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学校新聞
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朝、、、
ガンガンガンガンッ
教師用宿泊室のドアが強打される。
和彦は、目を覚ます。
すぐ横でも動きがある。
竜之介だ。
竜之介も眠り込んでいた。
ガンガンッ
ノックというには激しいおとが続く。
「杉山先生っ!居るんでしょっ!開けなさいっ!」
和彦は、何が起こったか分からない。
自分は全裸だ。
そして、なぜか隣に竜之介が居る。
あっ、、、、
昨夜の出来事を思い出す。
あの恥辱にまみれた出来事、、、
そして、泣き崩れ、それを竜之介に慰められて、、、
「センセッ、早く服着てっ!」
声をひそめて竜之介が言う。
床に落ちていた下着とスウェット、、、狩人が体育教官室から持ち出し、ベッドにおいていた着替えを拾い、和彦に渡す。
和彦は、慌てて身に付ける。
「杉山先生っ!開けなさい」
声と扉への猛打が続く。
和彦は、焦りながら扉を開ける。
顔を強ばらせた学年主任が立っている。
手に何か紙を持っている。
「藤崎くん?」
和彦の後ろ、乱れたベッドに腰かけている竜之介を見て、怪訝そうな顔をする。
「藤崎君、先に登校しなさい」
「え?」
「私は、そこにいる杉山先生と話があるのだ。早く行きなさい」
竜之介は、シブシブと部屋を出る。
昨日のことが耳に入ったのか・・・
こりゃ、カズ先生、絞られるだろうな・・・
そう思いつつ、竜之介は階段を2段抜かしで駆け上がり、自室に戻る。
パソコンを起動し、ヘッドホンを用意する。
教員用宿泊室には、隠しカメラだけでなく、盗聴機も仕掛けてある。
初めて役に立つな、念のため仕掛けておいて良かったぜ、、、
パソコンを操作する。
学年主任が紙を和彦に突き付けている。
*
竜之介が立ち去るなり、学年主任は、扉を閉め、和彦を睨み付けた。
和彦は、思わず後ずさる。
「まだ、寝巻きのままですか。寝癖が付いてますよ。登校の用意をしていないようですね。弛んでますね、、、」
ゆっくりと言う。
「何で、私が来たか、分かりますか?」
和彦は、怯えた表情だ。
そんな和彦をいたぶるように学年主任は和彦を睨み、ゆっくりと続ける。
「思い当たることはありませんか?」
思い当たることは多い。
が、思い出したくない。
頭をかきむしり、大声でわめき散らしたくなる。
そして学年主任は和彦へ手に持った紙を突きつける。
怯えた表情を浮かべていた和彦の顔に激しい感情が浮かぶ。
まずは、戸惑い。
目の前の紙の内容が理解できない。
ようやく目の前の紙に印刷されたものが和彦の頭の中で像を結ぶ。
驚愕に目が見開かれる。
そして、怒り、屈辱、諦念、やるせなさ、絶望・・・
様々なネガティブな感情を混ぜ合わせたような表情となる。
「ぅあ・・おぉぉっ・・・」
押し殺した、腹の底からの声。
その紙。
学校新聞号外とある。
大きく写真が印刷されている。
和彦が校庭を走っている写真だ。
全裸。
股間に両手を当て、目を見開き、屈辱に顔を歪めている。
かなりの腕前を持った生徒が撮ったのだろう。
全身の鍛えられた筋肉の動きがくっきりと伝わってくる。
手で隠しきれなかった陰毛の陰影も、手からはみ出した陰嚢の端もはっきり写っている。
そして、絶望と屈辱にまみれた和彦の表情の一瞬。
見るものの嗜虐性を刺激する見事な残酷絵。
心労で脂肪が落ち、絞り上げられた全身の筋肉の躍動は雄々しく、そして、美しい。
太字で『露出教(狂?)師、参上!』とある。
その下には、小さな画像が数枚。
それぞれにキャプションが添えられている。
例えば、横向きの和彦を捉えた画像。
股間に手をあて疾走している。
手前の足が前に伸び、腰に捻りが加えられている。
和彦の鍛えられプリンと張った尻の双丘が共に写っている。
