聖夜に裁かれた教師 憲司の場合

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美術室

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重い鉄の扉が閉った。

学校の外れの古びた堅牢な二階建ての建物。

取り壊しを免れた旧校舎の一部だ。

一階は美術室、二階は物置として使われている。

それも、本当の不用品ばかりが置かれている物置だ。

特に美術室に用がある人間以外、渡り廊下を通り、この建物を訪れない。

「先生、来てくださったんですね。バカげたお願いだから、ドタキャンされるんじゃないかと思って、心配しましたよ」

生徒達の中心に立つ美影が言った。

その顔を憲司は惚れ惚れと見る。

そこに居る生徒達はいずれも、標準以上の容姿をしていた。

いずれも体格が良い。

一人だけ、皆の陰に隠れるようにして下を向いている少年に目がとまる。

細身で小柄のおとなしそうな少年。

頬がうっすら染まっているように見える。

これから俺の裸を見るってことに緊張してるのか、、、初心なヤツだな、、、

彼独特のポジティブシンキング。

憲司の心は浮き立つ。

が、やはり美影が群を抜いて目立っている。

甘さと凛々しさの混った顔といい、肩幅のある上半身といい、すらりと伸びた脚といい、他の少年達とは、やはりレベルが違う。

上玉だ、、、

憲司は、ゲスな考えに、笑みを押さえることが出来なかった。

「先生、飲み物はいかがですか?自家製の栄養ドリンクしかないですけど」

美影はプラスティックのコップに薄い黄緑色の液体を注ぎ憲司に差し出した。

「部員のほとんどが体動かした後だから、精力つけなきゃなんないでしょ。
ちょっと酸っぱくて苦いけど、元気がでますよ」

涼しげな雰囲気を崩さず美影は言った。

コップを握る指は、長く形よい。

対峙する男っぽい教師と爽やかな少年。

一枚の絵としても成り立つ光景。

「ありがとう。いただくよ」

憲司は渋い声で応え、一気に飲み干した。

確かにほろ苦い。

生徒達はその間に、それぞれイーゼルの前に腰掛けた。

半円形に広がるイーゼルの前には高め木製の台が据えられている。

モデルの立つ台。

これから、この少年達の前で脱ぐのか・・・

ドクンッ!

健司は柄にもなく少し緊張仕掛けていた。

そして同時に、体の芯からのゾクッとする奮えも。

その体の中心部をじわじわと昇ってくる痺れるような奮えが何なのか・・・

憲司はまだ気付いていない。

身の内の不思議な動揺を押さえようと彼は辺りを見回した。

美術室の窓は厚いカーテンで閉ざされている。

デッサン用だろう、いくつかの石膏像が並んでいる。



憲司は怪訝そうな表情を浮かべた。

その横には、美術部に似つかわしくない物が置かれていた。

畳まれた白いビニール地の布はまだ分かる。

しかし、その上に載っている頑丈な手枷、縄等は理解の範囲を超えていた。

「ああ、あれですか?」

憲司の不審に気付いてか、美影が言った。

「小道具ですよ。単にお互いをモデルにデッサンし合うのもつまらないじゃないですか。だから、時々、モデルになった奴がコスプレしたりするんですよ、、、どうせ描くなら楽しく描きたいじゃないですか、、、ロープレやヒロイックファンタジーに出てくる囚われたヒーローとか、拷問を受ける戦士とか、生け贄にされる英雄とか、、、ジャンケンで負けたヤツがそういう格好をするんです。美術部員ってガタイのいいヤツが多いから良い絵が描けるんです」

囚われ・・・拷問・・・生贄・・・!?

ガタイのいいヤツ?

てことはモデルは肌を露出しているのか・・・

良いぞ、、、これは良い、、、

憲司は能天気に舌舐りする。

やっぱりこいつら、素質があるのか、、、

細身が好きな憲司としては、大人しそうな一人を除きちょっとガタイが良すぎたが、相手にする分には不足のないレベルの少年達だ。

小躍りしたい気分だった。

「良かったら先生もコスプレをやってみる?」

「そうだな、どんな格好をしようか・・・」

青年と少年の視線が絡む。

訪れた沈黙。

その場にいる生徒達の目は憲司に集中している。

下を向いていた少年も上目使いで見ている。

ゾクリッ!

また、憲司の体の芯、大きな震えが体の芯を走り脳天で痺れとなって弾ける。

憲司は初めての感覚に朦朧となりそうだった。

そろそろ生徒達の前で脱いで素肌を晒す時が来たようだ。

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