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 ラウルと双子の三人はコハルの部屋へやって来た。クルトが扉をノックするが返事がない。いないのかな?と思いながら扉をそっと開ける。

「っコハル!!」

コハルはベッドのそばでうつ伏せに倒れていた。慌てて駆け寄る三人。ラウルがコハルの上半身を起こし意識を確認するが、彼女はぐったりしていて呼吸が浅い。額に手を当てると驚く程に熱かった。このままではまずい。

「医者を連れて来い!」

ラウルの指示で直ぐに医者がやって来た。公爵家常駐の医者だ。

「風邪ですね。解熱剤を処方致します。暫くは安静が必要です」

薬を用意する為医者は部屋を出た。眠っているコハルの手をクルトが握りしめる。

「コハル死なないよね?大丈夫だよね?」

アルトが狼狽えながらクルトを揺すった。クルトも心配している為その質問に答える余裕がない。

「・・・お前達は仕事があるだろ。俺がみてるから行け」
「でも・・・」

双子は仕事の為渋々部屋を後にする。残ったラウルは面倒をみると言ったものの、今まで誰かの看病等した事が無かったので何からすればいいのか分からない。爺やに聞くかと思ったがこの場には爺やどころか使用人もいない。さて、どうしたことか。

医者は直ぐに戻って来るだろう。
ラウルは何となくコハルの頬に手を当てた。
彼の手が冷たくて気持ちよかったのか、苦しそうだったコハルの表情が和らぎ、その手に頬擦りをされた。

「・・・。」

コハルは余程気持ちよかったのかラウルの手を離さない。遂には彼の腕を両手で抱き込んでしまった。腕が変な角度で固定されてしまったラウルは舌打ちをし腕が楽になるようコハルの隣へ寝そべる。横にいるコハルを見ながら何とか腕を離そうと試みる。だが離そうとするとコハルの顔が歪んでしまう。頬を撫でてやると口角が上がり笑っている。先程まで心配していたが彼女の反応が面白くて、ラウルは離れるのを諦めた。

それにしても困った。腹が減った。
これも腹時計を正常にさせたこいつのせいだ。

いつも笑顔で食べさせ、喜ぶコハルの顔を思い出し鼻で笑った。

「早く食べさせろ、ばか」

反対の手でコハルの頭を撫でながらラウルは呟いた。彼なりの早く治ってほしいの言葉を。



 あつい。寝苦しくて目が覚めた。まだ夜中のようで窓から月の光が差し込む部屋は薄暗い。
早く寝ないと、明日もラウル達のご飯を作るのだから。

・・・寝汗すごいな。

コハルは上半身だけ起き上がり着用していたワンピースを脱いだ。キャミソールだけの姿になる。脱いだワンピースをタオル代わりにし汗を拭こうとしたら横から鼻をすする音が聞こえた。双子のどちらかが居るのだろうかと隣りを見ると、何とそこにはラウルが寝ていたのだ。

な、なんで!?

慌てて持っていたワンピースを体に当て少しでも露出しないようにした。目を閉じているので寝ているのだろうか。とても綺麗な寝顔の彼に思わず見とれてしまった。ここは自分の部屋だよな?と周りを見るが、やはり自分の部屋で間違いない。

コハルは音を立てずにそっとベッドから降りようとした。だが後ろから腕を引っ張られベッドに引き戻されてしまう。眠ていたと思っていたラウルが起きていたのだ。彼はコハルの腕を引き寄せ後ろから抱き締める。

「まだ熱があるんだから寝てろ」
「へ?熱?え、ええ??」

突然あのラウルに抱き締められ恥ずかしくなり、状況が掴めず大混乱のコハル。熱を出していた事を彼女は知らない。そして、一日中寝てしまっていたことも。ラウルが説明をしてくれてやっと理解する事が出来た。でも何故今抱かれているのだろう。

不思議に思いラウルへ体を向ける。近くで見るラウルのお顔は毛穴ひとつない綺麗な肌と美しいお顔立ちで本当に心からイケメンだと思う。

「突然服を脱ぐなんて、お前も女だな」
「・・・・・・っぷ!あははは!」

ラウルの言葉にコハルはお腹を抱えて笑い出した。彼は何がおかしいのだときょとんとしているが、コハルからしてみればこんなイケメンに自分が相手にされる等思ってもみなかったので、自分が公爵家を狙ってると思われたかと思うと可笑しくて仕方がない。

バシバシとラウルの胸を叩きながら、目に涙を浮かべて大笑いするコハルの反応が想像の斜め上を行っていてラウルは困惑する。

「ラウル様が食べ頃になったら美味しく頂いちゃいますよ」

冗談のつもりで彼の目の前で両手をパーにして第一関節と第二関節を曲げてガオーのポーズをとった。何を言ってるんだこいつはと彼は鼻で笑っている。

トン トン トン

「コハル起きてる?」
「クルト?開けて大丈夫だよ」

クルトとアルトがやって来た。彼等はコハルの隣で横になっているラウルを見て凄く驚いている。

「コハル体調はどう?」
「公、あとは俺達が代わるから」

コハルを気遣いながらもラウルに早くどいて欲しいと訴える双子。彼等はラウルが居るのにお構いなしにコハルに近づき頭を撫でたり抱き締めたりし始めた。ラウルは鬱陶しいと舌打ちをしベッドから出る。

「公に襲われたりしなかった?」

アルトの言葉に心外だとラウルは腕を組む。

「病人を襲ったりするか」

不貞腐れながら彼は部屋を出て行ってしまった。

双子はコハルを挟む様に横になった。体はコハルに向け頭を撫でたり、お腹をリズム良く叩いたりコハルに安心感を与える。イケメン二人にちやほやされてとても満足している。

「俺、凄く幸せだよ」

クルトが甘い顔をして囁く。何か良い事でもあったのかと不思議に思っていると今度はアルトがコハルの手に自身の手を重ねて来た。

「毎日アンタと会えて幸せ」

コハルは心が満たされ胸が高鳴る。彼等の手に自分の手を重ね指を絡めた。

「私も幸せだよ」

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