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到着 le rouge
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「これは見事なオードブルだ」
脂ぎった客が言う。
「どこからいただこうかな?」
指を伸ばそうとすると横に座った青年が、止める。
「すーさん、言ってくれればリュウに取らせますよ。簡単には触らせません」
「タケシくん、意地悪をいうなぁ」
タケシと呼ばれた青年は、胸を大きくはだけた白いシャツに赤いスラックス。
並んだ若者達の中では、一番露出が少ない。
「初出の皿ですから、大切に扱わないと、、、まずは、スモークサーモンはいかがですか?」
スモークサーモンは、直人の両の脇腹辺りに盛られている。
「どうせなら鴨肉か海老をいただきたいが、、、」
旨そうな鴨肉は乳首周りに、プリプリの海老は股間を中心に飾るように盛られている。
そこ以外の肌には、チーズやらテリーヌ、キャビア、輪切りの茹で卵などが所狭しと並べられている。
肌にクリームを厚く塗り転がらぬように置かれているのはオリーブの実だ。
「鴨は、後程の楽しみに取っておかれては?リュウ、サーモンを」
リュウと呼ばれた赤の革ベストに短パンの若者が箸と皿を取り、スモークサーモンとチーズ傍らの野菜を盛る。
「今日は元気を付けたい、、、山芋の用意はあるのかい?」
「もちろんです」
タケシはリュウから皿を受け取り、盛られたサーモンをフォークで取り、脂ぎった客の口に運ぶ。
「山芋は、ディナーのデザート辺りで、、、」
「そりゃ、楽しみだ」
見れば、他の客達の口にも横に着いた青年、あるいは若者の手でオードブルが運ばれている。
直人の素肌が次第に露になっていく。
その肌は置かれていた食べ物の脂等の汚れで軽くテカっている。
直人は、目を閉じ、キュッと固く唇を結んでいる。
※
父親の不始末は正典が済ませるので、早々に東京に戻るように直人は言われた。
直人の採用先は、寮を用意してくれるらしい。
住み込みと言うわけだ。
だから、今借りている部屋を片付け解約するよう言われた。
荷物は最低限の着替えを用意してくれればいいと言う。
大家に解約の連絡をし、家電は売買アプリで売り払う。
元より、そんなに服も持っていない。
大学は休学手続きを取る。
水球部の仲間達に直接に挨拶をしたくもあったが、父親の不祥事のお陰で働かなければならなくなった自分が惨めで、休学の旨と礼をメールで送った。
ついこの間まで普通に暮らしていた部屋が、ガランとしてしまったのを寂しく見る。
そして、言われた番号に電話をかけた。
迎えに来た車は閑静な住宅街を進んでいる。
窓の外に見える家は徐々に広く風格を増していく。
塀の向こうに見える木々も次第に太く繁ったものが多くなっていく。
やがて一件の洋館に着いた。
「降りなさい」
サウナで一緒になった初老の男が言う。
直人はボストンバッグを抱えて降りる。
洋館の横を進み裏に回る。
裏では何人もの男達が体力作りに励んでいた。
懸垂を行う者、走り込みをしている者、腕立て伏せ、腹筋をしている者。
歩く直人には無関心な風を装いつつ、ジロッと値踏みをするような視線を送る。
直人は居心地が悪い。
挨拶をしていいものかどうか迷いつつ進む。
裏庭の先にはプレハブ作りの2階建ての建物が2棟。
この先に古い石造りの建物がある。
直人は石造りの建物にはいる。
一階の広間にはテーブルと椅子が数脚置かれていて、そこに座る者達がジロッと直人を見る。
直人は居心地が悪い。
向けられたのは決して好意的な視線ではなかったからだ。
その広間の脇にある下りの階段を初老の紳士は降りていく。
地下室があるようだ。
その地下室の奥の鉄扉を開け、直人に中に入るよう促す。
その狭い部屋には簡易な二段ベッドと棚があるだけだった。
下段のベッドには、荷物が置かれている。
「上を使いなさい」
紳士が言う。
そして、スーツのポケットから赤い紐のようなものを取り出し、直人の前で屈む。
直人の左足にその紐を回し、端と端をカチッと繋げる。
真っ赤なエナメルのミサンガのように見える。
「GPSです。念のために着けさせてもらいます。あなたには、大金がかかっているので逃げられるとまずいのです。普通にしていればなんの不自由にもならないはずです。そんなことはないと思いますが、勝手に外すと厳しい罰が待っております」
そこに、扉が開き、がっしりした男が入ってきた。
!
直人は驚く。
不破武臣っ!
よく試合やスポーツニュースに出ていて、顔は知っている。
確か夜の路上で乱闘騒ぎを起こし、先日、引退したはず。。。
「同室の不破武臣さん。もうご存じのようですね。不破さん、こちらは今日着いたもう一人の新人、田口直人さん。仲良くやってください」
不破は直人を上から下まで見ると、「よろしく」と言い、二段ベッドの下に寝転ぶ。
「田口さん。今日は夕方から新人研修を受けていただきます。不破さんも一緒になります。時間になりましたら、係が呼びに参ります」
部屋を出ていこうとする初老の紳士に、不破が声をかける。
「おい、この貞操バンド、どうにかしてもらえないか?便所が不便でたまらん。お前もそう思うだろう」
最後の言葉は、直人に向けられている。
貞操バンド?