表情を除けば伸びやかで、しなやかな美しい四肢を写した一枚。
だが、その表情。
噛み締められた口はへの字に歪んでいる。
目も怒り、恥ずかしさ、悔しさを滲ましている。
その写真には、『亀頭隠して尻隠さず』と書いてある。
フルフルと首を振る和彦。
足はがくがく震えている。
学年主任は言った。
「まさか、君が露出狂とは思わなかった。裸で校庭を走るなど、常軌を逸している」
写真の和彦の哀れな表情を見れば、好きでやったことではないのは分かるだろう。
だが、学年主任は、気に食わない和彦を追い落とせる絶好の機会の到来に喜んでいる。
和彦に発言の機会は与えない。
もっとも、ショックのあまり口がきけない状態であったが。
「私が早く来て気付いたから良かった。すぐに校内を回って全部回収したよ。全く、みっともない。君は、教師としての品性に欠ける様だね。今日は、謹慎しなさい。君のような変態に生徒は任せておけん」
そう言って、学年主任は出て行った。
呆然と立ち尽くす和彦。
手からハラリと彼の痴態を印刷した紙が落ちる。
和彦は、俯いて微動だにしない。
ポタッ
大粒の涙が、フローリングの床に落ちる。
ポタッ・・・ポタッ・・・
拭おうともしない。
声も出ていない。
涙は落ち続ける。
もう、駄目だ、、、
もう耐えられない、、、
教師を辞めよう、、、
逆境から逃げ出すことは嫌いだった。
常に前に進む、それが信条だった。
だが、もう無理だ。
限界だ。
教師になった自分を応援してくれた家族、友人・・・
裏切るのは辛かった。
だが、このままでは精神が持たない。
辞表を出すことを決心し、和彦の体は崩れ落ちた。
うずくまり、うぉぉぉ・・・うぉぉぉぉ・・・・と悲痛な泣き声をあげ続けた。
手負いの獣のように・・・
踞り、泣き、そして、放心状態になる。
しばらくしの後、ノックの音がした。
床にうずくまった和彦はピクリともしない。
涙も枯れ、魂の抜けた顔だ。
声が聞こえる。
が、反応しない。
ドアが開く。
竜之介だった。
制服姿だ。
「先生、どうしたんだよ、先生、、、」
体を揺する。
「オレ、先生が気になって授業を抜け出してきたんだ」
ようやく和彦は頭を上げる。
「俺、心配になって」
生徒は、横に座り教師を抱きしめた。
教師は、為すがままだ。
糸の切れた操り人形のよう。
「しっかりしろよ、先生」
力無く首を振る和彦。
ようやく口を開く。
「もう、先生じゃない。俺は、教師失格だ」
涙が再びこみあげる。
「俺、教師、辞めるよ。みっともないけど」
「何言ってんだよ。あの校内新聞見ちまったのか。俺、新聞部の奴らブン殴っちまったよ」
「・・・・」
「テメェらなにやってんだって、、、だって、こんなこと、人としてダメだろ。俺、先生の力になるよ。全力で。だから、辞めるなんて言うなよ」
生徒が教師を抱きしめる力を強くする。
教師は、生徒の肩に頭を乗せた。
ほんの少しでも、安らぎを求めるように。
生徒はその頭を優しくなでる。
和彦は、目を瞑った。ホッとしたような顔。
生徒は頭から背中、腰を撫でていく。
ゆっくり、ゆっくり。
「・・・?・・・!」
教師は、びくっとし、生徒を見た。
唇が少し開いている。
竜之介をじっと見つめた。
頬がかすかに赤く染まっている。
竜之介は、そっと唇を教師に近付けた。
一瞬、和彦の体が後ろに反応する。
竜之介は腕の力を込め、教師の体を近付ける。
抵抗は無かった。
唇が重なる。
そして、竜之介は、和彦の右手を掴み、自分の股間へと誘う。
堅くいきり立っている。
教師の体がショックを受けたように震える。
続いて、竜之介は教師の股間に手を触れた。
竜之介の指が優しく這うと、和彦のモノは生徒の手の中で堅さと熱さを増して始める。
その感触に、竜之介の体は芯から震えた。
唇を離し、教師の顔を見る。
戸惑いと恥じらい。
年下の教え子を前に、年上の体育教師の顔にその二つの感情が浮かんでいた。
