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「ソイツを殺す手間を省いてくれたことには礼を言おう」
首を落とされたゼブエラの王と同じような気味の悪い笑みを浮かべながらゼブエラの王子の一人が言った。
「おいおい、まるでお前が次の王に決まったかのような口振りだな?」
「俺以外に誰がいる?」
「俺だろ?」
「おい、ラビスの王子、ついでにコイツらも殺さないか?殺してくれればお前たちはとりあえず無事に帰してやるぞ?とりあえずは、な?アハハハハ」
三人三様ではあるけれどその好戦的な様はゼブエラ王族の血を引いていると分かりやすいものだった。
そんな中、ずっと気配を殺していたハーマンが三人の前に立った。
「おいおい、お前も参加するのか?まさかな?」
「ボクちゃんはちょっと待っててねぇー?」
「そうそう、後でちゃんと殺してあげるからいい子で待ってなさーい」
ゲハハハハと下品な笑いだけは揃えた三人。
「お前たちを殺すのは俺だよ」
ハーマンは静かな声で言った。
「あ゛ぁ?誰に口聞いてんだ?」
「口の聞き方を教えてやろうか」
「いや、殺そう。今すぐ」
いつも表舞台に上がらない者が突然立ち上がった時には恐れるべきだと言うことをこの三人は知らない。
苛立ちを前面に出し、負けるわけがないとたかを括って剣を抜いた。
ハーマンの剣はまだ腰に刺したまま。
「前から聞きたかったんだけど…三人とも俺のこと怖くないの?」
「はっ、なんでお前を怖がらないといけない?」
「出来損ないのお前をな?」
「アハハハハ!ほんとだよ。ボクちゃん剣なんか使えないだろ?しまいな?」
ハーマンは静かに歩を進めた。
そしてハーマンから見て一番左に立っていた剣をしまえと言った王子の首がリードヒルも感心するくらい静かな太刀筋で刎ねられた。
「っ!!!???」
同じ血が流れているとは到底思えないくらい無害だったハーマン。
その男が今、兄弟の首を刎ねた…
二人は恐怖を感じた。そして同時に怒りも感じた。
彼らにとって他人から恐れられると言うことは快楽を伴う一つの優越感。それをなぜ自分が”異色”であるこんな奴に恐怖を感じなければならないんだ?!そんな気持ちだった。
「本当お前たちは頭が悪いよな…俺が本当に出来損ないなら他の兄弟と同じくとっくに死んでると思わないか?」
残された二人の王子は握っていた剣にきちんと力を込めた。
そうしていないと剣を落としてしまいそうなくらいの殺気をハーマンは放っていた。
三人の距離は剣の長さ一つ分にまで縮まっている。もういつでも互いの首をすぐに落とせる位置だ。
-なんだ、コイツ…コイツはなんなんだ…?!
-コイツが今まで生きてこれたのは…
「俺が今まで生きてこれたのは自分たちのおかげだとでも思っていたか?消すべき兄弟が減った今、実害のない俺はいつでも消せるからとお前たちが後回しにしてきたおかげだとでも思っていたか?」
一人がハーマンに剣を振り上げたけれど、そんな大振りの剣では擦り傷一つ付けられなかった。
剣が落とされ、首がまた一つ落ちた。
「っっっ!!!お、おい!ラッシュ!何をしている!剣を拾え!早くこいつを殺せ!!」
最後に一人残された王子は後退りをしながらラッシュと呼んだ者に視線を送った。
この王子の発言には臣下たちも流石に加勢の声を上げた。
「そ、そうだ、ほら、お前たち、いけ!」
「ハーマンに次の王子になられてみろ!この国は大変なことになるぞ!」
「動け!お前たち!!!」
ゼブエラの兵、誰一人動かない状況はやっぱりティナベルの予想通り。
「この国は大変なことになる?何を今更……おい、そいつらが逃げないよう先に捕まえておいてくれ」
一人の兵がそう言った。
それはさっき王子がラッシュと呼んだ人物だった。
「な……っ!おい!ラッシュ!!!貴様…この俺を裏切るのか?!」
「裏切る?最初から尽くしてきたつもりはない。大人しく殺されろ、クソ王子」
「!!!」
ラッシュの声を耳に入れて最後の首が落とされた。
「ありがとう、ラッシュ、それから他のみんなも。無駄な血が流れなくて済んだ」
ハーマンは臣下を捕らえている兵たちにそう言うと剣をしまいアルフレッドの前に立ち膝をついた。
ゼブエラの王族にこんな畏まった礼儀作法を教える者はいない。
ノーストン家に滞在していた時に学んだのだろうとラビス一行は思った。
