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4つの点がそこにある。出来上がるのは三角形9
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昔、拾ってきて、自分で直し、大切にしていた玩具を知らぬ間に勝手に捨てられたことがフラッシュバックした。
自分が拾ってきた、自分の大切な、自分の所有物を、勝手に『貴方には必要ない』と捨てられ、理不尽に怒られて罰則さえつけられた少年を思い出した。
頭が更に煮え立っていく。
『あの子たちは幸せではなかった』
「あぁ!?」
『あの子たちは怒っていた
――何故、我らが闘争の末、小さなものの命令に従わねばならないのか、生き方を捻じ曲げられねばならぬのか。強きものが勝って命が奪われるのは良い。負けたのだ、食らわれるなら道理である。それはいい。我らを従えんと挑戦し続ける、これもいい。しかし、意思を強引に捻じ曲げ、反乱の意思すら思い描けないようにする。これは受け入れることはできない。たまらなく怒りを覚える。魂を汚される思いだ。屈辱である。
と、そう言っていた』
「……んなはずがあるかよっ! アレは俺のだ! 俺が手に入れたから、俺のであるはずだろうが! 弱肉強食をうたうんなら、これも道理だろうがっ! その範疇だろうが! 強くした、懐いてた、すり寄ってきた! 一緒に寝た、毎日話した、どれが好きかを考えて飯だって、自分より優先して色々用意した! 一緒に戦ってきた! 絆だろ!? 思い出だろう!? 友だろうが! 俺の!」
喋りながらも次々にスキルを打ち出し続ける。
もはや、何が有効かなど関係なく、激情のままに打ち出せるものを考え無しに手当たり次第に打ち出していく。
それでも、なんら影響という影響はない。
『愚か』
一言そう呟いた。
べしゃりと潰れるように、キールが地面に這いつくばる。
それは、攻撃を危険と感じたわけではなく、ただ不快だという声。その結果。
キールには、何をされたか、何をされているのかわからない。
「なっ――ぐっ、これは……!」
起き上がろうとするが、力がうまく入らない。
激情に駆られていてもできていたはずのスキル操作もうまくできない。
力がしぼんでいくようだった。
キールは鳥のような何かになる予兆はでていない。
しかし――本人は今だ気付いていないが、目が複眼のようになってきている。鎧が服ごと弾けたか丸見えになっている横っ腹に――奇妙な足のようなものが生えようとしている。
それは、鳥のような何かになる変化とはまた別のものに見える。
『独りよがり。自分が気持ちよくなっている自慰行為。相手の事なんて、見ていやしない――鎖で縛っているくせに、幸福感を与えられていない。自分本位で、無能。
事実として――解放されたのち、攻撃したのはあれらの総意。私が命令等したわけではない。
あなたが向かうべきは私ではなくそちらのほうであるはずなのに、自分がむかつくからという理由だけで私にむかってくるのもそう、』
「そんなはず、あるかぁっ! お前が何かしたに違いないんだ、そうやってすぐ俺から奪っていくんだ、俺にそうしろって強制してきやがる! 言葉で、視線で! 誰がそんなことをしたいっていったよ。押し付けるなよ、俺に! 自由にさせろっ、俺を!」
支離滅裂だった。
会話になっていない。
むしろ、それのほうがまだ相手と会話しようと試みているといっていい。それはまだ、話を聞こうという姿勢はあったのだから。
今のキールにはそれはない。
体の変化も気付かず、相手の言葉を遮り、ただ、激情をぶつけるだけだ。今までの分も込めて。誰に向けて言っているのかも理解できないかもしれない。
『私はあなたを頼らなかった。
その理由がわかる? あなたはきっと私を助けてくれる人じゃないとわかっていたから。確信していたからだ。
あなたは表面上は優しかったね。見かければ心配したように、いつも話しかけてくれたね。困ったことがあれば、いつだって相談してくれっていってくれたね。
でも、でもね――心底軽蔑するような目で見ておいて、散々見下すような目をしていて、それはないと思うな。それは遠巻きにするよりもよほど性根が悪いよ。
自分からいたわりを示すように触れてきた手を、後で誰にも見えないように汚らしいものを触ってしまったとばかりにぬぐったことを私は知っている。
お前の目は、濁っている。お前の瞳は優しく見える薄いガラスの向こうでヘドロが揺蕩っている。いくら香水をふって表面を整えたところで、どぶ臭い。
私はあなたがずっと嫌いだったよ、キールさん。
だってあなたみたいな人は、他人を気遣うふりをするだけで、いつだって自分が好きなだけだから。
お人形遊びは楽しかった? でも、相手は人形じゃないんだよ?』
「やっぱりか、やはり、お前は――! だから嫌なんだよ、だからお前みたいな誰にでも――」
