十人十色の強制ダンジョン攻略生活

ほんのり雪達磨

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蠅と宇宙は会話ができない3

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「それに……そういう意思があるのかどうかすらわかんないけど、あれカミサマに『こいつら邪魔だな』とか思われたら終わりだってのは私たちだってわかってるよ。
思い出したみたいに、とはいえやりすぎたっぽいやつは唐突に、当たり前みたいに潰されて殺されたりしてるところも君より見てるんだよ?
世界の終わりだって、あれに最終的に回収されて完了っぽいんだからさ。
倒して終わりとかそういうRPGにもなんない、どーしようもない存在なんだし。というかあれ、倒すとか以前に敵対もできないけど、もしどうにかできたらできたで一斉に全部消滅して終わっちゃいそうだしね」

 再び思い出してかキャラがぶるりと震える。
 敵対すらできない存在。
 絶対的な存在。
 元であるとわかる大いなるもの。
 意思があるのか、あってもそれは理解できるものではないのか。
 おそらく全ての創造主でありながら、もっとも己たちから遠いようにも思える、親しみがかけらも湧くことがない何か。

「誰が言い始めたか知らないけどさ、カミサマ、とはよくいったもんだよ。
手を出しても出さなくても厄介でどうしようもないって意味でさ。触っても触らなくても祟り来る感じ?」

 皮肉気に言う。
 反論はしないし、しようとは思わなかった。
 きっと1度でもそれを認識してしまえば、何をしようと無駄だとわかるのだ。
 しようと思うことがおこがましく傲慢――ですらないのだと。そう思えるレベルの差ではない。蟻のひとかみは余程何か超常的に運が良ければゾウも倒れさせるかもしれないが、蠅1匹飛んだところで宇宙が滅びることはないし、蠅1匹では宇宙に到達できもしないのだ。
 そして、横たわっているのはそれ以上の言葉では言い表せないほどの差。

「終わりによて生み出される生き延びるための、その世界の中心生物最後の子。私たちが生きれているのだって、能力があるからじゃなくて……結局あれの気まぐれなんだろうしね。やんなるよ」

 なりそこないではなく、完成品というべきその世界で1番優先されている生物が生み出した最高。

「私たちみたいな逃げるための、種として生き残らせるための完成品じゃなくて……種自体が目をそらさずに精一杯やる気出して、真面目に最初からどーにかできる立ち向かうタイプの完成を目指していたら、できたならよかったのかな」

 ただそれは、立ち向かう為ではない。
 一個ではわからない事でも、種という単位なら理解せざるを得ないのだ。終わりかけているという事は、それが、己という種ではどうしようもないということが。
 だから生み出すのだ。
 せめて、滅びより逃げ出す可能性が生まれるようにと。

 その種を無理やりな進化をし続けて、摩耗して、そのまま世界が続いたらそのせいで絶滅してしまうような力技で。
 逃げるための、別の世界に飛び散らせるための1つ。
 最後の種子。
 その力は、逃げ、生きるための力。
 同じ種に縛り過ぎられないように、見捨てて生き延びることができるように、多くの場合他のくくりを与えられる。
 どうしようもないという、現実逃避の完成品。
 その先のものを見れば、もう逃げることさえ考えられない。だから、逃げ出すことをどうか許してくださいという運頼みさえ感じるものでしかない現実逃避。

「叩き潰されて終わりでしょう? それこそ、俺たちをまとめても恐らく一方的にどうにかできる同類の仲でも異次元的存在であるウォッチャーが目を付けられはしないようにと恐れて運頼みしかできないんですから……そもそも、とんでも自分たちを越える作品ができたところたかが知れている。1世界の1種でしかない存在に、何を期待できるっていうんです? 世界全体の力を集合したところでプチっと潰されて終わりなのに。だったら、現実逃避の実質運ゲーでも逃げて生き延びるに特化したような我々の方がよほどましというものでしょう」
「……そらそーか。というか、そもそも現実逃避と生き延びるというのが合体事故みたいにうまくかみ合ったからこその私たちだしねぇ……立ち向かおう! なんて下手にしたら、そらその場合結果的に私たちよりどころか、なりそこなったモンより弱弱しいのが生まれてそうだ……あぁーあ、なんか気が滅入ってきたよ……なんか話題がぐるぐる回ってるだけな気がしてきたし。
はぁーあ。自由な遊び場が欲しいもんだよねぇ。あれに見つかりにくく、勝手に滅びる可能性もない。そんな遊び場になる世界、どこかにないもんかなぁ」
「そんなところがあったらそれこそウォッチャーとかがはりきっちゃって独占状態とかになりそうですけど……とりあいで崩壊してしまうのでは……?」
「そこは……ほれ、なんか……話し合いでルール決めれば長く遊べるんじゃない? ……無理かなぁ? 関係ねぇぜ! でウォッチャーとかが張り切っちゃう?」

 うーんと、お互いが首を捻る。
 新しい遊び場、というか自由にできるような環境があれば助かるのは2人とも同じだ。
 キャラはいじって遊ぶ場所があるという意味で。
 スカウトは余計なことをそっちに集中することでされないという意味で。

「都合のいいルールを決めることができて、崩壊からは免れる感じ、あれから目もつけられにくい……理想的すぎて現実感ないですよね」
「うぅーん。何か考えておくれよ。そこはほれ、うまくできれば『その目的のためにも必要なんですぅ』っていったらウォッチャーも多分行動抑え目になると思うよ? だって、私もそんなのが実現できるんならちょっとくらいは我慢しようと思うもの」

 確かにと納得する。
 スカウト自身、そういうものができる確証があって、だからこの世界の同類は諦めてくれ、なんて言われたらいくつかくらいは我慢できそうだと思った。思った後に嫌悪した。
 そもそもが、そんな自由な遊び場というのがいじられる生物がいることが前提で、それを己もあまり気にできないことも。
 自分は他より人間らしいと思っているが、同じ穴の狢でしかないと強く感じてしまうのはこういう時だ。
 どちらに寄り切ることもできない中途半端さに嫌気がさすのは。

「……いっそ、新しく作ってしまうというのはどうなんでしょう」
「いやぁ……新しい宇宙創るのとか無理でしょ。私たちの力はそこまで強くないでしょ? ウォッチャー他が全員協力してくれたとしてもそれは無理だよ」
「……そこまで大きくなくてもいいでしょう?」
「うん? あぁー……なるほど? 文字通り、箱庭サイズならってこと?」
「えぇ……それも、1から作るのではなく他も流用すれば……とっさの思い付きですが、考えてみる価値があるとは思いませんか? 癇に障らない程度にかすめ取ることができたなら……」

 キャラが笑う。

「君もやっぱり、同類以外からみたら十分趣味悪いし残酷だし……傲慢で、邪神めいていると思うよ。そんな君が私は嫌いじゃないけどね」
「俺は嫌いですけどね」
「空気読めよ、そこは」
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