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第049話(生活実感?!)
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「さてと、今日はどうしようかなぁ」
朝日が昇って少し過ぎた頃に目を覚ました僕は、ベッドに腰掛けて独り言を呟く。僕の足元ではファングが期待の込めた眼差しで僕を見上げ、ベッドの縁に止まっているビークも興味深めな視線を僕に送ってくる。
「とっととこの豚小屋から高級ホテルへと居を移すのです」
僕より早く起きていて、音も立てずに諸々の支度を整えていたポメが、クーフェさんに聞かれたら折檻されるであろう言葉を吐きながら提案する。
「善意で泊まらせてもらっているのに、そんな言い方良くないよ」
「善意で豚小屋に放り込まれたら、堪らないのです!まだ持ち運び式小家屋の方が快適なのです」
「そりゃまぁ、旧世代の超文明のものに比べたら、質は落ちると思うけど……そもそも比べる対象が違うと思うよ。何よりすぐ隣でランクS級の魔物がウロウロしている森より安全で、温かいじゃないか」
ポメを諭しながら、クーフェさんやキリクさんが僕達を受け入れてくれた人の暖かさを、改めて貴重なものとして感謝するのだった。
「とにかく一宿一飯の恩義っていうのもあるから、何かをクーフェさんとキリクさんに返さないと」
何で返せるかなと頭を捻っていると、僕達に用意された部屋の扉がノックされる。
「シン君、起きてる?朝ごはんができたわよ」
クーフェさんが扉越しに僕達に声をかけてくれる。
「ありがとうございます。すぐに行きます」
そう答えた僕は、髪を撫で付けて整えると、ファング、ビーク、ポメと共に部屋を出る。
テーブルの上には、葉野菜のサラダと塩漬け肉のソテーと目玉焼きとパンが用意されていた。キリクさんは既に食べ始めていて、もうすぐ終わろうかという感じだ。
「悪いな。門番の仕事があるから、先に食べさせてもらってるぜ」
パンを口に頬張りながらキリクさんが説明する。確かに朝早くに出入りする行商人の受け入れなんかもあるから門番の仕事は朝早くからあるのだろう。
僕達が席に座ると、ほぼ同時に食べ終えたキリクさんが、席を立って部屋に戻っていく。
「じゃぁ、私達も頂きましょうか。地の女神イシュター様、今日も大地の恵みをありがとうございます」
「「地の女神イシュター様、今日も大地の恵みをありがとうございます」」
クーフェさんに続いて、僕とポメもお祈りを捧げると、食事をし始める。特に複雑な調理過程を踏んでいる料理ではないので、先日のホーンラビットのシチューの用に味はバラバラになっていない。……けど、今一パンチが足りないと思ったら、胡椒の類がかかっていない。塩は多少振ってある所を見ると、胡椒という香辛料に馴染みがないんだろうか?
「塩以外に香辛料をかけたりしないんですか?」
「香辛料?何それ?」
僕がクーフェさんに聞いてみると、不思議な顔をして聞き返される。
「ピリッとしたり、強い香りがしたりする葉っぱや木の実なんですが」
「あぁ、ペパの実とかピリの葉のことかなぁ?ペパの実は高くてとても普通のご飯には使えないけど、ピリの葉なら普通に使っているわ」
「なるほど……ちなみにペパの実というのは?」
「うーんとね、これくらいの木の実で、黒いのと白いのがあって、10粒くらいで銀貨10枚もするの」
ペパの実というのが胡椒みたいな気がする。それにしても10粒で銀貨10枚だと、1万円相当だから、相当に高い気がする。
「ペパの実はここいらじゃ取れないから、すごく貴重で高くなっているみたい。でもピリの葉の方は、街の周辺に生えているから、そんなに高くないわ。でも乾燥させて粉状にしないと使えないから、ちょっと手間はかかるみたいだけれど」
そういって小さな陶器の壺を持ってきてくれる。中には濃い紫色の粉が入っていて、匂いを嗅ぐと強い酸味を含んだ香りがする。
「これは赤紫蘇かな。パン食にはあまり向かないけど、焼いた肉にかけると肉の旨さが引き立つ気がする」
「そうね、これはお肉に振り掛けて使うことが多いかな」
そんな話をしながら、美味しく朝ごはんを頂戴する。
「さてと、私は洗い物をしたら、ギルドに出勤しないと」
「あ、皿洗いくらいなら僕達がやっておきますので、先に準備をしてきてはどうですか?」
