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第073話(料理展開?!)
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翌日、僕は再び料理を持って冒険者ギルドに訪れていた。今日は冒険者ギルドの初心者講習がある日なので、そちらに集中したかったのだが、明日以降だとシチューがだめになるのを伝えた所、無理にでも今日中に話をまとめると、クーフェさんが意気込んで強行してしまったのだ。
そして、当たり前のようにギルドマスターザックさんに対面している。
「昨日の今日で、新しい料理か。そんなに贔屓には出来ねぇぞ?クーフェの嬢ちゃん?」
「今回はギルドにじゃなくて兎の一角亭に作ってもらおうと考えています。兎の一角亭はギルドの大事な取引先ですし、昨日の料理レシピをギルドで使うことになることもあったので、一応ギルドマスターに話を通しておこうと思ったのです」
僕の作ってきた料理を一瞥しながら、そんな事を言うザックさんに、クーフェさんが淀みなく答える。
「なるほどな。供給が一角兎でぶつかると、厄介な話にもなるからか」
「えぇ。ですが、こちらの料理は時間と手間がかかりすぎるので、品数はあまり出ないかと思いますので、あまり競合はしないと考えています」
「これ……ねぇ?」
そして兎のブラウンシチューを覗き込むと、訝しげな顔で顎を擦るザックさん。
「泥水というか、アレ……みたいだよな」
そう汚物を眺めるような嫌そうな目で僕のシチューを見る。時間が立って冷えていることもあり、香りが立たなくなってきているので、見た目を覆す事が難しくなっている。
「まぁ、クーフェの嬢ちゃんのお墨付きだし、あんなに旨い料理を作ってきたシンが、変なものを食わすわけがないとは思うが……」
ザックさんはそう言うと、シチューを木匙で掬い、恐る恐るの体で口に運ぶ。
このシチューを食べた人は最初に訝しむ分、兎のステーキの時より表情の変わり方が劇的で面白い。ザックさんの表情がみるみるうちに変わり、プルプル木匙を震わせながら、再度掬い口に運ぶ。
「……何だこれ?見た目と味がぜんぜん違う。そして旨い!!」
僕なんかは素材は多少違うが見た目も香りも味も馴染みのある物なのだが、コチラの世界では初めての料理のようで、思っていた味とのギャップが激しいようだ。
「当たり前なのです!御主人様の作る料理は絶品なのです!……チクショウなのです……」
「でしょう?これをいつでも食べるようにしたいんです!!」
ザックさんの反応をみて、胸を張りながら微妙に悔しげな表情を浮かべるポメ。そしてクーフェさんが喜びの表情を浮かべながら、身を前に乗り出して言う。
「確かにな……できればウチの酒場で出してもらいたいところだが……」
「この料理、下準備に1~2日かかるみたいなので、ギルドの酒場で指すには難しいかと」
「なるほど、だから兎の一角亭ってことか。良いだろう。俺もこの料理が手軽に食えるなら望むところだ。オックスに話して紹介してもらえ」
「はい。ありがとうございます」
「では、もう一口……」
「もうダメなのです!」
紹介の許可をくれたザックさんがもう一口食べようとするが、ポメがお皿を取り上げてしまう。
そして名残惜しそうにしているザックさんの部屋を退室して、解体場のオックスさんの元に向かう。
オックスさんもシチューを見せるとギルドマスターと同様の反応を示したが、やはり恐る恐るだが一口食べると表情が変わり、話を快諾して兎の一角亭の主人を紹介してくれる事となった。
「俺が行ったほうが話が早いな。幸い、今は急ぎの仕事もないし、これから行くとするか」
「お願いします。私は仕事があるので、シン君を宜しくお願いします」
「あぁ。ま、大丈夫だろ」
クーフェさんと別れて、僕は筋肉の塊のようなオックスさんと一緒に兎の一角亭に向かう。
