上 下
7 / 17

第7話(クズな報酬と欲しい報酬)

しおりを挟む
 俺が馬車に戻ると、勇者様達御一行が月を見ながらアホ面を晒していた。俺は何事もなかったかのように荷台に乗り込むと、質素な椅子に横になって寝る。下手に喋ると碌な事にならなそうだからだ。疲れていた俺はそのままンゴゴゴゴゴッッッ!と地を揺るがすような鼾を立てながら寝る。
 しばらくすると我に返って、金髪イケメンが荷台に上がってくる。

「あれは、どういう事だと思う?」
「ンゴゴゴゴゴッッ!」

「あんな天変地異が急に起こるとは考えづらい。またキミが何かしたのではないか?」
「ンゴゴヌルペッチョキュリキュキュイボゲルゲチョンッッ!!」

「いや、何言っているかわからないから」
「ンゴゴンゴゴンンゴゴメラッチョゴゴンゴンゴゴッッッ!!」

 ウルサイやつだな。俺が鼾で寝ている事をアピールしているのに、無視して話しかけてきやがる。まぁ面倒くさいから無視して狸寝入りを決め込むけど。
 そんな事を続けてると、やっと諦めたのか自分達の椅子に座ると馬車が動き始める。もうかなり遅くなったので、最寄の宿で1泊しながら俺らは王都に戻るのだった。

 王都に戻ると俺は大目的を果たすために冒険者ギルドへ掛け戻り、許可も得ずにギルドマスタの部屋を蹴り開ける。

「さぁ!獣人娘専門出会い系サロンに行こう!今すぐに行こう!!」
 俺は最大限の笑みを浮かべながら、部屋で何事かと固まっている片目マッチョに話しかける。片目マッチョは俺の姿を見るなり頭を押さえて、ウンウン唸り始める。何か怒りそうな雰囲気を感じる。俺の後ろではギルドマスターの部屋の扉の蝶番ちょうつがいが一部外れてプランプランしているけど、こんなことで怒るはずもない。なぜなら俺は魔王討伐の一番の功労者だからだ!

「普通に入ってこんかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 部屋を揺るがすような大音量で怒られた。あまりの大きな声に吃驚びっくりする。このクソ片目マッチョ、吃驚心臓発作を起こしたらどうしてくれるんだ!!

「よし、それはいいから。早く行こう!!」
 俺はぶれない漢なので、この程度の大音量での叱咤など物の数に入らないのだ。片目マッチョの怒りを完全に無視して話を進めようとするのだが、コイツ首を縦に振りやがらねぇ。

「まずは王への報告が先だ。報酬をもらえんぞ?」
「よし報告に行くぞ!!」
 片目マッチョが片目マッチョの癖に建設的な提案をしてきたので0.2秒で許諾する。即決即断も俺の数多い美点の一つだ。片目マッチョは凄く疲れた表情で辛気臭く立ち上がると俺についてくる。俺はウキウキな気分で王城への道を急ぐ。

 王城への道はごった返していて……何かそればっかだな。まぁ月に星砕きメテオストライクしていたら不安にもなるか。王城の門へ住民が詰め掛けて不安な事をアピールしている。またもや入場規制だよコレ。とか思っていると片目マッチョが別の小道を歩いていく。そっちは違う方向じゃないかと思ったが、面倒くさいので仕方なく付いて行く。
 小道の突き当りには扉があり、片目マッチョがその扉をコンコンと叩くと壁の向こうから声がする。
「神秘の連峰といえば?」
「おっぱい」
「よし!」
 おい、ちょっと待てお前ら!今すぐそこに直れ!!何がよし!だ。最悪な合言葉を聞かされた俺は、つい片目マッチョに目突きを食らわして無目マッチョにするところだった。
 合言葉はともかく無事に入場できた俺と片目マッチョはそのまま謁見の間に向かい、すんなり王様の前に案内される。

「依頼、やってきた。報酬、くれ」
「もう少し何とかならんのか、その態度」
 片目マッチョがいちいち文句を言う。俺の態度よりお前のマッチョの方が失礼だと思うがな!!
「魔王城の様子に関しては、後ほど報告はもらうとするのじゃが、まずはそなたへの報酬じゃな。そうじゃな先の魔王討伐の功績も踏まえて、爵位と領地を進呈しよう」
 椅子にはまった王様が戯けた事を言ってくる
「いらない。爵位なんてもらったら面倒事がついてまわるからそんなクズ報酬お断りだ。くれるならそこそこ広い屋敷とメイドさんと国王のお墨付きをくれ。当然屋敷の維持費とメイドさんの雇用費はそっち持ちで」
 国王の褒美発言を無視して自分のもらいたいものを要求する。
「わかった。金一封の他に、広い屋敷セットを進呈しよう。で国王のお墨付きとは何じゃ?」
「物を買うにも、どこか出かけるにも、国王の認定証みたいのがあれば、かなり自由にできるからありがたい」
「ふむ。じゃぁ、国印が刻まれている短剣を授けよう。何かあった時、その短剣の柄の紋章を見せれば、融通してくれるじゃろうて」
 とんとん拍子に話が進み、俺はそこそこ広い屋敷とメイドさん一式と国王のお墨付きをもらうことが出来た。隣で片目マッチョが俺の傍若無人振りをみてビクンビクンと痙攣していて気持ち悪いんだが。

