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元刑事の推理
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一月二十八日(木)
十三時三十分 ───────
大広間**
「真相が分かったんですって? さあ、刑事さん、話してくださいな! いったいどなたが私の夫をあんな目に合わせたというの?」
皆を大広間に留まらせて既に二十分は経過している。黒田冴子は腕を組みながら重崎に向かって責め立てて来た。
「ちょっと待ってくれよ! もうすぐ……土倉が来ますんで……」
黒田冴子を宥め付かせながら、乳白色に塗られた両開き扉をちらと見、土倉が下りてくるのを今かいまかと待っていた。
この場にいる全員を見回すと、少なくなった人数に身震いがした。当初、十人いた男女がたった四日で六人にまで減っている。
松岡美幸は長テーブルの椅子に座ったまま紅茶を前に俯き、堤冷花は恐怖を抱いている様相で周りを見回し、黒田冴子は刑事の前を落ち着きなく行ったり来たりしながら人差し指をトントンと繰り返し腕に叩きつけている。香川は依然背筋を正し、窓の方に目線を向けながら手を後ろで組んでいる。
緊張感がピークに達した時、ようやく扉が開かれ、チェックのセットアップに身を包んだ土倉がトランクを手に現れた。テーブルにトランクを置くと、大げさに腕を広げて口火を切った、
「さあ、皆さん、お待たせしてしまいまして申し訳ございません。今回の事件の目的、そして犯人が分かりました」
犯人という言葉に重崎以外の全員が目を見開いた。一呼吸を置いて、土倉は推理を披露した、
「まず最初の被害者、宮下薫さん。初日の『オリオンの宴』の最中、この大広間で殺されました。このネックレスの釣り糸を使って」
土倉はトランクを開け、透明なビニールに入れた釣り糸を取り出し、一人ひとりに見せて回った。
「突然の停電が起きる前、私は被害者とそちらに座る堤冷花さんと話をしていました。少し折入った話をね。その瞬間、まるで決定的な言葉を言わせまいとでもいうように、電気が消えた。その暗闇の中、犯人は彼女を窓際まで突き飛ばし、一気に釣り糸を首に引っ掛け、力いっぱいに絞めた。でも、それは致命傷とは至らなかった。なぜならこの釣り糸はただ伸び切るだけで凶器というほどの力を要してなかったんです」
土倉は言葉を切り、周りの反応を伺いながら、釣り糸を入れたビニールをトランクに放り戻した。重崎以外の全員は相変わらず目を丸くさせながら、土倉を見つめている。
「使い物にならなくなった釣り糸を捨てた犯人は自らの手で殺すことに考えを変えた。腕で押さえていた被害者を押し倒し、全体重をかけて首をへし折った。頸椎が崩壊するまで強く。その時、被害者は見えない殺人鬼に最後の力を振り絞って抵抗した。犯人の顔にある何かに触れ、それを握り締めた」
「それはなんですの?」
「眼鏡ですよ……もっとも、その眼鏡は度が入っていないフェイクだったのですが」
眼鏡という言葉に黒田冴子は「あぁ……」と声を洩らし、両手で口を覆った。
「そうです……」
土倉はテーブルに両手をついて、目の前に俯く、三つ編みの女に向かって声を張り上げた。
「堤冷花さん。あなたが宮下薫さんを殺しましたね」
堤冷花は虚ろな目でやっと顔を上げ、反論し出した、
「そんな……どうして私が薫を殺さなければならないんですか? 薫は私の……大切な親友です! 姉妹のように───」
「姉妹! そうです!」
土倉はさらに声のボリュームを上げ、堤冷花の言葉を遮り、舞台俳優よろしく大げさな素振りをした、
「宮下薫さんはあなたの腹違いの妹なんですよね?」
土倉の確信的な言葉に、彼女の顔は青ざめはじめた。
「そんなこと……ありません……」
「まだ否定されますか? 匿名の情報……と言いたいところですが、先ほど殺害された佐藤晴彦氏のパソコンから発見したんです。この中にいる犯人が抹殺し損ねた証拠品が、真実を語ってくれましたよ」
土倉はトランクから佐藤晴彦のパソコンを取り出し、重崎に渡した。佐藤晴彦が殺された事を今初めて皆に伝えたのだが、誰もこの緊迫の空気の中、反応する者はいなかった。
「ああ……そうですか。やっぱりあの部屋にあったんですね」
三つ編みに結んだ髪を解きながら堤冷花は悔しそうに言った。ため息をついた堤冷花の様子を見て、土倉は真剣な眼差しで彼女を見つめた、
「殺さなければならないほど宮下薫さんの事を憎んでいたんですよね。黒田龍三氏の血を引きながら全く性格も境遇も違う宮下薫さんに嫉妬していたんじゃないんですか?」
「勝手なことを言わないで!! 何も知らないくせに!」
黒田の名前を耳にした瞬間、堤冷花は椅子を倒して立ち上がり、テーブルを何度も叩いた。
「あなた……まさか?」
「そうよ。私は……あなたと黒田の娘です」
黒田冴子を一瞥し、すぐに土倉に目線を移して語り始めた、
「私の父、堤は黒田財閥の子会社の社員でした。暮らしは豊かじゃなかったけれど、大切に育ててくれました。高校生になると、大好きな両親に迷惑をかけないようにと、バイトをしてお金を貯めて、高校卒業後にK美容専門学校に進学しました。
そこで薫と出会ったんです。とても元気で明るくて、科の人気者でした。私たち二人はすぐに意気投合し、一緒にメイクの練習をしたり、夢を語り合ったり、買い物をしたり……まるで ”姉妹” のように一緒に過ごしました……。夏休みに帰省すると、私はすぐに父に薫のことをたくさん話しました。その時気付いたんです。父の顔色がどんどん暗くなるのを。どうしたのって聞いても、ごまかすばかりで、何かおかしいとその時は思いました。
そして、私が二十歳になった時、父はすべてを告白して来ました。私が……本当の娘じゃない事を……黒田龍三とその本妻の娘だという事を。
黒田は後継者となる男の子を欲しがっていた。でも、娘の私が生まれたことを知るとすぐに、黒田の元秘書を勤めていた父に託したんです。黒田には何人もの愛人がいました。その中に、宮下という女性秘書がいました。黒田はその秘書を愛し、子供を産ませた。それが薫だって事を父は教えてくれたんです。
何度も父の言葉を遮ろうとしても、父はとめどなく語って来ました。私が薫のことを父に話さなければこんなことには……」
