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高級オードブル le rouge

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「好評だよ。直人くん、大好評だよ」

赤のアルルカンが言った。

お披露目の後、ライトが付いた部屋の台に直人は蹲るように座っていた。

入ってきたアルルカンは興奮していた。

「さっそく、君に仕事が入った」

直人は青ざめる。

この破廉恥な格好、お披露目会等という趣向、ろくな仕事ではないはずだ。

性接待、、、

嫌だ、、、嫌だ、、、そんなことやりたくない。

「まさか、誰かとセックスなんて嫌らしい想像をしているんじゃないんだろうね」

その言葉に一縷の望みが出る。

「BABYLONを舐めないでもらいたい。従業員にセックスを強要することなんてしない。そういった接待を求めるお客様もいるが、その時は、下部の店からデリバリーを取る。もちろん、君の方から望んでいく分には止めないけどね」

売春のようなことをさせられるのかと考えていた直人は安心する。

しかし、それならば何故このような格好をさせられるのか。。。

「私達は、全力でお客様を接待する。さっきキングに紹介した時、序列が出来ているのに気付いただろう?お客様の受けがいいものは格が上がり、身に付けるものも変わる。そこには年功序列なんて関係ない。実力のみの世界だ。君は、新人だから最も下から始めてもらう。が、お客様に気に入ってもらえれば、すぐに上に昇れる。その破廉恥な衣装ともおさらばできるって訳だ。ガンバれ、幸先はいいぞ、用意が出来たら呼びに来る。ここで待っているがいい」

アルルカンは出ていった。

「ちっきしょう、やつら、ふざけやがって」

武臣が台を蹴飛ばす。

「こんなアホらしい格好、やってられるか。何がお披露目だ、何が暴れ馬だ、バカにしやがって」

イライラと狭い部屋の中を歩き回る。

時間のみが過ぎる。

直人は放心したように台の上に座っている。

何をやらされるんだ、、、

彰は無事だろうか、、、

ぼうっとした意識の中で考える。

「もう、許せねぇ、こんなところ、出てってやる」

武臣はものすごい剣幕で、扉に向かった。

扉が開く。

ビシッ

ガスッ

重い打撲音と、尖った電子音が同時にする。

武臣の巨体が止まる。

動かない。

そして、後ろ向きにドテッと倒れる。

その向こうに黒く長い棒を持った黒のアルルカンが立っていた。

冷静な顔だ。

「家畜の躾用の電流棒だ。私に恥をかかすんじゃない」

黒のアルルカンが冷たく言う。

そして、おもむろに棒を振り上げ、太ももに叩きつける。

武臣のデカイ身体がビクビクンっと痙攣し、羽上がる。

コツコツと音を立てて武臣の頭の横に行く。

「自分の立場を考えろ。おいっ」

黒革のローライズの短パンだけを身に付けた男が二人部屋に入り、武臣を左右から持ち上げ部屋から出ていった。

「荒っぽいことだ、、、」

背後からの声に振り向くと、いつの間にか赤のアルルカンが立っていた。

「どうも彼らの気風は下品で馴染めなくてね。さ、直人くん、用意は出来た。こちらに来てくれ」

直人は赤のアルルカンについて部屋の外へ出る。

豪華な廊下の奥の目立たない扉から、バックヤードらしい空間に入り、狭い階段を降りる。

連れていかれたのは、一階のキッチンの横だ。

赤の短パンを履いた二人が近寄ってくる。

手にはスプレーを持っている。

直人の肌にスプレーをシュッシュッとかける。

続いて棚から大きな刷毛と業務用の大きな缶を取り出し、フタを開け内容物の中に刷毛の先を沈める。

OLIVE OIL、、、

缶にはグリーンの実のイラストと共に文字が書いてある。

オリーブオイルが直人の肌に手際よく塗られていく。

こそばゆかった。

が、直人は無駄な抵抗をする気力はなかった。

今日、あまりにも目まぐるしく、様々なことが起こった。

そして、先程、抵抗した武臣に加えられた罰。

思考回路が停止していた。

直人の水球で鍛えられた大柄な逞しい身体にオリーブオイルが映え、テラテラと怪しい輝きを放つ。

「直人くん、美しいよ。美しい身体だ」

赤のアルルカンが言う。

二人の短パンは、奥からガラガラとストレッチャーのような木製の台を持ってきた。

「さあ、来たまえ」

キッチンに向かう扉を開く。

台と一緒に入る。

キッチンは白と銀色で清潔な空間だった。

「ほう、この子がle rougeの新人か、、、イケメンだし、飾り甲斐のある身体だな、、、」

コック帽を被った男が言った。

「寝かせて」

助手らしい者達が銀の人間がすっぽり収まるサイズのトレイを運んでくる。

縁には美しい紋様が装飾されている。

「直人くん、そこに寝てくれる?」

直人は、従った。

嫌な予感しかしない。

助手達が銘々に作業を始める。

ボウルから次々に野菜を取り出し、直人の回りに並べ出した者が二人。

シェフが指差すところにペースト状のモノを塗り出すものが二人、その上にスモークサーモン、チーズといった食材を置いていくものが二人。

再びこそばゆさが直人を襲う。

そして、先程よりも数倍強い恥ずかしさも。

身体を何人もの人間が取り囲んでいる状態で、どこに目をやって良いのか分からない。

ふと黒のアルルカンと目があった。

キッチンの反対側に立っている。

黒のアルルカンは、スッと目を逸らした。

だが、その目は、先程、武臣を見ていた冷たい目ではなく、どこか暖かで、心配しているような温もりがあった。

え?

直人は思い、黒のアルルカンの方を見る。

そちらでも、武臣を囲んで何やら作業が行われているが、それはよく見えない。

が、黒のアルルカンは、その一群から少し手前に立ち、たまに直人の方をチラリと見る。

気にしてくれているのか。。。

そして、直人はゾッとした。

直人の回りに立つシェフ達の後ろにいる赤のアルルカンが直人のことをとてつもない冷たい目で見ているのに気付いた。

今度は、直人が目を逸らす。

冷たいだけでなく憎しみもこもっている。

そして、直人は、直視しないように二人のアルルカンの様子を伺う。

赤のアルルカンは、黒のアルルカンをチラリと見ている。

しかし、黒のアルルカンは赤のアルルカンを見ず、直人の方に視線をくれる。

そして、赤のアルルカンの視線は冷たさと鋭さを増し、直人を見る。

直人の両の乳首にクリームが飾られ、その上に高級そうなフォアグラが置かれ、キャビアがのせられた。

「出来上がった。お客様にお届けを」

シェフが言う。

直人は高級オードブルの飾り台となった。




















    
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