレンドを一杯・・頂けますかね・・?・・」
そう言って、飲み干したコーヒーカップを、彼女の眼の前に置く・・。
暫く彼女とハーブティーを飲みながら喋っていると、スコットとマーリーもズライも合流したので、5人で始業5分前まで喋ってから上に上がる・・。
業務は、量・質共に益々多重となっている・・人が足りなくなりつつあるのは明らかだ・・対処は職制に任せて現場は、やれる事を最大限にやっていくしかない・・10時の休み時間にコーヒー一杯と、煙草を一本喫っただけで午前中は余計な事を考えられるような余裕は無かった・・スコットとも仕事以外の話はしていない・・昼休みに入った事に、チャイムが鳴り終わってから気付くぐらいの体たらくだ・・レストルームに入って用を足し、顔を思い切り洗ってから紙コップのコーヒーを片手に屋上に上がる・・携帯端末はメッセージを受信していたが、昼休みが終る前に観れば良いだろう・・。
屋上の休憩所は屋上の中心にある・・リフトから出ると、彼女はランチバッグを持ってドアの前で待っていた・・。
「・・施錠はされていませんでした・・入りましょう・・」
ここが使われる事は滅多に無い・・だからここにはカメラも無いし、施錠もされないのだろう・・ドアを開けて入ると、4人掛けのテーブルが3つあるだけだった・・。
真ん中のテーブルに対面で座る・・ランチバッグをテーブルの脇に置いて、彼女は僕の顔を真っ直ぐに観る・・。
「・・今日は朝から目一杯廻していて忙しかったね・・ご苦労さん・・この調子だと残業の要請が出るかな・・?・・」
「・・アドルさん・・今週は金曜日が終わるまで、社の内外でバタバタするでしょうし、人の出入りも激しいでしょうから・・私達が2人で逢うのは止めましょう・・アドルさんも、それを言う積りでここに誘ったんじゃありませんか・・?・・」
シエナ・ミュラーとハンナ・ウエアーとエマ・ラトナーとエドナ・ラティスも来て、外から大きくハグしてくる・・4人ともまた泣いていた・・他にも涙ぐんでいる者が多い・・。
「・・さあ、もう遅いですし、片付けて帰りましょう・・」
そう言って立ち上がり、ギターを隅に立て掛けようとしたが・・
「・・片付けと掃除は私達でやりますから、もう少し弾いていて下さい・・」
と、ハル・ハートリーが私の肩を押さえて座らせる・・確かにダイニングとキッチンで、私が今入れる余地は無いようだし・・他のメンバーも私の周りで聴きたそうな顔をして、熱い視線を向けている・・。
私は両手の指と肩を廻して解してからギターを構え直し、適当に掻き鳴らしながら10年くらい前に配信されていた刑事ドラマとか、学園ドラマとかスタイリッシュな青春ドラマとかラブコメのアニメ作品などの、オープニングやエンディングのテーマを弾き語りで披露した・・4曲歌い終えると、リサさんがこちらを観ているのに気付いたのでギターをその場に立て掛けて立ち上がり、歩み寄る・・。
「・・報告書はできました・・?・・」
「・・はい、プリントも終わりました・・」
「・・ありがとう、じゃ、ちょっとこっちへ・・」
そう言って彼女を私の部屋へ促す。
「・・コピーは・・?・・」
「・・10部です・・」
「・・ありがとう、じゃあこの封筒に入れて・・1部はチーフに・・1部は常務に・・常務への手紙は・・?・・」
「・・これです・・」
「・・じゃ、手紙はこっちに入れてと・・コピーの残りはこの大きい封筒に入れてチーフに渡そう・・リサさん・・チーフにメッセージで、明日の朝は30分早く1階のラウンジで話しましょうと・・」
「・・分かりました・・」
「・・常務と総務部長へのメッセージでは、全乗員が壮行会に参加できますと・・ついてはその前に、壮行会実行委員会とメインスタッフとの面会を希望しますと・・常務には、可及的速やかなる面会を希望しますと送って下さい・・」
「・・分かりました・・」
「・・最重要金庫室使用の件については、私が直接常務に話します・・」
「・・はい・・」
「・・こんなところかな・・?・・今は・・・」
「・・そうですね・・」
「・・じゃあ、よろしくね・・」
「・・はい・・・」
「・・ああ、それとさ・・明日、お弁当を頼めるかな・・?・・屋上の休憩所で食べよう・・?・・」
「・・分かりました・・ありがとうございます・・嬉しいです・・」
「・・そろそろタクシーを呼んで下さい・・何台呼んでも良いから・・」
「・・分かりました・・」
そう言ってリビングに戻る・・片付けや掃除はもうあらかた終わっていて、手の空いている人はライトビールやワインや梅酒を呑んでいる・・。
「・・皆さん、大丈夫ですか・・?・・片付けから掃除までやってくれてありがとう・・今タクシーを呼びますから気を付けて帰って下さい・・明日、壮行会の実行委員長でもあるウチの常務に、全乗員が壮行会に参加できると伝えます・・そして、ついてはその前に、壮行会の実行委員会メンバーとこちらのメインスタッフメンバーとで面会したいと申し入れます・・今週は壮行会が終わるまで、バタバタしてかなり忙しくなると思いますが、体調に留意して事故の無いようにお願いします・・壮行会が終わった後は、制作発表会見と共同記者会見と艦長達へのインタビューと座談会以外で、私から皆さんに招集を掛ける事は控えます・・時間が空いたらマニュアルの読み込みと、私が提示した課題に取り組んで下さい・・」