堤冷花は細かく肩をわななかせながら、声をくぐもらせていた。
「愛人の娘でも薫は幸せそうだった。いつもブランド物を身に付けて、私に自慢して来た。妹だって知らなかった頃は、心から尊敬していた。でも、すべてを知らされた後からは、だんだん憎むようになった。お金が欲しかった訳じゃない……ただ……分からないけど……薫を許せなかった……。
事実を知っているとも知らず、薫は私を姉の様に慕ってくれた。離れたくても離れられなかった。好きで居続けようと努力した……でも無理だった……同じ父から生まれたのにこんなにも境遇が違うなんて……許せなかったんです!」
堤冷花が洗いざらい話し終えた後、土倉は冷静に一つの疑問を投げかけた、
「なぜ俺のジャケットのポケットに、ネックレスの釣り糸を忍ばせた? あのまま回収して捨てれば証拠隠滅は出来たはずだよ」
「薫を殺してしまった時、急に我に返ったんです。ああ……なんて事をしてしまったんだろうって……。私の大切な親友で、血のつながった妹……。知らないふりを貫いていれば、友達として、楽しく過ごせていたのかもしれないって……。薫の首に巻き付けた恨めしい凶器を、ずっと隠し持っている事なんて出来なかった。だから、探偵さんに泣きついた隙に握っていたネックレスをポケットに入れたんです」
堤冷花は懺悔の言葉を述べると、そのまま膝をついて、顔を覆って泣き出した。大広間に響く彼女の泣き声は寂しい訴えのようにも聞こえた。しかし、土倉は神父でも司祭でもない。無情にも咳払いをした、
「宮下薫さんは果たして黒田龍三氏を知っていたのかな?」
「え?」
「初日の『宴』の時、俺たちと一緒に大広間に入っただろう? その時、彼女は自分の父の顔を知っていたのかな? あの子の性格じゃ、すぐに飛び付いたりしていたんじゃないか? 「お父さん!」って」
「で、でも……堤の父が……」
「黒田財閥の子会社に飛ばされた育ての父親を本当に信用していいのか。宮下なんてこの日本に何人もいる。偶然、彼女がその苗字で生まれ、偶然にも金持ちの家に生まれ、偶然にも君と出会った。君は本当に、薫さんが血のつながった妹だって証明出来るのか? 一度でもDNA検査をしたことはあるのか!」
土倉が責め立てるように語気を強めると、堤冷花は目をキョロキョロとさせた。察するに、何も物的証拠もなく宮下薫を勝手に妹だと決めつけてしまったのだ。
堤冷花の育ての父はこの世で黒田氏を憎む者の一人だ。秘書からいきなり子会社に飛ばされたのだから。積み重なる鬱憤を堤冷花にぶつけて、血のつながらない娘を使って復讐をしようという短慮な考えが引き起こさせたのだ。なんて冷酷非情な。
「君は無実の人間を殺した」
「おい、土倉……」
「その殺された人物は身に覚えのない罪を背負わされて死んでいった。慕っていた大の親友からね」
彼女は声を上げて泣いた。身を裂くように身体を震わせて泣いていた。宮下薫を殺してしまった罪の重さを感じているのだろう。土倉はそれを一瞥した後、周りに目線を移し次の推理に移った。
───────────────────────
「次に、【オリオンの裁き】で無残な死に方をした予期せぬ被害者・城定氏ですが、彼は大広間で初めて会った時から血気盛んで、要注意人物だと目さぬわけには行きませんでした。しかし、火曜日の夜更け、俺の寝込みを襲おうとした勝手な行いをしたせいで【裁き】という名目で殺されたんです。
ああ、ちなみにどうして、犯人がそのことを嗅ぎ付けられたのかですが……それは、殺された城定氏と黒田龍三氏の部屋に盗聴器が仕掛けられていたからです」
「盗聴器!? そんな!」
黒田冴子が突然驚愕の声を上げた。
「勘違いしていませんか? ご夫人。盗聴器です。隠しカメラではありませんよ?」
「え、あ……わ、分かっているわよ」
「続けます」
土倉は黒田冴子にそれ以上追求せず、咳払いをした、
「城定氏は、過去に黒田家に押田財閥の情報を売った報いで、殺されました。これも佐藤晴彦氏のパソコンで知り得た事です。彼は官僚事務次官の職を利用し黒田財閥のことを調べ上げていましたからね。
城定氏は押田家の弱みをすべて黒田龍三氏にリークし、それをネタに龍三氏は統合契約と偽って押田家に近付き、遺産をすべて黒田家に譲渡するよう姑息な手段を使ったんです。それを担当したのが弁護士であった佐藤晴彦氏……。
これでお分かりですね。城定氏と佐藤晴彦氏が押田家の陥落を誘導した。そして、二人を殺害したのは……」
土倉は後ろを振り向き、窓の方に目線を向けながら手を後ろで組んでいるタキシードの男を名指しした、
「香川渡さん、あなたですね?」
指をさされた香川は、顔色一つ変えず背筋を正したまま響く声で訴えて来た、
「私が殺害したという証拠はあるのですか?」
そう言うことを見越してか、土倉は香川の方に歩み寄りながら、証拠となり得る言葉を突き付けた、
「あなたは、弓道をやっていましたよね。招待客の中で、瞬発力と体力があるのは誰の目から見ても明らかだ。齢五十でありながら、魂が去った遺体を軽々と持ち上げた。刑事である謙太が肩で息をしているのにあなたは違った。
それに、事情聴取をした時、なぜ城定氏が『矢を射抜かれて死んだ』って分かったんですか? あの傷口は矢でなくても付く傷口です。例えば、アイスピックとかね。あなたの袖口についた赤い痕も、城定氏の血痕に違いありません。ケチャップではあんなにどす黒くはならないですからね。鑑識に回せばすぐに判るはずです」
土倉の推理にも微動だにせず、香川は無表情のままじっとこちらを凝視している。土倉は更に続けた、
「それに、この『館』を熟知しているあなたなら、サソリの毒を手に入れる事は造作も無い事です。どこか目につかないところに毒を持つサソリをカゴにでも入れて飼育した。エンバーミングの技術を持ち合わせているなら解毒療法も知っているでしょうし、サソリの毒を抽出することもあなたなら朝飯前でしょう?」
土倉が話し終え、何かを訴えたそうにしている香川に「どうぞ」と促した、
「確かに私は弓道はやっておりました。しかし、傷口で一目見て矢であることは明白でございます。それに、どうやって、城定様をオリオン座の形に出来たのでしょう? この老体にそんな力は───」
「オリオン座の形になっていたと誰が言いました?」
香川の言葉を遮り、決定的瞬間を見逃さなかった。
