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第055話(近隣野獣?!)

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 市場を後にした僕達は、クーフェさんと約束していた通りに冒険者ギルドに顔を出す事にした。まだ回りきっていない色々な店舗を眺めながら市場を後にして、冒険者ギルドに向かう。

 大通りに面している冒険者ギルドは看板も出てるのもあり、すぐに分かった。僕達が冒険者ギルドの扉をくぐると、昼過ぎということもあり、他の冒険者はいないようだった。
 ギルドに入って右手の壁には依頼掲示板があり、僕はそこの前に立って丁度よい依頼がないかを確認していると、背後から見知った声が掛けられる。

「シン君。来てたのね」
 振り向くとギルドの受付嬢の制服を来たクーフェさんがニコニコしながら手を振り、こちらにやってくる。相変わらず胸のところがパンパンになっていて、すごく自己主張をしている。恥ずかしくて直視できない……

「なぁに?」
 僕が俯いていると、覗き込むように前屈みになるクーフェさん。より胸の谷間が強調されてしまい、僕は横に目を逸らす。

「そこまでにするのです。おっぱいお化け」
 ポメがビシッとクーフェさんを指差しながら断言する。またそんなこと言ったら……

、言ったかしらぁ?ポメちゃぁん?」
 周りの温度を氷点下に変えながら、壮絶な笑みを浮かべたクーフェさんがポメに詰め寄る。全くポメも懲りないなぁ……

「クーフェさん。僕にでもできそうな仕事はありましたか?」
 ジリジリとポメに詰め寄るクーフェさんに声を掛けると、雰囲気を一転させて明るい表情になり、嬉しそうに僕の隣にやってきて、掲示板の一角を指差す。

「やるんだったら、ここいらのが良いんじゃないかな?」
 クーフェさんが指差した一角は低ランクの冒険者たち向けの依頼が貼ってあるブロックだった。

「水路の掃除、堆肥の運搬、廃棄物処理……」
 上下水道が完備されていない所を見ると、こういう仕事も当然あるんだろうなという汚れ仕事が並んでいた。町中の作業なので危険は少ないけど、手当はそれなりだ。そりゃ、みんなやりたがらない仕事だろうからなぁ。

「こいうのは専門の業者がやっているんだけど、手が足りないのよね。だから定期的に貼り出して、増員募集を掛けてるの。確かに人の嫌がる仕事だけど、町の維持には必須で賃金もそれなりな仕事よ。まぁとはいっても怪我して外に出れない冒険者が偶に受けるような仕事だけどね」
 クーフェさんが丁寧に説明してくれる。なるほど確かに専門でやる人がいなければ町は維持できないよなぁ。

「こういう仕事には身寄りがない孤児の人が多く就くの。身寄りがなければ仕事の選択の自由も大幅に制限がかかってしまう。これらの仕事は特に必要なスキルもなく、賃金も安定して入ってくるので後ろ盾がなくても生きていける仕事よ」
 世知辛い世の中だなと思いながらも、そういう人がいることで町が町として機能しているんだと言う事を理解する。とは言え、僕がその仕事をしたいわけじゃないけど。

「これは?」
「あぁ、これは町の外に出るからちょっとだけ危険だけど、町からほど近い草原に多く生えている素材の採取ね。町から近いとはいえ、一角兎ホーンラビットや走り蜥蜴リザード毒蛇ポイズンバイパーなど危険な獣が多くいて、運が悪いと死傷したりするから、冒険者に依頼するの」
「なるほど、他に危険な獣はいるんですか?」
「うーん、この町の外すぐだと、他には雑食モグラオムニモール大型の百舌鳥ラージ・シュライクくらいかしらね。どれも積極的には人を襲わないんだけど、何かの拍子に攻撃してくることはあるわ」
「それらの敵の特徴を教えてもらえますか?」
一角兎ホーンラビットは、強力な後ろ足の跳躍からの角での一突きが脅威よ。当たりどころが悪ければ重傷になるわ。毒蛇ポイズンバイパーは毒を持っていて、噛まれてから手当をしなければ死んでしまう可能性があるけど、ここで売っている毒消しで治療できるわね。走り蜥蜴リザードは脚が速いわ」
「足が速いだけ?」
「ええ、足が早くて捕まえにくいけど、噛み付いたりしてくるわけでもないし、草食だから基本的には安全よ。ただし突進をまともに受けると骨が折れるくらいの威力があるから、たまに怪我人が出てしまうの」
「はぁ、突進には気をつけます」
雑食モグラオムニモールは地中から飛び出してきて噛み付いたり、穴に足を取られて動けなくなった所を噛み付いたりしてくるわね。大型の百舌鳥ラージ・シュライクは上空から急降下で急所を狙った攻撃をしてきて、獲物が弱ると上空に持ち上げて、鋭利な木の枝に急降下しながら刺し殺してくる。まぁ人間相手だと持ち上がらないから、急降下からの急所攻撃に気をつければ大丈夫よ」
「説明ありがとうございます。ファングとビークがいればなんとかなりそうな気がしますので、この素材収集をやってみたいと思います」
 クーフェさんの丁寧な説明を受けて、僕はそう判断する。

「確かに風狼ウィンド・ウルフ火燕ファイア・スワローがいれば問題なさそうね。でもね、くれぐれも無理はしないこと。シン君はまだまだ小さい子供なんだからね」
「はい。わかりました。無理はしません」
 立てた指を振りながら、片目をつぶって、お姉さんのように説明するクーフェさんに答える僕。

 そして採取する素材の詳しい説明を聞いて、僕達は初めての依頼クエストを開始するのだった。
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