兎の一角亭は大通りに面した店舗で、ちょっと高級そうな佇まいだ。席数は4名卓が6つくらいある広さで、冒険者ギルドの酒場に比べると4分の1程度だ。
しかし、掃除が行き届いていて、テーブルクロスなども綺麗なものが使われている。調度品もおちついいた色合いのものが少量置かれている。テーブルの中央には花瓶が備え付けられていて、たしかに特別な日に訪問する雰囲気の店だと感じられる。
「……オックスが店まで来るなんて珍しいな」
くすんだ癖のある金髪をした細身の男性が僕達を迎え入れる。僕を値踏みするような少し垂れた瞳が視線を飛ばす。
「あぁ、ゼクス。今日はちょっと料理の紹介をな」
「オックスが料理の紹介?冗談だろ?こっちは長年現場で料理に打ち込んできたんだぞ。素人の料理を紹介されてもな」
「いやいや、俺じゃない。この小さいやつが考案した料理だ」
「……こんな子供が?耄碌したかオックス?お前に限って、現実の見えていないガキに対して甘っちょろい優しさなんかなかったと記憶しているが?」
「これを食べた後にも同じセリフが吐けるなら、大したものだがな。まぁ騙されたと思って食ってみろ」
ゼクスと呼ばれた兎の一角亭の亭主は、僕を完全に敵視しているような雰囲気だが、全くそれを意に返さずにオックスさんは返す。そして、僕に料理の提示を求めてくる。
「私の御主人様に向かって暴言の数々、これは鉄槌を下す必要があるのです!今必殺のポメ・ストラ……」
「ダメだから!」
今すぐにでも飛びかかろうとしたポメ組み付いて止める。本当にポメはトラブルメイカーだなぁと思いながら、ジタバタと暴れるポメを押さえつける。
「こんな美幼女を力ずくで抑え込むなんて、御主人様はとんだロ○コン、ペ○フィリアなのです!!」
「僕だって小さいから、そういうは適用されない!」
「朝起きた時に、オッキしてテント作ってる御主人様にはもう適用なのです!!」
「ちょ!僕はまだオッキした事ないよ!!」
「いいや、ポメは知っているのです!!そうあれは……」
「ちょっ!ポメ!!待って!!」
「何やっているんだ……お前たちは?」
暴れるポメを押さえつけながらドタバタしていた僕達に、オックスさんからの冷たい視線が飛ぶのだった。
そして、当たり前のようにギルドマスターザックさんに対面している。
「昨日の今日で、新しい料理か。そんなに贔屓には出来ねぇぞ?クーフェの嬢ちゃん?」
「今回はギルドにじゃなくて兎の一角亭に作ってもらおうと考えています。兎の一角亭はギルドの大事な取引先ですし、昨日の料理レシピをギルドで使うことになることもあったので、一応ギルドマスターに話を通しておこうと思ったのです」
僕の作ってきた料理を一瞥しながら、そんな事を言うザックさんに、クーフェさんが淀みなく答える。
「なるほどな。供給が一角兎でぶつかると、厄介な話にもなるからか」
「えぇ。ですが、こちらの料理は時間と手間がかかりすぎるので、品数はあまり出ないかと思いますので、あまり競合はしないと考えています」
「これ……ねぇ?」
そして兎のブラウンシチューを覗き込むと、訝しげな顔で顎を擦るザックさん。
「泥水というか、アレ……みたいだよな」
そう汚物を眺めるような嫌そうな目で僕のシチューを見る。時間が立って冷えていることもあり、香りが立たなくなってきているので、見た目を覆す事が難しくなっている。
「まぁ、クーフェの嬢ちゃんのお墨付きだし、あんなに旨い料理を作ってきたシンが、変なものを食わすわけがないとは思うが……」
ザックさんはそう言うと、シチューを木匙で掬い、恐る恐るの体で口に運ぶ。
このシチューを食べた人は最初に訝しむ分、兎のステーキの時より表情の変わり方が劇的で面白い。ザックさんの表情がみるみるうちに変わり、プルプル木匙を震わせながら、再度掬い口に運ぶ。
「……何だこれ?見た目と味がぜんぜん違う。そして旨い!!」