「え? あ、重崎様が教えていただきましたが」
「謙太は被害者の傷の具合とその死因を伝えただけです。オリオン座の形で死んでいたなんで誰もあなたに教えてませんよ?」
土倉はわざとらしく肩をすくめた。香川は慌てて弁論した、
「へ、部屋の清掃をした時、ち、血の線で察したのでございます!!」
「残念ながら、城定氏の部屋にちょっとした細工をさせて貰ったんですよ。遺体が打ち付けられた壁に元々掛かってあったタペストリーを戻しておいたんです、血の存在なんて知り得なかったはずです。知っているのは……殺した張本人。
そもそも、部屋の外からは大の字の形になっている遺体が見えたとしても、血の線は死角だったはずだ。あんた、黒田龍三氏の後ろからぴょこぴょことつま先立ちをして見ていましたしね。到底オリオン座の形をしていたなんて分かる訳がない」
「サソリなんて物騒な物、こちらに庭には飼っておりません───」
「───なんだったら毒なんて、簡単に手に入りますよ。今は裏サイトなんてものがありますからね」
土倉がそう断言すると、香川は黙ったまま俯いた。今まで姿勢正しかったのが一気に腰が曲げ始めた。やがて、体中が震えだし、こちらを睨みつけて来た、
「あやつは……旦那様の裏切り者でございます……」
土倉は思わず笑いだしそうになるのを必死に堪えた。こういう、人間が本性を現す姿には何にも替え難い面白さがある。
「二十一年前にふと当家の『館』に住み込みで働きたいと願い出た城定は、旦那様の小間使いをしておりました。買い物から何まで、雑用をお命じになられておりました。次第に、才気を見出されたのか、財閥の仕事を手伝うようになり、サロンで長談義することもしばしば。城定に対して紅茶を淹れた時は屈辱でございました。
しかし、徐々にあやつの正体が明るみになりました。城定は黒田龍三から送られて来たスパイだったのです! それを知った時、既に旦那様は統合契約を交わされた後でございました! 弁護士であった佐藤と結託し、城定は内密にされていた会社の赤字という押田家の弱みをすべて黒田龍三に漏洩したのです。旦那様は……会社のために……やむなく……くっ……」
香川は口に拳を当て、吼え声を上げた。
「まもなく、押田財閥は破産……。私ども使用人を立ち去らせ、奥様とお二人でこの『館』で……あぁ……。あやつを許せなかったのです! 二十年経った今、多額の金を黒田から得たはずの城定は、気付けば浮浪者に! そして、佐藤は弁護士から官僚事務次官に! あやつらは、社会のクズ! 死んで当然なのですよ!!」
「死んで当然……か。あんたそういう人間だったんだな香川さんよ」
「私は、あなたを殺そうとした城定を止めたのですぞ。感謝してほしいくらいですな」
「感謝だ? ふざけるな!!」
土倉は拳を固く握り締め、テーブルに勢いよく叩きつけた。紅茶や食器が小さく揺れた。
「人の命を何だと思っている! 訳を話せば分かってくれたかもしれない。黒田を同じく憎んでいる者同士、分かり合えたんじゃなかったのか!」
「あなたに何が分かる! この口惜しさを分かって溜まるものか!」
香川は土倉をねめつけ指を突き付けてきた。礼儀正しく表の顔を表さなかった老紳士が、今では常軌を逸し、激しい剣幕で怒鳴り声をあげている。土倉は、引き出した本性に心苦しく思い、冷静さを取り戻して口を開いた、
「なぜ城定氏がホームレスになったか、知ってますか?」
「ふんっ! 知りたくもないね!!」
「城定氏には病気の一人娘がいたんです。その子は不治の病で、余命いくばくもない状態だった。父ひとり子一人で、多額の治療費と手術代が掛かり、小間使いの給料だけじゃ食っていくだけでもやっとだったんです。押田社長に願おうと思ったが、赤字続きなのを知っていたから言うに言い出せなかった。それで、黒田家に取り入り、多額の治療費を得る為に、泣く泣く押田家を裏切ったんです」
「そんな話、デタラメだ!!」
「俺も初めはきれいごと過ぎると思っていました。でも、押田家との人生は幸せだったって、佐藤氏に漏らしていたそうですよ。佐藤氏も城定氏も、黒田家に雇われただけの男だったんだ。二人を恨む資格はあんたには無い」
香川は信じられないとでも言う様に頭を振り、床に膝をついた。土倉は続けた、
「しかし、押田財閥が破綻したその日、娘さんは父親を残して逝っちまった……。それからの人生は、苦難そのものだった。押田家を裏切った事への罪悪感、娘を救えなかった自身を責め続けた。死ぬに死にきれず城定氏は黒田氏から受け取った多額の金を持て余し、何もかもを捨てて、娘さんの死を忘れるようにギャンブルに走った。金が尽きた挙句には路上生活……。あいつがこの『宴』で殺したいと願ったのは、黒田氏だったんだよ。自分の人生を変えてくれた、押田社長に報いる為に……」
香川は、知り得なかった城定の思いを知り、号泣した。土倉はそれを眺めた後、同情しないようにかぶりを振って推理を続けた、
「堤冷花さん。佐藤晴彦氏の部屋を荒らしたのは君なんだよね? 彼の後ろに回ったりするなり、香川さんがサソリの毒入り注射器で彼の首を刺した後、死んだのを確認して彼の部屋を漁り、パソコンを探した。しかし残念、見つからなかった。佐藤晴彦氏は犯人の動きを把握していたようだね」
堤冷花は項垂れたまま鼻を啜り上げるだけで何も応えなかった。土倉はある人物の反応を伺った、以前俯き、動きを見せない。
───────────────────────
「そして、最後……黒田龍三氏……。この事件のキーパーソンと言っても過言じゃない……」
「私じゃないわよ、探偵さん」
「ご夫人は黙っていてください。あんたは、そこにいる堤冷花さんを捨てた事を反省していてください。あんたらが捨てなければ、犠牲者が一人増えずに済んだんだ」
急にしゃしゃり出て来た黒田冴子を論破し、土倉は推理を続けた、
「まずその前に、この事件の謎について推理したいと思います」
「謎? なんだそれ」
重崎が口をはさんだ。考えればそのことについてまだ話をしていなかった。
「鍵が掛かっている部屋にどうして入れたのかっていう謎だ。佐藤晴彦氏が殺され、部屋を荒らしている間、部屋は密室状態だった。でもそれは簡単な密室トリック。抜け穴だよ」
「抜け穴?」
