5 / 5
魔法使いなんて、要らないよ!
……出陣……
しおりを挟む
翌日は日が昇る三刻前に起きた。
寝床を畳み、片付けて外に出る。
井戸端で水を浴びて、身支度を整える。
得物も身に着けてから旅籠の厨房に顔を出す。
既に昨日から、現地にて泊まり込んで貰っている人足の皆さんがいる。
その方々の為の弁当を、予め頼んでいたのだ。
ジングとデラティフも呼び、出来上がっている弁当を総て受け取る。
60食の弁当を3人で分けて、それぞれ20食ずつ愛馬に積む。
途中で落とさないように縛り付けて固定し、顔を観合わせて頷き合うと、人足の皆さんが泊まり込んでいる3箇所の現場に向けて、急いで駆ける。
ナヴィドとサミールとクヴァンツは、乗合馬車の御者3人と、ふたつの隊商を率いる2人の隊商長の5人と合流して、最後の打合せをしながら最後の準備を進めて終わらせた。
今回の作戦は乗合馬車3台とふたつの隊商キャラバンを護衛して行くと言う形を採るが、目的は魔物・魔族の殱滅にあるので、乗合馬車も隊商キャラバンも中身無しのハリボテであり、代わりに罠が満載されている。
日の出後三刻での出発と決まる。
城市『アガラ』の東門から、俺達はまとまって出た……取り敢えず行く先は隣の城市『バルガ』だ。
60歩毎に空を見上げる……まだ魔鳥は飛んでいない。
ゆっくりと隊列を長く採って行くが、15歩以上には離れない。
隊列の先頭に馬を進める……間道に入れる最初の折れ口が観える……観上げると、飛んでいる魔鳥は2羽……ここで折れる予定は無い……左手で『前進』と合図して通り過ぎ、まだ歩いて行く……少しずつ…邪な感覚が強くなる……間道に入れる次の折れ口を見晴かす……観上げれば、魔鳥が5羽……予定通りだ。
右手で軽く空を指差す……俺も含めて5人が弓に矢を栂え、一瞬で魔鳥を射落とす。
「…ハア! 」
駆け出して左に折れる……全員が続く……6.7匹の魔物が繁みに潜んでいる気配だったが、そのままに出し抜いて走る。
ここから先は、魔鳥を観たなら直ぐに射抜く……ほんの少し速度を緩める。
「……躱した奴ら……追って来てるか? 」
「……分からん……追って来るにしても、おっとり刀だろう? 聴こえないから、かなり遠い筈だ……鳥は見付け次第射抜いてるから…まだ俺達の事は知られてないだろう? 」
直ぐ後ろに着けている、ジングが応える。
「…奴らの中には、小さくて脚の速いのもいる筈だ……探ってくれよ? 」
「…ああ、分かってる……」
もう少し脚を緩める……気付いてくれないと、この作戦は成り立たない。
間道の両側から、軽いが速い足音が聴こえる。
「……ジング? 」
「……ああ…ケスラックだな……間違いない……」
「……クヴァンツ……臭うか? 」
「……ああ……40匹ぐらいの塊で……臭いが流れてるな……大体……好い頃合い……かな? 」
「……ああ……もう少しだな……」
心拍を800程数えてから……右手を横に出し、肘を曲げて掌をパッと拡げる。
すかさず俺とジングで繁みに隠れながら両側を走るケスラックを射抜き、残りの6人が飛んでいる魔鳥を総て射落とす。
「…ハァ! 」
愛馬シエナを叱咤して駆け出す! ここで奴らに対し機先を制して先手を執る!
全隊の速度を最高にまで引き上げて、脈拍にして1200を数えてから、左手を前に突き出し…右手を反して後ろを指し示す所作を執る。
囮の乗り合い馬車と商隊を前に進ませて、俺達はその後ろに着く。
それから3呼吸で右の繁みを突き破り、魔物が50匹程間道に飛び出した。
俺達との間は、凡そ30ミルト…好い按配だ……左手の指を1回鳴らす……8人全員でそれぞれ3本の火箭を取り出し、火種から火を移しつつ手前の魔物から胸を狙って射ち込む……魔物共が狼狽えて後退る。
直ぐに左手を横に突き出して合図する……ちょうど街道へと出られる折れ口に差し掛かっていたので、ナヴィド…サミール…クヴァンツ…エフロンの4人と囮の商隊は、そのまま曲がって街道へと出て行った。
更に左手の指を2回鳴らす……残った4人でまた通常の矢を3本ずつ、矢継ぎ早に射ち込んで奴らの数を減らすと、囃し立てるように叫び声を挙げ、魔物共に後を追わせて走り出す。
囮の隊商が曲がって行く直前で魔鳥も射落としたから、まだ出て来ない魔族共に隊商の行方は判らないだろう。
魔物共は、更に囮となった俺達を追い掛けながら、その数をまた増やした……今は60匹くらいで追い掛けて来る……まあ、こんなものだろう……俺達4騎は囮の隊商が街道に出て行く直前に、幌馬車から降りた4人の人足を愛馬の後ろに乗せて走る……彼らは俺達と自分を縄紐で括り併せて後ろ向きに座り、サチュレーダーで石礫を間断なく追い掛けて来る魔物共に喰らわせ続ける……魔物共に追い付かれもせず、引き離しもせずに2刻程引っ張り続けて、隧道に入る折れ口に差し掛かると、そのまま曲がって入って行く……当然、魔物共も追い掛けて入る……この間も魔鳥は見付け次第に射落としていった。
寝床を畳み、片付けて外に出る。
井戸端で水を浴びて、身支度を整える。
得物も身に着けてから旅籠の厨房に顔を出す。
既に昨日から、現地にて泊まり込んで貰っている人足の皆さんがいる。
その方々の為の弁当を、予め頼んでいたのだ。
ジングとデラティフも呼び、出来上がっている弁当を総て受け取る。
60食の弁当を3人で分けて、それぞれ20食ずつ愛馬に積む。
