葉月 子頭

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第一章 side1

3、告白

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今度こそ告白するとか言っといて、未だに決心し切れてない僕。
本当に情けない…。
もうすぐ2年も終わる3月。
次も同じクラスになるだろうけど、いい加減けじめをつけないと。

よし。

「ねぇ、タカ。
 今日の放課後、誰もいなくなるまで、残ってて欲しいんだ。
 今日、部活無いだろ?」

「……分かった。」

タカは笑って答えてくれた。
今日はカイの遅い日。
どの道、待ってなきゃならない。
だから、誰もいなくなった教室で、告白しようと思った。
今日、返事を聞くつもりは、ない。
なるべく、よく考えてもらう。
そうすれば、双方共に痛みが少なくてすむ気がするんだ。

放課後になった。
みんなが帰ってゆく。
そして、先生も教員室へ戻っていった。

「…で、オレに話があるんだろう? タク。」

「うんっ…。えと、その、



 ……好きなんだ、タカの事が。


 あの、いつからか分からないけど、

 いつの間にか、

 タカの事すごく好きになってた…!

 それで、…返事は今じゃなくていいって言うか、その


 …できるだけ、よく考えて欲しいんだ。

 …きょ、今日はこれだけだから。

 残っててくれてありがとう! じゃな。」

「あっ…タク…!」

後ろで呼ぶ声がしたけど、
僕は恥ずかしくて、足を止められなかった。

門にはいつものように、カイがいた。

「今日は遅かったな。どうしたんだ?」

「あのね、今日、告白したんだ。」

「……そっか、よく頑張ったな。」

カイは僕の頭に手を乗せてくれた。
カイの体温が、すごく温かかった。

「で、返事は?」

「まだ、聞いてない。
 なるべく、よく考えてもらおうと思って。
 それは僕の自分勝手な考えかもしれない。
 でも、もし悪い方に転んでも、痛みは少ないと思うんだ。」

「…そっか…。」

カイは何も言わなかった。
そっとしといてくれてるようで、少し嬉しかった。


翌日、いつものように登校する。

「タク、話がある…!
 放課後、屋上にいて欲しいんだ。」

「うん、了解。」

多分、昨日の返事だろう。
僕は、どんな返事でも、
受け入れる覚悟ができている…はずだ。

僕は、一日上の空の状態で授業を終え、
放課後になったので屋上へ向う。

当然、誰もいない。
しばらく、屋上のベンチでタカを待とう。

10分くらい経った頃、足音が近づいてきて、
勢いよく扉が開けられた。
タカはクラブ服を着ていた。

「お…遅くなって、ごめん…!」

走って来たのだろう。
すごく、息が切れている。

「大丈夫だよ。とりあえず座って。落ち着こう?」

タカは頷いて、僕の隣に腰を下ろした。

「…オレなりに、よく考えてみたんだ。…」

落ち着いたタカは、口を開いた。
僕は黙って聞く。

「オレは、タクの事、好きだよ。
 でも、多分タクの好きとは違うと思うんだ。
 そんなふうに想ってくれてるのは、正直、嬉しかった。
 だけど、オレには好きな人がいて、
 いくら叶わないって言っても、
 諦め切れなかった…。」

「…タカの好きな人って…?」

恐る恐る聞いてみる。

「母さん。って言っても、血は繋がってないんだけどな。
 …父さんは、20も若い人と再婚したんだ。
 すごくキレイな人で、とっても優しいんだ…。」

「……そっか…。」

最初は驚いたけど、その気持ち、何だか分かる気がした。

「なぁ、タク。
 オレ達、まだ親友でいられる?」

「……も、もちろん…!
 …よく考えてくれてありがとな。
 僕、人待たせてるから。じゃな。」

僕は、屋上を走り出た。
タカの言葉はすごく嬉しかった。
これからも、親友でいられる。
なのに、この溢れてくる涙は何なんだ…!
僕はさっき、ちゃんと笑えていただろうか。
嬉しさよりも、悲しさの方がずっとずっと大きい。
何が痛みが少なくてすむだ…!



「タクっ…!」

僕はいきなり腕を掴まれた。
門を走り出ようとしたみたいだ。
泣いているのをカイに見られてしまった…。

「タク、どうしたんだ?」

「…なんでも…ない…!」

「…なんでもなくないだろう?
 聞いてやるから、ほら、言ってみ?」

カイの声はとても優しかった。

もっと涙が溢れた。

「……返…事、ダメ…だった…。
 これ…からも、親友で…いられ…る…のに、
 涙…が、止まら…ない。」

僕は、泣きながら説明した。

カイは、口を真横に引くと、
僕の手首を掴んで、無言で歩き始めた。
僕は引かれるままに付いて行く。
心なしか、怒っているように見えた。
僕は、何が何だか分からなかった。
ただ、無言で手を引くカイに抵抗できなかった。


僕は、カイの部屋に連れ込まれ、
キス、された。
それも深い…キス。

「ちょ、ちょっと待ってよ。カイ…!」

僕はカイの体を押し離した。
頭がクラクラする。
自分でも顔が赤くなっているのが分かる。
…心臓が煩い。

「……タクに好きな人がいるのは、分かってた…!
 だから、ずっと言うつもりなんかなかった。
 でも、タクが振られて、泣くから、堪えられなかった。
 タク、好きだ…!」

カイは僕を強く抱き締めた。
それだけで、本気なんだと判った。

「でも、なんで? いつから?」

僕はカイの腕の中で問う。

「アケミちゃんと別れた日、言われたんだよ。」


~回想~(カフェにて)

「あたし、カイちゃんと付き合ってられないわ。」

「え?    なんで?」

「カイちゃん、よく聞いてね。
 カイちゃんの好きに感情が見られないってのは聞いてるよね?」

「あぁ、まぁな。」

「あたし、その理由見つけちゃった。」

「えぇ!? 俺でさえ分かってないのに?」

「あ、あんた自覚なかったの? 呆れた。
 あんたはねぇ、あの幼なじみ君が好きなのよ!」

「え、タクの事? なんでぇ。」

「カイちゃんのあの子を見る目は、
 恋してるような、とても優しいものだったのよ。
 それを見た時、少し悔しかったわ。
 その目を自分に向けて欲しかった。

 …なんて、ワガママよね。

 ほら、つべこべ言わずに、
 さっさと自分の気持ちに気付きなさい。」

~回想終了~


「で、思い返してみたら、
 アケミちゃんの言う通りだった。
 考えれば考えるほど、タクの事で一杯になるし、
 想えば想うほど、タクの事が好きになった。
 直ぐにとは言わない。
 けど、俺の事、少しずつでも好きになってくれないか?」

この時、僕の顔が真っ赤になっていることなど、
言うまでもない。
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