まったく・・・ウブな可愛い奴だぜ。
竜之介は、目の前の年長の青年を心から愛しく思った。
無言で教師を立つように促す。
おとなしく従う教師。
立ちあがり抱擁する二人。
生徒のほうが背が高い。
もう一度、竜之介は教師に口づけした。
今度は、舌を入れる。
ビクッと和彦が怯えたように唇を離す。
軽いキスなら抵抗がないが、舌を絡めるのはまだ、抵抗があるようだ。
だが、教師の息は荒くなっている。
竜之介は、教師のスウェットを降ろそうとした。
一瞬、身を引く教師。
及び腰になりかけた年長の青年に、少年が諭すように言う。
「先生、人を愛するのっておかしい事?」
「・・・・」
「男が男を好きになるのはいけないこと?」
教師の目をじっと見る。
「オレ、先生のことを好きなんだけど、それは、間違ったこと?先生は俺のことが嫌?」
「い、いいや」
教師は、完全に生徒のペースに呑まれている。
「じゃぁ、お互い、正直になろうよ」
スウェットが膝の辺りまで降ろされた。
「あっ・・・」
ボクサーブリーフ越しに加えられた指、、、愛撫に声を漏らす。
生徒の唇は、教師の頬から、首筋にかけて移動する。
和彦の息の荒さが増した。
竜之介の体が下に沈む。
同時に、和彦の穿いたボクサーブリーフが膝まで下ろされた。
和彦の気性を現すようにぶっとくまっすぐに膨張した重量感溢れるモノが、まさしく屹立した。
もう、濡れている。
亀頭の先、鈴口から滲み出した透明な先走りが光っている。
「あっ・・・」
微かな声を上げ和彦は、手で前を隠そうとした。
その手を竜之介が遮る。
「恥ずかしがっちゃ、ダメだよ」
そして、和彦のモノを奥深くまでくわえこんだ。
教師は快感のあまり、頭をのけぞらした。
今まで感じたことがない激しい快感。
見下ろせば、彼が、今、はっきりと愛しさを自覚した生徒が和彦のモノをくわえている。
真剣に、丹念に・・・
そして、余りにも不幸な行き違いが生じた。
生真面目な和彦。
ストイックな和彦。
そして、常に相手を大事にする和彦。
そのまま己の快楽に身を任せていれば良かったのだ。
そうすれば、事態は変わっていたかもしれない。
が、歯車は回ってしまった、不幸な方へ。
和彦は、生徒に一方的に奉仕させるのはまずいと思った。
今度は、自分が、竜之介のモノを・・・・
自分が、相手を喜ばせねば・・・
腰を引き、生徒の肩に手を掛け、生徒の口から己のモノを離す。
本当はその後、竜之介を立たせ、自分がひざまづき生徒のモノを咥えるつもりだった。
が、生徒は、身を離す教師の行為を拒絶と受取ってしまった。
逃げていく獲物・・・
折角手に入れかけていると思ったのに・・・
狩人は若く経験が浅い。
ちょっと待てば、獲物は跪き、狩人のモノに服従を意味する口付けをしたというのに。
夕べからシナリオが狂い、今朝もマスコミ部の連中が、つまらない壁新聞を作ってしまった。
シナリオが思いどおりにいかないことに狩人の冷静さが失われていた。
誤った解釈が、狩人の理性を奪った。
恐ろしい形相で教師を上目使いで睨む。
仮面が剥がれた。
和彦は、何が起こったか分らない。
ビックと身を固める。
「お前、まだ、体裁ぶるのか・・・?ここまで来て俺を拒むのか?」
初めて聞く、凍るような冷たい声に和彦は、何も答えられなかった。
怯えたのだ。
急に生徒が立ち上がり、教師の両腕を掴み手前に引き、全体重をかけ、後ろに倒れた。
足払いも同時にかける。
バランスを失い、生徒の上に圧し掛かるように倒れる教師。
「来いっ、撮れっ」
ドアが突然開き、複数の生徒がドタドタと入ってきた。
ストロボの光が和彦に注がれる。
Tシャツの上半身、スウェットが膝まで降り、勃起している股間が剥き出しの下半身、そして生徒に圧し掛かっている格好となった教師の姿に。
「あっ・・ああぁっ・・・あ・・・」
教師は、身を起こした。
シャッター音が続く。
何が起こっているか理解できない。