途中で落とさないように縛り付けて固定し、顔を観合わせて頷き合うと、人足の皆さんが泊まり込んでいる3箇所の現場に向けて、急いで駆ける。
ナヴィドとサミールとクヴァンツは、乗合馬車の御者3人と、ふたつの隊商を率いる2人の隊商長の5人と合流して、最後の打合せをしながら最後の準備を進めて終わらせた。
今回の作戦は乗合馬車3台とふたつの隊商キャラバンを護衛して行くと言う形を採るが、目的は魔物・魔族の殱滅にあるので、乗合馬車も隊商キャラバンも中身無しのハリボテであり、代わりに罠が満載されている。
日の出後三刻での出発と決まる。
城市『アガラ』の東門から、俺達はまとまって出た……取り敢えず行く先は隣の城市『バルガ』だ。
60歩毎に空を見上げる……まだ魔鳥は飛んでいない。
ゆっくりと隊列を長く採って行くが、15歩以上には離れない。
隊列の先頭に馬を進める……間道に入れる最初の折れ口が観える……観上げると、飛んでいる魔鳥は2羽……ここで折れる予定は無い……左手で『前進』と合図して通り過ぎ、まだ歩いて行く……少しずつ…邪な感覚が強くなる……間道に入れる次の折れ口を見晴かす……観上げれば、魔鳥が5羽……予定通りだ。
右手で軽く空を指差す……俺も含めて5人が弓に矢を栂え、一瞬で魔鳥を射落とす。
「…ハア! 」
駆け出して左に折れる……全員が続く……6.7匹の魔物が繁みに潜んでいる気配だったが、そのままに出し抜いて走る。
ここから先は、魔鳥を観たなら直ぐに射抜く……ほんの少し速度を緩める。
「……躱した奴ら……追って来てるか? 」
「……分からん……追って来るにしても、おっとり刀だろう? 聴こえないから、かなり遠い筈だ……鳥は見付け次第射抜いてるから…まだ俺達の事は知られてないだろう? 」
直ぐ後ろに着けている、ジングが応える。
「…奴らの中には、小さくて脚の速いのもいる筈だ……探ってくれよ? 」
「…ああ、分かってる……」
もう少し脚を緩める……気付いてくれないと、この作戦は成り立たない。
間道の両側から、軽いが速い足音が聴こえる。
「……ジング? 」
「……ああ…ケスラックだな……間違いない……」
「……クヴァンツ……臭うか? 」
「……ああ……40匹ぐらいの塊で……臭いが流れてるな……大体……好い頃合い……かな? 」
「……ああ……もう少しだな……」
心拍を800程数えてから……右手を横に出し、肘を曲げて掌をパッと拡げる。
すかさず俺とジングで繁みに隠れながら両側を走るケスラックを射抜き、残りの6人が飛んでいる魔鳥を総て射落とす。
「…ハァ! 」
愛馬シエナを叱咤して駆け出す! ここで奴らに対し機先を制して先手を執る!
全隊の速度を最高にまで引き上げて、脈拍にして1200を数えてから、左手を前に突き出し…右手を反して後ろを指し示す所作を執る。
囮の乗り合い馬車と商隊を前に進ませて、俺達はその後ろに着く。
それから3呼吸で右の繁みを突き破り、魔物が50匹程間道に飛び出した。
俺達との間は、凡そ30ミルト…好い按配だ……左手の指を1回鳴らす……8人全員でそれぞれ3本の火箭を取り出し、火種から火を移しつつ手前の魔物から胸を狙って射ち込む……魔物共が狼狽えて後退る。
直ぐに左手を横に突き出して合図する……ちょうど街道へと出られる折れ口に差し掛かっていたので、ナヴィド…サミール…クヴァンツ…エフロンの4人と囮の商隊は、そのまま曲がって街道へと出て行った。
更に左手の指を2回鳴らす……残った4人でまた通常の矢を3本ずつ、矢継ぎ早に射ち込んで奴らの数を減らすと、囃し立てるように叫び声を挙げ、魔物共に後を追わせて走り出す。
囮の隊商が曲がって行く直前で魔鳥も射落としたから、まだ出て来ない魔族共に隊商の行方は判らないだろう。
魔物共は、更に囮となった俺達を追い掛けながら、その数をまた増やした……今は60匹くらいで追い掛けて来る……まあ、こんなものだろう……俺達4騎は囮の隊商が街道に出て行く直前に、幌馬車から降りた4人の人足を愛馬の後ろに乗せて走る……彼らは俺達と自分を縄紐で括り併せて後ろ向きに座り、サチュレーダーで石礫を間断なく追い掛けて来る魔物共に喰らわせ続ける……魔物共に追い付かれもせず、引き離しもせずに2刻程引っ張り続けて、隧道に入る折れ口に差し掛かると、そのまま曲がって入って行く……当然、魔物共も追い掛けて入る……この間も魔鳥は見付け次第に射落としていった。
0
お気に入りに追加
5
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

異世界でネットショッピングをして商いをしました。
ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。
それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。
これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ)
よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
hotランキング23位(18日11時時点)
本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。


俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる