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・・・『集結』・・・

社宅食事会議 3

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「・・皆さん・・今言った常務と言うのは、弊社取締役員でもあるハーマン・パーカー常務です・・その人が私と弊社取締役員会とを結ぶパイプであり、激励壮行会の実行委員長でもあります・・その彼に、本社屋最上階にある最重要金庫室の使用を願い出ます・・目的は、私達全員が運営本部から貸与された3つのアイテムを保管して貰う為です・・皆さんの保管方法とその意識を信頼しない訳ではありませんが、ゲームが進んで『ディファイアント』が勝ち残れば残る程、私達1人1人への注目度が高くなります・・そうなると、アイテムを盗むか隠すか壊すなどして『ディファイアント』の出航に支障を来してやろうと、良からぬ事を考える者が出て来る可能性が高まります・・それを防止する為の措置対策案として、私が常務に提案します・・今ひとつは、全乗員が壮行会に参加出来ると言う事になりましたので・・その事を常務と、実際に壮行会の準備を進めている弊社総務部長に伝えた上で・・こちらのメインスタッフ全員との面会を申し入れます・・取り敢えず、今考えているのはそのくらいですね・・」

ふと観ると、皆食べないで話を聴いていたので、慌てて言い添える・・

「・・ああ、皆さん食べて下さい、食べて下さい・・話をするのも聴くのも食べながらで良いですから、どんどん食べて下さい・・」

そう言ってどっかりと座る・・。

「・・アドルさん・・車の件ですけれども、2台の出物が見付かりましたので、資料をメッセージで送りました・・」

エマさんが私に皿とトングを渡してくれながら言う・・。

「・・エマさん、ありがとう・・後で見ます・・食べて下さい・・」

「・・アドルさん、車を購入されるんですか・・?・・」

と、カリーナ・ソリンスキーが訊く・・。

「・・うん・・エマさんが、1台安く見繕ってくれるって言ってくれたんでね・・」

「・・それが良いですね・・もうアドルさんの車は特定されていますから、プライベート用の車が必要ですよ・・」

と、フィオナ・コアーが言う・・。

「・・ねえ、エマ・・派手な車を選んだんじゃないんでしょうね・・?・・」

と、ミーシャ・ハーレイが訝る・・。

「・・それは勿論、教えて貰ったアドルさんの収入にも鑑みて・・アドルさんにお似合いの出物の中から選んだわよ・・」

と、エマ・ラトナーがそんな事する訳ないでしょ、と言わんばかりに応える・・。

「・・アドルさん・・19人の艦長の中で、気になる人はいますか・・?・・」

エドナ・ラティスが自分の料理の皿と飲み物を持って私の左隣に移動し、座って訊いて来る・・その行動が皆の注目を集めたが、本人は意に介していないようだ・・。

「・・そう・・先ずハイラム・サングスター艦長だね・・あの抜群の存在感とカリスマ性・・批の打ち所の無い指揮統率能力・・あの人が艦長なら最初は凡庸なスタッフでも、2週間で水準以上になるだろう・・時間を置く程に戦い難くなる・・もしも艦隊を組むなら、あの人が艦隊司令で僕は大賛成だ・・」

そう言って自分で焼いた肉と温野菜サラダを頬張る・・ミーシャ・ハーレイがテーブルの対面に座って私のグラスにライトビールを注ぐ・・この行動も注目を集めた・・。

「・・他にはいますか・・?・・」

「・・うん・・今日、ヤンセン・パネッティーヤ艦長に会ったんだよ・・見た目ではライトマッチョなナンパ師だけど、話せば奥は深い・・彼も油断出来ないね・・後は配信ニュースで観た限りでだけど、ザンダー・パスクァール艦長・・アーロン・フォスター艦長は、気になるタイプだね・・」

パティ・シャノンも私の右隣に座って皆の注目を集める・・。

「・・女性艦長の中では、いますか・・?・・」

「・・これも配信ニュースを観た限りでの印象なんだけど・・エイミー・カールソン艦長・・アシュリー・アードランド艦長・・エスター・セーラ・ヴェレス艦長・・この3人も色々な側面で、強さを感じさせる印象だね・・ああ、それはそうと、ユニフォームの画像は皆さん観ましたか・・?・・」