「最初に見つけたのは城定氏の部屋にある壁収納の中だ。その次が黒田龍三氏の部屋。そして佐藤晴彦氏の部屋。どれも隣室とクローゼットの中で繋がっていた。壁紙を綺麗に元に戻すことで目を欺かせたと思ったんだろうが、向こう側の抜け穴を閉めた拍子に壁紙の片方がめくれるのは気付かなったようだね」
『館』の部屋は廊下終わり側の俺たちの部屋に続けて、松岡美幸さんの部屋、空き部屋、黒田夫妻の部屋。その反対側は城定氏の部屋、空き部屋、佐藤晴彦氏の部屋、堤冷花さんの部屋となる。この空き部屋と殺された者たちの部屋は通り道になっている……そうですよね、香川さん、堤さん」
土倉が二人に問うとそれぞれ頷くだけで何も言わなかった。
「話を元に戻します。黒田龍三氏が殺された凶器の斧は、壁に立てかけられてあった射手座のエンブレムから取ったもの。あらかじめ、香川さんが用意したものでしょう。黒田氏は二度、この『館』を訪れたと言っていました。しかし、あの男は、刀にも陶器にも、絵画にすらも興味がない、金の亡者だ。それを知り今回、あのエンブレムを部屋に飾った。現に、ケガしたなどのクレームもこの四日の間無かったことから一切あの豪華な装飾に眼中が無かったんでしょう。
部屋中を知り尽くしてる香川さんの犯行とも考えましたが、犯行が行われた二十三時五十分といえば、あんたが、俺たちの夕食の片づけをしていた時間だろう。それに、矢を放ったり、ナイフで突き刺す事が出来たとしても、斧はさすがに重すぎて狙いが定められない。堤さんは、部屋の内装を知り得ないことから不可能と見てる。本当は堤さん、あんたが殺したかったんだろうけど、ある人の為に席を空けておいた」
土倉が長々と推理を止まらずに語り、手前にあった水でカラカラになった喉を潤した。無論、匂いと毒味を済ませてからだが。
「さあ、もういいかげん口を開いて頂けませんかね? ……松岡美幸さん」
彼女の前に立ちながら、土倉が重い口を開けた。
「あなたが、この『オリオンの宴』の主催者であり、押田家最後の血筋なんですよね?」
「ははは……依頼人を疑うなんて、さすが土倉さんですね……」
「あなたは初めから怪しかった。届けられた招待状に住所と名前の記載が無いのにそれを開けて読んだこと。その招待状を読んだ後に突如として電話が掛かったということ。それから、本を読む場所を図書館ではなくあえて中庭を選んだこと。
この『館』に来た事がないと言いながら、虫が飛んでくるかもしれないあの庭に、女性ひとりで平然とガゼボに座ってたのがおかしいんですよ。この『館』が自分の家でもあるかのようにあなたは普通に過ごしていた」
松岡美幸は物悲しそうな目で土倉を見つめていると、隣にいた堤冷花が口を開いた、
「美幸さん……私がパソコンを早く握りつぶしていれば……こんなことにならなかった」
彼女に縋り付きながら申し訳なさそうに言う堤冷花にそっと目を見て諭した、
「冷花……自分を責めないで頂戴……。あなたに、薫さんを殺させたこと……後悔してるわ」
「そんな……。た、探偵さん! 私です! 私が黒田を殺りました!」
堤冷花は立ち上がり、自身の胸に手を当てて自供し出した。松岡美幸を庇おうとしての行動だろう。もしくは土倉を惑わそうとする魂胆かもしれない。しかし、当の本人は落ち着き払った声で堤冷花の手を引いた、
「もういいのよ……。このまま、香川に『宴』を終わらせて、ひっそりとパパとママの所へ逝こうと思っていたのに……土倉さんを侮っていました。どうして私が黒田を殺したと分かったのですか?」
「頭です」
「頭?」
松岡美幸が首を傾げた。
「俺が書斎で、黒田氏が防弾チョッキを着ている事を謙太と話していた時、扉の外で聞いていましたよね? 書斎にも盗聴器が仕込まれていました。それに、普通の人間なら心臓を一突きするのに、実際の黒田氏の亡骸は頭をかち割られていた。それを見て察したんだよ、黒田氏が防弾チョッキを着ていたと知り得た人物。それこそ、あなただということを」
「でも、土倉、盗聴器は香川にも堤冷花も聞いていた可能性はあるんじゃねえか?」
「それは考えにくい。先ほど、堤冷花が彼女を守ろうとした姿勢は立派な主従関係だ。盗聴器を松岡美幸さん一人が握っていると考えていいだろう」
松岡美幸は目を瞑りながら微笑んだ、
「ええ、そうよ……私が黒田を殺した。パパを騙して、押田財閥の座を奪った成金野郎よ……」
そう吐き捨て、黒田冴子の方を睨み付けた。
「私が、押田財閥の社長・押田重三郎と押田冬子の娘……押田美幸。あいつの頭をかち割った時、すべてが解放された気持ちになった……後悔も無かった……。佐藤を殺す予定は無かったけれど、押田家を土倉さんに伝えた事を知り、証拠が部屋にあるんじゃないかと思って、香川に頼んで殺させ、冷花に部屋を探らせたのよ……」
「三度も『オリオンの宴』を開いた理由は何故ですか?」
土倉が尋ねると、松岡美幸は応えてくれた、
「すべては黒田を殺す為。
パパとママはオリオン座が好きで、この『館』を建てたの。元々は麻布にある今の住まいを持っていたけれど、私が生まれる年にここを別荘として建てた。森の中だから町の灯りも届かないここは、星座鑑賞にはもってこいの場所だった。過去二回の『オリオンの宴』は純粋に星座鑑賞を楽しむために開いた鑑賞会。星が好きだという噂を聞き付け、黒田を招待したら、まんまとやって来たわ。
私は姿を現さず、ひたすら奥で監視し続けた。両親が自殺した後、あいつはこの『館』を訪れた事も無ければ、押田家の資産に登録していなかったから奪われる心配も無かった。香川と冷花に変装させて、使用人として『宴』を支えてくれた。私達全員、黒田を憎みぬいている。今にも殺しそうだったけれど、なんとか堪えたわ……」
松岡美幸は目を瞑りながら紅茶を飲み干した。彼女の目はまさに親の仇を果たしたような目をしていた。
「最後にひとつだけ……何故、俺を『宴』の同伴者に選んだ? 俺を呼ばなければ、思う存分殺せたんじゃないのか」
怖い事を言っているのは分かっている。しかし事実、土倉探偵事務所に依頼しなければ、犯行が明るみになる事は無かったはずだ。むざむざと探偵と刑事を呼び寄せて、捕まえてくださいと言ってるようなものだった。
「さぁ……もう……恨みから解放されたかったから……かな。オリオン座が好きな両親を示すため、神話の伝説とオリオン座を模した殺害方法で彼らを粛清した。パパとママの大好きなものだから穢れることを恐れたけど。それは、私が死んでから二人に謝ればいいわ」
