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しおりを挟むコハル達一行はピクニックをする草原へやって来た。だだっ広い草原は青々しくとても綺麗な空気が流れている。何でもこの草原には人が来ず、一人になれるとラウルが仕事を抜け出してやって来る場所だと教えてもらった。公爵家の馬車をおりたコハルはまず最初に御者にお昼ご飯を渡した。事前に彼の分も用意してもらっていたのだ。御者はまさか自分の分があるとは思わず、渡された袋を受け取り感動をしている。その行為を見ていた三人は微笑みながら彼女を待っていた。
コハルと双子がピクニックの準備をした。いよいよ始まるピクニックにコハルはずっとニコニコしている。
広げたピクニックシートの上を裸足で歩く。下の芝生が少しチクチクする感覚が何故だか懐かしく思えた。
楽しい会話をしながら食事を終え休憩をする。コハルはシートの上ではなく直接芝生の上で寝転んだ。爺やが見たら怒られてしまうかも。焦る爺やを想像すると面白い。コハルがニヤニヤしていると双子が彼女を挟む様にして寝そべった。普段の仕事で疲れているだろう二人は芝生の感触とそよ風を感じ、気持ち良さそうに目を閉じている。
「コハル号発車します!」
双子はコハルの突然の発言に驚き目を開けた。するとコハルがごろごろと転がりながら双子の上を行き来し始めた。最初は何事かと思った双子だがコハルが笑いながら転がって来るものだから、自分の上を転がる時にわざと重たそうに「ぐえっ」と声を出したりして反応をした。それがコハルには嬉しい様で彼女は声を出して笑っている。双子も自然と笑顔になる。
目が回ったコハルは疲れたのか地面にうつ伏せになり呼吸を整えた。すると、ラウルが彼女の隣で寝そべる。コハルにはこの行為がとても意外だった。てっきりラウルはこういうこと好きじゃないと思っていたので。そっと手を伸ばし、彼の前髪を横に流す。
「かっこいい」
あまりにも綺麗な横顔に思わず呟いてしまった。ラウルは満足そうに笑いながら目を閉じている。
「コハル俺は?俺もかっこいい?」
「俺も、どうかな?」
いつの間に横に来ていたのか、双子がコハルのそばに座っていて彼女を覗き込む様に前かがみになっていた。その姿が可愛くてコハルはクスクスと笑った。
「アルトもクルトも凄くかっこいい!」
本当に三人はかっこいい。改めてこの三人の妻で良かったと思う。有難い事だなーと思いながら仰向けになる。綺麗な空気、空には神獣がいて・・・
「あれって神獣?」
上空には二頭の神獣が輪を作って回っていた。神獣については爺やから学んだことがある。あれは馬の姿に似ているペルディクルと、ライオンの姿に似ているライオニオンだ。でもその名前に違和感がある。それに初めて見るのにそれ程感動していない。それどころか何処か懐かしさを感じ首を傾げた。
「・・・初めて見た」
寝そべりながら神獣を見つめているラウルの瞳はとてもキラキラしていた。あのラウルが瞳を輝かせている。その姿がとっても可愛くて、やっぱり男の子だなとコハルは微笑んだ。双子も輝いているのかな?と思い彼等を見ると、全くの真逆で驚く。全然嬉しそうではないのだ。どこか焦っている様にも見えた。
「クルト?アルト?」
どうしたのだと身体を起こし、彼等に向ける。二人は怯える様にコハルの手を握ってきた。
「コハル約束覚えてるよね」
「俺アンタの事ずっと好きだから」
双子は神獣がコハルを迎えに来たのだと思い込み焦っていた。握っている手をコハルが握り返してくれても不安が募る。このまま連れてかれてしまうのでは無いかと神獣の位置を確かめるべく徐に顔を上げると、神獣はいなくなっていた。緊張が途切れた二人は脱力し、深い安堵の溜め息を吐いた。
愛情表現がまだ足りないのだと勘違いをしたコハルはこほんと咳払いをし二人の手に自分の指を絡ませる。
「ずっと一緒だよ」
コハルの言葉が嬉しくて双子はコハルの手にキスを落とした。
ウォッホン!
正座に座り直し盛大な咳払いをしたコハル。なんだどうしたと三人も座り直した。
「私の夫達は勃起不全でしょうか」
「「「・・・・・・」」」
コハルの言葉に三人は固まり沈黙が続く。綺麗な顔をした三人の夫達はきょとんとしている。
・・・しまった!もっとオブラートに包む筈だったのに!
ストレートに言ってしまい、この空気に耐えきれず慌てるコハル。
「あの、その、皆してくれないからそうなのかなって・・・もっもしそうなら自己処理するしっ教えてくれたら色々と割り切れるかなって」
「「「・・・・・・」」」
何を言ってるんだ私は!
場の空気に耐えきれず余計な事まで言ってしまった。
コハルは合わせる顔がなくなり、赤面を隠そうと両手で顔を隠し伏せた。すると、三人が盛大に笑い出す。笑えるものなら笑うがいいとコハルは心の中で叫ぶが顔は上げる事が出来ない。
「どうやら俺達の妻は欲求不満らしいな」
「ごめんねコハル。我慢させちゃってたね」
「自己処理ってどうやってするの?俺、見たいなー」
三者三様どんな表情をしているのか想像出来る。ラウルはニヤニヤしていて、クルトは穏やかな顔をして、アルトはニマニマしているだろう。
顔は隠れているが、隠れていない耳が真っ赤に染まっているのを見て三人はとても楽しそうに笑っている。
「自己処理しようなんて思えない程可愛がってやる」
いつの間にそばへ来たのか、至近距離からラウルの声が聞こえた。本当に?と言いながら指と指の隙間を広げて伺う。ラウルはヤンキー座りをしながらコハルの頭に手を置いた。
「ああ。覚悟しておけよ」
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