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第030話(回想終了?!)

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御主人様マスター御主人様マスター!」
 僕を呼ぶ声がして、僕の意識は引き戻される。

 目の前には山盛りのマグロらしき魚の刺身、そしてもう1ヶ月で見慣れたポメの顔。そして新しい仲間の風狼ウィンド・ウルフのファングと、火燕ファイア・スワローのビークも美味しそうにマグロらしき魚の刺身を食べている。

「あぁ。ごめん、ごめん。ちょっと今までのことを思い返してボーっとしてたよ」
御主人様マスターは、早くも老人性痴呆症が発生してそうな残念な頭なのですから、キチンとしていないと心配するです!」
「あー、うん。ポメはいつも通り通常運転だね……」
「そうなのです!ポメはいつだって超絶優秀高性能メイドなのです!」
「それより醤油らしき調味料がほしいなぁ、あと白米と味噌汁も飲みたい」

 少しだけ前世のことを思い出したせいで、あの頃の食事が懐かしく思えてくる。この世界にも似たようなものがあるといいんだけど。

「ポメの料理になにか不満でも?」
 ポメが腰に手を当ててそう言いながらながら、ジト目で僕を睨んでくる。

「味付けの時に分量を桁違いに間違えることには不満しか無いけど、概ね助かっている……かなぁ?まぁ、それとは話が別で、ちょっとした郷愁を感じちゃっただけだよ」
「良くわからないのです。御主人様マスターは、そんなに小さいくてショボいのに時折大人びるのが解せないのです!」

ピィピィッ!
ガゥガゥ!

 他二匹もポメと同じらしく、そうだそうだと言っているようだ。まぁ中身はアラサーにずっぽりハマっているおっさんだからなぁと考えながらゆっくりマグロを食べていると、ファングとビークは既に食べ終わっていて、ちょっと眠そうにウツラウツラしている。

「丁度いい空き地を探してくるので、御主人様マスターはゆっくり食べているといいです」
 その様子を見たポメが立ち上がると、ビークも一緒に行くと言わんばかりに飛び立ちポメの肩に止まる。いい場所を見つけるには空から見た方が良かったりするので、こういう時にビークが非常に役に立つ。

 僕が食事を終わらせて、軽く食器などを一箇所に集めた後、ファングの毛繕いをしてあげていると、ポメとビークが戻ってくる。ビークはすぐに僕の肩に止まると、自分も撫でてくれと言わんばかりに、身体を僕の頬に擦り付けてくる。

「すぐ近くにいい場所がありましたので、小屋を展開しておきましたです。後片付けはポメがやっておくので、御主人様マスターは先に、お風呂にでも入っておくと良いのです」
「後片付け手伝おうか」
「何をするにも不器用な御主人様マスターが手伝っても、時間がかかるばかりで碌な事がないのです。大人しくさっさと風呂にでも入ってくるのです」
「わかったよ。でも、気を付けてね」
 気遣いの言葉をかけたのだが、いつも通りあっさり却下される。いつもの事などで、僕は気にせずにビークの先導で小屋に向かうことにする。

 少し開けた川べりに、いつもの小屋が立っていて、僕はドアを開けて中に入る。とても無防備で誰でも入れそうなんだけど、登録していない人が開けようとしても、絶対に開かないらしい。

 小屋に入ると、朝出ていった時の状態のままなので、一体どういう仕組みになっているのか謎だらけだ。そもそもこの小屋をドコから取り出しているのかも謎だし……ポメに聞いても答えてくれないから、知るのは諦めて、こういうものだと認識するようにしたんだけど、違和感が拭えない。

 兎にも角にも、こんな樹海の中なのに、お風呂に入れるのがすごく贅沢だとは思うんだ。僕はファングとビークとも一緒にお風呂に入り、二匹の身体をしっかり洗ってあげる。
 最初は水が怖かったのか、風呂に慣れていなかったのか、かなり嫌がっていたのだが、最近は進んで洗ってもらおうと一緒に入ってくる。

 石鹸を泡立てて、シャワシャワ洗ってあげると、2匹とも目を細めてとても気持ちよさそうな表情をしているので、僕も嬉しくなって丁寧に洗ってあげるのだ。

御主人様マスター、背中を流すであります」
「いや、狭いからいいよ」
 後片付けを済ませたのか、ポメが風呂に入ってくる。そもそも一人用のサイズのところに2人と2匹なので、洗い場がかなり狭くなっている。お湯も意図しないところに掛かる可能性もあり、変な所に掛かるとファングとビークが嫌がる断っているのだが、ポメは問答無用に入ってくる。

ガゥガゥッ!

「あぁ、わかったよ」
 ファングから催促があったので、湯船に椅子を沈める。浴槽は人間サイズなので、まだ子犬のファングが入ると、常に泳がなければならない状態になってしまう。その為、浴槽に椅子を沈めて、ファングが浴槽に立ち上がって浸かれるようにするのだ。
 ファングはその椅子の上に後足で立ち、前脚と顎を浴槽の縁に乗っけて、僕のことを眺めるのが好きなようだ。

 ポメが椅子を取られて立ち上がった僕の後ろに立つと、石鹸を泡立てて、背中を布でゴシゴシし始める。ポメはひらひらのエプロンが付いたメイド服のままなのだが、何故かいつも石鹸の泡もお湯も1mmたりとも跳ねさせていないのが、何とも不思議だ。

「コレでOKなのです!後は自分で粗○ンを洗っておけばOKなのです!」
 手の届かない所を一通り洗ってくれたポメが、相変わらずな毒を吐くと浴室を出ていく。僕は前を洗うと背中を流してお風呂に入る。

 僕の身体は5歳児並なのもあって、ファングと椅子が浴槽に入っていても、十分に浸かる事ができるので、ファングとビークと一緒にお風呂を楽しむのだった。

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