「この度の一件、心から感謝します」
「顔を上げてください。次のゼブエラの国王はあなたということでいいですか?」
「俺はもうどことも戦争をするつもりはありません。今回の一件でラビスとの戦を終結とさせて頂きたい。勝ったのはあなたたちです。もしラビスがこの国を望むのであれば…」
「望みませんよ。ラビスにこの国は大きすぎます。この大陸にいくつの国があろうとそれぞれの国が幸せで互いの交流が穏やかであること、それがラビスの望みです。民のためにもゼブエラ王国はゼブエラ王国として変わるべきでしょう」
「…ありがとうございます。重ねてお礼を言わせて下さい。新たなゼブエラ国王として」
ハーマンが深く頭を下げると臣下の一人が「認めない!!」と叫んだ。
その声は静かな広間に大きく響く。
「冗談じゃない!あなたは王に相応しくない!」
「そうだ!そこに転がってる王子たちの子にも王位継承権はあるんだ!」
「我々は死んだ王子の子を次の王に推す!」
十人程いる臣下、皆が口々に似た言葉を吐いた。
「王に相応しくない、か…」
そう呟いたハーマンは失礼します、とアルフレッドに軽く頭を下げるとゼブエラ兵によって一箇所にまとめられた臣下たちの前に歩を進めた。
ぎゅうぎゅう詰めにまとめられていることを覗けばその光景は王子たちの首が刎ねられた時とよく似ていて、つい今しがたの出来事を光景を鮮明に思い出させた。
「相応しくないって言葉は褒め言葉として受け取っておくよ。それからあなたたちが推すと言った王子たちの子だけど継承権のある子供で生き残ってるのは二人だけ。二人共王位継承権は既に放棄しているよ」
「はっ!喋れない子供がどうやって放棄をする?」
「あぁ、やっぱりあなたたちは知らないか。十に見たない子供の代理人は母親でも務まるんだよ?腐りきったゼブエラの法律の中にも一応多少まともな法律はいくつかあるんだよ」
「…っな!!!」
「今頃母親の胸の中ですやすやと寝ているんじゃないかな」
「まさか…」
「いつの間に…っ!!」
「いつの間?可愛い甥っ子たちは生まれた時からずっと母親と一緒に過ごしてるよ」
「!!!!」
王位継承権のある子供はゼブエラの王に相応しい教育をさせるべく生まれと同時に母親と引き離される。
そして母親も子供もそれぞれ別の棟で隔離される。再会出来るのはどちらかが死んだ時だけ。
臣下たちが直接子供に教育をするのは四歳からでそれまでは臣下も会いに行かなければ父親である王子でさえ会いに行かない。
故に、その警備はそれ程固くない。
ハーマンにとってただただ恐怖という支配で命令されて泣く泣く子供を閉じ込めさせられていた兵や乳母を自分の一派に取り込むことはは容易く、全てを支配しきれてるとタカを括っていた臣下たちはそこにきちんと子供がいるのかどうか、成長はどんな感じなのか、定例の報告をさせてもその嘘には全く気付かなかった。
「わかった?あなたたち俺を推さなくとも王位に就ける者は俺しかいないってこと」
「っ……」
「これはあなたたちのしてきたことの結果だよ?身内同士の殺し合いを黙認したりまたは手を貸したり…誰が死んでもまだ他がいると思い放置してきた結果、結局残ったのはあなたたちが最も王の座に座らせたくない異色の俺。残念だったね?あなたたちはゆっくりゆっくり自分で自分の首を絞めてたんだよ」
ハーマンは鞘ごと剣を抜いてコツコツと床に打ち付けて言った。
臣下たちに王族以外の誰かを推すことは出来ない。というより、その誰かがいない。
臣下たちの望む誰かは”まともじゃない人間”。
-こんなことになるなんて…
臣下たちは異色の王子など他の王子の手によってその内死ぬだろうと気にも留めていなかったこと、ハーマンの言う通り王になられては一番困る異色の王子を一番最初に一掃するべきだったことを酷く後悔した。
「わ、私はハーマン王子…いえ、ハーマン国王陛下について行きます!前々から私は」
「誰が喋っていいと言った?」
「!!!!!」
剣は床から離れて口を開いたものの首にあてられる。
剣が抜かれたわけでもないのに、あてられた臣下は物凄いスピードで汗を湧き出した。
誰もが注目した剣の行方。それはハーマンの腰に納まったけれど、逆にその行動が更に臣下たちに恐怖を与えた。
「国王の名のもとにあなたたちには任を降りてもらう。当然ながらあらゆる地位も全財産も没収するよ」
「!!!」
「残してやるのはその身一つ。唯一残ったその体については今ここで首を落としてもやってもいいし民衆の前に差し出してもいいけど…」
「!!!!それだけは!!!陛下!」
「何でもします!何でもしますから!!」
「お願いします!!!」
民衆の前に…そう聞いた途端身動き取れないくらいの狭いスペースで誰もが我先にと地面に頭を擦り付けた。
今まで蔑み続けてきた異色の王子にこんな目に頭を下げることになるなんて…とは思わない。そんなことを思っている余裕さえなかった。
罰せられるにしても民衆の前に出されることだけはどうしても避けたい一心だった。
民衆の前に差し出されれば…一思いに死ぬことはまず叶わないに決まっている。空っぽの頭でもそれくらいは分かった。
「安心していいよ。お願いされなくてもしないから」
ハーマンがそう言うと臣下達は一斉に安堵の顔を見せた。
異色の王子だけあってそう簡単に命を奪うつもりはないのかもしれない。
命さえあれば…国外に逃げ延びてどうにか…
そう安心しきった臣下は何人もいた。
「そのやり方をしては今までの王と変わらないだろうからね。”ここ”では殺さない」
「っ?!?!?!」
「然るべき法の下裁きを下す。勿論死刑だろうけどね。刑が実行されるまでは牢屋の中で懺悔でも命乞いでも好きにしてればいい。あなたたちが民にしていたようにね?」
連れて行ってくれ、とハーマンが兵に言うと数人の兵が臣下たちを無理矢理立たせる。
「あぁ、一つ忠告しておく。老いたあなた達では兵士相手に暴れても無駄だってことくらいは分かってると思うけど兵の買収も諦めた方がいいよ?今まで彼らをどれだけ見下して扱ってきたかは自分たちが一番よく知っているでしょう?彼らの恨みは相当だよ?下手な事をすると牢屋に入る前にあの世生きかもね?それじゃ、今宵牢で良い夢を」
力なくした老人の背を後ろに扉がバタン、と閉められた。
首を落とされたゼブエラの王と同じような気味の悪い笑みを浮かべながらゼブエラの王子の一人が言った。
「おいおい、まるでお前が次の王に決まったかのような口振りだな?」
「俺以外に誰がいる?」
「俺だろ?」
「おい、ラビスの王子、ついでにコイツらも殺さないか?殺してくれればお前たちはとりあえず無事に帰してやるぞ?とりあえずは、な?アハハハハ」
三人三様ではあるけれどその好戦的な様はゼブエラ王族の血を引いていると分かりやすいものだった。
そんな中、ずっと気配を殺していたハーマンが三人の前に立った。
「おいおい、お前も参加するのか?まさかな?」
「ボクちゃんはちょっと待っててねぇー?」
「そうそう、後でちゃんと殺してあげるからいい子で待ってなさーい」
ゲハハハハと下品な笑いだけは揃えた三人。
「お前たちを殺すのは俺だよ」
ハーマンは静かな声で言った。
「あ゛ぁ?誰に口聞いてんだ?」
「口の聞き方を教えてやろうか」
「いや、殺そう。今すぐ」
いつも表舞台に上がらない者が突然立ち上がった時には恐れるべきだと言うことをこの三人は知らない。
苛立ちを前面に出し、負けるわけがないとたかを括って剣を抜いた。
ハーマンの剣はまだ腰に刺したまま。
「前から聞きたかったんだけど…三人とも俺のこと怖くないの?」
「はっ、なんでお前を怖がらないといけない?」
「出来損ないのお前をな?」
「アハハハハ!ほんとだよ。ボクちゃん剣なんか使えないだろ?しまいな?」
ハーマンは静かに歩を進めた。
そしてハーマンから見て一番左に立っていた剣をしまえと言った王子の首がリードヒルも感心するくらい静かな太刀筋で刎ねられた。
「っ!!!???」
同じ血が流れているとは到底思えないくらい無害だったハーマン。
その男が今、兄弟の首を刎ねた…
二人は恐怖を感じた。そして同時に怒りも感じた。
彼らにとって他人から恐れられると言うことは快楽を伴う一つの優越感。それをなぜ自分が”異色”であるこんな奴に恐怖を感じなければならないんだ?!そんな気持ちだった。
「本当お前たちは頭が悪いよな…俺が本当に出来損ないなら他の兄弟と同じくとっくに死んでると思わないか?」
残された二人の王子は握っていた剣にきちんと力を込めた。
そうしていないと剣を落としてしまいそうなくらいの殺気をハーマンは放っていた。
三人の距離は剣の長さ一つ分にまで縮まっている。もういつでも互いの首をすぐに落とせる位置だ。
-なんだ、コイツ…コイツはなんなんだ…?!