僕なんかは素材は多少違うが見た目も香りも味も馴染みのある物なのだが、コチラの世界では初めての料理のようで、思っていた味とのギャップが激しいようだ。
「当たり前なのです!御主人様の作る料理は絶品なのです!……チクショウなのです……」
「でしょう?これをいつでも食べるようにしたいんです!!」
ザックさんの反応をみて、胸を張りながら微妙に悔しげな表情を浮かべるポメ。そしてクーフェさんが喜びの表情を浮かべながら、身を前に乗り出して言う。
「確かにな……できればウチの酒場で出してもらいたいところだが……」
「この料理、下準備に1~2日かかるみたいなので、ギルドの酒場で指すには難しいかと」
「なるほど、だから兎の一角亭ってことか。良いだろう。俺もこの料理が手軽に食えるなら望むところだ。オックスに話して紹介してもらえ」
「はい。ありがとうございます」
「では、もう一口……」
「もうダメなのです!」
紹介の許可をくれたザックさんがもう一口食べようとするが、ポメがお皿を取り上げてしまう。
そして名残惜しそうにしているザックさんの部屋を退室して、解体場のオックスさんの元に向かう。
オックスさんもシチューを見せるとギルドマスターと同様の反応を示したが、やはり恐る恐るだが一口食べると表情が変わり、話を快諾して兎の一角亭の主人を紹介してくれる事となった。
「俺が行ったほうが話が早いな。幸い、今は急ぎの仕事もないし、これから行くとするか」
「お願いします。私は仕事があるので、シン君を宜しくお願いします」
「あぁ。ま、大丈夫だろ」
クーフェさんと別れて、僕は筋肉の塊のようなオックスさんと一緒に兎の一角亭に向かう。
兎の一角亭は大通りに面した店舗で、ちょっと高級そうな佇まいだ。席数は4名卓が6つくらいある広さで、冒険者ギルドの酒場に比べると4分の1程度だ。
しかし、掃除が行き届いていて、テーブルクロスなども綺麗なものが使われている。調度品もおちついいた色合いのものが少量置かれている。テーブルの中央には花瓶が備え付けられていて、たしかに特別な日に訪問する雰囲気の店だと感じられる。
「……オックスが店まで来るなんて珍しいな」
くすんだ癖のある金髪をした細身の男性が僕達を迎え入れる。僕を値踏みするような少し垂れた瞳が視線を飛ばす。
「あぁ、ゼクス。今日はちょっと料理の紹介をな」
「オックスが料理の紹介?冗談だろ?こっちは長年現場で料理に打ち込んできたんだぞ。素人の料理を紹介されてもな」
「いやいや、俺じゃない。この小さいやつが考案した料理だ」
「……こんな子供が?耄碌したかオックス?お前に限って、現実の見えていないガキに対して甘っちょろい優しさなんかなかったと記憶しているが?」
「これを食べた後にも同じセリフが吐けるなら、大したものだがな。まぁ騙されたと思って食ってみろ」
ゼクスと呼ばれた兎の一角亭の亭主は、僕を完全に敵視しているような雰囲気だが、全くそれを意に返さずにオックスさんは返す。そして、僕に料理の提示を求めてくる。
「私の御主人様に向かって暴言の数々、これは鉄槌を下す必要があるのです!今必殺のポメ・ストラ……」
「ダメだから!」
今すぐにでも飛びかかろうとしたポメ組み付いて止める。本当にポメはトラブルメイカーだなぁと思いながら、ジタバタと暴れるポメを押さえつける。
「こんな美幼女を力ずくで抑え込むなんて、御主人様はとんだロ○コン、ペ○フィリアなのです!!」
「僕だって小さいから、そういうは適用されない!」
「朝起きた時に、オッキしてテント作ってる御主人様にはもう適用なのです!!」
「ちょ!僕はまだオッキした事ないよ!!」
「いいや、ポメは知っているのです!!そうあれは……」
「ちょっ!ポメ!!待って!!」
「何やっているんだ……お前たちは?」
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