3度目の初恋

床間四郎

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最初の初恋

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 ――昔から僕は外見に惑わされるタイプだった。女子の見た目で一目ぼれをしてしまうタイプだった。小学5年生の時に初めて同じクラスになった女子がいた。彼女は背が高くてよく目立つので存在は多少知っていたが、同じクラスになってその美しさを初めて知った。同い年の小学生とは思えないほどに、冷静で大人びて見えた。実際、身長も当時すでに成人女性くらいあったと思うので、彼女がランドセルを背負って校帽を被ってさえいなければ僕は彼女を中高生くらいには誤解していたと思う。
 彼女はクラスの人気者だった。特に女子からは人気で、彼女の周りにはいつも数人の女子がいた。休み時間にはいつも教室の外に出て友達と遊んでいた。一部の男子からはその高身長をからかわれていたが、彼女自身は特に気にしている様子はなかったと思う。ある時僕は彼女に一目ぼれした。おそらく出会った時から気になっていたと思うのだが、気持ちを自覚したのはそれから1か月くらい経ってからだった。小学5年生、初夏の出来事だった。それまで女子といえば対立する相手だったので、自分の心境の変化に自分でも驚いた。男が女を好きになるのが普通であるというのは知識としてはぼんやりと知っていたはずだが、当時の僕は自分の身にそんなことを起きるとは直前まで夢にも思っていなかった。
 新学期が始まって何か月か経った時、クラスで席替えがあった。その時先生はおらず、児童だけで学級代表を中心に席を決めた。
「まず、視力とかの問題でこういうの席じゃなきゃ嫌って人、いますか?」
 先生の真似をして代表が席替えを始める。真っ先に手を挙げる人はおらず、どこの席がいいかなんて、前後左右の友達とおしゃべりをしている。その時一人の女子が手を挙げた。
「あ、私、身長高いから後ろの方がいいかな……って」
 にこにこしながら、少し照れ臭そうに、しかし甲高く通る声ではっきりと彼女はそう言った。その途端、クラスの一部から笑いが起こった。学級代表は笑いながらそれを容認した。
 クラスが緩やかな笑いの渦に巻き込まれる中で、僕はその光景を信じられずにいた。大人びて冷静だと思っていた彼女の正体を知ってショックを受けていた。もちろん、彼女は悪くない。単に僕が彼女に幻想を抱いていただけなのだ。僕は外見で内面までを知った気になっていた自分が恥ずかしくなった。その日、僕の初恋が終わった。そして人は中身であると固く信じるようになった――
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