直人には意味がわからない。
初老の紳士は振り返り、笑いながら言った。
「不破さん、そのバンドはあなたの股間にしか着けていません。あなた、自分のやったことをもう忘れたのですか?同僚に手を付けられても困るのですよ。あなたにここで期待されるているのは、種馬ではない」
不破の顔に怒りが浮かぶ。
それを意にかえさず初老の紳士は出ていった。
脂ぎった客が言う。
「どこからいただこうかな?」
指を伸ばそうとすると横に座った青年が、止める。
「すーさん、言ってくれればリュウに取らせますよ。簡単には触らせません」
「タケシくん、意地悪をいうなぁ」
タケシと呼ばれた青年は、胸を大きくはだけた白いシャツに赤いスラックス。
並んだ若者達の中では、一番露出が少ない。
「初出の皿ですから、大切に扱わないと、、、まずは、スモークサーモンはいかがですか?」
スモークサーモンは、直人の両の脇腹辺りに盛られている。
「どうせなら鴨肉か海老をいただきたいが、、、」
旨そうな鴨肉は乳首周りに、プリプリの海老は股間を中心に飾るように盛られている。
そこ以外の肌には、チーズやらテリーヌ、キャビア、輪切りの茹で卵などが所狭しと並べられている。
肌にクリームを厚く塗り転がらぬように置かれているのはオリーブの実だ。
「鴨は、後程の楽しみに取っておかれては?リュウ、サーモンを」
リュウと呼ばれた赤の革ベストに短パンの若者が箸と皿を取り、スモークサーモンとチーズ傍らの野菜を盛る。
「今日は元気を付けたい、、、山芋の用意はあるのかい?」
「もちろんです」
タケシはリュウから皿を受け取り、盛られたサーモンをフォークで取り、脂ぎった客の口に運ぶ。
「山芋は、ディナーのデザート辺りで、、、」
「そりゃ、楽しみだ」
見れば、他の客達の口にも横に着いた青年、あるいは若者の手でオードブルが運ばれている。
直人の素肌が次第に露になっていく。
その肌は置かれていた食べ物の脂等の汚れで軽くテカっている。
直人は、目を閉じ、キュッと固く唇を結んでいる。
※
父親の不始末は正典が済ませるので、早々に東京に戻るように直人は言われた。
直人の採用先は、寮を用意してくれるらしい。
住み込みと言うわけだ。
だから、今借りている部屋を片付け解約するよう言われた。
荷物は最低限の着替えを用意してくれればいいと言う。
大家に解約の連絡をし、家電は売買アプリで売り払う。
元より、そんなに服も持っていない。
大学は休学手続きを取る。
水球部の仲間達に直接に挨拶をしたくもあったが、父親の不祥事のお陰で働かなければならなくなった自分が惨めで、休学の旨と礼をメールで送った。
ついこの間まで普通に暮らしていた部屋が、ガランとしてしまったのを寂しく見る。
そして、言われた番号に電話をかけた。
迎えに来た車は閑静な住宅街を進んでいる。
窓の外に見える家は徐々に広く風格を増していく。
塀の向こうに見える木々も次第に太く繁ったものが多くなっていく。
やがて一件の洋館に着いた。
「降りなさい」
サウナで一緒になった初老の男が言う。
直人はボストンバッグを抱えて降りる。
洋館の横を進み裏に回る。
裏では何人もの男達が体力作りに励んでいた。
懸垂を行う者、走り込みをしている者、腕立て伏せ、腹筋をしている者。
歩く直人には無関心な風を装いつつ、ジロッと値踏みをするような視線を送る。
直人は居心地が悪い。
挨拶をしていいものかどうか迷いつつ進む。
裏庭の先にはプレハブ作りの2階建ての建物が2棟。
この先に古い石造りの建物がある。
直人は石造りの建物にはいる。
一階の広間にはテーブルと椅子が数脚置かれていて、そこに座る者達がジロッと直人を見る。
直人は居心地が悪い。
向けられたのは決して好意的な視線ではなかったからだ。
その広間の脇にある下りの階段を初老の紳士は降りていく。
地下室があるようだ。
その地下室の奥の鉄扉を開け、直人に中に入るよう促す。
その狭い部屋には簡易な二段ベッドと棚があるだけだった。
下段のベッドには、荷物が置かれている。
「上を使いなさい」
紳士が言う。
そして、スーツのポケットから赤い紐のようなものを取り出し、直人の前で屈む。
直人の左足にその紐を回し、端と端をカチッと繋げる。
真っ赤なエナメルのミサンガのように見える。
「GPSです。念のために着けさせてもらいます。あなたには、大金がかかっているので逃げられるとまずいのです。普通にしていればなんの不自由にもならないはずです。そんなことはないと思いますが、勝手に外すと厳しい罰が待っております」
そこに、扉が開き、がっしりした男が入ってきた。
!
直人は驚く。
不破武臣っ!
よく試合やスポーツニュースに出ていて、顔は知っている。
確か夜の路上で乱闘騒ぎを起こし、先日、引退したはず。。。
「同室の不破武臣さん。もうご存じのようですね。不破さん、こちらは今日着いたもう一人の新人、田口直人さん。仲良くやってください」
不破は直人を上から下まで見ると、「よろしく」と言い、二段ベッドの下に寝転ぶ。
「田口さん。今日は夕方から新人研修を受けていただきます。不破さんも一緒になります。時間になりましたら、係が呼びに参ります」
部屋を出ていこうとする初老の紳士に、不破が声をかける。
「おい、この貞操バンド、どうにかしてもらえないか?便所が不便でたまらん。お前もそう思うだろう」
最後の言葉は、直人に向けられている。
貞操バンド?
直人には意味がわからない。
初老の紳士は振り返り、笑いながら言った。
「不破さん、そのバンドはあなたの股間にしか着けていません。あなた、自分のやったことをもう忘れたのですか?同僚に手を付けられても困るのですよ。あなたにここで期待されるているのは、種馬ではない」
不破の顔に怒りが浮かぶ。
それを意にかえさず初老の紳士は出ていった。
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