十三時三十分 ───────
大広間**
「真相が分かったんですって? さあ、刑事さん、話してくださいな! いったいどなたが私の夫をあんな目に合わせたというの?」
皆を大広間に留まらせて既に二十分は経過している。黒田冴子は腕を組みながら重崎に向かって責め立てて来た。
「ちょっと待ってくれよ! もうすぐ……土倉が来ますんで……」
黒田冴子を宥め付かせながら、乳白色に塗られた両開き扉をちらと見、土倉が下りてくるのを今かいまかと待っていた。
この場にいる全員を見回すと、少なくなった人数に身震いがした。当初、十人いた男女がたった四日で六人にまで減っている。
松岡美幸は長テーブルの椅子に座ったまま紅茶を前に俯き、堤冷花は恐怖を抱いている様相で周りを見回し、黒田冴子は刑事の前を落ち着きなく行ったり来たりしながら人差し指をトントンと繰り返し腕に叩きつけている。香川は依然背筋を正し、窓の方に目線を向けながら手を後ろで組んでいる。
緊張感がピークに達した時、ようやく扉が開かれ、チェックのセットアップに身を包んだ土倉がトランクを手に現れた。テーブルにトランクを置くと、大げさに腕を広げて口火を切った、
「さあ、皆さん、お待たせしてしまいまして申し訳ございません。今回の事件の目的、そして犯人が分かりました」
犯人という言葉に重崎以外の全員が目を見開いた。一呼吸を置いて、土倉は推理を披露した、
「まず最初の被害者、宮下薫さん。初日の『オリオンの宴』の最中、この大広間で殺されました。このネックレスの釣り糸を使って」
土倉はトランクを開け、透明なビニールに入れた釣り糸を取り出し、一人ひとりに見せて回った。
「突然の停電が起きる前、私は被害者とそちらに座る堤冷花さんと話をしていました。少し折入った話をね。その瞬間、まるで決定的な言葉を言わせまいとでもいうように、電気が消えた。その暗闇の中、犯人は彼女を窓際まで突き飛ばし、一気に釣り糸を首に引っ掛け、力いっぱいに絞めた。でも、それは致命傷とは至らなかった。なぜならこの釣り糸はただ伸び切るだけで凶器というほどの力を要してなかったんです」
土倉は言葉を切り、周りの反応を伺いながら、釣り糸を入れたビニールをトランクに放り戻した。重崎以外の全員は相変わらず目を丸くさせながら、土倉を見つめている。
「使い物にならなくなった釣り糸を捨てた犯人は自らの手で殺すことに考えを変えた。腕で押さえていた被害者を押し倒し、全体重をかけて首をへし折った。頸椎が崩壊するまで強く。その時、被害者は見えない殺人鬼に最後の力を振り絞って抵抗した。犯人の顔にある何かに触れ、それを握り締めた」
「それはなんですの?」
「眼鏡ですよ……もっとも、その眼鏡は度が入っていないフェイクだったのですが」
眼鏡という言葉に黒田冴子は「あぁ……」と声を洩らし、両手で口を覆った。
「そうです……」
土倉はテーブルに両手をついて、目の前に俯く、三つ編みの女に向かって声を張り上げた。
「堤冷花さん。あなたが宮下薫さんを殺しましたね」
堤冷花は虚ろな目でやっと顔を上げ、反論し出した、
「そんな……どうして私が薫を殺さなければならないんですか? 薫は私の……大切な親友です! 姉妹のように───」
「姉妹! そうです!」
土倉はさらに声のボリュームを上げ、堤冷花の言葉を遮り、舞台俳優よろしく大げさな素振りをした、
「宮下薫さんはあなたの腹違いの妹なんですよね?」
土倉の確信的な言葉に、彼女の顔は青ざめはじめた。
「そんなこと……ありません……」
「まだ否定されますか? 匿名の情報……と言いたいところですが、先ほど殺害された佐藤晴彦氏のパソコンから発見したんです。この中にいる犯人が抹殺し損ねた証拠品が、真実を語ってくれましたよ」
土倉はトランクから佐藤晴彦のパソコンを取り出し、重崎に渡した。佐藤晴彦が殺された事を今初めて皆に伝えたのだが、誰もこの緊迫の空気の中、反応する者はいなかった。
「ああ……そうですか。やっぱりあの部屋にあったんですね」
三つ編みに結んだ髪を解きながら堤冷花は悔しそうに言った。ため息をついた堤冷花の様子を見て、土倉は真剣な眼差しで彼女を見つめた、
「殺さなければならないほど宮下薫さんの事を憎んでいたんですよね。黒田龍三氏の血を引きながら全く性格も境遇も違う宮下薫さんに嫉妬していたんじゃないんですか?」
「勝手なことを言わないで!! 何も知らないくせに!」
黒田の名前を耳にした瞬間、堤冷花は椅子を倒して立ち上がり、テーブルを何度も叩いた。
「あなた……まさか?」
「そうよ。私は……あなたと黒田の娘です」
黒田冴子を一瞥し、すぐに土倉に目線を移して語り始めた、
「私の父、堤は黒田財閥の子会社の社員でした。暮らしは豊かじゃなかったけれど、大切に育ててくれました。高校生になると、大好きな両親に迷惑をかけないようにと、バイトをしてお金を貯めて、高校卒業後にK美容専門学校に進学しました。
そこで薫と出会ったんです。とても元気で明るくて、科の人気者でした。私たち二人はすぐに意気投合し、一緒にメイクの練習をしたり、夢を語り合ったり、買い物をしたり……まるで ”姉妹” のように一緒に過ごしました……。夏休みに帰省すると、私はすぐに父に薫のことをたくさん話しました。その時気付いたんです。父の顔色がどんどん暗くなるのを。どうしたのって聞いても、ごまかすばかりで、何かおかしいとその時は思いました。
そして、私が二十歳になった時、父はすべてを告白して来ました。私が……本当の娘じゃない事を……黒田龍三とその本妻の娘だという事を。
黒田は後継者となる男の子を欲しがっていた。でも、娘の私が生まれたことを知るとすぐに、黒田の元秘書を勤めていた父に託したんです。黒田には何人もの愛人がいました。その中に、宮下という女性秘書がいました。黒田はその秘書を愛し、子供を産ませた。それが薫だって事を父は教えてくれたんです。
何度も父の言葉を遮ろうとしても、父はとめどなく語って来ました。私が薫のことを父に話さなければこんなことには……」
堤冷花は細かく肩をわななかせながら、声をくぐもらせていた。
