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休日の朝
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朝。
雄一は、快適に目覚める。
レースのカーテン越しに朝日が優しく降り注ぐ。
ベッドを出るとまだ作動時間になっていない目覚ましのアラーム機能を止める。
すでにモーニングルーティーンになっている。
寝坊防止のため毎晩アラームをセットするが、毎日それが作動する前に爽快に起きる。
だから、一度も目覚ましに頼ったことはない。
この学園に赴任してから、毎晩良く眠れる。
そして、朝には活力に漲り起きる。
こんな快適な眠りを味わうのは初めてかもしれない。
子供の頃から現役を終えるまで、早朝練習が続いた。
前日の練習の疲れが取れぬまま眠りたがる身体を無理矢理起こし、練習場へ向かう。
朝は辛かった。
だが、引退の後はもっと辛かった。
夜は眠れず、朝は起きられず、さらに無理に起きても、何もやる当てのない無為な一日が始まるのを虚しい気持ちで受け入れるだけ。
それに比べると今は生まれ変わったような気持ちだ。
絹のブリーフ一枚の雄一は、窓辺に向かう。
外に人が居ないことを確かめ、レースのカーテンを開き、窓を開ける。
山の朝のシンとした冷気が入って素肌を刺激する。
雄一は、この自然の中、朝の冷たい静謐な空気を感じるのが好きだ。
今日は、日曜日、朝の時間をどう過ごそうか。
朝食まで時間はある。
ランニング、筋トレ、道場での型、、、
雄一は、今、身体を動かすのが楽しくてたまらない。
事故の後、リハビリのための筋トレ、そして、その後も義務のように習慣の自主トレを自らに課し、己の心に負けぬよう敢えて道場にも立つ、、、心に澱が溜まっていくようだった。
しかし、それが嘘のように日々を過ごせている。
懸命にスポーツに励む生徒達の姿に励まされているのも大きい。
最初に親しんだのは、空手部の生徒達。
その内の何人かはかつて指導したことがある。
尊敬の目がくすぐったかった。
雄一の試技を熱い目で見つめ、雄一の指導に全霊で答えようとする。
若者は飲みこみが早い。
その日々の成長を目の当たりにするのが雄一は嬉しい。
他の部活も刺激的だ。
学園のそこここでストイックにトレーニングに励む生徒達。
空手部以外にも親しみ、指導して欲しいと言われているので、先週は馴染みのある剣道部、柔道部、レスリング部に出向いた。
剣道・柔道では気合いの発し方を披露し、レスリング部では、腰を落としての体幹の強化法を教え、雄一自身が一年生と共に技の基礎を教わった。
来週も、空手部をメインに複数の部活を掛け持ちで回る予定だ。
授業自体は、しばらくは主任の体育教師の補助に入ることになっている。
カリキュラムの組み立てなどは主任が行うため、雄一はそのプログラムに従い、生徒達の指導の補助に回る。
球技などは生徒に混じって実技を行う。
学生時代に戻ったようだ。
いや、学生時代も空手道に精進していたため、競技を楽しくやると言う経験はほとんどなかったので、生徒と身体を動かすのが楽しくて仕方がない。
取り合えず、ジャージを身に付けて寄宿舎を出る。
ランニングにするか、筋トレにするかは、今朝の自分の身体に聞くのが良い。
寄宿舎と校舎の間に広がる芝生の前にはで、まずはストレッチだ。
「おはよう!」
朝も早いのに既に何人かの生徒達がストレッチをやっている。
雄一は伸びをし、ストレッチを始める。
長身が芝生に映えている。
屈伸に始まり、基礎的な動きを一つ一つ丁寧にこなす。
基礎を疎かにしてはいけないというのが雄一の信条だ。
丁寧におこなっていく。
「高尾先生、お早うございます」
駆け寄ってくる制服の生徒が居る。
「おぉ、滝川くん。お早う」
水泳部の滝川だ。
嬉しそうな笑顔で飛んでくる。
「朝練ですか?」
「あぁ。滝川くんは、日曜なのに制服なんだな。水泳部の集まりでもあるのかい?」
「今日は下から佐々木さんってOBの方が指導に来てくださるんですよ」
「水泳部は熱心だな」
「佐々木さんのレッスンは、水泳部主催のオープンクラスなんですよ。だから、水泳部員以外の有志の人も出てます。先生も来ませんか?」
少しでも多く生徒達と接し、学園に早く慣れたい雄一にとっては、有り難い申し出だった。
「おう、ありがとう。飛び入り参加は可能か?」
「もちろんです。みんな、喜びます」
「じゃ、部屋に戻って海パンを取ってくる」
「大丈夫です。その必要はありません」
「?プールでやるんじゃないのか?」
「そうですけど、水着無しで大丈夫です。行きましょう」
滝川は雄一の手を引っ張る。
雄一は不思議に思いつつも、早くも雄一に懐いてくれている生徒が現れてくれたことに喜び、引っ張られるまま着いていく。
山肌を下った先にあるプール施設。
何人かの生徒が向かっている。
プール独特の匂いが漂ってくる。
玄関の脇にあるドアに滝川は向かう。
「ここが更衣室への早道なんですよ」
玄関から施設を案内されただけの雄一は着いていくだけ。
廊下から更衣室に入る。
そこにいた生徒は海パンでプールに通じるドアから出ていった。
海パンは要らないと言っていなかったか?
不思議そうな顔の雄一に滝川は言う。
「あれはオープンクラスじゃなく、水泳部の自主トレですよ」
そして、滝川は更衣室の棚の扉を開け、布を取り出した。
え?
褌?
「佐々木先生は古式泳法を教えてくれるんで、オープンクラスは褌着用なんですよ。はい、先生」
生徒が差し出す白い布を、雄一は受け取る。
雄一は、快適に目覚める。
レースのカーテン越しに朝日が優しく降り注ぐ。
ベッドを出るとまだ作動時間になっていない目覚ましのアラーム機能を止める。
すでにモーニングルーティーンになっている。
寝坊防止のため毎晩アラームをセットするが、毎日それが作動する前に爽快に起きる。
だから、一度も目覚ましに頼ったことはない。
この学園に赴任してから、毎晩良く眠れる。
そして、朝には活力に漲り起きる。
こんな快適な眠りを味わうのは初めてかもしれない。
子供の頃から現役を終えるまで、早朝練習が続いた。
前日の練習の疲れが取れぬまま眠りたがる身体を無理矢理起こし、練習場へ向かう。
朝は辛かった。
だが、引退の後はもっと辛かった。
夜は眠れず、朝は起きられず、さらに無理に起きても、何もやる当てのない無為な一日が始まるのを虚しい気持ちで受け入れるだけ。
それに比べると今は生まれ変わったような気持ちだ。
絹のブリーフ一枚の雄一は、窓辺に向かう。
外に人が居ないことを確かめ、レースのカーテンを開き、窓を開ける。
山の朝のシンとした冷気が入って素肌を刺激する。
雄一は、この自然の中、朝の冷たい静謐な空気を感じるのが好きだ。
今日は、日曜日、朝の時間をどう過ごそうか。
朝食まで時間はある。
ランニング、筋トレ、道場での型、、、
雄一は、今、身体を動かすのが楽しくてたまらない。
事故の後、リハビリのための筋トレ、そして、その後も義務のように習慣の自主トレを自らに課し、己の心に負けぬよう敢えて道場にも立つ、、、心に澱が溜まっていくようだった。
しかし、それが嘘のように日々を過ごせている。
懸命にスポーツに励む生徒達の姿に励まされているのも大きい。
最初に親しんだのは、空手部の生徒達。
その内の何人かはかつて指導したことがある。
尊敬の目がくすぐったかった。
雄一の試技を熱い目で見つめ、雄一の指導に全霊で答えようとする。
若者は飲みこみが早い。
その日々の成長を目の当たりにするのが雄一は嬉しい。
他の部活も刺激的だ。
学園のそこここでストイックにトレーニングに励む生徒達。
空手部以外にも親しみ、指導して欲しいと言われているので、先週は馴染みのある剣道部、柔道部、レスリング部に出向いた。
剣道・柔道では気合いの発し方を披露し、レスリング部では、腰を落としての体幹の強化法を教え、雄一自身が一年生と共に技の基礎を教わった。
来週も、空手部をメインに複数の部活を掛け持ちで回る予定だ。
授業自体は、しばらくは主任の体育教師の補助に入ることになっている。
カリキュラムの組み立てなどは主任が行うため、雄一はそのプログラムに従い、生徒達の指導の補助に回る。
球技などは生徒に混じって実技を行う。
学生時代に戻ったようだ。
いや、学生時代も空手道に精進していたため、競技を楽しくやると言う経験はほとんどなかったので、生徒と身体を動かすのが楽しくて仕方がない。
取り合えず、ジャージを身に付けて寄宿舎を出る。
ランニングにするか、筋トレにするかは、今朝の自分の身体に聞くのが良い。
寄宿舎と校舎の間に広がる芝生の前にはで、まずはストレッチだ。
「おはよう!」
朝も早いのに既に何人かの生徒達がストレッチをやっている。
雄一は伸びをし、ストレッチを始める。
長身が芝生に映えている。
屈伸に始まり、基礎的な動きを一つ一つ丁寧にこなす。
基礎を疎かにしてはいけないというのが雄一の信条だ。
丁寧におこなっていく。
「高尾先生、お早うございます」
駆け寄ってくる制服の生徒が居る。
「おぉ、滝川くん。お早う」
水泳部の滝川だ。
嬉しそうな笑顔で飛んでくる。
「朝練ですか?」
「あぁ。滝川くんは、日曜なのに制服なんだな。水泳部の集まりでもあるのかい?」
「今日は下から佐々木さんってOBの方が指導に来てくださるんですよ」
「水泳部は熱心だな」
「佐々木さんのレッスンは、水泳部主催のオープンクラスなんですよ。だから、水泳部員以外の有志の人も出てます。先生も来ませんか?」
少しでも多く生徒達と接し、学園に早く慣れたい雄一にとっては、有り難い申し出だった。
「おう、ありがとう。飛び入り参加は可能か?」
「もちろんです。みんな、喜びます」
「じゃ、部屋に戻って海パンを取ってくる」
「大丈夫です。その必要はありません」
「?プールでやるんじゃないのか?」
「そうですけど、水着無しで大丈夫です。行きましょう」
滝川は雄一の手を引っ張る。
雄一は不思議に思いつつも、早くも雄一に懐いてくれている生徒が現れてくれたことに喜び、引っ張られるまま着いていく。
山肌を下った先にあるプール施設。
何人かの生徒が向かっている。
プール独特の匂いが漂ってくる。
玄関の脇にあるドアに滝川は向かう。
「ここが更衣室への早道なんですよ」
玄関から施設を案内されただけの雄一は着いていくだけ。
廊下から更衣室に入る。
そこにいた生徒は海パンでプールに通じるドアから出ていった。
海パンは要らないと言っていなかったか?
不思議そうな顔の雄一に滝川は言う。
「あれはオープンクラスじゃなく、水泳部の自主トレですよ」
そして、滝川は更衣室の棚の扉を開け、布を取り出した。
え?
褌?
「佐々木先生は古式泳法を教えてくれるんで、オープンクラスは褌着用なんですよ。はい、先生」
生徒が差し出す白い布を、雄一は受け取る。
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