 そうして俺は応接間に案内されると、いつも通りのでかい態度でソファーに腰掛ける。しばらくすると、切れ長眼鏡のメイドさんが書類を持って現れる。

「こちらが王家の短剣。こちらが屋敷の委譲書になりますので、下の方にサインをお願いします。面倒な手続きは全てこちらでやっておきますので、サインだけで結構です」
 凄いできる秘書風の雰囲気を十二分に醸し出しているメイドさんの、その態度と冷たい眼差しで俺はノックアウトされそうになる。短剣を受け取り言われたとおり書類にサラサラとサインをして書類を返すと、クルクルと書類を丸めて手に持つ。そして「引渡しは7日後になると思いますので、7日後にまた王宮にいらしてください」とクールに告げると、部屋を後にした。

 王宮での用事が終わった俺は片目マッチョをせかすように、「獣人娘専門出会い系サロン」と連呼するのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

追憶の刃ーーかつて時空を飛ばされた殺人鬼は、記憶を失くし、200年後の世界で学生として生きるーー

ノリオ
ファンタジー
今から約200年前。 ある一人の男が、この世界に存在する数多の人間を片っ端から大虐殺するという大事件が起こった。 犠牲となった人数は千にも万にも及び、その規模たるや史上最大・空前絶後であることは、誰の目にも明らかだった。 世界中の強者が権力者が、彼を殺そうと一心奮起し、それは壮絶な戦いを生んだ。 彼自身だけでなく国同士の戦争にまで発展したそれは、世界中を死体で埋め尽くすほどの大惨事を引き起こし、血と恐怖に塗れたその惨状は、正に地獄と呼ぶにふさわしい有様だった。 世界は瀕死だったーー。 世界は終わりかけていたーー。 世界は彼を憎んだーー。 まるで『鬼』のように残虐で、 まるで『神』のように強くて、 まるで『鬼神』のような彼に、 人々は恐れることしか出来なかった。 抗わず、悲しんで、諦めて、絶望していた。 世界はもう終わりだと、誰もが思った。 ーー英雄は、そんな時に現れた。 勇気ある5人の戦士は彼と戦い、致命傷を負いながらも、時空間魔法で彼をこの時代から追放することに成功した。 彼は強い憎しみと未練を残したまま、英雄たちの手によって別の次元へと強制送還され、新たな1日を送り始める。 しかしーー送られた先で、彼には記憶がなかった。 彼は一人の女の子に拾われ、自らの復讐心を忘れたまま、政府の管理する学校へと通うことになる。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

悪役令嬢にざまぁされた王子のその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。 その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。 そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。 マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。 人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

召喚アラサー女~ 自由に生きています!

マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。 牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子 信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。 初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった *** 異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います

突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます

ももがぶ
ファンタジー
俺、空田広志(そらたひろし)23歳。 何故だか気が付けば、見も知らぬ世界に立っていた。 何故、そんなことが分かるかと言えば、自分の目の前には木の棒……棍棒だろうか、それを握りしめた緑色の醜悪な小人っぽい何か三体に囲まれていたからだ。 それに俺は少し前までコンビニに立ち寄っていたのだから、こんな何もない平原であるハズがない。 そして振り返ってもさっきまでいたはずのコンビニも見えないし、建物どころかアスファルトの道路も街灯も何も見えない。 見えるのは俺を取り囲む醜悪な小人三体と、遠くに森の様な木々が見えるだけだ。 「えっと、とりあえずどうにかしないと多分……死んじゃうよね。でも、どうすれば?」 にじり寄ってくる三体の何かを警戒しながら、どうにかこの場を切り抜けたいと考えるが、手元には武器になりそうな物はなく、持っているコンビニの袋の中は発泡酒三本とツナマヨと梅干しのおにぎり、後はポテサラだけだ。 「こりゃ、詰みだな」と思っていると「待てよ、ここが異世界なら……」とある期待が沸き上がる。 「何もしないよりは……」と考え「ステータス!」と呟けば、目の前に半透明のボードが現れ、そこには自分の名前と性別、年齢、HPなどが表記され、最後には『空間魔法Lv1』『次元の隙間からこぼれ落ちた者』と記載されていた。

おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ

Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_ 【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】 後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。 目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。 そして若返った自分の身体。 美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。 これでワクワクしない方が嘘である。 そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
空想の中で自由を謳歌していた少年、晴人は、ある日突然現実と夢の境界を越えたような事態に巻き込まれる。 目覚めると彼は真っ白な空間にいた。 動揺するクラスメイト達、状況を掴めない彼の前に現れたのは「神」を名乗る怪しげな存在。彼はいままさにこのクラス全員が異世界へと送り込まれていると告げる。 神は異世界で生き抜く力を身に付けるため、自分に合った能力を自らの手で選び取れと告げる。クラスメイトが興奮と恐怖の狭間で動き出す中、自分の能力欄に違和感を覚えた晴人は手が進むままに動かすと他の者にはない力が自分の能力獲得欄にある事に気がついた。 龍神、邪神、魔神、妖精神、鍛治神、盗神。 六つの神の称号を手に入れ有頂天になる晴人だったが、クラスメイト達が続々と異世界に向かう中ただ一人取り残される。 神と二人っきりでなんとも言えない感覚を味わっていると、突如として鳴り響いた警告音と共に異世界に転生するという不穏な言葉を耳にする。 気が付けばクラスメイト達が転移してくる10年前の世界に転生した彼は、名前をエルピスに変え異世界で生きていくことになる──これは、夢見る少年が家族と運命の為に戦う物語。

処理中です...