「・・アドルさん・・今夜はここに泊っても良いですか・・?・・」
と、エドナ・ラティスが私の左手を両手で握って縋るように言ったのだが、これにはシエナ・ミュラーが即応した。
「・・バカな事を言うんじゃないわよ!!エドナ!・シャワーでも浴びて頭を冷やしなさい!・アドルさん、済みませんがシャワーをお借りします・・フィオナ!・カリッサ!・この娘をシャワーに連れて行って!・他の者はもう呑むのは止めて、早く片付けと掃除を終らせて帰る支度をして!・リサさん、タクシーは10台お願いします・・」
「・・分かりました・・」
ちょっと萎縮した雰囲気になりかかっていたので、またギターを取って座る・・掻き鳴らしながらリクエストを募ってみる・・3曲挙がったのでその順番で披露する・・楽器の演奏について訊いてみると、6人がピアノ・・4人がギター・・フルートが2人・・トランペット、テナーサックス、ユーフォニウム、アコーディオンがそれぞれ1人ずついた・・楽器の演奏ではないが合唱団に入っていたと言う人が5人いた・・アコーディオンについてはあまり知識が無かったので、暫く話をしていると社宅の前にタクシーが10台停車したとリサさんから知らされる・・。
「・・アドルさん・・先程は失礼な事を言ってしまって済みませんでした・・」
と、シャワーから戻ったエドナ・ラティスが言う・・。
「・・何も気にしていないから、君も気にしないで良いよ・・気を付けて帰ってね・・?・・」
「・・はい・・」
「・・さあ、皆帰るわよ!・アドルさん・・今日はありがとうございました・・ご迷惑をお掛けして済みません・・ご連絡をお待ちしています・・」
「・・こちらこそ、どうもありがとう・・何も気にしなくて良いですよ・・連絡は早目に入れます・・」
「・・分かりました・・宜しくお願いします・・」
「・・リサさん、明日は朝早いけど頼むね・・それとメッセージの方も宜しく・・」
「・・分かっています・・お休みなさい・・」
他のメンバーも口々に私に挨拶をして外に出て行く・・私も外に出て、ガレージからエマが車を出す時には誘導した・・全員がエマの車とタクシー10台に分乗する・・清算は私とリサさんとで折半して済ませた。
「・・それでは、アドルさん・・また逢える時まで・・」
ハンナ・ウェアーとリーア・ミスタンテとマレット・フェントンが直ぐ近くに立って言ったので、それぞれ握手を交わしてタクシーに乗り込ませる・・全員が乗車したのでドライバー達に合図して発車させた・・。
全車を見送って中に戻る・・屋内は本当に綺麗に片付けられていて掃除も行き届けられていた・・何処にも手を掛ける必要が無い・・私は座ったがギターに眼を留めると取り上げ、絃を外してケースに納めるとガレージに出て車に載せた・・ここに置いておいても弾く機会は多分ない・・もう一台買っても良いかな・・時間が空いたら楽器屋に行って観よう・・。
ベランダに出て一服点ける・・まだそれ程に晩い時間でもないが、明日は早いから早く寝んだ方が好い・・ベランダに出ている間に6人から携帯端末にメッセージが来た・・時間が空いたら逢いに来る旨を伝えている・・私は時間が空いたら少しでもマニュアルを読み込むようにと、少し強い口調で6人全員に返信した・・。
喫い終ったので中に戻り、歯を磨き、顔を洗って寝んだ・・。
翌日(2/8・月)始業前、45分・・1階のカフェラウンジに居るのは私を含めても数人だ・・。
コーヒーを半分まで飲んで、一本を喫い終る・・ちょっと早く来過ぎたかと思った時にリサ・ミルズが対面に座る。
「・・おはようございます・・早いですね・・」
「・・おはよう・・うん・・かなり早く出たよ・・何か飲む・・?・・」
「・・いえ、これで良いです・・」
そう言って自分の保温ボトルをテーブルの上に置く・・。
「・・お弁当は、作って来てくれた・・?・・」
「・・勿論、作って来ましたよ・・」
「・・ありがとう・・楽しみだよ・・屋上の休憩所って、施錠されているのかな・・?・・」
「・・多分施錠されていないと思いますが、確認しますね・・」
「・・ありがとう・・」
「・・どう致しまして・・それにしてもアドルさん・・歌もギターもお上手で、本当にビックリしましたよ・・」
「・・何年も弾いていなかったんだけれどもね・・憶えているもんだね・・」
その時にエリック・カンデルが、ピーチツリーソーダのグラスを持って入って来た・・リサさんが席を立とうとするのを右手を挙げて制して彼女の隣に座る・・。
「・・おはよう・・2人とも随分早いな・・俺もこんなに早く来るのは久し振りだよ・・それで・?・朝っぱらからどんな話があるのかな・・?・・」