「そんな、悪いよ」
「いいえ、僕達はクーフェさんの好意で泊まらせてもらった上、食事まで頂いています。何かお手伝いをさせていただかないと、後ろめたくてしょうがないんです」
「あ……そうね。じゃぁお願いしちゃおうかしら。洗室を使ってね」
僕は洗室に移動してそこで皿を洗おうとする。夜にチラ見してたので、手順はわかっていて、桶に入った水を少し更に垂らして、ヘチマのような植物性のたわしでこの皿を擦るんだが……
「これは生活が大変そうだなぁ……」
まず大きなタライに必要な際に水を汲んで、それで服を洗ったり、皿を洗ったり、ゴミはなるべく水路に流さないように、ゴミ受けにためて、それを共同のゴミ溜めに捨てる。排泄物も汲み取ってどこかで処理をしているみたいだ。また料理の際にも薪を燃やして調理しなくてはならないので、薪も購入して家の中に置かなきゃいけないし、発火させるための着火剤も用意しなければならないし……
そんな事を考えながらゴシゴシしていたら、いつの間にか皿洗いが終わっていた。
「終わりました」
「ありがとう。シン君たちはこの後どうする?」
ギルドの受付用の制服に着替えたクーフェさんが僕達の行動を聞いてくる。
「えっと、どういう物があるのかを見に市場に行ってみたいと思います。あとせっかく冒険者ギルド証をもらったので、何か僕にでもできることがないか、冒険者ギルドの依頼を見たいと思っています」
「うーん。シン君くらいの年で受けられる依頼かー、無くはないと思うんだけど……まぁ、私もギルドに行ったら依頼を見て見るから、ギルドに来たら聞いてみてね☆」
「はい。その時は宜しくお願いします」
「じゃぁ、家の戸締まりをしたいので、外出の用意をしてくれるかな?」
そうして僕達はクーフェさんと一緒にクーフェさんの家を出るのだった。
朝日が昇って少し過ぎた頃に目を覚ました僕は、ベッドに腰掛けて独り言を呟く。僕の足元ではファングが期待の込めた眼差しで僕を見上げ、ベッドの縁に止まっているビークも興味深めな視線を僕に送ってくる。
「とっととこの豚小屋から高級ホテルへと居を移すのです」
僕より早く起きていて、音も立てずに諸々の支度を整えていたポメが、クーフェさんに聞かれたら折檻されるであろう言葉を吐きながら提案する。
「善意で泊まらせてもらっているのに、そんな言い方良くないよ」
「善意で豚小屋に放り込まれたら、堪らないのです!まだ持ち運び式小家屋の方が快適なのです」
「そりゃまぁ、旧世代の超文明のものに比べたら、質は落ちると思うけど……そもそも比べる対象が違うと思うよ。何よりすぐ隣でランクS級の魔物がウロウロしている森より安全で、温かいじゃないか」
ポメを諭しながら、クーフェさんやキリクさんが僕達を受け入れてくれた人の暖かさを、改めて貴重なものとして感謝するのだった。
「とにかく一宿一飯の恩義っていうのもあるから、何かをクーフェさんとキリクさんに返さないと」
何で返せるかなと頭を捻っていると、僕達に用意された部屋の扉がノックされる。
「シン君、起きてる?朝ごはんができたわよ」
クーフェさんが扉越しに僕達に声をかけてくれる。
「ありがとうございます。すぐに行きます」
そう答えた僕は、髪を撫で付けて整えると、ファング、ビーク、ポメと共に部屋を出る。
テーブルの上には、葉野菜のサラダと塩漬け肉のソテーと目玉焼きとパンが用意されていた。キリクさんは既に食べ始めていて、もうすぐ終わろうかという感じだ。
「悪いな。門番の仕事があるから、先に食べさせてもらってるぜ」
パンを口に頬張りながらキリクさんが説明する。確かに朝早くに出入りする行商人の受け入れなんかもあるから門番の仕事は朝早くからあるのだろう。
僕達が席に座ると、ほぼ同時に食べ終えたキリクさんが、席を立って部屋に戻っていく。
「じゃぁ、私達も頂きましょうか。地の女神イシュター様、今日も大地の恵みをありがとうございます」
「「地の女神イシュター様、今日も大地の恵みをありがとうございます」」
クーフェさんに続いて、僕とポメもお祈りを捧げると、食事をし始める。特に複雑な調理過程を踏んでいる料理ではないので、先日のホーンラビットのシチューの用に味はバラバラになっていない。……けど、今一パンチが足りないと思ったら、胡椒の類がかかっていない。塩は多少振ってある所を見ると、胡椒という香辛料に馴染みがないんだろうか?