キールの言葉は最後まで紡がれることはなかった。
下顎が丸ごと切り飛ばされて無くなったからだ。
「長い、うるさい、イラついた。理由はそんなとこかな、次に会えても謝るつもりは特にない」
「――!?」
アベルがいつの間にか近くにいた。
その手には今顎を切り飛ばした剣がぬらぬらと光り放っている。
キールは這いつくばったまま何かをいまだ何かを言おうとするようにひゅーひゅーと呼吸している音が響く中、アベルを見るが――
構わず、刃はそのまま振り下ろされた。
強化されたものらしい抵抗という抵抗はなく。
すとんと刃が地に刺さる。
最後まで、会話という会話にはなることはなかった。
キールもそうだが、それももう、最後は言いたいことを言っていただけのようだった。
「あらまぁ、過激ですねぇ。痴情のもつれ、三角関係の行く末的な? ――お優しいですねぇ」
こちらはゆったりと余裕を持つようにきゃらきゃらと笑いながら歩いてきた如月が、揶揄するような冗談を言う。
状況におびえるでもなく、非難するでもなく、ただそれは場を和ますジョークのように。お優しいといったのは、たぶん変化が起きているの見て、それが終わる前に始末をつけたことがアベルの優しさでもあることを理解しているからだ。わざわざ痛むように2撃にわけたのはイラついたからだろうが、本当にどうしようもなく腹がたっていてどうにかしてやろうと思うなら、そのまま変化が終わるまで待っていれば人間以外の何かになっていただろうことは件の鳥の変化からも明らかだったのだから。
ある種の挑発めいた言動に対して、アベルは大きく反応はせずに如月を見ながら剣を一振り。
地面に剣にまとわりついていた分の体液でできたラインが雑に描かれる。
「君は、邪魔をするかい?」
「まぁ怖い。しませんよぉ。私は、由紀子ちゃんのお友達ですので――貴方は、最初から他はどうでもよくって、むしろ邪魔してくるなら静かにするつもりだったでしょう? まとまっていたほうが都合がいいから一緒に来ただけですもんね? 話に来たのでしょう? お先にどうぞ。それとも、念のために殺しときます? 一応、抵抗しますけど」
「……邪魔をしないなら、それでいいさ。彼女の前で友達だというお前を積極的にどうこうしたくはないからね――性悪が」
「まぁ酷い」
ものを言わなくなった、死んでいるはずだが奇妙な足のようなものがうごめく胴と静かになった頭が離れたキールのことは誰も話題にも出さない。
もう、それの――由紀子の目もキールには向いていない。
ただ、キールの近くに来た時からアベルをじっと見ていた。
自分が拾ってきた、自分の大切な、自分の所有物を、勝手に『貴方には必要ない』と捨てられ、理不尽に怒られて罰則さえつけられた少年を思い出した。
頭が更に煮え立っていく。
『あの子たちは幸せではなかった』
「あぁ!?」
『あの子たちは怒っていた
――何故、我らが闘争の末、小さなものの命令に従わねばならないのか、生き方を捻じ曲げられねばならぬのか。強きものが勝って命が奪われるのは良い。負けたのだ、食らわれるなら道理である。それはいい。我らを従えんと挑戦し続ける、これもいい。しかし、意思を強引に捻じ曲げ、反乱の意思すら思い描けないようにする。これは受け入れることはできない。たまらなく怒りを覚える。魂を汚される思いだ。屈辱である。
と、そう言っていた』
「……んなはずがあるかよっ! アレは俺のだ! 俺が手に入れたから、俺のであるはずだろうが! 弱肉強食をうたうんなら、これも道理だろうがっ! その範疇だろうが! 強くした、懐いてた、すり寄ってきた! 一緒に寝た、毎日話した、どれが好きかを考えて飯だって、自分より優先して色々用意した! 一緒に戦ってきた! 絆だろ!? 思い出だろう!? 友だろうが! 俺の!」
喋りながらも次々にスキルを打ち出し続ける。
もはや、何が有効かなど関係なく、激情のままに打ち出せるものを考え無しに手当たり次第に打ち出していく。
それでも、なんら影響という影響はない。
『愚か』
一言そう呟いた。
べしゃりと潰れるように、キールが地面に這いつくばる。
それは、攻撃を危険と感じたわけではなく、ただ不快だという声。その結果。
キールには、何をされたか、何をされているのかわからない。
「なっ――ぐっ、これは……!」
起き上がろうとするが、力がうまく入らない。
激情に駆られていてもできていたはずのスキル操作もうまくできない。
力がしぼんでいくようだった。
キールは鳥のような何かになる予兆はでていない。
しかし――本人は今だ気付いていないが、目が複眼のようになってきている。鎧が服ごと弾けたか丸見えになっている横っ腹に――奇妙な足のようなものが生えようとしている。
それは、鳥のような何かになる変化とはまた別のものに見える。
『独りよがり。自分が気持ちよくなっている自慰行為。相手の事なんて、見ていやしない――鎖で縛っているくせに、幸福感を与えられていない。自分本位で、無能。