訳の分らぬ声を阿呆の様にあげることしか和彦には出来なかった。
ガンガンガンガンッ
教師用宿泊室のドアが強打される。
和彦は、目を覚ます。
すぐ横でも動きがある。
竜之介だ。
竜之介も眠り込んでいた。
ガンガンッ
ノックというには激しいおとが続く。
「杉山先生っ!居るんでしょっ!開けなさいっ!」
和彦は、何が起こったか分からない。
自分は全裸だ。
そして、なぜか隣に竜之介が居る。
あっ、、、、
昨夜の出来事を思い出す。
あの恥辱にまみれた出来事、、、
そして、泣き崩れ、それを竜之介に慰められて、、、
「センセッ、早く服着てっ!」
声をひそめて竜之介が言う。
床に落ちていた下着とスウェット、、、狩人が体育教官室から持ち出し、ベッドにおいていた着替えを拾い、和彦に渡す。
和彦は、慌てて身に付ける。
「杉山先生っ!開けなさい」
声と扉への猛打が続く。
和彦は、焦りながら扉を開ける。
顔を強ばらせた学年主任が立っている。
手に何か紙を持っている。
「藤崎くん?」
和彦の後ろ、乱れたベッドに腰かけている竜之介を見て、怪訝そうな顔をする。
「藤崎君、先に登校しなさい」
「え?」
「私は、そこにいる杉山先生と話があるのだ。早く行きなさい」
竜之介は、シブシブと部屋を出る。
昨日のことが耳に入ったのか・・・
こりゃ、カズ先生、絞られるだろうな・・・
そう思いつつ、竜之介は階段を2段抜かしで駆け上がり、自室に戻る。
パソコンを起動し、ヘッドホンを用意する。
教員用宿泊室には、隠しカメラだけでなく、盗聴機も仕掛けてある。
初めて役に立つな、念のため仕掛けておいて良かったぜ、、、
パソコンを操作する。
学年主任が紙を和彦に突き付けている。
*
竜之介が立ち去るなり、学年主任は、扉を閉め、和彦を睨み付けた。
和彦は、思わず後ずさる。
「まだ、寝巻きのままですか。寝癖が付いてますよ。登校の用意をしていないようですね。弛んでますね、、、」
ゆっくりと言う。
「何で、私が来たか、分かりますか?」
和彦は、怯えた表情だ。
そんな和彦をいたぶるように学年主任は和彦を睨み、ゆっくりと続ける。
「思い当たることはありませんか?」
思い当たることは多い。
が、思い出したくない。
頭をかきむしり、大声でわめき散らしたくなる。
そして学年主任は和彦へ手に持った紙を突きつける。
怯えた表情を浮かべていた和彦の顔に激しい感情が浮かぶ。
まずは、戸惑い。
目の前の紙の内容が理解できない。
ようやく目の前の紙に印刷されたものが和彦の頭の中で像を結ぶ。
驚愕に目が見開かれる。
そして、怒り、屈辱、諦念、やるせなさ、絶望・・・
様々なネガティブな感情を混ぜ合わせたような表情となる。
「ぅあ・・おぉぉっ・・・」
押し殺した、腹の底からの声。
その紙。
学校新聞号外とある。
大きく写真が印刷されている。
和彦が校庭を走っている写真だ。
全裸。
股間に両手を当て、目を見開き、屈辱に顔を歪めている。
かなりの腕前を持った生徒が撮ったのだろう。
全身の鍛えられた筋肉の動きがくっきりと伝わってくる。
手で隠しきれなかった陰毛の陰影も、手からはみ出した陰嚢の端もはっきり写っている。
そして、絶望と屈辱にまみれた和彦の表情の一瞬。
見るものの嗜虐性を刺激する見事な残酷絵。
心労で脂肪が落ち、絞り上げられた全身の筋肉の躍動は雄々しく、そして、美しい。
太字で『露出教(狂?)師、参上!』とある。
その下には、小さな画像が数枚。
それぞれにキャプションが添えられている。
例えば、横向きの和彦を捉えた画像。
股間に手をあて疾走している。
手前の足が前に伸び、腰に捻りが加えられている。
和彦の鍛えられプリンと張った尻の双丘が共に写っている。
表情を除けば伸びやかで、しなやかな美しい四肢を写した一枚。
だが、その表情。
噛み締められた口はへの字に歪んでいる。
目も怒り、恥ずかしさ、悔しさを滲ましている。
