『星屑の狭間で』

トーマス・ライカー

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・・・『集結』・・・

変装潜入実験と社宅食事会議・・

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リサさんをハンナさんに託して送って貰うことにした私は、彼女達と別れると自分のエレカーに戻り、自宅を出る時に持ち出して積み込んだケースを開ける。

中に入っているのは私が変装する必要に迫られた場合に備え、使えそうな物として予め集めておいたものだ。

ケースの中をざっと観て一つ頷いた私は、ケースを閉めると携帯端末を取り出し、エマ・ラトナーに通話を繋いだ。

「・あっ、アドルさん!・どうしたんですか・?!・」

「・・ああ、エマさん、今は大丈夫ですか・?・」

「・大丈夫ですよ・・」

「・・あの・・私に車を一台、見繕ってくれると言う話は、まだ生きていますか・・?・・」

「・勿論生きていますよ!・あれから方々の車関係の伝手に、アドルさんに似合いそうな出物があったら、教えて貰えるように頼んでいるんです・・あっ、勿論アドルさんの名前は出していませんよ・・暫く状況を確認していないので、これから連絡して状況を訊いてみますね・・」

「・・宜しくお願いします・・私の年収データを送りますから、なるべく安い価格帯でお願いしますね・・」

「・・大丈夫ですよ・・アドルさんに似合う車を選びますから・・それじゃ、また連絡しますね!・・」

通話を切られた私は、ハンナ・ウェアーに通話を繋ぐ・・。

「・・はい、どうしました・?・アドルさん・?・」

「・・隣にリサさん、いるよね・・?・・」

「・・はい、いますよ・・」

「・・今夜の夕食、リサさんも誘って・?・夕食会じやなくて、スタッフ全員を集めての、食事会とミーティングを行います・・」

「・・!分かりました・!・連絡はどうしましょう・?・」

「・・私から副長と参謀に通話を繋ぎますから、あとは3人で手分けして全スタッフに連絡して下さい・・予定があるなら、それを優先するように・・タクシーを何台使っても良いから、集まって下さい・・食材やお惣菜を買って来てくれても良いですよ・・掛かった経費は私とリサさんとで精算します・・通話を終えたら私は、変装してマーケットに潜入出来るかどうか、実験してみます・・」

「・・!・はい?!・何ですか?!・アッハハハ・・変装して・ハッハハ・マーケットに・・アハハハ・・入るんですか?!・・アドルさん・・運転中に笑わせないで下さいよ!・アッハハ・・面白すぎます・・どこのマーケットですか・?!・見に行きます!・・」

「・・ハンナさん!・あなたが来たらバレちゃうでしょ?!・取り敢えず切りますから、連絡を始めてください・・お願いしますね・?!・」

通話を切り上げた私はシエナ・ミュラーとハル・ハートリーにも通話を繋ぎ、急な思い付きで悪いとは思うが今夜、私の社宅に来て欲しいと伝えた・・食事がてら初出航後の訓練計画についても詰めたいからと言う・・。

2人とも快諾してくれたのでハンナさんとも連絡を取り合って、3人で手分けして全スタッフへの連絡を頼む・・これについても了承を貰えたので、通話を終えた・・。

再び件のケースを開くとドーランを取り出して顔に塗って延ばし、馴染ませてもっと色黒に見せる・・コンパクトミラーを取り出して塗り残しや色むらが無いか確認する・・部分的なメンズウィッグを見繕って装着する・・自然に観える付け髭を装着する・・全体的にブラッシングして自然に観えるように整え、サングラスをかける・・幾分怪しく観えるかな?とも思うが、最初の実験だから良いだろう・・。

もう一度コンパクトミラーで全体を確認すると携帯端末を取り出してセルフィーを数枚撮影し、(これより最初の変装潜入実験を敢行する。対象はフードマーケットである)とのコメントを付けて、リサ・ミルズを含むメインスタッフ全員に送信した。