そう訊いてみると皆手を挙げて、口々に観ましたと声を挙げる・・。

「・・ああ、はい・・まあ、デザインは基本的にもう決定と言う事ですので、感じる所はあると思いますが、それは胸に収めて貰って、宜しくお願いします・・サイズは5種類あると言う事ですので、対応はお願いします・・非番の時には私服でも過ごせますので、沢山持ち込んで貰っても大丈夫ですよ・・」

そこで言葉を切った私は口を拭って水を飲み、ハンナ・ウェアーに顔を向ける。

「・・ハンナさん・・艦長達へのインタビューと対談の配信番組は、録画して彼等の心理動向とその特性を分析する為の資料として下さい・・ある程度の分析が出来たら、報告して下さい・・」

「・・分かりました・・」

ライトビールを一口飲んで一息吐く・・。

「・・ウチのアリシアがね・・あの時、野次馬の中に居た学校の友達と一緒に『ディファイアント』の親衛隊をハイスクール限定で結成して・・多分友達に担がれたんだろうけど、隊長に就任したんだよ・・それで、どんな活動するのか訊いたら・・番組は全員が必ず視聴して、翌日には集まって感想を出し合い、親衛隊としての見解をまとめて、フォロワーに向けて配信するんだってさ・・」

「・・お嬢さん・・まだハイスクールの1年生なのに、スゴイですね・・」

と、リーア・ミスタンテが感心したように言う・・。

「・・お嬢さんが1年生なのにスゴイのは、アドルさんと奥様が素晴らしいからよ・・」

と、シエナ・ミュラーがリーア・ミスタンテに言う・・。

「・・ありがとう、シエナさん・・ああ、アリシアさん・・娘が貴女と話が出来て、良かったと言ってましたよ・・良ければこれからも・・可愛がってやって下さい・・」

「・・ありがとうございます・・私もお友達になれて、嬉しいです・・」

その後は、ご近所さん廻りが直ぐに報道されたことや、訪問先や野次馬達への女優さん方の対応に感銘を受けた事などを話しながら食べる・・ハンナさんが言うには、あれだけの人数が居たからどんな対応も直ぐにスムーズに出来たのだ、との事だ・・マレット・フェントンからは会社の業務について訊かれたので、私を指名してでの発注・新規業務依頼・新規顧客が増え続けていて、サポートメンバーも増やし続けていると話し、まだ噂だけど課長に昇格する話も聴こえていると言うと、ナレン・シャンカーが絶対に昇格しますよと請け合ってくれた・・。

その後は、お互いの近況報告などが食べながら飲みながら続いていたが、ふと思い付いて歌手活動もされている人は?と皆に訊くと、25人中18人が手を挙げた。

「・・随分多いんですね・・やはり演じる事と歌う事は、表現手法としても似通っているんでしょうね・・分かりました・・これからは皆さんの歌も聴くようにします・・」

「・・開幕して少し落ち着いたら、皆のアルバムソフトを取りまとめて進呈しますよ・・」

副長が笑顔でそう言い、ビールを注いでくれる・・。

「・・これはまだ正式には発表されてないんですけれども、『ミーアス・クロス』と『リアン・ビッシュ』が初めて特別にグループを合同して、初めて発表される楽曲が『マイン・キャプテン』と言うタイトルで・・アドルさんの事を歌っているんだそうです・・私・・彼女達とは親友で・・特別に内緒で、教えて貰いました・・」

ハンナ・ハーパーがそう打ち明けると、また驚きの環が拡がる・・。

「・・その歌の歌詞は・・私を連想させるようなものなのかな・・?・・」

「・・勿論、固有名詞は入っていないようですが・・私もまだ聴いてないので、はっきりとは判りません・・」

「・・それなら、こちらが今から心配しても仕方ないね・・明日にでも私から連絡してみます・・」

それから暫くすると沢山作った料理もほぼ無くなり、私は手伝って貰って皆にバニラジェラートと、ワンショットの梅酒を供した・・。

「・・皆、沢山食べてくれて、どうもありがとう・・それではこれより、食後のものを頂きながら、ミーティングに入りましょう・・」

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