事実として――解放されたのち、攻撃したのはあれらの総意。私が命令等したわけではない。
あなたが向かうべきは私ではなくそちらのほうであるはずなのに、自分がむかつくからという理由だけで私にむかってくるのもそう、』
「そんなはず、あるかぁっ! お前が何かしたに違いないんだ、そうやってすぐ俺から奪っていくんだ、俺にそうしろって強制してきやがる! 言葉で、視線で! 誰がそんなことをしたいっていったよ。押し付けるなよ、俺に! 自由にさせろっ、俺を!」
支離滅裂だった。
会話になっていない。
むしろ、それのほうがまだ相手と会話しようと試みているといっていい。それはまだ、話を聞こうという姿勢はあったのだから。
今のキールにはそれはない。
体の変化も気付かず、相手の言葉を遮り、ただ、激情をぶつけるだけだ。今までの分も込めて。誰に向けて言っているのかも理解できないかもしれない。
『私はあなたを頼らなかった。
その理由がわかる? あなたはきっと私を助けてくれる人じゃないとわかっていたから。確信していたからだ。
あなたは表面上は優しかったね。見かければ心配したように、いつも話しかけてくれたね。困ったことがあれば、いつだって相談してくれっていってくれたね。
でも、でもね――心底軽蔑するような目で見ておいて、散々見下すような目をしていて、それはないと思うな。それは遠巻きにするよりもよほど性根が悪いよ。
自分からいたわりを示すように触れてきた手を、後で誰にも見えないように汚らしいものを触ってしまったとばかりにぬぐったことを私は知っている。
お前の目は、濁っている。お前の瞳は優しく見える薄いガラスの向こうでヘドロが揺蕩っている。いくら香水をふって表面を整えたところで、どぶ臭い。
私はあなたがずっと嫌いだったよ、キールさん。
だってあなたみたいな人は、他人を気遣うふりをするだけで、いつだって自分が好きなだけだから。
お人形遊びは楽しかった? でも、相手は人形じゃないんだよ?』
「やっぱりか、やはり、お前は――! だから嫌なんだよ、だからお前みたいな誰にでも――」
キールの言葉は最後まで紡がれることはなかった。
下顎が丸ごと切り飛ばされて無くなったからだ。
「長い、うるさい、イラついた。理由はそんなとこかな、次に会えても謝るつもりは特にない」
「――!?」
アベルがいつの間にか近くにいた。
その手には今顎を切り飛ばした剣がぬらぬらと光り放っている。
キールは這いつくばったまま何かをいまだ何かを言おうとするようにひゅーひゅーと呼吸している音が響く中、アベルを見るが――
構わず、刃はそのまま振り下ろされた。
強化されたものらしい抵抗という抵抗はなく。
すとんと刃が地に刺さる。
最後まで、会話という会話にはなることはなかった。
キールもそうだが、それももう、最後は言いたいことを言っていただけのようだった。
「あらまぁ、過激ですねぇ。痴情のもつれ、三角関係の行く末的な? ――お優しいですねぇ」
こちらはゆったりと余裕を持つようにきゃらきゃらと笑いながら歩いてきた如月が、揶揄するような冗談を言う。
状況におびえるでもなく、非難するでもなく、ただそれは場を和ますジョークのように。お優しいといったのは、たぶん変化が起きているの見て、それが終わる前に始末をつけたことがアベルの優しさでもあることを理解しているからだ。わざわざ痛むように2撃にわけたのはイラついたからだろうが、本当にどうしようもなく腹がたっていてどうにかしてやろうと思うなら、そのまま変化が終わるまで待っていれば人間以外の何かになっていただろうことは件の鳥の変化からも明らかだったのだから。
ある種の挑発めいた言動に対して、アベルは大きく反応はせずに如月を見ながら剣を一振り。
地面に剣にまとわりついていた分の体液でできたラインが雑に描かれる。
「君は、邪魔をするかい?」
「まぁ怖い。しませんよぉ。私は、由紀子ちゃんのお友達ですので――貴方は、最初から他はどうでもよくって、むしろ邪魔してくるなら静かにするつもりだったでしょう? まとまっていたほうが都合がいいから一緒に来ただけですもんね? 話に来たのでしょう? お先にどうぞ。それとも、念のために殺しときます? 一応、抵抗しますけど」
「……邪魔をしないなら、それでいいさ。彼女の前で友達だというお前を積極的にどうこうしたくはないからね――性悪が」
「まぁ酷い」
ものを言わなくなった、死んでいるはずだが奇妙な足のようなものがうごめく胴と静かになった頭が離れたキールのことは誰も話題にも出さない。
もう、それの――由紀子の目もキールには向いていない。
ただ、キールの近くに来た時からアベルをじっと見ていた。
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