「塩以外に香辛料をかけたりしないんですか?」
「香辛料?何それ?」
僕がクーフェさんに聞いてみると、不思議な顔をして聞き返される。
「ピリッとしたり、強い香りがしたりする葉っぱや木の実なんですが」
「あぁ、ペパの実とかピリの葉のことかなぁ?ペパの実は高くてとても普通のご飯には使えないけど、ピリの葉なら普通に使っているわ」
「なるほど……ちなみにペパの実というのは?」
「うーんとね、これくらいの木の実で、黒いのと白いのがあって、10粒くらいで銀貨10枚もするの」
ペパの実というのが胡椒みたいな気がする。それにしても10粒で銀貨10枚だと、1万円相当だから、相当に高い気がする。
「ペパの実はここいらじゃ取れないから、すごく貴重で高くなっているみたい。でもピリの葉の方は、街の周辺に生えているから、そんなに高くないわ。でも乾燥させて粉状にしないと使えないから、ちょっと手間はかかるみたいだけれど」
そういって小さな陶器の壺を持ってきてくれる。中には濃い紫色の粉が入っていて、匂いを嗅ぐと強い酸味を含んだ香りがする。
「これは赤紫蘇かな。パン食にはあまり向かないけど、焼いた肉にかけると肉の旨さが引き立つ気がする」
「そうね、これはお肉に振り掛けて使うことが多いかな」
そんな話をしながら、美味しく朝ごはんを頂戴する。
「さてと、私は洗い物をしたら、ギルドに出勤しないと」
「あ、皿洗いくらいなら僕達がやっておきますので、先に準備をしてきてはどうですか?」
「そんな、悪いよ」
「いいえ、僕達はクーフェさんの好意で泊まらせてもらった上、食事まで頂いています。何かお手伝いをさせていただかないと、後ろめたくてしょうがないんです」
「あ……そうね。じゃぁお願いしちゃおうかしら。洗室を使ってね」
僕は洗室に移動してそこで皿を洗おうとする。夜にチラ見してたので、手順はわかっていて、桶に入った水を少し更に垂らして、ヘチマのような植物性のたわしでこの皿を擦るんだが……
「これは生活が大変そうだなぁ……」
まず大きなタライに必要な際に水を汲んで、それで服を洗ったり、皿を洗ったり、ゴミはなるべく水路に流さないように、ゴミ受けにためて、それを共同のゴミ溜めに捨てる。排泄物も汲み取ってどこかで処理をしているみたいだ。また料理の際にも薪を燃やして調理しなくてはならないので、薪も購入して家の中に置かなきゃいけないし、発火させるための着火剤も用意しなければならないし……
そんな事を考えながらゴシゴシしていたら、いつの間にか皿洗いが終わっていた。
「終わりました」
「ありがとう。シン君たちはこの後どうする?」
ギルドの受付用の制服に着替えたクーフェさんが僕達の行動を聞いてくる。
「えっと、どういう物があるのかを見に市場に行ってみたいと思います。あとせっかく冒険者ギルド証をもらったので、何か僕にでもできることがないか、冒険者ギルドの依頼を見たいと思っています」
「うーん。シン君くらいの年で受けられる依頼かー、無くはないと思うんだけど……まぁ、私もギルドに行ったら依頼を見て見るから、ギルドに来たら聞いてみてね☆」
「はい。その時は宜しくお願いします」
「じゃぁ、家の戸締まりをしたいので、外出の用意をしてくれるかな?」
そうして僕達はクーフェさんと一緒にクーフェさんの家を出るのだった。
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