「愛人の娘でも薫は幸せそうだった。いつもブランド物を身に付けて、私に自慢して来た。妹だって知らなかった頃は、心から尊敬していた。でも、すべてを知らされた後からは、だんだん憎むようになった。お金が欲しかった訳じゃない……ただ……分からないけど……薫を許せなかった……。
事実を知っているとも知らず、薫は私を姉の様に慕ってくれた。離れたくても離れられなかった。好きで居続けようと努力した……でも無理だった……同じ父から生まれたのにこんなにも境遇が違うなんて……許せなかったんです!」
堤冷花が洗いざらい話し終えた後、土倉は冷静に一つの疑問を投げかけた、
「なぜ俺のジャケットのポケットに、ネックレスの釣り糸を忍ばせた? あのまま回収して捨てれば証拠隠滅は出来たはずだよ」
「薫を殺してしまった時、急に我に返ったんです。ああ……なんて事をしてしまったんだろうって……。私の大切な親友で、血のつながった妹……。知らないふりを貫いていれば、友達として、楽しく過ごせていたのかもしれないって……。薫の首に巻き付けた恨めしい凶器を、ずっと隠し持っている事なんて出来なかった。だから、探偵さんに泣きついた隙に握っていたネックレスをポケットに入れたんです」
堤冷花は懺悔の言葉を述べると、そのまま膝をついて、顔を覆って泣き出した。大広間に響く彼女の泣き声は寂しい訴えのようにも聞こえた。しかし、土倉は神父でも司祭でもない。無情にも咳払いをした、
「宮下薫さんは果たして黒田龍三氏を知っていたのかな?」
「え?」
「初日の『宴』の時、俺たちと一緒に大広間に入っただろう? その時、彼女は自分の父の顔を知っていたのかな? あの子の性格じゃ、すぐに飛び付いたりしていたんじゃないか? 「お父さん!」って」
「で、でも……堤の父が……」
「黒田財閥の子会社に飛ばされた育ての父親を本当に信用していいのか。宮下なんてこの日本に何人もいる。偶然、彼女がその苗字で生まれ、偶然にも金持ちの家に生まれ、偶然にも君と出会った。君は本当に、薫さんが血のつながった妹だって証明出来るのか? 一度でもDNA検査をしたことはあるのか!」
土倉が責め立てるように語気を強めると、堤冷花は目をキョロキョロとさせた。察するに、何も物的証拠もなく宮下薫を勝手に妹だと決めつけてしまったのだ。
堤冷花の育ての父はこの世で黒田氏を憎む者の一人だ。秘書からいきなり子会社に飛ばされたのだから。積み重なる鬱憤を堤冷花にぶつけて、血のつながらない娘を使って復讐をしようという短慮な考えが引き起こさせたのだ。なんて冷酷非情な。
「君は無実の人間を殺した」
「おい、土倉……」
「その殺された人物は身に覚えのない罪を背負わされて死んでいった。慕っていた大の親友からね」
彼女は声を上げて泣いた。身を裂くように身体を震わせて泣いていた。宮下薫を殺してしまった罪の重さを感じているのだろう。土倉はそれを一瞥した後、周りに目線を移し次の推理に移った。
───────────────────────
「次に、【オリオンの裁き】で無残な死に方をした予期せぬ被害者・城定氏ですが、彼は大広間で初めて会った時から血気盛んで、要注意人物だと目さぬわけには行きませんでした。しかし、火曜日の夜更け、俺の寝込みを襲おうとした勝手な行いをしたせいで【裁き】という名目で殺されたんです。
ああ、ちなみにどうして、犯人がそのことを嗅ぎ付けられたのかですが……それは、殺された城定氏と黒田龍三氏の部屋に盗聴器が仕掛けられていたからです」
「盗聴器!? そんな!」
黒田冴子が突然驚愕の声を上げた。
「勘違いしていませんか? ご夫人。盗聴器です。隠しカメラではありませんよ?」
「え、あ……わ、分かっているわよ」
「続けます」
土倉は黒田冴子にそれ以上追求せず、咳払いをした、
「城定氏は、過去に黒田家に押田財閥の情報を売った報いで、殺されました。これも佐藤晴彦氏のパソコンで知り得た事です。彼は官僚事務次官の職を利用し黒田財閥のことを調べ上げていましたからね。
城定氏は押田家の弱みをすべて黒田龍三氏にリークし、それをネタに龍三氏は統合契約と偽って押田家に近付き、遺産をすべて黒田家に譲渡するよう姑息な手段を使ったんです。それを担当したのが弁護士であった佐藤晴彦氏……。
これでお分かりですね。城定氏と佐藤晴彦氏が押田家の陥落を誘導した。そして、二人を殺害したのは……」
土倉は後ろを振り向き、窓の方に目線を向けながら手を後ろで組んでいるタキシードの男を名指しした、
「香川渡さん、あなたですね?」
指をさされた香川は、顔色一つ変えず背筋を正したまま響く声で訴えて来た、
「私が殺害したという証拠はあるのですか?」
そう言うことを見越してか、土倉は香川の方に歩み寄りながら、証拠となり得る言葉を突き付けた、
「あなたは、弓道をやっていましたよね。招待客の中で、瞬発力と体力があるのは誰の目から見ても明らかだ。齢五十でありながら、魂が去った遺体を軽々と持ち上げた。刑事である謙太が肩で息をしているのにあなたは違った。
それに、事情聴取をした時、なぜ城定氏が『矢を射抜かれて死んだ』って分かったんですか? あの傷口は矢でなくても付く傷口です。例えば、アイスピックとかね。あなたの袖口についた赤い痕も、城定氏の血痕に違いありません。ケチャップではあんなにどす黒くはならないですからね。鑑識に回せばすぐに判るはずです」
土倉の推理にも微動だにせず、香川は無表情のままじっとこちらを凝視している。土倉は更に続けた、
「それに、この『館』を熟知しているあなたなら、サソリの毒を手に入れる事は造作も無い事です。どこか目につかないところに毒を持つサソリをカゴにでも入れて飼育した。エンバーミングの技術を持ち合わせているなら解毒療法も知っているでしょうし、サソリの毒を抽出することもあなたなら朝飯前でしょう?」
土倉が話し終え、何かを訴えたそうにしている香川に「どうぞ」と促した、
「確かに私は弓道はやっておりました。しかし、傷口で一目見て矢であることは明白でございます。それに、どうやって、城定様をオリオン座の形に出来たのでしょう? この老体にそんな力は───」
「オリオン座の形になっていたと誰が言いました?」
香川の言葉を遮り、決定的瞬間を見逃さなかった。
「え? あ、重崎様が教えていただきましたが」
「謙太は被害者の傷の具合とその死因を伝えただけです。オリオン座の形で死んでいたなんで誰もあなたに教えてませんよ?」