「・・お早うございます・・取り敢えずこれを・・」
そう言って彼の眼の前に内ポケットから取り出した封筒を置く・・。
「・・何だい、これは・・?・・」と、そう言いながら開封して中のプリントを出す・・。
「・・報告書です・・」
「・・報告書・・?・・それだったら、メッセージで送ってくれれば良いのにさ・・」
「・・今回は内容がちょっと特殊なんで・・取り敢えず読んで下さい・・」
エリック・カンデルは分かったと言う風に右手を挙げると、読み始める・・読み終えた彼がプリントをテーブルに置いて、ソーダを二口飲むまで10分少々だった・・。
「・・なるほどな・・だから紙の報告書にしたのか・・うん・・なかなか面白いビジネスプランだな・・俺もこれは実現性の高いプランだと思うよ・・お前にも一肌脱いで貰えれば、結構早く実現するかも知れん・・よし、分かった!・早速常務に報告して、今朝の朝会に掛けて貰おう・・」
「・・そうですか!・ありがとうございます・・それではこちらが常務への1通と、役員の皆さん方への報告書です・・同じ内容ですが・・」
そう言って同じもう1通の封筒と、大きい封筒をチーフ・カンデルの眼の前に置く・・。
「・・おう、用意が好いな・・こいつを常務に渡して、先ずは読んで貰えば好い訳だな・・分かった・・説明は任せてくれ・・俺の感触だが、こいつは通るよ・・何故なら関わるほぼ全員がウインウインだからな・・それで・・他にはまだ何かあるのか・・?・・」
「・・実は常務への封筒にはもう1通の書簡が入っています・・それは、『ディファイアント』の艦長である私から役員会と壮行会実行委員会に対しての要請書です・・内容については、常務に訊いて下さい・・」
「・・分かった・・封筒は総て常務に直接手渡すよ・・他には何かあるか・・?・・」
「・・営業本部としての壮行会はあるんですか・・?・・」
「・・大規模にはやれないな・・呑み会で好いんならいつでもやれるがね・・?・・」
「・・分かりました・・決まったら、誘って下さい・・私からは以上です・・」
「・・そうか・・分かった・・お前・・大分、らしくなってきたな・・開幕してからのお前がどう変わっていくか、楽しみだよ・・それじゃあな・・」
そう言ってエリック・カンデルは席を立つと、グラスを左手で、3つの封筒を右手で持って出て行った・・右肩越しに彼を見送ってから顔をリサ・ミルズに向ける・・。
「・・らしくなってる・・?・・」
「・・らしくなってきていますね・・私としては複雑ですけれども・・」
「・・リサさんにとっては・・当選する前の僕の方が好いの・・?・・」
「・・好いですね・・私にとっては・・」
「・・そうですか・・じゃ、今日のブレンドを一杯・・頂けますかね・・?・・」
そう言って、飲み干したコーヒーカップを、彼女の眼の前に置く・・。
暫く彼女とハーブティーを飲みながら喋っていると、スコットとマーリーもズライも合流したので、5人で始業5分前まで喋ってから上に上がる・・。
業務は、量・質共に益々多重となっている・・人が足りなくなりつつあるのは明らかだ・・対処は職制に任せて現場は、やれる事を最大限にやっていくしかない・・10時の休み時間にコーヒー一杯と、煙草を一本喫っただけで午前中は余計な事を考えられるような余裕は無かった・・スコットとも仕事以外の話はしていない・・昼休みに入った事に、チャイムが鳴り終わってから気付くぐらいの体たらくだ・・レストルームに入って用を足し、顔を思い切り洗ってから紙コップのコーヒーを片手に屋上に上がる・・携帯端末はメッセージを受信していたが、昼休みが終る前に観れば良いだろう・・。
屋上の休憩所は屋上の中心にある・・リフトから出ると、彼女はランチバッグを持ってドアの前で待っていた・・。
「・・施錠はされていませんでした・・入りましょう・・」
ここが使われる事は滅多に無い・・だからここにはカメラも無いし、施錠もされないのだろう・・ドアを開けて入ると、4人掛けのテーブルが3つあるだけだった・・。
真ん中のテーブルに対面で座る・・ランチバッグをテーブルの脇に置いて、彼女は僕の顔を真っ直ぐに観る・・。
「・・今日は朝から目一杯廻していて忙しかったね・・ご苦労さん・・この調子だと残業の要請が出るかな・・?・・」
「・・アドルさん・・今週は金曜日が終わるまで、社の内外でバタバタするでしょうし、人の出入りも激しいでしょうから・・私達が2人で逢うのは止めましょう・・アドルさんも、それを言う積りでここに誘ったんじゃありませんか・・?・・」
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KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

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