その写真には、『亀頭隠して尻隠さず』と書いてある。
フルフルと首を振る和彦。
足はがくがく震えている。
学年主任は言った。
「まさか、君が露出狂とは思わなかった。裸で校庭を走るなど、常軌を逸している」
写真の和彦の哀れな表情を見れば、好きでやったことではないのは分かるだろう。
だが、学年主任は、気に食わない和彦を追い落とせる絶好の機会の到来に喜んでいる。
和彦に発言の機会は与えない。
もっとも、ショックのあまり口がきけない状態であったが。
「私が早く来て気付いたから良かった。すぐに校内を回って全部回収したよ。全く、みっともない。君は、教師としての品性に欠ける様だね。今日は、謹慎しなさい。君のような変態に生徒は任せておけん」
そう言って、学年主任は出て行った。
呆然と立ち尽くす和彦。
手からハラリと彼の痴態を印刷した紙が落ちる。
和彦は、俯いて微動だにしない。
ポタッ
大粒の涙が、フローリングの床に落ちる。
ポタッ・・・ポタッ・・・
拭おうともしない。
声も出ていない。
涙は落ち続ける。
もう、駄目だ、、、
もう耐えられない、、、
教師を辞めよう、、、
逆境から逃げ出すことは嫌いだった。
常に前に進む、それが信条だった。
だが、もう無理だ。
限界だ。
教師になった自分を応援してくれた家族、友人・・・
裏切るのは辛かった。
だが、このままでは精神が持たない。
辞表を出すことを決心し、和彦の体は崩れ落ちた。
うずくまり、うぉぉぉ・・・うぉぉぉぉ・・・・と悲痛な泣き声をあげ続けた。
手負いの獣のように・・・
踞り、泣き、そして、放心状態になる。
しばらくしの後、ノックの音がした。
床にうずくまった和彦はピクリともしない。
涙も枯れ、魂の抜けた顔だ。
声が聞こえる。
が、反応しない。
ドアが開く。
竜之介だった。
制服姿だ。
「先生、どうしたんだよ、先生、、、」
体を揺する。
「オレ、先生が気になって授業を抜け出してきたんだ」
ようやく和彦は頭を上げる。
「俺、心配になって」
生徒は、横に座り教師を抱きしめた。
教師は、為すがままだ。
糸の切れた操り人形のよう。
「しっかりしろよ、先生」
力無く首を振る和彦。
ようやく口を開く。
「もう、先生じゃない。俺は、教師失格だ」
涙が再びこみあげる。
「俺、教師、辞めるよ。みっともないけど」
「何言ってんだよ。あの校内新聞見ちまったのか。俺、新聞部の奴らブン殴っちまったよ」
「・・・・」
「テメェらなにやってんだって、、、だって、こんなこと、人としてダメだろ。俺、先生の力になるよ。全力で。だから、辞めるなんて言うなよ」
生徒が教師を抱きしめる力を強くする。
教師は、生徒の肩に頭を乗せた。
ほんの少しでも、安らぎを求めるように。
生徒はその頭を優しくなでる。
和彦は、目を瞑った。ホッとしたような顔。
生徒は頭から背中、腰を撫でていく。
ゆっくり、ゆっくり。
「・・・?・・・!」
教師は、びくっとし、生徒を見た。
唇が少し開いている。
竜之介をじっと見つめた。
頬がかすかに赤く染まっている。
竜之介は、そっと唇を教師に近付けた。
一瞬、和彦の体が後ろに反応する。
竜之介は腕の力を込め、教師の体を近付ける。
抵抗は無かった。
唇が重なる。
そして、竜之介は、和彦の右手を掴み、自分の股間へと誘う。
堅くいきり立っている。
教師の体がショックを受けたように震える。
続いて、竜之介は教師の股間に手を触れた。
竜之介の指が優しく這うと、和彦のモノは生徒の手の中で堅さと熱さを増して始める。
その感触に、竜之介の体は芯から震えた。
唇を離し、教師の顔を見る。
戸惑いと恥じらい。
年下の教え子を前に、年上の体育教師の顔にその二つの感情が浮かんでいた。
まったく・・・ウブな可愛い奴だぜ。
竜之介は、目の前の年長の青年を心から愛しく思った。
無言で教師を立つように促す。
おとなしく従う教師。
立ちあがり抱擁する二人。