土倉はわざとらしく肩をすくめた。香川は慌てて弁論した、
「へ、部屋の清掃をした時、ち、血の線で察したのでございます!!」
「残念ながら、城定氏の部屋にちょっとした細工をさせて貰ったんですよ。遺体が打ち付けられた壁に元々掛かってあったタペストリーを戻しておいたんです、血の存在なんて知り得なかったはずです。知っているのは……殺した張本人。
そもそも、部屋の外からは大の字の形になっている遺体が見えたとしても、血の線は死角だったはずだ。あんた、黒田龍三氏の後ろからぴょこぴょことつま先立ちをして見ていましたしね。到底オリオン座の形をしていたなんて分かる訳がない」
「サソリなんて物騒な物、こちらに庭には飼っておりません───」
「───なんだったら毒なんて、簡単に手に入りますよ。今は裏サイトなんてものがありますからね」
土倉がそう断言すると、香川は黙ったまま俯いた。今まで姿勢正しかったのが一気に腰が曲げ始めた。やがて、体中が震えだし、こちらを睨みつけて来た、
「あやつは……旦那様の裏切り者でございます……」
土倉は思わず笑いだしそうになるのを必死に堪えた。こういう、人間が本性を現す姿には何にも替え難い面白さがある。
「二十一年前にふと当家の『館』に住み込みで働きたいと願い出た城定は、旦那様の小間使いをしておりました。買い物から何まで、雑用をお命じになられておりました。次第に、才気を見出されたのか、財閥の仕事を手伝うようになり、サロンで長談義することもしばしば。城定に対して紅茶を淹れた時は屈辱でございました。
しかし、徐々にあやつの正体が明るみになりました。城定は黒田龍三から送られて来たスパイだったのです! それを知った時、既に旦那様は統合契約を交わされた後でございました! 弁護士であった佐藤と結託し、城定は内密にされていた会社の赤字という押田家の弱みをすべて黒田龍三に漏洩したのです。旦那様は……会社のために……やむなく……くっ……」
香川は口に拳を当て、吼え声を上げた。
「まもなく、押田財閥は破産……。私ども使用人を立ち去らせ、奥様とお二人でこの『館』で……あぁ……。あやつを許せなかったのです! 二十年経った今、多額の金を黒田から得たはずの城定は、気付けば浮浪者に! そして、佐藤は弁護士から官僚事務次官に! あやつらは、社会のクズ! 死んで当然なのですよ!!」
「死んで当然……か。あんたそういう人間だったんだな香川さんよ」
「私は、あなたを殺そうとした城定を止めたのですぞ。感謝してほしいくらいですな」
「感謝だ? ふざけるな!!」
土倉は拳を固く握り締め、テーブルに勢いよく叩きつけた。紅茶や食器が小さく揺れた。
「人の命を何だと思っている! 訳を話せば分かってくれたかもしれない。黒田を同じく憎んでいる者同士、分かり合えたんじゃなかったのか!」
「あなたに何が分かる! この口惜しさを分かって溜まるものか!」
香川は土倉をねめつけ指を突き付けてきた。礼儀正しく表の顔を表さなかった老紳士が、今では常軌を逸し、激しい剣幕で怒鳴り声をあげている。土倉は、引き出した本性に心苦しく思い、冷静さを取り戻して口を開いた、
「なぜ城定氏がホームレスになったか、知ってますか?」
「ふんっ! 知りたくもないね!!」
「城定氏には病気の一人娘がいたんです。その子は不治の病で、余命いくばくもない状態だった。父ひとり子一人で、多額の治療費と手術代が掛かり、小間使いの給料だけじゃ食っていくだけでもやっとだったんです。押田社長に願おうと思ったが、赤字続きなのを知っていたから言うに言い出せなかった。それで、黒田家に取り入り、多額の治療費を得る為に、泣く泣く押田家を裏切ったんです」
「そんな話、デタラメだ!!」
「俺も初めはきれいごと過ぎると思っていました。でも、押田家との人生は幸せだったって、佐藤氏に漏らしていたそうですよ。佐藤氏も城定氏も、黒田家に雇われただけの男だったんだ。二人を恨む資格はあんたには無い」
香川は信じられないとでも言う様に頭を振り、床に膝をついた。土倉は続けた、
「しかし、押田財閥が破綻したその日、娘さんは父親を残して逝っちまった……。それからの人生は、苦難そのものだった。押田家を裏切った事への罪悪感、娘を救えなかった自身を責め続けた。死ぬに死にきれず城定氏は黒田氏から受け取った多額の金を持て余し、何もかもを捨てて、娘さんの死を忘れるようにギャンブルに走った。金が尽きた挙句には路上生活……。あいつがこの『宴』で殺したいと願ったのは、黒田氏だったんだよ。自分の人生を変えてくれた、押田社長に報いる為に……」
香川は、知り得なかった城定の思いを知り、号泣した。土倉はそれを眺めた後、同情しないようにかぶりを振って推理を続けた、
「堤冷花さん。佐藤晴彦氏の部屋を荒らしたのは君なんだよね? 彼の後ろに回ったりするなり、香川さんがサソリの毒入り注射器で彼の首を刺した後、死んだのを確認して彼の部屋を漁り、パソコンを探した。しかし残念、見つからなかった。佐藤晴彦氏は犯人の動きを把握していたようだね」
堤冷花は項垂れたまま鼻を啜り上げるだけで何も応えなかった。土倉はある人物の反応を伺った、以前俯き、動きを見せない。
───────────────────────
「そして、最後……黒田龍三氏……。この事件のキーパーソンと言っても過言じゃない……」
「私じゃないわよ、探偵さん」
「ご夫人は黙っていてください。あんたは、そこにいる堤冷花さんを捨てた事を反省していてください。あんたらが捨てなければ、犠牲者が一人増えずに済んだんだ」
急にしゃしゃり出て来た黒田冴子を論破し、土倉は推理を続けた、
「まずその前に、この事件の謎について推理したいと思います」
「謎? なんだそれ」
重崎が口をはさんだ。考えればそのことについてまだ話をしていなかった。
「鍵が掛かっている部屋にどうして入れたのかっていう謎だ。佐藤晴彦氏が殺され、部屋を荒らしている間、部屋は密室状態だった。でもそれは簡単な密室トリック。抜け穴だよ」
「抜け穴?」
「最初に見つけたのは城定氏の部屋にある壁収納の中だ。その次が黒田龍三氏の部屋。そして佐藤晴彦氏の部屋。どれも隣室とクローゼットの中で繋がっていた。壁紙を綺麗に元に戻すことで目を欺かせたと思ったんだろうが、向こう側の抜け穴を閉めた拍子に壁紙の片方がめくれるのは気付かなったようだね」