-コイツが今まで生きてこれたのは…
「俺が今まで生きてこれたのは自分たちのおかげだとでも思っていたか?消すべき兄弟が減った今、実害のない俺はいつでも消せるからとお前たちが後回しにしてきたおかげだとでも思っていたか?」
一人がハーマンに剣を振り上げたけれど、そんな大振りの剣では擦り傷一つ付けられなかった。
剣が落とされ、首がまた一つ落ちた。
「っっっ!!!お、おい!ラッシュ!何をしている!剣を拾え!早くこいつを殺せ!!」
最後に一人残された王子は後退りをしながらラッシュと呼んだ者に視線を送った。
この王子の発言には臣下たちも流石に加勢の声を上げた。
「そ、そうだ、ほら、お前たち、いけ!」
「ハーマンに次の王子になられてみろ!この国は大変なことになるぞ!」
「動け!お前たち!!!」
ゼブエラの兵、誰一人動かない状況はやっぱりティナベルの予想通り。
「この国は大変なことになる?何を今更……おい、そいつらが逃げないよう先に捕まえておいてくれ」
一人の兵がそう言った。
それはさっき王子がラッシュと呼んだ人物だった。
「な……っ!おい!ラッシュ!!!貴様…この俺を裏切るのか?!」
「裏切る?最初から尽くしてきたつもりはない。大人しく殺されろ、クソ王子」
「!!!」
ラッシュの声を耳に入れて最後の首が落とされた。
「ありがとう、ラッシュ、それから他のみんなも。無駄な血が流れなくて済んだ」
ハーマンは臣下を捕らえている兵たちにそう言うと剣をしまいアルフレッドの前に立ち膝をついた。
ゼブエラの王族にこんな畏まった礼儀作法を教える者はいない。
ノーストン家に滞在していた時に学んだのだろうとラビス一行は思った。
「この度の一件、心から感謝します」
「顔を上げてください。次のゼブエラの国王はあなたということでいいですか?」
「俺はもうどことも戦争をするつもりはありません。今回の一件でラビスとの戦を終結とさせて頂きたい。勝ったのはあなたたちです。もしラビスがこの国を望むのであれば…」
「望みませんよ。ラビスにこの国は大きすぎます。この大陸にいくつの国があろうとそれぞれの国が幸せで互いの交流が穏やかであること、それがラビスの望みです。民のためにもゼブエラ王国はゼブエラ王国として変わるべきでしょう」
「…ありがとうございます。重ねてお礼を言わせて下さい。新たなゼブエラ国王として」
ハーマンが深く頭を下げると臣下の一人が「認めない!!」と叫んだ。
その声は静かな広間に大きく響く。
「冗談じゃない!あなたは王に相応しくない!」
「そうだ!そこに転がってる王子たちの子にも王位継承権はあるんだ!」
「我々は死んだ王子の子を次の王に推す!」
十人程いる臣下、皆が口々に似た言葉を吐いた。
「王に相応しくない、か…」
そう呟いたハーマンは失礼します、とアルフレッドに軽く頭を下げるとゼブエラ兵によって一箇所にまとめられた臣下たちの前に歩を進めた。
ぎゅうぎゅう詰めにまとめられていることを覗けばその光景は王子たちの首が刎ねられた時とよく似ていて、つい今しがたの出来事を光景を鮮明に思い出させた。
「相応しくないって言葉は褒め言葉として受け取っておくよ。それからあなたたちが推すと言った王子たちの子だけど継承権のある子供で生き残ってるのは二人だけ。二人共王位継承権は既に放棄しているよ」
「はっ!喋れない子供がどうやって放棄をする?」
「あぁ、やっぱりあなたたちは知らないか。十に見たない子供の代理人は母親でも務まるんだよ?腐りきったゼブエラの法律の中にも一応多少まともな法律はいくつかあるんだよ」
「…っな!!!」
「今頃母親の胸の中ですやすやと寝ているんじゃないかな」
「まさか…」
「いつの間に…っ!!」
「いつの間?可愛い甥っ子たちは生まれた時からずっと母親と一緒に過ごしてるよ」
「!!!!」
王位継承権のある子供はゼブエラの王に相応しい教育をさせるべく生まれと同時に母親と引き離される。
そして母親も子供もそれぞれ別の棟で隔離される。再会出来るのはどちらかが死んだ時だけ。