生徒のほうが背が高い。
もう一度、竜之介は教師に口づけした。
今度は、舌を入れる。
ビクッと和彦が怯えたように唇を離す。
軽いキスなら抵抗がないが、舌を絡めるのはまだ、抵抗があるようだ。
だが、教師の息は荒くなっている。
竜之介は、教師のスウェットを降ろそうとした。
一瞬、身を引く教師。
及び腰になりかけた年長の青年に、少年が諭すように言う。
「先生、人を愛するのっておかしい事?」
「・・・・」
「男が男を好きになるのはいけないこと?」
教師の目をじっと見る。
「オレ、先生のことを好きなんだけど、それは、間違ったこと?先生は俺のことが嫌?」
「い、いいや」
教師は、完全に生徒のペースに呑まれている。
「じゃぁ、お互い、正直になろうよ」
スウェットが膝の辺りまで降ろされた。
「あっ・・・」
ボクサーブリーフ越しに加えられた指、、、愛撫に声を漏らす。
生徒の唇は、教師の頬から、首筋にかけて移動する。
和彦の息の荒さが増した。
竜之介の体が下に沈む。
同時に、和彦の穿いたボクサーブリーフが膝まで下ろされた。
和彦の気性を現すようにぶっとくまっすぐに膨張した重量感溢れるモノが、まさしく屹立した。
もう、濡れている。
亀頭の先、鈴口から滲み出した透明な先走りが光っている。
「あっ・・・」
微かな声を上げ和彦は、手で前を隠そうとした。
その手を竜之介が遮る。
「恥ずかしがっちゃ、ダメだよ」
そして、和彦のモノを奥深くまでくわえこんだ。
教師は快感のあまり、頭をのけぞらした。
今まで感じたことがない激しい快感。
見下ろせば、彼が、今、はっきりと愛しさを自覚した生徒が和彦のモノをくわえている。
真剣に、丹念に・・・
そして、余りにも不幸な行き違いが生じた。
生真面目な和彦。
ストイックな和彦。
そして、常に相手を大事にする和彦。
そのまま己の快楽に身を任せていれば良かったのだ。
そうすれば、事態は変わっていたかもしれない。
が、歯車は回ってしまった、不幸な方へ。
和彦は、生徒に一方的に奉仕させるのはまずいと思った。
今度は、自分が、竜之介のモノを・・・・
自分が、相手を喜ばせねば・・・
腰を引き、生徒の肩に手を掛け、生徒の口から己のモノを離す。
本当はその後、竜之介を立たせ、自分がひざまづき生徒のモノを咥えるつもりだった。
が、生徒は、身を離す教師の行為を拒絶と受取ってしまった。
逃げていく獲物・・・
折角手に入れかけていると思ったのに・・・
狩人は若く経験が浅い。
ちょっと待てば、獲物は跪き、狩人のモノに服従を意味する口付けをしたというのに。
夕べからシナリオが狂い、今朝もマスコミ部の連中が、つまらない壁新聞を作ってしまった。
シナリオが思いどおりにいかないことに狩人の冷静さが失われていた。
誤った解釈が、狩人の理性を奪った。
恐ろしい形相で教師を上目使いで睨む。
仮面が剥がれた。
和彦は、何が起こったか分らない。
ビックと身を固める。
「お前、まだ、体裁ぶるのか・・・?ここまで来て俺を拒むのか?」
初めて聞く、凍るような冷たい声に和彦は、何も答えられなかった。
怯えたのだ。
急に生徒が立ち上がり、教師の両腕を掴み手前に引き、全体重をかけ、後ろに倒れた。
足払いも同時にかける。
バランスを失い、生徒の上に圧し掛かるように倒れる教師。
「来いっ、撮れっ」
ドアが突然開き、複数の生徒がドタドタと入ってきた。
ストロボの光が和彦に注がれる。
Tシャツの上半身、スウェットが膝まで降り、勃起している股間が剥き出しの下半身、そして生徒に圧し掛かっている格好となった教師の姿に。
「あっ・・ああぁっ・・・あ・・・」
教師は、身を起こした。
シャッター音が続く。
何が起こっているか理解できない。
訳の分らぬ声を阿呆の様にあげることしか和彦には出来なかった。
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