『館』の部屋は廊下終わり側の俺たちの部屋に続けて、松岡美幸さんの部屋、空き部屋、黒田夫妻の部屋。その反対側は城定氏の部屋、空き部屋、佐藤晴彦氏の部屋、堤冷花さんの部屋となる。この空き部屋と殺された者たちの部屋は通り道になっている……そうですよね、香川さん、堤さん」
土倉が二人に問うとそれぞれ頷くだけで何も言わなかった。
「話を元に戻します。黒田龍三氏が殺された凶器の斧は、壁に立てかけられてあった射手座のエンブレムから取ったもの。あらかじめ、香川さんが用意したものでしょう。黒田氏は二度、この『館』を訪れたと言っていました。しかし、あの男は、刀にも陶器にも、絵画にすらも興味がない、金の亡者だ。それを知り今回、あのエンブレムを部屋に飾った。現に、ケガしたなどのクレームもこの四日の間無かったことから一切あの豪華な装飾に眼中が無かったんでしょう。
部屋中を知り尽くしてる香川さんの犯行とも考えましたが、犯行が行われた二十三時五十分といえば、あんたが、俺たちの夕食の片づけをしていた時間だろう。それに、矢を放ったり、ナイフで突き刺す事が出来たとしても、斧はさすがに重すぎて狙いが定められない。堤さんは、部屋の内装を知り得ないことから不可能と見てる。本当は堤さん、あんたが殺したかったんだろうけど、ある人の為に席を空けておいた」
土倉が長々と推理を止まらずに語り、手前にあった水でカラカラになった喉を潤した。無論、匂いと毒味を済ませてからだが。
「さあ、もういいかげん口を開いて頂けませんかね? ……松岡美幸さん」
彼女の前に立ちながら、土倉が重い口を開けた。
「あなたが、この『オリオンの宴』の主催者であり、押田家最後の血筋なんですよね?」
「ははは……依頼人を疑うなんて、さすが土倉さんですね……」
「あなたは初めから怪しかった。届けられた招待状に住所と名前の記載が無いのにそれを開けて読んだこと。その招待状を読んだ後に突如として電話が掛かったということ。それから、本を読む場所を図書館ではなくあえて中庭を選んだこと。
この『館』に来た事がないと言いながら、虫が飛んでくるかもしれないあの庭に、女性ひとりで平然とガゼボに座ってたのがおかしいんですよ。この『館』が自分の家でもあるかのようにあなたは普通に過ごしていた」
松岡美幸は物悲しそうな目で土倉を見つめていると、隣にいた堤冷花が口を開いた、
「美幸さん……私がパソコンを早く握りつぶしていれば……こんなことにならなかった」
彼女に縋り付きながら申し訳なさそうに言う堤冷花にそっと目を見て諭した、
「冷花……自分を責めないで頂戴……。あなたに、薫さんを殺させたこと……後悔してるわ」
「そんな……。た、探偵さん! 私です! 私が黒田を殺りました!」
堤冷花は立ち上がり、自身の胸に手を当てて自供し出した。松岡美幸を庇おうとしての行動だろう。もしくは土倉を惑わそうとする魂胆かもしれない。しかし、当の本人は落ち着き払った声で堤冷花の手を引いた、
「もういいのよ……。このまま、香川に『宴』を終わらせて、ひっそりとパパとママの所へ逝こうと思っていたのに……土倉さんを侮っていました。どうして私が黒田を殺したと分かったのですか?」
「頭です」
「頭?」
松岡美幸が首を傾げた。
「俺が書斎で、黒田氏が防弾チョッキを着ている事を謙太と話していた時、扉の外で聞いていましたよね? 書斎にも盗聴器が仕込まれていました。それに、普通の人間なら心臓を一突きするのに、実際の黒田氏の亡骸は頭をかち割られていた。それを見て察したんだよ、黒田氏が防弾チョッキを着ていたと知り得た人物。それこそ、あなただということを」
「でも、土倉、盗聴器は香川にも堤冷花も聞いていた可能性はあるんじゃねえか?」
「それは考えにくい。先ほど、堤冷花が彼女を守ろうとした姿勢は立派な主従関係だ。盗聴器を松岡美幸さん一人が握っていると考えていいだろう」
松岡美幸は目を瞑りながら微笑んだ、
「ええ、そうよ……私が黒田を殺した。パパを騙して、押田財閥の座を奪った成金野郎よ……」
そう吐き捨て、黒田冴子の方を睨み付けた。
「私が、押田財閥の社長・押田重三郎と押田冬子の娘……押田美幸。あいつの頭をかち割った時、すべてが解放された気持ちになった……後悔も無かった……。佐藤を殺す予定は無かったけれど、押田家を土倉さんに伝えた事を知り、証拠が部屋にあるんじゃないかと思って、香川に頼んで殺させ、冷花に部屋を探らせたのよ……」
「三度も『オリオンの宴』を開いた理由は何故ですか?」
土倉が尋ねると、松岡美幸は応えてくれた、
「すべては黒田を殺す為。
パパとママはオリオン座が好きで、この『館』を建てたの。元々は麻布にある今の住まいを持っていたけれど、私が生まれる年にここを別荘として建てた。森の中だから町の灯りも届かないここは、星座鑑賞にはもってこいの場所だった。過去二回の『オリオンの宴』は純粋に星座鑑賞を楽しむために開いた鑑賞会。星が好きだという噂を聞き付け、黒田を招待したら、まんまとやって来たわ。
私は姿を現さず、ひたすら奥で監視し続けた。両親が自殺した後、あいつはこの『館』を訪れた事も無ければ、押田家の資産に登録していなかったから奪われる心配も無かった。香川と冷花に変装させて、使用人として『宴』を支えてくれた。私達全員、黒田を憎みぬいている。今にも殺しそうだったけれど、なんとか堪えたわ……」
松岡美幸は目を瞑りながら紅茶を飲み干した。彼女の目はまさに親の仇を果たしたような目をしていた。
「最後にひとつだけ……何故、俺を『宴』の同伴者に選んだ? 俺を呼ばなければ、思う存分殺せたんじゃないのか」
怖い事を言っているのは分かっている。しかし事実、土倉探偵事務所に依頼しなければ、犯行が明るみになる事は無かったはずだ。むざむざと探偵と刑事を呼び寄せて、捕まえてくださいと言ってるようなものだった。
「さぁ……もう……恨みから解放されたかったから……かな。オリオン座が好きな両親を示すため、神話の伝説とオリオン座を模した殺害方法で彼らを粛清した。パパとママの大好きなものだから穢れることを恐れたけど。それは、私が死んでから二人に謝ればいいわ」
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