臣下たちが直接子供に教育をするのは四歳からでそれまでは臣下も会いに行かなければ父親である王子でさえ会いに行かない。
故に、その警備はそれ程固くない。
ハーマンにとってただただ恐怖という支配で命令されて泣く泣く子供を閉じ込めさせられていた兵や乳母を自分の一派に取り込むことはは容易く、全てを支配しきれてるとタカを括っていた臣下たちはそこにきちんと子供がいるのかどうか、成長はどんな感じなのか、定例の報告をさせてもその嘘には全く気付かなかった。
「わかった?あなたたち俺を推さなくとも王位に就ける者は俺しかいないってこと」
「っ……」
「これはあなたたちのしてきたことの結果だよ?身内同士の殺し合いを黙認したりまたは手を貸したり…誰が死んでもまだ他がいると思い放置してきた結果、結局残ったのはあなたたちが最も王の座に座らせたくない異色の俺。残念だったね?あなたたちはゆっくりゆっくり自分で自分の首を絞めてたんだよ」
ハーマンは鞘ごと剣を抜いてコツコツと床に打ち付けて言った。
臣下たちに王族以外の誰かを推すことは出来ない。というより、その誰かがいない。
臣下たちの望む誰かは”まともじゃない人間”。
-こんなことになるなんて…
臣下たちは異色の王子など他の王子の手によってその内死ぬだろうと気にも留めていなかったこと、ハーマンの言う通り王になられては一番困る異色の王子を一番最初に一掃するべきだったことを酷く後悔した。
「わ、私はハーマン王子…いえ、ハーマン国王陛下について行きます!前々から私は」
「誰が喋っていいと言った?」
「!!!!!」
剣は床から離れて口を開いたものの首にあてられる。
剣が抜かれたわけでもないのに、あてられた臣下は物凄いスピードで汗を湧き出した。
誰もが注目した剣の行方。それはハーマンの腰に納まったけれど、逆にその行動が更に臣下たちに恐怖を与えた。
「国王の名のもとにあなたたちには任を降りてもらう。当然ながらあらゆる地位も全財産も没収するよ」
「!!!」
「残してやるのはその身一つ。唯一残ったその体については今ここで首を落としてもやってもいいし民衆の前に差し出してもいいけど…」
「!!!!それだけは!!!陛下!」
「何でもします!何でもしますから!!」
「お願いします!!!」
民衆の前に…そう聞いた途端身動き取れないくらいの狭いスペースで誰もが我先にと地面に頭を擦り付けた。
今まで蔑み続けてきた異色の王子にこんな目に頭を下げることになるなんて…とは思わない。そんなことを思っている余裕さえなかった。
罰せられるにしても民衆の前に出されることだけはどうしても避けたい一心だった。
民衆の前に差し出されれば…一思いに死ぬことはまず叶わないに決まっている。空っぽの頭でもそれくらいは分かった。
「安心していいよ。お願いされなくてもしないから」
ハーマンがそう言うと臣下達は一斉に安堵の顔を見せた。
異色の王子だけあってそう簡単に命を奪うつもりはないのかもしれない。
命さえあれば…国外に逃げ延びてどうにか…
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「そのやり方をしては今までの王と変わらないだろうからね。”ここ”では殺さない」
「っ?!?!?!」
「然るべき法の下裁きを下す。勿論死刑だろうけどね。刑が実行されるまでは牢屋の中で懺悔でも命乞いでも好きにしてればいい。あなたたちが民にしていたようにね?」
連れて行ってくれ、とハーマンが兵に言うと数人の兵が臣下たちを無理矢理立たせる。
「あぁ、一つ忠告しておく。老いたあなた達では兵士相手に暴れても無駄だってことくらいは分かってると思うけど兵の買収も諦めた方がいいよ?今まで彼らをどれだけ見下して扱ってきたかは自分たちが一番よく知っているでしょう?彼らの恨みは相当だよ?下手な事をすると牢屋に入る前にあの世生きかもね?それじゃ、今宵牢で良い夢を」
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