車を降りてマーケットに入る・・カートを押しながら食材を選び始める・・誰も私に気付いた様子はない・・どうやら成功のようだ・・全スタッフが私の社宅に集まるのだから、食材も多めに買わなければならないが・・夕食の献立をあまりかさばらない食材を使っての内容として考えながら、食材を選んでいく・・携帯端末が立て続けにメッセージの着信音を鳴らす・・リサ・ミルズ、ハンナ・ウェアー、シエナ・ミュラー、エドナ・ラティス、アリシア・シャニーン、エマ・ラトナー、リーア・ミスタンテ、パティ・シャノン、カリーナ・ソリンスキーからは爆笑のコメントが寄せられたが・・ハル・ハートリー、マレット・フェントン、フィオナ・コアー、ミーシャ・ハーレイは私の行動を危惧して、心身の調子を心配するコメントを寄せてくれる・・。

食材を選びながら私の様子を心配するコメントを寄せてくれたスタッフメンバーに対して、自分は至って健康で正常で全く問題の無い事を伝えて、感謝するコメントを返信した・・。

そして爆笑のコメントを寄せたメンバーへは、今度は君も少し変装して若い夫婦の装いで出掛けてみようと提案した。

卵と人参と牛挽肉と牛筋肉と玉葱とキノコ類とほうれん草は、少し多めに買おう・・スープはすぐに出来るとして、温野菜のサラダは奮発しようか・・ブロッコリーとカリフラワーも多めに買おう・・デザート用のフルーツとアイスクリーム・・生ハムと脂の乗った大きい雌の鮭・・そして食後酒にはビンテージ物の梅酒を入れた・・。

私の変装にはまだ誰も気付かない・・ちょっと凝視する人が3人ほどいたが、気付かれてはいない・・成功と言う事で良いだろう・・誰かと一緒に若い夫婦を装えば、怪しむ人はいないだろう・・成功だな・・。

食材を選び終わって会計を済ませ、買物袋に入れて車に積み込もうとしている時に、ハンナ・ウエアー、シエナ・ミュラー、ハル・ハートリーからほぼ同時にビデオ通話の接続要請が来たので、積み込みを終えて運転席に座ってから3人と接続してマルチビデオ通話を繋げる・・。

端末のモニターに映ったのはリサさんを含めると4人だったのだが、笑わなかったのはハルさんだけで他の3人には最初から結構笑われる・・先ず私はハルさんに、笑わないでくれた事を感謝した・・。

ハンナさんが笑いながらもどうだったか訊いてきたので、大成功だったと言うと本当ですか?と怪しんだので、今度は君も一緒に行こうと言うと、微妙な表情になる・・。

ともあれ、全スタッフへの連絡・周知は済んだとの報告は受ける・・優先したい事項があるなら、それを終えて来るように・・全員がタクシーで来ても良い・・食材やお惣菜を購入や準備は、自由で良い・・経費は総て私とリサさんで清算すると改めて伝え、私はこれから社宅へと帰って夕食の準備に入ると伝えながら変装を解除していく・・。

「・・それでは、後程にお伺いします・・」

シエナ・ミュラーとハル・ハートリーが同じ言葉を違うタイミングで応えて通話から離脱し、ハンナ・ウェアーは・・確かこの時が最初だったと記憶しているが、「・・this is the way・・」と言って通話を終えた・・。

変装を解除した私はエレカーをスタートさせて社宅に帰着すると買い込んだ食材と、自宅で妻と娘から託されたスープストックを電動台車で運び込み、取り敢えず全部冷蔵庫に入れてからベランダに出て一服点ける・・。

喫い終ってからも暫く佇んでから、しっかりと着換えを準備してバスルームに入る・・まだ黄昏時に入ったばかりの頃合いだ・・。

総てを綺麗に洗い落し、充分に温まってから出る・・湯冷めしないように下着は充実させ、上着は軽めだがフィットした厚手のものを着る・・。

エプロンを着けて夕食の準備に入る・・今夜は初めて皆が来るから、色々と作ってもてなしてやろう・・。



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